77 / 257
三章
10、名前を呼べ【1】
しおりを挟む
「あっ、あぁ……やっ、んっ」
体が激しく揺さぶられるごとに、わたしの唇からははしたない声が洩れてしまいます。
しかも蒼一郎さんは、抱いている間もわたしの様子をじっと見ているから。
とても恥ずかしいのに、彼の前では体も反応も何一つ隠すことができなくて。
「あっ、だめ……そこ、いやぁ」
「成程。確かに絲さんはここが好きやな」
「や、あぁ……ん」
さっきまでとても激しかったのに。今の蒼一郎さんの動きは、じれったい程に緩慢で。でもそのせいで、より強烈に甘美な刺激を与えられて。
わたしは唇を閉じることすらできずに、彼が与えてくれる悦楽の中を漂うしかなかったの。
もう口から零れるのは、ちゃんとした言葉にはならず。喘ぎ声すらも、かすれた吐息と混じり合って。
「ああ、ええな。もっと啼いてええで」なんて、耳元で囁かれるものだから。
わたしは、何を読ませてほしかったのか。彼に何を求めていたのかすら、考えられなくなっていたの。
今日の蒼一郎さんは、これまでよりもずっと時間をかけてわたしを抱くから。
何度も達して、少し眠りに落ちたと思ったら、また彼のくちづけで目を覚まし。
確か午後には三條邸に戻って来たはずなのに。
辺りはすでにとっぷりと日が暮れていました。
夏は日暮れが遅いはずなのに。開けられた障子の向こうの空は、西日の余韻すら残っていません。
蛍かしら。池の辺りをふよふよと明滅する緑の光が飛んでいます。
「まだ終わってへんで」
ぼんやりと蛍を眺めていたわたしの顔を、蒼一郎さんがご自分の方へと向けさせます。
深いくちづけを与えられ、彼の舌がわたしの舌を翻弄するの。
「ほんまは朝まで抱きたいとこやけど。絲さんの体が心配やからな。そろそろ風呂に入って、晩飯にしよか」
「お風呂、入りたい、です」
体はべたべたで、しかも夏とはいえ全裸だから、蒼一郎さんと重なっていない部分は少し冷えています。
「せやなぁ。あと一回したら、一緒に入ろな」
「え? まだなの?」
「ん? さっきまだ終わってへんって言うたよな」
言いましたよ。聞きました。でも、もう何度も達して、しかも蒼一郎さんもですよね。
文句を言いたいのに、彼の指で舌で翻弄されて。まだ快感の余韻が引いていない体は、すぐに落ちていきます。
彼の手を肌に、指を中に感じ。「しんどいやろから、もう挿れへんわ」なんて、まるで親切なように聞こえる言葉を囁かれながら、わたしは高みに押し上げられます。
「も、だめ……苦しい、の」
「『蒼一郎さん、好き』って言いながら達したら、やめたろ。けど、達する時に言わんと無効やで」
「な、なに、それ」
「ほな、約束な」
室内は暗くて、明かりもついていないけれど。暗闇に慣れた目には、蒼一郎さんの笑みがはっきりと見えました。
でも、冷静でいられたのは其処まで。
体が激しく揺さぶられるごとに、わたしの唇からははしたない声が洩れてしまいます。
しかも蒼一郎さんは、抱いている間もわたしの様子をじっと見ているから。
とても恥ずかしいのに、彼の前では体も反応も何一つ隠すことができなくて。
「あっ、だめ……そこ、いやぁ」
「成程。確かに絲さんはここが好きやな」
「や、あぁ……ん」
さっきまでとても激しかったのに。今の蒼一郎さんの動きは、じれったい程に緩慢で。でもそのせいで、より強烈に甘美な刺激を与えられて。
わたしは唇を閉じることすらできずに、彼が与えてくれる悦楽の中を漂うしかなかったの。
もう口から零れるのは、ちゃんとした言葉にはならず。喘ぎ声すらも、かすれた吐息と混じり合って。
「ああ、ええな。もっと啼いてええで」なんて、耳元で囁かれるものだから。
わたしは、何を読ませてほしかったのか。彼に何を求めていたのかすら、考えられなくなっていたの。
今日の蒼一郎さんは、これまでよりもずっと時間をかけてわたしを抱くから。
何度も達して、少し眠りに落ちたと思ったら、また彼のくちづけで目を覚まし。
確か午後には三條邸に戻って来たはずなのに。
辺りはすでにとっぷりと日が暮れていました。
夏は日暮れが遅いはずなのに。開けられた障子の向こうの空は、西日の余韻すら残っていません。
蛍かしら。池の辺りをふよふよと明滅する緑の光が飛んでいます。
「まだ終わってへんで」
ぼんやりと蛍を眺めていたわたしの顔を、蒼一郎さんがご自分の方へと向けさせます。
深いくちづけを与えられ、彼の舌がわたしの舌を翻弄するの。
「ほんまは朝まで抱きたいとこやけど。絲さんの体が心配やからな。そろそろ風呂に入って、晩飯にしよか」
「お風呂、入りたい、です」
体はべたべたで、しかも夏とはいえ全裸だから、蒼一郎さんと重なっていない部分は少し冷えています。
「せやなぁ。あと一回したら、一緒に入ろな」
「え? まだなの?」
「ん? さっきまだ終わってへんって言うたよな」
言いましたよ。聞きました。でも、もう何度も達して、しかも蒼一郎さんもですよね。
文句を言いたいのに、彼の指で舌で翻弄されて。まだ快感の余韻が引いていない体は、すぐに落ちていきます。
彼の手を肌に、指を中に感じ。「しんどいやろから、もう挿れへんわ」なんて、まるで親切なように聞こえる言葉を囁かれながら、わたしは高みに押し上げられます。
「も、だめ……苦しい、の」
「『蒼一郎さん、好き』って言いながら達したら、やめたろ。けど、達する時に言わんと無効やで」
