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第56話 嫉妬エルフ
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「どうして姿を消したエルフを探さずいままで放置してきたんだよ?」
サラ様がアランティア王に疑問をぶつけました。
「先ほども言ったようにエルフは命を失うと、精気がユグドレーシアの樹に戻り循環する。つまり、どこにいても死ねば仲間のエルフにわかる仕組みになっているんだ。
人と愛し合い魂が変質したらそれも樹が教えてくれる。ここの集落を出て気に入った人間と暮らしたり、特定の場所に居ついたりするエルフはいくらでもいて、数百年単位の行方不明などよくあることだから探さなかった」
アランティア王が衝撃を抑えて説明をしました。
「要するに失恋の痛手でどこかに行っちゃったと思っていたわけですか?」
ミリアがド直球に質問しました。
「まあ、端的に言うとそうだ……」
アランティア王は口ごもりつつも言いました。
「でも、実は瘴気を受けて魔物化し、封じられてからも人間たちに嫌がらせを続けていたと」
ティオが容赦なくざっくり説明しました。
「そんなことミューレア王妃が喜ぶと思ったのですか?」
「そうだ、この国の王侯貴族はほとんどミューレアの子孫だぞ」
フェリシアとサラ様が続いて意見を述べました。
「あたし、こんなヤツにいいように操られていたの……?」
「反省と後悔なら後でもできるよ、ミリア。まずあの魔物を何とかするために頑張ろう!」
ミリアがあぜんぼうぜんとした顔でつぶやく中、私はミリアを励ましました。
「ねえ、私思うんですけど、五人の英雄たちは『倒せなかった』のではなく『倒さなかった』のではないでしょうか?」
私は皆に思うところを述べました。
「確かに、先代も精神体のみ五人の英雄たちと同行したと聞いた。戦いのどこかでソワジェルと気づいたなら……。でも、それなら、先代は瘴気を除去するための浄化の仕組みをどこかに施したはず」
「はは、そんなもの。異世界からの突風にあおられて消滅してしまったわ。戦いの衝撃でここと異世界を隔てる壁も薄くなっていたようで、そのあとは容易に異世界に干渉することができるようになったというわけだ」
魔物化した仲間のエルフを元に戻そうした先代の王やそれを承知した英雄たちの『善意』は、不幸な偶然で台無しになっていたようです。
「子孫同士で殺し合う人間のことを怒ったが、エルフの側にも原因があったようだな……」
アランティア王はうつむきながら考え込みました。
「それで、結局どうすればいいんだ、親父! また封じるのか?」
「いや、倒してくれ。ソワジェルの行為によって多くの人が命を失った、今となっては元に戻しても、存在自体がその罪に耐えられるかどうか……」
王は悲痛な声で皆に号令をかけました。
「わかった、そういうことなら続けるぞ!」
ティオの号令で再び攻撃を始めました。
自分で言うのもなんですが、浄化がだいぶ進んで魔物は弱体化しています。
「ちくしょう、なぜだ! なぜその娘は俺の言う通りに動かなかった?」
魔物が私を見て憎々し気につぶやきます。
「ブリステルを滅ぼすための駒だったお前がなぜ話の通りに動かなかったのだ、そもそもそこからケチのつきはじめだった!」
そんなこと言われましても……。
「いいこと教えてやろうか、魔物のソワジェル」
攻撃を続けるサラ様が魔物に話しかけました。
「お前が最初に滅ぼしたルルージュ。全員死んだと思っていたのだろうがいたのさ、生き残りが。その家の長男には侍女の中に愛する女がいてな、ただし身分が低いのでスムーズに結婚できる状況ではなかった。その矢先にお前が煽った例の事件さ。彼女は愛する男に殉じて一緒に死のうとしたが腹の中に子がいることを知り、逃げて生き延びることを選んだ」
どうしてそんなことを?
「なぜそんなことを知っているかって? ヴァイスハーフェン家は最初の公爵家滅亡の時から、罪なき者を救うための手法や魔法を開発してきたし、逃げおおせた者のその後の追跡調査と支援も欠かさなかった。リーニャに指摘されて、公爵家が滅んだことに関する家の資料を調べたところ分かった話さ。そして、その侍女の産んだ子の直系の子孫がリーニャの生まれたクルージュ家になるのさ」
なんですと!
うちのご先祖様がかつて滅ぼされたルルージュ公爵?
「じゃあ、リーニャさんが光と水が得意だったのでってもしかして先祖の?」
「ああ、ルルージュは浄化担当の英雄だったらしいからな」
フェリシアの疑問にサラ様が答えました。
「リーニャ、やっぱりヒロイン力半端じゃないじゃん!」
ミリアはそっちの方のコメントですか?
