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第54話 魔物との闘い
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じめじめした洞窟の中、ところどころある水たまりを避け私たちは前へ進みました。
「瘴気で前が見えにくい。リーニャ光を」
アランティア王が指示します。
いよいよ魔物が封印されている本丸に近づくと、視界が遮られるほどの瘴気が漂っており、私はそれに光を照射し除去していきました。
大きく開けた間にたどり着いた私たちは、そこで、ベースは人間と同じ体形の、黒い角と翼、さらに毒々しい色の刺青のような模様が体全体に広がった魔物を目の当たりにしました。
「「これが封印された魔物!」」
ミリアやフェリシアが緊張した面持ちで言いました。
「角や翼を取ったら、エルフや人間と変わりないじゃないか」
ティオは平然とした顔で言いました。
「君にはあれが人間やエルフと同じ視えるのか?」
サラ様が軽く驚きながら言いました。
そうですね。
いくら骨格が人と同じでもあれを人間やエルフに見立てるなんて。
人とエルフの間にできた生まれだと私たちと少し感覚が違うのでしょうか?
「よう、久しぶりだな。アランティア。見たところお前さんが現在のエルフ王か?」
魔物は旧知であるかのようにアランティア王に声をかけました。
「どこかであっただろうか? 前回の討伐は先王の代の話なので私は参加していないのだが……」
アランティア王は魔物に答えました。
「見たところすでにエルフ王の地位は引き継いだってわけか。つまりあの老いぼれはくたばったということだな」
「先王に対してその物言い、許容できぬな。そもそも我らがエルフに死の概念はない。寿命が尽きればユグドレーシアの木に核となる精が戻り、時が来ればふたたび現身を得る」
「だが、貴様らの妹ミューレアは人と同じくその肉体は死にそして朽ちていった!」
「それは人と愛し合った者だけが魂の普遍を得るからだ。我らがエルフはあの大樹の精気が循環する存在だが、人と愛し合った者はその魂の一部を分け与えられ、人と同じくエルフとは異なった輪の中へ魂がゆだねられる。それは常に本人たちが納得づくの話だ」
「そうやって人はエルフの長寿と不老をまんまと得て、そのくせ、伴侶となるエルフを苦しめてきた」
「そんなことはない、現に私もイレーネの魂の一部を受け取ったが不幸を感じたことはないぞ。そもそもなぜ人とエルフの話に難癖をつける? そなたにいったい何の関係がある?」
エルフ王と魔物の押し問答が続きます。
私たちはそれに口をはさめず見守るだけでした。
「ああ、もういい。きさまとの問答は無意味だ。きさまの後ろにいるガキども。今度はずいぶんとひよっこを集めたものだ。これで俺を再び封印するつもりか?」
魔物は不敵に笑いました。
「ひよっこがどうか、自分で攻撃を受けてみたらどうだ!」
ティオが飛び出して炎攻撃をしかけました。
しかし、幻術というやつでしょうか?
本体の位置が目に見えている場所よりずらされ当たりませんでした。
「やはり精神攻撃が得意と見えるな。リーニャ、洞窟全体に光を。それで幻術の元となる瘴気がなくなる」
「はい!」
もうほとんど勘です。
洞窟全体に光魔法のエネルギーを照射していきました。
「よし、攻撃!」
ティオレとサラ様が火や風を使って攻撃していきます。
攻撃の一部が何らかの魔法で跳ね返ってきました。
「ミリア、治癒魔法を。六属性をまとめて治癒魔法に編みなおすのは私が補助する。君は六属性すべてを同じだけ同時に怪我人に放ってくれ」
「わ、わかりました!」
ミリアはアランティア王の言う通りやってみようとしました。
「ちっ!」
魔物は舌打ちすると、攻撃をしている二人ではなく、私とミリアを狙ってきました。
しかしその攻撃は微妙にずれました。
フェリシアが闇魔法で私たちにステルス効果を付与していたのです。
「ありがとう」
フェリシアに私は礼を言いました。
「あ、ありがとう……」
ミリアもおずおずと礼を言いました。
「忌々しい小娘め!」
魔物は今度はフェリシアに攻撃の波動を放ちました。
私たちにはステルス効果などを付与していたフェリシアでしたが、自身は無防備でした。
「キャッ!」
悲鳴を上げてフェリシアが倒れました。
「大丈夫」
ミリアがすかさず治癒魔法を施します。
「ありがとう」
フェリシアが礼を言いました。
ミリアが少しバツの悪い表情をしました。
「だいぶ連携が取れてきたな。リーニャ、君はこの前教えた浄化の魔法を魔物にむけて放ちなさい。威力は私も補助するので大きくできる。フェリシアは後方のかなめであるリーニャとミリアを引き続き防御。折を見て、風魔法でサラやティオの攻撃も援護してくれ」
アランティア王が改めて指示を出しました。
「忌々しい! 技術は未熟だが魔力量はあの時のルルージュと同じではないか! せっかく、異世界に干渉して公爵家を一つ一つ滅ぼしていったというのに」
「なんだと! あの乙女ゲームのような、婚約破棄からの公爵家断絶の数々はお前のせいだというのか!」
魔物の言葉にサラ様が大きく反応しました。
「ああ、確か『乙女ゲーム』とかいうのだったかな? 作っている奴らの脳に情報を流す。そしてその情報をおぼろげでも覚えている、あるいはこちらの精神干渉に乗りやすいやつらを使って、ストーリーの通り公爵家を滅ぼしていった。筋立てができると、完全ではないが『強制力』というものも働くから、ずいぶんやりやすかったよ」
魔物はあざ笑うように答えました。
「瘴気で前が見えにくい。リーニャ光を」
アランティア王が指示します。
いよいよ魔物が封印されている本丸に近づくと、視界が遮られるほどの瘴気が漂っており、私はそれに光を照射し除去していきました。
大きく開けた間にたどり着いた私たちは、そこで、ベースは人間と同じ体形の、黒い角と翼、さらに毒々しい色の刺青のような模様が体全体に広がった魔物を目の当たりにしました。
「「これが封印された魔物!」」
ミリアやフェリシアが緊張した面持ちで言いました。
「角や翼を取ったら、エルフや人間と変わりないじゃないか」
ティオは平然とした顔で言いました。
「君にはあれが人間やエルフと同じ視えるのか?」
サラ様が軽く驚きながら言いました。
そうですね。
いくら骨格が人と同じでもあれを人間やエルフに見立てるなんて。
人とエルフの間にできた生まれだと私たちと少し感覚が違うのでしょうか?
