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第49話 わだかまりの解消とエルフたちの集団 ~ユリア(ミリア)目線~
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「おや、噂をすれば……」
アルツ氏が木の陰に潜んでいた私を見つけ口にしました。
「えっ、あれ? ミリア・プレデュス?」
エミール王子がつぶやきました。
あー、今日はお休みだったので髪をまとめていません。
「なんだって? ミリアがなんでここに?」
バルドリックも言いました。
「何を言ってるんだい、君たち? ユリアだろ。髪色が若干変わったね。魔力の量が増えたしるしだ」
事情の分からないアルツさんが話に加わります。
「「えっ、やっぱりユリア!」」
「ああ、魔力の性質でわかるよ。六属性揃った稀有な素質の持ち主だからね」
髪色が変わって、というより、彼らからしたら元に戻って昔の知り合いの姿に戻った私を見て混乱している二人に、アルツさんが言います。
「どういうことだ?」
「つまりユリアがミリア?」
「あ、あのっ……、失礼します!」
耐えきれず私は走り去ろうとしました。
「待って!」
エミール王子が私の腕をつかんで引き留めます。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
私はとにかく必死で謝りました。
「なぜ謝るんだい? 僕は君にお礼が言いたくてずっと探していたのに」
エミール王子はけげんな表情をして私に言いました。
「お礼?」
「ああ、アルツ氏が到着するまで君が治療に手を尽くしてくれたことを聞いたから。アルツ氏も君が頑張ってくれなければ、自分がやっても助からなかっただろうっておっしゃっていたから」
「自分のやるべきことをしただけです」
「でも、命が助かったのは事実だ」
「でも、エミール王子は私のせいで駐屯騎士団に追いやられたと……」
「ああ、確かにあの事件がきっかけだった。だけど、フェリシアに言われたよ。どんな状況であっても、婚約者ならまず自分を信じてほしかったと。それがすべてだ」
「でも……」
「あと、追いやられたと言っても正直言ってここは居心地がいい。ここでは王族とかそう言ったことは気にせずふるまえる」
エミール王子は言いました。
つまり、王子はここでの生活が気に入っているということでしょうか?
「だから、君に恨みとか怒っているとかそういうことは……」
「そうですな。自分のことだけど、ここにきて世の中にはいかに強い人が多くいるかってことがわかって、自分は井の中の蛙だってつくづく思いしりましたな」
バルドリックもつけたして言いました。
「そうなのですか。私もここだと、自分の魔法能力がありがたがられてとてもうれしい」
いままでずっと、母に魔法能力を持って生まれたことを疎まれていましたから……。
「なんだ、じゃあ、全員ここに来てよかったって思ってるんじゃないか」
私たちがそんな風にわだかまりを解消する話をしていたころ、駐屯騎士団では大きな問題が持ち上がっていました。
エルフの一族が大挙して押しかけてきたのです。
「ちょっと待ってくれ、いきなりこれまでの援助や情報提供をやめるって、そんなことをされたら……」
騒ぎを聞きつけて私たちもその場に行きましたが、セイダさんがエルフたちにうろたえながら懇願していました。
「とにかくエルフ王は王家の態度にご立腹なのです」
「王家?」
「はい、現在エルフ王のご子息が学園に通われ、ブリステル公爵の令嬢とも親交を深めていますが、それはあくまで学生同士の交流の域を出ません。にもかかわらず、公爵家とエルフの一族が図って、両名を結び付け王位の簒奪を狙っているとの言いがかりをつけられたのです」
エルフ王の子息?
そんな学生がいたのでしょうか?
学園を去って何か月もたったので状況が変わってきたということでしょうかね?