「君も他人事じゃないよ、ミリア。ルルージュ家のあとメリディス家も標的となって滅ぼされたが、その時にはブリステル家の薬で記憶を消し素性をごまかして、幼い者たちを何名も生き残らせた。こちらはさすがに数が多いので全部は追いきれないが、なんとかディスという姓は彼らの末裔の可能性がある」
サラ様は再び、滅ぼされた英雄の家系の話をしました。
ミリアはハトが豆鉄砲食らったような顔をしていますね。
「要するに君がいくら英雄たちの家を滅ぼそうとその流れ、さらにさかのぼれはミューレアの血脈は絶えないのだ。無駄なことをしてきたな、ソワジェル」
アランティア王が諭すような口調で、かぶせるようにコメントをしました。
サラ様がアランティア王に疑問をぶつけました。
「先ほども言ったようにエルフは命を失うと、精気がユグドレーシアの樹に戻り循環する。つまり、どこにいても死ねば仲間のエルフにわかる仕組みになっているんだ。
人と愛し合い魂が変質したらそれも樹が教えてくれる。ここの集落を出て気に入った人間と暮らしたり、特定の場所に居ついたりするエルフはいくらでもいて、数百年単位の行方不明などよくあることだから探さなかった」
アランティア王が衝撃を抑えて説明をしました。
「要するに失恋の痛手でどこかに行っちゃったと思っていたわけですか?」
ミリアがド直球に質問しました。
「まあ、端的に言うとそうだ……」
アランティア王は口ごもりつつも言いました。
「でも、実は瘴気を受けて魔物化し、封じられてからも人間たちに嫌がらせを続けていたと」
ティオが容赦なくざっくり説明しました。
「そんなことミューレア王妃が喜ぶと思ったのですか?」
「そうだ、この国の王侯貴族はほとんどミューレアの子孫だぞ」
フェリシアとサラ様が続いて意見を述べました。
「あたし、こんなヤツにいいように操られていたの……?」
「反省と後悔なら後でもできるよ、ミリア。まずあの魔物を何とかするために頑張ろう!」
ミリアがあぜんぼうぜんとした顔でつぶやく中、私はミリアを励ましました。
「ねえ、私思うんですけど、五人の英雄たちは『倒せなかった』のではなく『倒さなかった』のではないでしょうか?」
私は皆に思うところを述べました。
「確かに、先代も精神体のみ五人の英雄たちと同行したと聞いた。戦いのどこかでソワジェルと気づいたなら……。でも、それなら、先代は瘴気を除去するための浄化の仕組みをどこかに施したはず」
「はは、そんなもの。異世界からの突風にあおられて消滅してしまったわ。戦いの衝撃でここと異世界を隔てる壁も薄くなっていたようで、そのあとは容易に異世界に干渉することができるようになったというわけだ」
魔物化した仲間のエルフを元に戻そうした先代の王やそれを承知した英雄たちの『善意』は、不幸な偶然で台無しになっていたようです。
「子孫同士で殺し合う人間のことを怒ったが、エルフの側にも原因があったようだな……」
アランティア王はうつむきながら考え込みました。
「それで、結局どうすればいいんだ、親父! また封じるのか?」
「いや、倒してくれ。ソワジェルの行為によって多くの人が命を失った、今となっては元に戻しても、存在自体がその罪に耐えられるかどうか……」
王は悲痛な声で皆に号令をかけました。
「わかった、そういうことなら続けるぞ!」
ティオの号令で再び攻撃を始めました。
自分で言うのもなんですが、浄化がだいぶ進んで魔物は弱体化しています。
「ちくしょう、なぜだ! なぜその娘は俺の言う通りに動かなかった?」
魔物が私を見て憎々し気につぶやきます。
「ブリステルを滅ぼすための駒だったお前がなぜ話の通りに動かなかったのだ、そもそもそこからケチのつきはじめだった!」
そんなこと言われましても……。
「いいこと教えてやろうか、魔物のソワジェル」
攻撃を続けるサラ様が魔物に話しかけました。
「お前が最初に滅ぼしたルルージュ。全員死んだと思っていたのだろうがいたのさ、生き残りが。その家の長男には侍女の中に愛する女がいてな、ただし身分が低いのでスムーズに結婚できる状況ではなかった。その矢先にお前が煽った例の事件さ。彼女は愛する男に殉じて一緒に死のうとしたが腹の中に子がいることを知り、逃げて生き延びることを選んだ」
どうしてそんなことを?
「なぜそんなことを知っているかって? ヴァイスハーフェン家は最初の公爵家滅亡の時から、罪なき者を救うための手法や魔法を開発してきたし、逃げおおせた者のその後の追跡調査と支援も欠かさなかった。リーニャに指摘されて、公爵家が滅んだことに関する家の資料を調べたところ分かった話さ。そして、その侍女の産んだ子の直系の子孫がリーニャの生まれたクルージュ家になるのさ」
なんですと!
うちのご先祖様がかつて滅ぼされたルルージュ公爵?
「じゃあ、リーニャさんが光と水が得意だったのでってもしかして先祖の?」
「ああ、ルルージュは浄化担当の英雄だったらしいからな」
フェリシアの疑問にサラ様が答えました。
「リーニャ、やっぱりヒロイン力半端じゃないじゃん!」
ミリアはそっちの方のコメントですか?
「君も他人事じゃないよ、ミリア。ルルージュ家のあとメリディス家も標的となって滅ぼされたが、その時にはブリステル家の薬で記憶を消し素性をごまかして、幼い者たちを何名も生き残らせた。こちらはさすがに数が多いので全部は追いきれないが、なんとかディスという姓は彼らの末裔の可能性がある」
サラ様は再び、滅ぼされた英雄の家系の話をしました。
ミリアはハトが豆鉄砲食らったような顔をしていますね。
「要するに君がいくら英雄たちの家を滅ぼそうとその流れ、さらにさかのぼれはミューレアの血脈は絶えないのだ。無駄なことをしてきたな、ソワジェル」
アランティア王が諭すような口調で、かぶせるようにコメントをしました。
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