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もふおとお兄さんのクリスマス

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「ふー、動画編集とりあえずひと段落っと。…ってすっかり忘れてたけど明日クリスマスか。じゃあ今日イブだね。うーん、家に籠って作業してると日付感覚無くなって良くないなー」

「お兄さんお疲れ様、コーヒー淹れたから飲んで。あと市販のだけどクッキーもどうぞ」
「あー、ありがとねもふお。DKなのにコーヒー淹れられるとか本当料理万能ですごいねー」

「うん、僕も結構コーヒー好きだし。底辺時は当然インスタントだしそれもあんまり飲めなかったけどね。…あとあのクソ義父がコーヒー好きだったから距離縮めたくて、再婚後淹れ方頑張って覚えたの」
「…あー、そうだったんだ。しんどい事思い出させちゃってごめんね」

「うん、あいつ仕事人さんがえげつなくぶっ殺してくれたしもう平気だよ。…仕事人さんが撮影してくれた現場写真見せてもらった時はえげつな過ぎて吐いたけど」
「あーうん、私もあのクソ義父は許せなかったんでもう可能な限りえげつない殺し方でお願いしますって依頼したから。仕事人さんももふおの境遇聞いたら相当同情してノリノリでえげつなくぶっ殺してくれたよ。普段はかなりスマートに殺るタイプの人なんだけどね」
「…そ、そうなんだ」


「…あー、あんまり他言しないであげて欲しいんだけどさ。実はその人も、もふおとほぼ同じ境遇の義理の弟さんがいるんだよね」

「…ああ、そうなんだ。その子も大変だね」
「しかもその子、最初相当悪質な飼い主に買われちゃって殺されかけたみたいで。結局色々あってその仕事人さんの家に引き取られたんだって。だからそれからアレな事はしないでその子にずっと優しくしてあげて、しばらくしたら変態的な関係ではあるけど慕ってくれるようになったんだってさ」

「…そっか、本当その子気の毒だったね。でも良い人に引き取られて良かった。やっぱ倫理的にはアレだけど」
「うんまあ、やっぱりこういう世界だからそこは仕方無いね」

「それでその仕事人さんも結構裏世界では有名な腕の良い人だから、報奨金とか稼いで少し後にその子に義肢買ってあげて、今はその子も同じように仕事人やって元気に過ごしてるんだって」
「そうなんだ。今は元気にやってて、裏世界ではあるけど社会復帰も出来て良かったね」

「うん、最終的には義肢買ってあげて、性質上裏世界の事もあるけど社会復帰させてあげる飼い主が大半だから。そういう事を考慮して裏ペット協会も基本戸籍は一応残すんだよね。悪質なアレハンターや業者に捕まると抹消されちゃう事もあるみたいだけど」
「ふーん、そうなってるんだ」

「そう、だから表世界でも時々全身義肢の子よく探すといたりするんだよね。もちろん本当の事は言えないから事故とか病気で無くしたって事になってるけどさ」
「へー、そうなんだ。僕はそういう子見た事無いな」
「うん、もふお過去がアレだったからたぶんあんまり人の多い町とか行けなかったろうしね。学校でもいじめられてて人付き合いもあまりしなかっただろうし」

「あーそうだね。一応地元の商店街とかの大人たちには、母親は完全に痛い人だけど子供の僕には罪は無いし、あんなアレな親で可哀想にってある程度憐みの目で見られて可愛がられたりはしてたけど」
「そうなんだー。まだ多少は味方してくれる人がいて良かったね」

「でも流石に引き取って育ててくれたり、本格的な資金援助とかそこまでしてくれる人はいなかったけどね。まああらゆる意味で気軽に出来る事じゃないし、それは当然だと僕も思ってたけどさ」


「うーん、まあそうだろうね。引き取ってちゃんと高校まで進学させたら何百万もかかる事だしね。あ、あとすっかり忘れてたんだけど今日クリスマスイブだし、何かもふお欲しい物あったら買ってあげるよ。流石に超高い物とかは無理だけど」
「えー、気持ちは嬉しいけど僕義肢とか今まで色々買ってもらってるし、もう相当お金使わせちゃってて悪いからいいよ」

「まあまあそう言わずに。もふお過去がアレだからたぶんクリスマスとかまともに祝われてないだろうしプレゼントも貰ってなかったでしょ?幼少期からそんなの可哀想過ぎるしさ」
「うん、当然そうだったね。母親がパート先から余った総菜割引で買って来て、いつもよりちょっとだけ良い物食べられたりはしたけどケーキとかはほぼ無かったね。当然サンタなんて来た事も無かったから、かなり小さい頃からサンタはいないって察したし。再婚後は義父から貰ってたけど、今思うと嬉しくは無かったし」

