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第8話 やっぱり、あなたのためは自分のためだ!
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「リーニャが連れていかれたって聞いたから、何やってるの?」
近づいてきたのはペルティナでした。
「フェリシア様のことを心配していただけですよ」
アリシアとエリーゼが返答に窮していたので、私が答えました。
「物も言い様ね。心配だったら人気のないところに呼び出してやっつけるような真似していいの? って、あんたが言う?」
「はい、おかげでエミール殿下と妙な噂が立っていることを知ることができましたし、そんなのが広まっていたなんて、私も困ってますよ!」
「あー、ほんとに知らなかったの……」
ペルティナがちょっと呆れた顔をしました。
「困るってじゃあほんとに王子殿下のことはなんとも思ってないの?」
「信用していいの?」
アリシアとエリーゼもおずおずと尋ねました。
「そんなことより、当のフェリシアはどこよ?」
ペルティナが尋ねました。
「フェリシアは王宮に用があるから今日は登校していないわ。この件は私たちが勝手にやったことで、フェリシアは知らないし……」
なに、それ!
彼女たちって実はめっちゃ友人思い!
私が軽く感動していたところ、またまた近づいてくる人影が今度は二つありました。
「こっちです、王子殿下!」
ミリアです。エミール王子を引き連れています。
「あー、あの顔は……、対峙したらややこしいことになりそうだから、あんたたちはもう行きなさい。後はあたしとリーニャで何とかするから」
ペルティナはアリシアとエリーゼにこの場を離れるよう促しました。
王子とミリアが近づいてくるのとは逆方向に彼女たちは走っていきました。
「リーニャ、大丈夫!」
ミリアが息を整えながら聞きました。
「ここで一緒に魔法の練習していただけよ、そうでしょ、リーニャ。」
ペルティナがごまかし、私もそうだとうなづきました。
「フェリシアが嫉妬して、君をつるし上げるために彼女たちに命じたって聞いたから急いでやって来たんだけど……」
エミール王子殿下が言われました。
とんでもない誤解です、いったい誰がそんなことを……?
「嫉妬って言うんだったら、王子殿下がちゃんと婚約者と向き合って良好な関係を築けば済む話じゃないんですか! それをしないで婚約者にイヤな思いをさせる、巻き込まれた女生徒もうわさを流されて困る、そんな状況を放置してよく自分の婚約者をあしざまに言えますね!」
単刀直入にペルティナが切り込みました。
言い終わると、呆然とした殿下をしり目に、行こ、と、わたしの手を引っ張りその場を離れました。
今日はよく誰かに連行される日です。
ペルティナのそれは、さっきの二人よりかなり強引ですが。
「いやあぁ~、なんなのあれ。嫉妬とか言っちゃって、二人の女に挟まれた僕チンって、悦に入ってるようで気持ち悪いわ!」
もう目の前に相手はいないが、ペルティナはさらに追い打ちをかけます。
前々から思っていましたが、人が空気や相手との人間関係をおもんばかって言うのをためらう事でも、ペルティナは頓着せず言うところがあります。
でも、ペルティナの言葉で、私も王子の態度でモヤッとしていた部分がはっきりわかったような気がしました。
「本当に知らなかったんですよ、わたしそんなに王子殿下になれなれしかったですかね?」
「う~ん、貴族の令嬢とは立ち居振る舞いやしゃべり方が少し違うかなとは思ったけど、私はそれほどとは……」
「噂は本当困ります……」
「その噂だけど広まるのが早すぎだよね。誰かが意図的に流しているかのような」
「へっ?」
「強いてあげるとしたら、王族とブリステル公爵家との縁組をつぶしたい勢力とか、王族が力を持つのが嫌な連中か? いやいやそれなら、王太子殿下とサラ先輩の縁組の方を壊そうとするのが先だよね」
「ちょっと、そんなとんでもない陰謀に巻き込まれたくありません!」
私はビビりました。
一介の庶民をそんなえげつない権力闘争に巻き込まないでください。
「単なる推測だし、そんなにおびえることないわよ」
「いや、まじで噂かんべんです!」
「だったらうちのザロモ行っとく?」
「はあ?」
突拍子もない提案来ました。
「あの、ザロモ行っとくって?」
「言葉通りの意味よ。噂を打ち消すには、あなたに別の相手ができたってことになるのが一番でしょ。ザロモなんてどう?」
「……?」
「なに、目を白黒させているのよ。まあ、確かに好みもあるからね、無理強いはできないけど」
「いや、あの、ペルティナは弟のザロモに近づく女を徹底的に排除する人だって聞いていたから、ちょっと意外過ぎて……」
「ああ、それね。だってザロモには家の跡目を継いでほしいから、伴侶はクルーグ家をちゃんと切り盛りしてくれる女じゃなきゃ困るじゃない。少なくとも私よりは頭がよくなきゃ。その点、あなたは座学の成績だけだけど、私たちより上の成績で、決まった相手もいないんだったら条件にぴったりなのよ」
「あの、そこにザロモの意思はないですよね」
「まあね、でもザロモのためでもあるのよ」
相手の意思を無視しているのに相手のためって無茶ぶりすぎませんか?