「よう、久しぶりだな。アランティア。見たところお前さんが現在のエルフ王か?」
魔物は旧知であるかのようにアランティア王に声をかけました。
「どこかであっただろうか? 前回の討伐は先王の代の話なので私は参加していないのだが……」
アランティア王は魔物に答えました。
「見たところすでにエルフ王の地位は引き継いだってわけか。つまりあの老いぼれはくたばったということだな」
「先王に対してその物言い、許容できぬな。そもそも我らがエルフに死の概念はない。寿命が尽きればユグドレーシアの木に核となる精が戻り、時が来ればふたたび現身を得る」
「だが、貴様らの妹ミューレアは人と同じくその肉体は死にそして朽ちていった!」
「それは人と愛し合った者だけが魂の普遍を得るからだ。我らがエルフはあの大樹の精気が循環する存在だが、人と愛し合った者はその魂の一部を分け与えられ、人と同じくエルフとは異なった輪の中へ魂がゆだねられる。それは常に本人たちが納得づくの話だ」
「そうやって人はエルフの長寿と不老をまんまと得て、そのくせ、伴侶となるエルフを苦しめてきた」
「そんなことはない、現に私もイレーネの魂の一部を受け取ったが不幸を感じたことはないぞ。そもそもなぜ人とエルフの話に難癖をつける? そなたにいったい何の関係がある?」
エルフ王と魔物の押し問答が続きます。
私たちはそれに口をはさめず見守るだけでした。
「ああ、もういい。きさまとの問答は無意味だ。きさまの後ろにいるガキども。今度はずいぶんとひよっこを集めたものだ。これで俺を再び封印するつもりか?」
魔物は不敵に笑いました。
「ひよっこがどうか、自分で攻撃を受けてみたらどうだ!」
ティオが飛び出して炎攻撃をしかけました。
しかし、幻術というやつでしょうか?
本体の位置が目に見えている場所よりずらされ当たりませんでした。
「やはり精神攻撃が得意と見えるな。リーニャ、洞窟全体に光を。それで幻術の元となる瘴気がなくなる」
「はい!」
もうほとんど勘です。
洞窟全体に光魔法のエネルギーを照射していきました。
「よし、攻撃!」
ティオレとサラ様が火や風を使って攻撃していきます。
攻撃の一部が何らかの魔法で跳ね返ってきました。
「ミリア、治癒魔法を。六属性をまとめて治癒魔法に編みなおすのは私が補助する。君は六属性すべてを同じだけ同時に怪我人に放ってくれ」
「わ、わかりました!」
ミリアはアランティア王の言う通りやってみようとしました。
「ちっ!」
魔物は舌打ちすると、攻撃をしている二人ではなく、私とミリアを狙ってきました。
しかしその攻撃は微妙にずれました。
フェリシアが闇魔法で私たちにステルス効果を付与していたのです。
「ありがとう」
フェリシアに私は礼を言いました。
「あ、ありがとう……」
ミリアもおずおずと礼を言いました。
「忌々しい小娘め!」
魔物は今度はフェリシアに攻撃の波動を放ちました。
私たちにはステルス効果などを付与していたフェリシアでしたが、自身は無防備でした。
「キャッ!」
悲鳴を上げてフェリシアが倒れました。
「大丈夫」
ミリアがすかさず治癒魔法を施します。
「ありがとう」
フェリシアが礼を言いました。
ミリアが少しバツの悪い表情をしました。
「だいぶ連携が取れてきたな。リーニャ、君はこの前教えた浄化の魔法を魔物にむけて放ちなさい。威力は私も補助するので大きくできる。フェリシアは後方のかなめであるリーニャとミリアを引き続き防御。折を見て、風魔法でサラやティオの攻撃も援護してくれ」
アランティア王が改めて指示を出しました。
「忌々しい! 技術は未熟だが魔力量はあの時のルルージュと同じではないか! せっかく、異世界に干渉して公爵家を一つ一つ滅ぼしていったというのに」
「なんだと! あの乙女ゲームのような、婚約破棄からの公爵家断絶の数々はお前のせいだというのか!」
魔物の言葉にサラ様が大きく反応しました。
「ああ、確か『乙女ゲーム』とかいうのだったかな? 作っている奴らの脳に情報を流す。そしてその情報をおぼろげでも覚えている、あるいはこちらの精神干渉に乗りやすいやつらを使って、ストーリーの通り公爵家を滅ぼしていった。筋立てができると、完全ではないが『強制力』というものも働くから、ずいぶんやりやすかったよ」
魔物はあざ笑うように答えました。
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