「やっぱり底辺だとそうなっちゃうよね。そういう訳でサンタは今更アレだけどプレゼントくらいはさせてよ。もふおいつもから控えめだし、遠慮せず好きな物言って」
「…んー、ここゲームとかは結構あるし僕も本当不自由して無いんだけどなー。あーじゃあ、調理の時に楽だからフードプロセッサー買ってもらっても良い?時短になるしさ」
「全然良いよー、実用的だね。じゃあこれからさっそく電気屋さん行こうよ」
「うん、ありがと」


そんな訳でコーヒーを飲み終えた後、私ともふおはコートを着て近場の繁華街へ出かけた。

「あー、年末近いしクリスマスイブだから凄い人だね」
「うん、やっぱり恋人や家族にプレゼント買ってく人が多いだろうしね。ここ大きいデパートあるからクリスマスケーキ買いに来る人も相当いるだろうし。せっかくだから美味しいケーキも買ってこうか?」
「うーん、僕も当然底辺だったから行った事無いけどクリスマスのデパ地下とか確実に超修羅場だろうし良いよ。地元のコンビニとかスーパーでも十分買えるだろうしそれで良いじゃん」
「そっか、分かった。あ、じゃあ電気屋さん見えたから入ろう」

そうして私達は大型電気量販店の調理家電コーナーへと向かった。

「うーん、私自炊とかほぼしないから当然全然分からないんだけど。どういうのが良いのかなー」
「んー、僕もあんまり詳しく調べた事無いけど。まあ基本的なみじん切りや千切りとか出来れば十分だよ」

近くにいた販売員さんが私達に気付き、色々と商品を説明してくれた。

「値段に特にこだわらないという事でしたら、こちらが良いと思いますよ。全パーツ食洗器対応でピーナツバターの自作等も出来ますし。ただ少々本体が重いのだけが難点ですが」
「あー、僕力強いので大丈夫ですよ。食洗器はうちに無いので特にこだわりませんが。ではこちらでお願いします」
「はい、ではレジまでお持ちしますね。いやあ、お客様お若いのに料理されて偉いですね」
「ええ、私も彼には本当助けられています。家事万能でお魚も捌けてすごいんですよー。あ、確かポイント結構貯まってたと思うので全ポイント利用でお願いします」

「かしこまりました。では全ポイント利用と年末セール割で、9800円になります」
「はーい、ではクレカ一括払いでお願いします」


そうして会計を済ませ、私はレジ近くで待機していたもふおの元に戻った。

「お待たせもふお。あ、思ってたより安かったからもうちょっと何か買ってあげるよ」
「えー、これだけで十分だからもう良いよ」
「まあ遠慮しないで。再婚するまで何一つプレゼントもらってなかったとか気の毒過ぎるし、再婚後も当然嬉しくないだろうしさ。2万くらいすると思ってたけど思ってたより安く済んだし。ゲームでも買ってく?」

「うーん、今特に気になるゲーム無いしなー。あー、じゃあ安めので良いからぬいぐるみ買ってもいい?」
「うん、全然良いよー。じゃあおもちゃ売り場行こう」


そして僕達は子供連れや家族のいるであろう男性客等がたくさんいるおもちゃ売り場へ向かった。

「…あ、今更だけど親子連れとか見てもふおしんどくならない?配慮足りなくてごめんね」
「んー、まあこのくらい平気。こういう所に来てるって事は大概ちゃんとした親だろうしさ。もうあのクソとっくに死んだし良いよ」
「そっか、それなら良かった。もふお、本当明るくなってくれて良かったよ」
「うん、お兄さんがいっぱい優しくしてくれたおかげだよ。ありがとね。あ、じゃあこのクマ可愛いし買っても良い?」
「いいよー。そこまで高く無いしもう一個くらい買っていいよ」
「んー、これ以上買ってもらったら申し訳無いしもういいよ。ありがとね」
「そっか、じゃあレジ行こう。あ、悪いんだけどこのフープロ持ってもらってて良い?」
「うん、義肢強いから家までずっと僕が持ってくよ。気にしないで」

それからクリスマスのおもちゃ売り場なのでかなりの行列だったが、15分くらい後に会計を済ませもふおの元に戻った。

「はいお待たせ。じゃあ帰ろうか」
「うん、本当色々ありがとね。夕飯いつもより豪華にするね」
「うーん、嬉しいけどこれから手の込んだもの作ってもらっちゃ悪いしなあ。あ、じゃあ折角だし地元まで戻ったらケンタ買わない?クリスマスだし久々に食べたくなって来た」
「あー良いね。でも今日飛び込みで買えるかな」

「まあ店も見越して大量に用意してるだろうし大丈夫じゃない?もし買えなかったらそれっぽいのスーパーとかで適当に買ってこうよ」
「うん、そうだね」


そしてまた電車に二人揺られ、僕達はマンションのある地元駅へと戻った。

「えーっとケンタこっちだっけ。うわー、やっぱり行列すごいね。でもまだ昼だしなんとか買えそうかな」
「うん、僕は過去がアレだからそこまで食べる方じゃないし4ピースくらいあれば十分だよ」
「そっか、まあ余っても明日くらいまでなら食べられるし、10ピースくらいのセット買って行こう」

それからまた行列に並び、どうにかチキンを買う事が出来た。

「ふー、かなりギリギリだけど買えて良かったー。ビスケットやコールスローとかのサイドメニューは売り切れちゃってたけど」
「あーまあ、どうせケーキ買うしコールスローくらいなら僕が作るから。ちょうどフープロ買ったし」
「うーん、本当もふお頼りになるよ。ありがとね。じゃあスーパーでワインやケーキ買ってこう。もふおは未成年だしシャンメリーとかにしとこうか」
「うん、ありがとね」


そうして地元のスーパーで適当に食材やケーキに飲み物等を買い、二人とも大荷物を持ち自宅マンションへと戻った。

「ふー、ただいまー。いやー家電量販店やスーパー行くの久しぶりだったなー。たまには楽しいね」
「うん、僕も再婚するまでまともにお店とか行けなかったけど、見て回るだけでも楽しいよね。じゃあ早速、オードブルやコールスロー作るね」
「うん、ありがとねー」


それから数時間後、もふおが手際良くサラダや華やかなオードブルを作ってくれ、私達はケーキや色とりどりの料理を囲んでいた。

「いやー、闇配信者仲間とパーティーする事はあったけど家族とクリスマスを祝うなんて久々だなあ。やっぱりこういうのも良いよね」
「うん、そうだね。僕は過去がアレだから今までクリスマスにろくな思い出無かったけど、今年は本当に楽しいし嬉しいな」

「これからは毎年楽しいクリスマスになるから大丈夫だよ。あ、あとさ。闇医者さんに頼めば案外安くギリ法に触れない程度にアレな延命処置とか出来るし今度一緒にしない?大好きなもふおと出来るだけ長い間一緒にいたいしさ。あ、でももうちょっと成長してからの方が良いならもふおは数年後でも良いよ」
「うん、僕もお兄さんと長く一緒にいたいし良いよ。確かに過去アレで栄養あんまり摂れなかったせいで僕年の割にはちょっと小柄だからもう少し身長伸びたいけど、でもお兄さんが一番好きなのって今の僕の年齢くらいだもんね。だからお兄さんと一緒に受けるよ」

「そっか、分かった。色々ありがとね。ちゃんと麻酔かけるし痛くないらしいから安心してね」
「うん、それなら良かった。…やっぱ倫理的にはアレだけど」
「まあ、やっぱりこういう世界だしそこは仕方無いよ。じゃあ早速闇医者さん予約するね」

「うん、お願い。…僕さ、昔は密室で練炭炊こうと思ったくらいだからこんな最低な人生で長生きなんてしたくなかったし、再婚後もあんまり幸せな未来とか想像出来なかったんだけど。…でも今はすごく幸せだし、大好きなお兄さんと出来るだけ長生きしたいと思ってる。本当に最近、生きてて良かったと初めて思うんだ」

「…うん、そんな人生だったらそう思っちゃうよね。今そう思えるようになって良かった。じゃ、乾杯しようか」
「うん、乾杯。メリークリスマス」


そうしてもふおと私は乾杯し、美味しい食事をしばし楽しんだ。

「あ、あとさ。もうもふおの改名手続きも終わって籍は入れたけど、ちょっと忙しくて結婚式はまだじゃない。私今まで興味は無かったけどジューンブライドには何となく憧れてたから、来年の6月に式を挙げても良い?」
「うん、それで良いよ。でも6月だと予約取るのも大変だろうね。大丈夫かな」

「ああ、私の知り合いに闇ブライダルコーディネーターとかもいるから何とかなると思うよ」
「…や、闇世界本当色んな人がいるんだね。あまりにアレな式場とかドレスは止めて欲しいんだけど」
「あーうん、私も悪趣味なのは嫌だしちゃんとした式挙げたいからそこは心配しないで」
「うん、それなら良かった」


「ふー、もふおがここに来てからちょうど一年くらいだけど色々あったねー。もふおとすっかり仲良くなれて、正式に籍まで入れられて嬉しいよ」
「うん、僕も売り飛ばされてお兄さんに買われた時はもうクソ過ぎてどうでも良かったけど、今すごく幸せだよ。本当にありがとね」

「どういたしまして。あ、せっかく聖夜だし今夜またアレしない?気分乗らないなら良いけどさ」
「うん、僕もしたい気分だし良いよ」
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