「な、なに、それ」
「ほな、約束な」
室内は暗くて、明かりもついていないけれど。暗闇に慣れた目には、蒼一郎さんの笑みがはっきりと見えました。
でも、冷静でいられたのは其処まで。
0
お気に入りに追加
694
あなたにおすすめの小説
狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
羽村美海
恋愛
古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。
とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。
そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー
住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……?
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
✧天澤美桜•20歳✧
古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様
✧九條 尊•30歳✧
誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭
✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
*西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨
※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。
※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。
※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。
✧
✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧
✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧
【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
【完結】もう二度と離さない~元カレ御曹司は再会した彼女を溺愛したい
魚谷
恋愛
フリーライターをしている島原由季(しまばらゆき)は取材先の企業で、司馬彰(しばあきら)と再会を果たす。彰とは高校三年の時に付き合い、とある理由で別れていた。
久しぶりの再会に由季は胸の高鳴りを、そして彰は執着を見せ、二人は別れていた時間を取り戻すように少しずつ心と体を通わせていく…。
R18シーンには※をつけます
作家になろうでも連載しております
極上エリートは溺愛がお好き
藤谷藍
恋愛
(旧題:強引社長とフラチな溺愛関係!? ー密通スキャンダルなんてお断り、ですー)
素顔は物凄く若く見えるベイビーフェイスの杉野紗奈は、メガネをかけて化粧をすると有能秘書に早変わり。いわゆる化粧映えのする顔で会社ではバリバリの仕事人間だが、家ではノンビリドライブが趣味の紗奈。妹の身替りとして出席した飲み会で、取引会社の羽泉に偶然会ってしまい、ドッキリ焦るが、化粧をしてない紗奈に彼は全然気付いてないっ!
ホッとする紗奈だが、次に会社で偶然出会った不愛想の塊の彼から、何故か挨拶されて挙句にデートまで・・・
元彼との経験から強引なイケメンは苦手だった紗奈。でも何故か、羽泉からのグイグイ来るアプローチには嫌悪感がわかないし、「もっと、俺に関心を持て!」と迫られ、そんな彼が可愛く見えてしまい・・・
そして、羽泉は実はトンデモなくOOたっぷりなイケメンで・・・
過去の恋の痛手から、一目惚れしたことに気付いていない、そんな紗奈のシンデレラストーリーです。
助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる?
「年下上司なんてありえない!」
「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」
思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった!
人材業界へと転職した高井綾香。
そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。
綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。
ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……?
「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」
「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」
「はあ!?誘惑!?」
「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる