ダークオベリオン ~剣と魔法が支配する世界~ 

詩樹

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第18章 思惑

敵軍、攻め入る

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七賢人の存在について両国が知ることとなった。
和人はすでに5つ手にしている。
両国がもしも七賢人がそれぞれ創り出した宝石の調査を開始するとなると、当然、和人が所持している5つの秘宝も狙ってくるだろう。
フローレンシアはセネルの軍隊の強化を急ぎとりおこなった。
すでに第3の勢力となっていることからどちらの国も攻めてくる可能性が非常に高い。
ミッチェルとピートに自警団の強化と見張りを強化する手はずをとった。
フローレンシアの屋敷も更に大きくなり、城といっても過言では位くらいの規模となっていた。
屋敷の上からも望遠鏡を用いて両国の見張りの兵士を配置することにした。
住人たちはルークの見回りと計らいによって治安も安定し、町の人々や冒険者は安心している。
以前は物々しい雰囲気だったが、その面影はなくなっていた。
その頃、デュランダル側でアリシアが七賢人について調べを進めていた。
そこで見つけたのは、やはり七賢人が活動していた神殿だった。
単独で数名の兵士を従えて神殿へと趣き調査を開始していた。

「ここで間違いはないようですね。皆で手分けして、それらしい文献を探してもらいます」

数名の兵士がバラバラで行動して文献の捜索を行った。
そして、一人の兵士が文献をアリシアのところへ持ってきた。
アリシアは古代文字が読めることもあって、ページをめくって調べ始めると、七賢人とその秘宝について、という項目を見つけた。
読んでみるとどうやら和人が言ったように、秘宝を使うには高ランクの魔法師が必要だと書かれていた。
アリシアは国王とその側近である相談役のガルヴァーと側近のランガスの考えについて気になっていた。
デュランダルには高ランクの魔法師などは存在しない。
となると、単体で使うにはヴァリアスから魔法師を捕らえる必要がある。
国王たちは、それを望んでいるのか。
もしくは使い方を分からないで2つの秘宝を元に力の発動を行うのかを調べる必要があると確信していた。
急ぎ城へ戻ると、どう探るべきかを考えていた。
アリシアは城に戻ると、国王の執務室に急ぎ向かった。
ノックをして扉を開けると、国王は彼女の顔色を見て不安げに尋ねた。

「何があったのか、アリシア?」

彼女は文献の内容を端的に伝えた。国王は眉をひそめ、秘宝への野望が自国の破滅を招くのではないかと考え始める。

「秘宝の力を使うには魔法師が必要となります。私たちには高ランクの魔法師が必要です。彼らを探すか、他の手段を講じる必要があります」

と続けた。国王は深いため息をつき、決断を迫られた。

「アリシア、お前の言う通りだな。我が国は剣士の国であって魔法師は教会の司教と信者のみだ」

と国王は言った。

「高ランクの魔法師を探すことは、この国の未来を守るために必要な行動だろう。しかし、彼らを見つけるのは容易ではない。どのようにすれば良いと思うか?ワシはガルヴァーとランガスとの話し合いで、ヴァリアスの兵を捕らえて力を使う計画を立てているが・・・」

アリシアは考え込んだが、決断の重要性を感じながらも、ひとつのアイデアを思いついた。

「国王陛下、私たちは魔法の聖地に向かうことができます。そこには高ランクの魔法師が集まる可能性があります。彼らに私たちの困難を伝え、協力をお願いするのはいかがでしょうか?」

国王はアリシアの提案に深く考え込んだが、最終的には頷いた。

「アリシア、お前の提案は理にかなっている。ワシとてヴァリアスの魔法師部隊を捕らえて道具として使うのはどうかと思って入る。ただちに魔法の聖地に向かい、魔法師たちに助けを求めよう説得の任務を与える。ワシたちの未来は彼らの手にかかっているのかもしれない」

アリシアは国王の言葉に安堵しながらも、重い使命を背負ったことを感じた。彼女は自信を持ち、魔法の聖地への旅に備えることを決めた。

次の日、アリシアと国王直属の部隊は魔法の聖地への旅立ちの準備を整えた。
アリシアは数名の忠実な騎士たちと共に、旅の準備を進めていった。

魔法の聖地への道は険しいものだった。
山々を越え、森を抜け、大河を渡る必要がある。
しかし、アリシアと国王は決意を固めていた。
国家の安危をかけた使命を果たすため、アリシアの部隊は進んでいくのだった。

