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第5話 それぞれの得意属性

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 ついに魔法の授業です。

 魔法学校の先生というと、まず、白く長いひげを蓄えたおじいちゃんのイメージが強いですが、アルドリック・フォーゲルという名の若い男の人でした。
 
 そういえば、キャリアアップの途中に学園の教師の仕事もあるのでしたね。

 一回目の授業は各々の特性を調べると先生はおっしゃいました。

 先生の上半身が隠れるくらいの大きな円盤が教壇の上に立てられていて、その円盤の真ん中に一人一人が手を触れるよう言われました。

 名簿順に呼ばれた生徒が順々に円盤に手のひらを押し当てると、はまっていた六個の石が輝きましたが、各々石の輝き方が違いました。

 石は六個あってそれぞれの石が、

 火属性-赤
 水属性ー青
 土属性ー黄色
 風属性―緑
 光属性-白
 闇属性ー黒

 と、なっていて、潜在的に強い属性の石ほど色が濃くなると先生はおっしゃいました。

「次、フェリシア・ブリステル」
 
 エミール王子の婚約者にして、成績一位、銀髪の美少女の登場です。

 彼女が手を押し当てると緑と黒の石がより強い色で輝きました。

 「風と闇が強いね」

 結果が出るたび、先生は名簿にそれを書き加えます。

 そして何人か間にいて、その後ついに私の番です。
 
 息を吸って手のひらを中央にあてると、青と白の石が濃く輝きました。

 「水と光が強いね」

 ふむふむ、水は父の得意属性だったので、これは遺伝でしょうかね?
 光も強いとは、でも、光って具体的に何をするのでしょう?

 前世でやったRPGですとヒーリング系統が光属性だったような気がしますが……?

 だいぶ後になってミリアの番が来ました。

 「ほう、これは珍しい! すべての石がまんべんなく輝いている」

 ミリアの場合、特に濃い石があるわけではなく、六つ全部そこそこの明るさで輝いていたのです。

「今日、鑑定したことで皆さんそれぞれ自分の魔力の傾向というものを把握しましたね。基本的には火と水、土と風、光と闇が対抗しています。基本的に火が強い人は水が苦手、その逆もしかり。土と風、光と闇も同じ関係です。得意な属性を伸ばすのも大切ですが、それだけを伸ばして苦手な属性に手を付けないよりは、苦手なりにある程度使えるようになっているほうが、得意な属性の魔法能力も高まります。その理由については後日教えます。それではまた次回」

 先生が説明して一回目の授業が終わりました。


 数日かけて、各クラスでこういった属性の鑑定が一回目の授業で行われ、生徒会の部屋で私たち新入生はそのことを語り合いました。

 都合のいい時だけ来てくれればいいと言われていたので、その日は私とミリア、そしてエミール王子とペルティナだけでした。

「僕は火が強かった。すでに王宮の授業で知っていたことだけどね」
 エミール王子が言いました。

「たしかに王族や高位貴族だと、既に魔力の扱い方は予習しているから今更って感じだよね。あたしは風と水で、ザロモは火と土が得意なんだけどさ」
 ペルティナが言いました。

 双子で得意属性が真逆なんですね。

 どうやら王族や高位貴族の子弟は家庭教師などについて、既に魔力の扱い方など学習しているようです。

 これは授業に入ると大変かもしれません。

 思い起こせば自分が魔力持ちだと知ったのは、学校でピンク髪を男子にからかわれてやり返そうとしたときに、いきなり手から水が噴き出して相手をずぶぬれにしたからです。

 その後も水を出そうとしてもうまくコントロールできず、誰かに水をかけたり、部屋を水びだしにしたり……。
 父は忙しくてやり方を教えてくれないし、魔法を使おうとすると皆に迷惑がかかるとわかってからはほとんど使いませんでした。
 だから、魔力はあってもまったく使い方がわからない状態なのです。

 出発点からすでに差がついているのですね、ヤレヤレ。

「苦手属性も身につけなければ、と、言われていたから、苦手な属性を得意なもの同士で組んで教え合えばいいんじゃない?」

 ミリアが提案しました。

「ああ、いいね。リーニャ、たしか君、水得意なんだよな。僕は火だから互いに教えられそうだな」

 エミール王子が言うと、ミリアは私にだけ見えるようにグッドサイン、親指を立てました。

「いや、水が得意ならペルティナもそうなんでしょ。私は水得意と言ってもうまく制御できなくて……」

 ミリアの『行け』という意思表示とは裏腹に私は遠慮しました。

「まあ、教えてもいいけど、だったらなおさら、苦手属性を伸ばしたいときはエミール殿下に教えを請えばいいんじゃないの?」

 ペルティナが私に向かって言いました。

 邪魔をする『悪役令嬢』じゃないの?
 あ、それは弟のザロモ相手の時だけか。

 ちなみにこの会話、学園の卒業生に送る『寄付のお願い』レターの封をしながら交わしています。

 本文はすでに用意されていて、それを一枚ずつすでに宛名の書かれた封筒に入れて封をするのです。実はこの仕事、とりあえず新入生にさせる仕事(雑用)がなかったので、クラウゼ姉妹が事務所に行って、私たちができそうな仕事として引き受けてきたものなのです。

 風魔法を込めた特殊なインクで書かれた封筒は封をしたとたん、宛名のところまで飛んでいってしまいます。封をすると浮き上がって開いた窓から飛び出していく光景は、なかなか面白いものです。

 郵便配達人も存在しますが、大量の郵便物を送る必要のあるところではわざわざ郵便局へ持っていくより、モノによってはこうやって自動で送ってくれるというのは、なかなか便利なのです。

 対応できるのははがきや封書などの軽いモノだけですが、いずれは荷物など重いモノでも自動で配達できる仕組みが作れるよう、魔道研究所が開発を続けているそうです。

「あー、なんか、ここに使われているインクを分解して、仕組みを分析したい」

 ペルティナが封をしながらこぼしました。

「そんなこと言うと事務所に怒られるぞ。インクは高いんだから」

 サージェス副会長がペルティナを戒めます。

「ペルティナの目につかないようにインクを隠しておくよう、事務所には言わなきゃなりませんね」
「ほんとだ」

 アデリー書記とハイディ会計の言葉にペルティナは軽く頬を膨らましました。
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