「うちの一族はさ、研究好きの変わり者ぞろいで、よそだったら跡目を巡って争うところが押し付け合うのよ。雑務の多い家長の座なんて御免被るってね。ザロモはあれで、頭は悪くないんだけど、ちょっと大事なところを見落とす癖があるというか、抜けてるのね。でも、そのくらい凡庸な方が家長には向いてそうでしょ」
ペルティナは悪びれずいいました。
いやはや、確信しました。
あなたのためって言ってくる人は自分のための下心を隠しているものだと。
でも、ミリアの言う「あなたのため」、つまり私のためって何でしょう?
ミリアがエミール王子を好きになって自分がアプローチをかけるというなら、良くないとは思うけどその心理はまだ理解できます。でも、私がエミール王子と引っ付いたところでミリアには何の得もないのに……?
まさか、噂を広めたのはミリア?
いやいや考えすぎか。
それにあれですね、ミリアの不可解な心理と言い、前世で読んだ「悪役令嬢モノ」では、ゲームの強制力とやらがかかることがあるとありました。
もしやそれがこの奇妙で困った状況を招いているのでしょうか?
一日が終わり寮に戻ってきてミリアと話すと、
「ペルティナがザロモを勧めた! すごい、もうザロモルート攻略できたの!」
と、歓声を上げました。
ザロモの意思はガン無視の提案でしたから、そういう事じゃないのですけどね。
近づいてきたのはペルティナでした。
「フェリシア様のことを心配していただけですよ」
アリシアとエリーゼが返答に窮していたので、私が答えました。
「物も言い様ね。心配だったら人気のないところに呼び出してやっつけるような真似していいの? って、あんたが言う?」
「はい、おかげでエミール殿下と妙な噂が立っていることを知ることができましたし、そんなのが広まっていたなんて、私も困ってますよ!」
「あー、ほんとに知らなかったの……」
ペルティナがちょっと呆れた顔をしました。
「困るってじゃあほんとに王子殿下のことはなんとも思ってないの?」
「信用していいの?」
アリシアとエリーゼもおずおずと尋ねました。
「そんなことより、当のフェリシアはどこよ?」
ペルティナが尋ねました。
「フェリシアは王宮に用があるから今日は登校していないわ。この件は私たちが勝手にやったことで、フェリシアは知らないし……」
なに、それ!
彼女たちって実はめっちゃ友人思い!
私が軽く感動していたところ、またまた近づいてくる人影が今度は二つありました。
「こっちです、王子殿下!」
ミリアです。エミール王子を引き連れています。
「あー、あの顔は……、対峙したらややこしいことになりそうだから、あんたたちはもう行きなさい。後はあたしとリーニャで何とかするから」
ペルティナはアリシアとエリーゼにこの場を離れるよう促しました。
王子とミリアが近づいてくるのとは逆方向に彼女たちは走っていきました。
「リーニャ、大丈夫!」
ミリアが息を整えながら聞きました。
「ここで一緒に魔法の練習していただけよ、そうでしょ、リーニャ。」
ペルティナがごまかし、私もそうだとうなづきました。
「フェリシアが嫉妬して、君をつるし上げるために彼女たちに命じたって聞いたから急いでやって来たんだけど……」
エミール王子殿下が言われました。
とんでもない誤解です、いったい誰がそんなことを……?
「嫉妬って言うんだったら、王子殿下がちゃんと婚約者と向き合って良好な関係を築けば済む話じゃないんですか! それをしないで婚約者にイヤな思いをさせる、巻き込まれた女生徒もうわさを流されて困る、そんな状況を放置してよく自分の婚約者をあしざまに言えますね!」
単刀直入にペルティナが切り込みました。
言い終わると、呆然とした殿下をしり目に、行こ、と、わたしの手を引っ張りその場を離れました。
今日はよく誰かに連行される日です。
ペルティナのそれは、さっきの二人よりかなり強引ですが。
「いやあぁ~、なんなのあれ。嫉妬とか言っちゃって、二人の女に挟まれた僕チンって、悦に入ってるようで気持ち悪いわ!」
もう目の前に相手はいないが、ペルティナはさらに追い打ちをかけます。
前々から思っていましたが、人が空気や相手との人間関係をおもんばかって言うのをためらう事でも、ペルティナは頓着せず言うところがあります。
でも、ペルティナの言葉で、私も王子の態度でモヤッとしていた部分がはっきりわかったような気がしました。
「本当に知らなかったんですよ、わたしそんなに王子殿下になれなれしかったですかね?」
「う~ん、貴族の令嬢とは立ち居振る舞いやしゃべり方が少し違うかなとは思ったけど、私はそれほどとは……」
「噂は本当困ります……」
「その噂だけど広まるのが早すぎだよね。誰かが意図的に流しているかのような」
「へっ?」
「強いてあげるとしたら、王族とブリステル公爵家との縁組をつぶしたい勢力とか、王族が力を持つのが嫌な連中か? いやいやそれなら、王太子殿下とサラ先輩の縁組の方を壊そうとするのが先だよね」
「ちょっと、そんなとんでもない陰謀に巻き込まれたくありません!」
私はビビりました。
一介の庶民をそんなえげつない権力闘争に巻き込まないでください。
「単なる推測だし、そんなにおびえることないわよ」
「いや、まじで噂かんべんです!」
「だったらうちのザロモ行っとく?」
「はあ?」
突拍子もない提案来ました。
「あの、ザロモ行っとくって?」
「言葉通りの意味よ。噂を打ち消すには、あなたに別の相手ができたってことになるのが一番でしょ。ザロモなんてどう?」
「……?」
「なに、目を白黒させているのよ。まあ、確かに好みもあるからね、無理強いはできないけど」
「いや、あの、ペルティナは弟のザロモに近づく女を徹底的に排除する人だって聞いていたから、ちょっと意外過ぎて……」
「ああ、それね。だってザロモには家の跡目を継いでほしいから、伴侶はクルーグ家をちゃんと切り盛りしてくれる女じゃなきゃ困るじゃない。少なくとも私よりは頭がよくなきゃ。その点、あなたは座学の成績だけだけど、私たちより上の成績で、決まった相手もいないんだったら条件にぴったりなのよ」
「あの、そこにザロモの意思はないですよね」
「まあね、でもザロモのためでもあるのよ」
相手の意思を無視しているのに相手のためって無茶ぶりすぎませんか?
「うちの一族はさ、研究好きの変わり者ぞろいで、よそだったら跡目を巡って争うところが押し付け合うのよ。雑務の多い家長の座なんて御免被るってね。ザロモはあれで、頭は悪くないんだけど、ちょっと大事なところを見落とす癖があるというか、抜けてるのね。でも、そのくらい凡庸な方が家長には向いてそうでしょ」
ペルティナは悪びれずいいました。
いやはや、確信しました。
あなたのためって言ってくる人は自分のための下心を隠しているものだと。
でも、ミリアの言う「あなたのため」、つまり私のためって何でしょう?
ミリアがエミール王子を好きになって自分がアプローチをかけるというなら、良くないとは思うけどその心理はまだ理解できます。でも、私がエミール王子と引っ付いたところでミリアには何の得もないのに……?
まさか、噂を広めたのはミリア?
いやいや考えすぎか。
それにあれですね、ミリアの不可解な心理と言い、前世で読んだ「悪役令嬢モノ」では、ゲームの強制力とやらがかかることがあるとありました。
もしやそれがこの奇妙で困った状況を招いているのでしょうか?
一日が終わり寮に戻ってきてミリアと話すと、
「ペルティナがザロモを勧めた! すごい、もうザロモルート攻略できたの!」
と、歓声を上げました。
ザロモの意思はガン無視の提案でしたから、そういう事じゃないのですけどね。
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