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第19章 敵軍、攻め入る
デュランダルの思惑
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一方その頃、アリシアは諦め城へと帰還した。
噂でセネルへ攻め込んだことも知って、急ぎ足で執務室のドアの前に立つと何やら話し合いをして居る声が聞こえてきた。
「秘宝の奪還は無理だったか・・・セネルにある5つとヴァリアスにある一つを奪い取れさえすれば我らが野望をなしとげられるというの。セネルがあれほどの戦力を持っているとは」
「しかし、アリシアには感謝だな。七賢人についての情報は役に立った。すべての秘宝を手にいれ、国王に成り代わって我らが世界を支配する。国王には死んでもらい、我らがデュランダルを支配し、秘宝の力によって世界を我らがものに・・・」
「しかし、アリシアはどうするか・・・反逆者として捕らえるか、暗殺するか。教会全員の魔力を注いでマダスカスの力によって召喚されしゼルガディスがおればヴァリアスとてかなうまい。教会の司教と信者はマダスカスに吸い取られてしまったが、なんとでも言い訳が立つ」
アリシアは恐ろしい企みを聞いてしまって愕然としていた。
更に話は続いていた。
「国王にはすでに毒を盛っておる。時期に精神が崩壊するだろう」
「すでにデュランダルは我らが手中。手はず通りだ。ヴァリアスに向けて使者を送ろう。セネルからの使者と偽って両国を戦わせて戦力を削ぎ落そうではないか」
執務室にいる二人は王の相談役と側近。
名前はガルヴァーとランガス。
昔から信用を置けないとアリシアが思っていた人物。
「私はどうしたら良いのだろう・・・とりあえず、教会!教会の様子を見に行ってみよう」
急ぎ足で協会に向かい、扉を開けると静まり返り、人の姿が見えない。
誰かいないか何度も叫ぶが、声が反響してこだまするだけだった。
アリシアは急ぎ自分の兵士たちのところへ向かい、ひとまず抜け出してこれからの方針を考えることに決めた。
兵士たちには城を出たところで待機するように命じた。
再びアリシアは城へ戻り、ガルヴァーとランガスに作戦があると申し出た。
「失礼します。急ぎ伝えたいことがあります。国王はどちらに?」
「アリシアか、今回はご苦労だったな。国王は今はお休みになられている。話なら我らが聞こうではないか。顔色が悪いようだが、それでなんだね?」
「はい、我らはこれより、独自に動きヴァリアスに向かい戦力を落とそうと作戦を立てました。そのうえで、ヴァリアスとセネルの両軍を戦わせ、更にセネルの戦力も減らそうと考えております」
「それは良い考えだが、すでに私の命でヴァリアスにセネルからの使者として送っている。近いうちにセネルとヴァリアスは戦うことになるだろう。そこでだ、アリシアにはやってもらいたいことがある。深夜、ヴァリアスに忍び込み国王の暗殺を頼みたい。これは戦争を終わらせ、平和な日々を送るための大事な役割だ。やってくれるかな?」
恐ろしい考えにアリシアは血の気が引いたが、表情には出さずに命令に従うと返事をした。
「では、私は早速準備を整えてまいります。失礼します」
急ぎ兵士たちのところへ戻り、いったん身を隠すことにした。
アリシアは考えていた。
「私はいったいどうすれば・・・事情を話してヴァリアス側に和解を申し入れ、指揮下に入るか・・・・・
それとも、涼音のいるセネルに身をおくか・・・ヴァリアスの国王の考えも分からなく、その側近たちの考えも分からない。
もしデュランダルのガルヴァーとランガスのような考えを持っていたとしたら・・・
どちらにしても戦いは避けられない運命にある」
この先、どうなるのか慎重にことを考えるべきだとアリシアはひしひしと考えていた。
一方でヴァリアスには使者がおとずれ、手紙が渡された。
受け取ったのはエリスだった。
内容を読んだエリスは国王に進言し、会議が開かれることとなった。
「われらセネルはヴァリアスの秘宝を奪還するため、近日中にヴァリアスへ攻め込む予定だ。全勢力を投入して城下町もろとも城を攻め落とす覚悟がある。非戦闘員であろうと容赦はしない。われらセネルの目的はヴァリアスの壊滅にある。前進あるのみだ!」
「セネルがそこまで悪逆非道だったとは・・・急ぎ城下町の入り口に軍を配備して警戒に当たれ!」
エリスの側近に命じるとすぐさま編成され、守りを固めた。