「言いがかりってことは事実無根ってことか?」
「中央の権力争いにこっちを巻き込むなよ」
「まったくだ、それで迷惑をかけらるのはいつも現場だ」
ほかの騎士たちも口々に言いました。
「もともとブリステル家のことだけでなく、数百年前のルルージュ公爵家とのいさかいに始まり、いったい何件の公爵家を王家は滅ぼしたのか! ミューレアの血筋は王家だけでなくすべての貴族の中に連綿と受け継がれているのですぞ。それを毎度毎度己の婚約者が気に入らないというだけの話のついでに次から次へと、王家は何を勘違いしておる! と、エルフ王アランティア様はご立腹なのです」
「ル、ルルージュって数百年前に滅んだ公爵家の名じゃ……」
「エルフにとってはつい昨日のことですから」
人とエルフの寿命の違いによる感覚の違いを示されると、人間としては返すことががありません。
呆然としている私たちの後ろから声をかける人物がいました。
「アランティア王なら公爵夫妻とともに王宮に向かったよ」
声のする方を振り向きました、そこにいたのは、
「「サラ会長!」」
エミール王子とバルドリックが声を挙げました。
「これはこれは、研究施設運営元の……」
セイダさんも言いました。
そういえば、研究施設はヴァイスハーフェン家が運営していたのですね。
「王宮内はちょっと説明しにくいが、瘴気のようなまがまがしい気配が充満している。それで中の人が少しおかしくなっているんだ」
「ふむ、ちょっとやそっとの瘴気ならわれらが王がささっと浄化してしまわれますが……」
エルフの代表者の方が思案しながら言いました。
「うん、ただ、そう単純な話ではないとは思う。この件には封印された魔物も関係してるんではと推測して、いま仲間と一緒にこちらにやってきたところなんだ。ブリステル家は兄のエドゼルが拘束され、夫妻が王宮に向かったが、フェリシアの方はこちらで保護しているよ」
「どういうことですかな?」
セイダさんが質問しました。
「私と同行したのはフェリシアのほか、エルフ王の息子ティオレ。それからリーニャとフォーゲル先生だ。いま研究施設にいる。一度情報を整理して何ができるか話し合わないか?」
「エルフ王の息子もいるのですか? すぐ案内してください!」
「え、ええ……、じゃあ、行きましょうか」
私たちは研究施設の方に向かうことになりました。
【作者あいさつ】
しばらく風邪で寝込んでいて間が空きました。
すいません<(_ _)>。
アルツ氏が木の陰に潜んでいた私を見つけ口にしました。
「えっ、あれ? ミリア・プレデュス?」
エミール王子がつぶやきました。
あー、今日はお休みだったので髪をまとめていません。
「なんだって? ミリアがなんでここに?」
バルドリックも言いました。
「何を言ってるんだい、君たち? ユリアだろ。髪色が若干変わったね。魔力の量が増えたしるしだ」
事情の分からないアルツさんが話に加わります。
「「えっ、やっぱりユリア!」」
「ああ、魔力の性質でわかるよ。六属性揃った稀有な素質の持ち主だからね」
髪色が変わって、というより、彼らからしたら元に戻って昔の知り合いの姿に戻った私を見て混乱している二人に、アルツさんが言います。
「どういうことだ?」
「つまりユリアがミリア?」
「あ、あのっ……、失礼します!」
耐えきれず私は走り去ろうとしました。
「待って!」
エミール王子が私の腕をつかんで引き留めます。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
私はとにかく必死で謝りました。
「なぜ謝るんだい? 僕は君にお礼が言いたくてずっと探していたのに」
エミール王子はけげんな表情をして私に言いました。
「お礼?」
「ああ、アルツ氏が到着するまで君が治療に手を尽くしてくれたことを聞いたから。アルツ氏も君が頑張ってくれなければ、自分がやっても助からなかっただろうっておっしゃっていたから」
「自分のやるべきことをしただけです」
「でも、命が助かったのは事実だ」
「でも、エミール王子は私のせいで駐屯騎士団に追いやられたと……」
「ああ、確かにあの事件がきっかけだった。だけど、フェリシアに言われたよ。どんな状況であっても、婚約者ならまず自分を信じてほしかったと。それがすべてだ」
「でも……」
「あと、追いやられたと言っても正直言ってここは居心地がいい。ここでは王族とかそう言ったことは気にせずふるまえる」
エミール王子は言いました。
つまり、王子はここでの生活が気に入っているということでしょうか?