数日の旅の末、アリシアたちはついに魔法の聖地に到着した。
聖地は美しい湖の近くに広がっており、そこにはさまざまな系統の魔法師が集まっていた。

アリシアは国王と共に魔法師たちの長の前に立ち、彼らに困難な状況を伝えた。
彼らは心を一つにし、この国の安寧を守るために力を貸してくれることを願っていた。

果たして、魔法師たちはアリシアと国王の願いを叶えてくれるのか。
そして、彼らは果たして協力を知れもらえるのだろうか・・・

「アリシアさんといいましたね。我らはあなたの言う七賢人の存在も、それぞれが作り出した秘宝についても知っています。使うには膨大な魔力が必要不可欠です。どのような力を発揮するのかは各秘宝によって違います。デュランダルにある秘宝はマダスカスですか・・・色々と説はありますが、一国を滅ぼす程の力を秘めているのは確かです。あなた方はヴァリアスを滅ぼすつもりなのですか?もしそうであれば力を貸すことはできません。またヴァリアスにある秘宝についても知っています。ヴァリアスにあるディストラには魔力の増大の効果があります。それをヴァリアスの魔法兵団に使えば強力な戦力となります。秘宝の力を使わずに和解するべきかと・・・私たちはあなた方に力を貸すことはできません。力を使えば大規模で被害が出て多くの被害を受けると考えられます。それに加担することはできません。」

アリシアは頭を悩ませ考えていたが魔法師がさらに話を続けた。

「ヴァリアスはその気になれば秘宝の力を使うことは可能でしょうね。でもそれを使っていないということは、使い方を知らないのか、膨大な魔力が必要とすることを知っているのかどちらかでしょうね。どちらにしても両国に加担することはできません。手を貸すことになれば、どちらかの国の城と城下町が滅んでしまいます。そんな恐ろしいことに手は貸せません。助言できるとすれば、和解の道しかありません。」

どうお願いしても良い返事を受け取れなかったアリシアは、渋々と部隊を引き上げてデュランダルの城へと戻ることにした。
その間、デュランダルに動きがあった。
フローレンシアの屋敷の上からの見張りでデュランダルの部隊が迫りつつあることに気づき、兵士は急いでフローレンシアの元に報告へ向かった。
事情を聞いたフローレンシアの手はずで、即刻部隊を編成した。
兵士の進言によると数は2000は超えるほどの大部隊とのこと。
出し惜しみをして居られない状況だと思い、セネルの部隊も大規模の編成にすることにした。
住人の安全を考慮に入れると町の外に部隊を配置することにし、前衛には涼音・和人を中心にベルクール・クローム・ソフィー・アリスの計6人を当たらせることにした。
長引いて町に入れてしまえば住人の被害は間逃れない。
それぞれのスキルを持つ人材で短時間で退却させなければならない上に、ヴァリアスの動きも考えると兵力を失うわけにもいかない。
退却させる、もしくは全滅させるしか手立てはない。
町から少し離れた場所で兵士の配置を素早く済ませると、第一波目でベルクールの弓矢の攻撃を仕掛けた。
和人は念のためにファイアーウォールを張り巡らせ、守りを固めた。
矢には和人が作り出したフレイムランスを放つことにした。

「ベルクール、フレイムランスを矢の代わりに、できるだけ数多く撃ってくれないか?敵兵は見る限り横一列に並んで進行してきている。フレイムランスを横一列の真ん中を集中的に狙って敵兵を焼き尽くしてくれ。そこで隙が生まれたら、涼音とソフィーに中央突破を頼みたい。涼音は水の刃を放ちながら、ソフィーは白龍を使って光の刃を放ちながら間を詰めてくれ。俺は大規模な範囲魔法を詠唱する」

「わかったわ。エリー、風の加護を私とソフィーにかけてくれるかしら?速度を上げて接近するわ」

「あ、はい、わかりました。お二人の全身に風を纏わせます」

エリーが魔法をかけていると、後ろからマーリンの姿が見えた。

「私も参加してもいいかしら?出番がなくて退屈していたのよね。私の風魔法をレイピアにかけて真空の刃を放つわ。3人の方が早くかたが付くわ」

「すまないな、マーリン。頼む。事態は急を要する。殺すのは避けたいが、向こうがその気ならば仕方がない・・・だがしかし。これはデュランダルの国王の命令なのか?それとも参謀の命令なのかがわからないな。それに、なんで今なのかが読めない・・・とりあえず、気合入れていくしかない。恐らく指揮官は一番後ろにいる一番目立った鎧のやつだと思う。そいつがい無くなれば兵は士気を失って後退せざる負えないだろう」

「そろそろ頃合いだ!ベルクール、全力で頼む!涼音、ソフィー、マーリン、深追いはせずに安全第一で頼む。やるぞ!」

和人の合図でベルクールが長距離射撃を連続で打ち放っている。
分断させたところで、涼音とソフィーとマーリンが中央へ押し切って敵兵を葬り去っていく。
辺りは鮮血で染まりつつあるがデュランダルの進撃は速度が止まらない。
指揮官が後退を拒んでいるようだった。
敵兵の中には特殊スキルを使う兵士がいて、涼音が素早い連撃を受け負傷してしまった。
強さで言えば、デュランダルの中でも選りすぐりなのだろう。
剣速はアリシアと同等か、それ以上。
負傷しながらも涼音はソフィーと連携をとって倒すことが出来、涼音は騎士団長と思われる剣士に向かって一気に間を詰める。
騎士団長の武器は大剣。
その大剣からは禍々しい力を感じる。
遠目で戦いを見ていたが、破壊力は強大なもの。
大剣を一振りで数人の兵を真っ二つにする威力。
涼音が一気に飛び出し、騎士団長と思われる剣士に連撃で攻撃をするが全く効いていない。
騎士団長が素早く涼音の後ろに回り、うなり音とともに大剣を振り回した。

「っ・・・・・交わしきれない」
涼音は背中にひどい深手を負うと地面に横たわってしまい防具が血で染まっていく。
それを見たソフィーがすかさず割り込んで、黒龍で姿をくらまし白龍での連撃を試みる。
和人が見渡すとかなりの激戦となっており、広範囲の魔法を打つタイミングがつかめない。
こちら側の兵士も多くがやられ、辺りは血の匂いが漂っている。
ベルクールもどこを狙っていいのか分からずに、とりあえず、指揮官らしき人物に向けて矢を放っているが大剣でことごとく打ち払われていく。
クロームは一振りで数多くの敵兵をなぎ倒していくが勢いを寸断できていない。
戦力に圧倒的な差があるからだ。
ここまでの激しい戦いは和人も経験したことがいない。
頭の中で必死に打開策を考えるが騎士団長を倒す以外に方法は見当たらない。

「くそっ・・・どうする。俺も中央に出るしかない。アリス、俺が魔法で空高くに魔法を放つ、それを合図に範囲魔法を使えるか?」

「わかりました。氷魔法の中でも威力のあるコキュートスを使います。離れないと味方もろとも氷漬けになって死んでしまいます。合図は余裕をもってお願いします」

和人が返事をすると馬にまたがり、急ぎ中央へ割り込んだ。

「おい、涼音、大丈夫か?!待ってろ今直してやる・・・ヒールウォーター」

和人は何度もヒールをかけ立ち上がれるまでには回復をさせて、涼音を馬に乗せて後退した。
一方ソフィーはスキルを使う兵士を退けたのちに騎士団長と一騎打ちをしている。
大剣からは禍々しい力を感じる。
大剣を軽々に振り上げソフィーを攻撃していく。
ソフィーは黒龍で姿をくらましながら避けている。
大剣とレイピアがぶつかればレイピアは折れてしまう。
和人はすかさずウォータージェイルを騎士団長に向けて放ち動きを封じる試みをするが希薄で跳ね返されてしまう。

「こいつはやばい・・・・みんな聞いてくれ、俺が空に向けて炎の魔法を放つ、それと同時に戦場から出来るだけ離れてくれ、アリスに広範囲の魔法を頼んである」

皆が一斉に返事をした。
だが、こちら側の兵士たちの耳には届いているのかは微妙なところだった。

「いくぞ!フレイムボール!」

空高く火球が舞い上がる。
一瞬、戦場の動きが止まった。
和人は大声で皆に退却と叫んだ。
聞こえているものは退却を開始し聞こえていないものは戦いを繰り返している。
だが、アリスにはその状況が読めていない。
合図とともにコキュートスを放った。
騎士団長は大剣を大降りしてコキュートスを振り払っていて無効化されてしまっているが周りの兵士は凍り付いている。
当然、その中に味方もいた。
敵はコキュートスにより半数以上が失い騎士団長の命で退却していった。
戦場は静まりを戻し、凍り付いて死んでいる兵士や剣で切られて死んでいる兵士も凍り付いている。
辺りは惨劇。
血の匂いと凍り付いている兵士が大勢いる。
怪我を負ってしまった涼音は治療院へと運ばれて、今回の騎士団長のことを聞いてみるが見たことが無いらしい。
話すのもやっとなくらいの深手の涼音そう言った。
その大剣使いは何者なのか・・・・・

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