「だから、君に恨みとか怒っているとかそういうことは……」
「そうですな。自分のことだけど、ここにきて世の中にはいかに強い人が多くいるかってことがわかって、自分は井の中の蛙だってつくづく思いしりましたな」
バルドリックもつけたして言いました。
「そうなのですか。私もここだと、自分の魔法能力がありがたがられてとてもうれしい」
いままでずっと、母に魔法能力を持って生まれたことを疎まれていましたから……。
「なんだ、じゃあ、全員ここに来てよかったって思ってるんじゃないか」
私たちがそんな風にわだかまりを解消する話をしていたころ、駐屯騎士団では大きな問題が持ち上がっていました。
エルフの一族が大挙して押しかけてきたのです。
「ちょっと待ってくれ、いきなりこれまでの援助や情報提供をやめるって、そんなことをされたら……」
騒ぎを聞きつけて私たちもその場に行きましたが、セイダさんがエルフたちにうろたえながら懇願していました。
「とにかくエルフ王は王家の態度にご立腹なのです」
「王家?」
「はい、現在エルフ王のご子息が学園に通われ、ブリステル公爵の令嬢とも親交を深めていますが、それはあくまで学生同士の交流の域を出ません。にもかかわらず、公爵家とエルフの一族が図って、両名を結び付け王位の簒奪を狙っているとの言いがかりをつけられたのです」
エルフ王の子息?
そんな学生がいたのでしょうか?
学園を去って何か月もたったので状況が変わってきたということでしょうかね?
「言いがかりってことは事実無根ってことか?」
「中央の権力争いにこっちを巻き込むなよ」
「まったくだ、それで迷惑をかけらるのはいつも現場だ」
ほかの騎士たちも口々に言いました。
「もともとブリステル家のことだけでなく、数百年前のルルージュ公爵家とのいさかいに始まり、いったい何件の公爵家を王家は滅ぼしたのか! ミューレアの血筋は王家だけでなくすべての貴族の中に連綿と受け継がれているのですぞ。それを毎度毎度己の婚約者が気に入らないというだけの話のついでに次から次へと、王家は何を勘違いしておる! と、エルフ王アランティア様はご立腹なのです」
「ル、ルルージュって数百年前に滅んだ公爵家の名じゃ……」
「エルフにとってはつい昨日のことですから」
人とエルフの寿命の違いによる感覚の違いを示されると、人間としては返すことががありません。
呆然としている私たちの後ろから声をかける人物がいました。
「アランティア王なら公爵夫妻とともに王宮に向かったよ」
声のする方を振り向きました、そこにいたのは、
「「サラ会長!」」
エミール王子とバルドリックが声を挙げました。
「これはこれは、研究施設運営元の……」
セイダさんも言いました。
そういえば、研究施設はヴァイスハーフェン家が運営していたのですね。
「王宮内はちょっと説明しにくいが、瘴気のようなまがまがしい気配が充満している。それで中の人が少しおかしくなっているんだ」
「ふむ、ちょっとやそっとの瘴気ならわれらが王がささっと浄化してしまわれますが……」
エルフの代表者の方が思案しながら言いました。
「うん、ただ、そう単純な話ではないとは思う。この件には封印された魔物も関係してるんではと推測して、いま仲間と一緒にこちらにやってきたところなんだ。ブリステル家は兄のエドゼルが拘束され、夫妻が王宮に向かったが、フェリシアの方はこちらで保護しているよ」
「どういうことですかな?」
セイダさんが質問しました。
「私と同行したのはフェリシアのほか、エルフ王の息子ティオレ。それからリーニャとフォーゲル先生だ。いま研究施設にいる。一度情報を整理して何ができるか話し合わないか?」
「エルフ王の息子もいるのですか? すぐ案内してください!」
「え、ええ……、じゃあ、行きましょうか」
私たちは研究施設の方に向かうことになりました。
【作者あいさつ】
しばらく風邪で寝込んでいて間が空きました。
すいません<(_ _)>。
応援ありがとうございます!
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