そして会議はまだ続いている。
「ここは攻め込まれる前に打って出てはどうだろうか?セネル側には剣士もいる。接近戦になれば魔法師部隊は詠唱が間に合わない。デュランダルの動きも気になるが・・・全勢力を投入すれば、そこにつけ入ってデュランダルが攻め込んでくる確率もある。夜更けならばデュランダルも攻め込む確率が低い。守りは最小限に抑えて大部隊で進軍しようと思うのだが・・・」
「たしかに・・・セネルは今や第3の勢力。戦力もあり、知恵もある。剣士の部隊と魔法師部隊が揃っているうえに妙な技を使う剣士もかなりいる。中途半端な編成では返り討ちにあってしまう。ことは急を要する。今夜中に部隊をまとめ策を練り、一気に攻め込むしかないだろう」
そして、会議中のことだった。
セネルから使者が送られてきた。
手紙には和解の内容が書かれていたが、信頼度は薄い。
手紙を読むと、すぐさま魔法によって使者は殺されてしまった。
その頃、セネルでは、これからの方針のためにフローレンシアが中心に会議が行われていた。
そして、ミッチェルが話し始めた。
「フローレンシアどの、ヴァリアスに和解のための使者を送ってはみたが、どうみる?」
「そうですね・・・おそらく和解には応じないでしょうね。戦争は間逃れないと思ってよいでしょう。デュランダル側はしばらくは動かないとは思いますが、涼音の言っていた剣士が気がかりですね。話によると、相当な凄腕・・・単身では来ないでしょうが、かなりの強さとのこと。あちら側にも立て直す時間が必要でしょうから、ヴァリアス側に兵を注いでも問題はないでしょう」
突然、兵士が激しくドアをノックしてきた。
「どうぞ・・・それで何事ですか?今は会議中ですよ?」
「それが・・・その・・・このようなものが街の入り口に転がっていまして・・・」
兵士が、「それ」を差し出すとミッチェルが差し向けた使者の首だった。
みんなが驚き、息をのんだ。
和人が口を開いた。
「そんなバカな・・・俺がヴァリアスにいたころ、エリスとオルスターと共に戦ったことはあるが悪意があるやつらじゃない!何かの間違えじゃないのか?ミッチェル、使者はその首で間違いはないのか?」
「ええ、残念ながら間違いありません・・・いったい何故このようなことを・・・」
ヴァリアスは完全にデュランダル側の策略にハマってしまっている。
セネルを悪の軍隊だと思い込んでしまって抑えが効かないほどの激怒。
すでにセネルに向けて軍隊を進行している。
「俺がヴァリアスに行って、直接、エリスとオルスターと話し合うのはどうだろう?」
「和人さんも見ての通り、このような状態です。まず話し合いには応じないと考えるのが妥当だと思います。被害を最小限に抑えて戦争をするしか手立てはないかと・・・おそらくヴァリアスは、すでにこちらに向けて進軍していると考えるべきかと・・・」
「戦いは・・・避けられないという事か・・・死者を出さずに戦を終わらせる・・・そんな手立てがあるか?フローレンシア」
その最中のことだった。見張りに立たせていた兵士がやって来た。
「失礼します!無数の光がこちらに向かってやってきます!」
「まずいな・・・もう攻め込んできているのか。打って出るしかない!みんな、準備を急いでくれ!死者を出さずになんとか防ぎきるぞ!」
和人の一言で、みんなが席を立ち、すぐさま軍が編成された。
一方、その頃、デュランダルではガルヴァーが軍を率いて魔法の聖地へと向かっていた。
「みんな、牽制だけだ。死者は出さず、怪我人は最小限に抑えることに集中してくれ。それと同時に自分の身を第一に考えてくれ!いくぞ!」
和人の一声で全員が動き、アレフの部隊、アリスの部隊、、シンシアの部隊、クロームの部隊、クレアの部隊、ベルクールの部隊の計7つの部隊が編成された。
涼音は怪我を負っているため、いまだ治療院で休息をとっている。
「クレア!頼みがある。地の精霊を使って辺り一面を泥濘にできないか?それで進軍を止める」
「可能です。ただ、少し時間がかかります。時間を稼いでください」
「わかった。ベルクール、敵兵の目前に横一列に矢の連射はできるか?その弓の力で進軍を止めてくれ」
「シンシア、矢に幻惑を見せる魔法を使えないか?幻惑を見せて足止めをしたい」
「わかりましたわ。やって事はないけれども、矢に幻惑の魔法をかけてみます」
「よし!クレアの魔法発動までの時間をみんなで作ってくれ!頼むぞ、みんな!」
クレアは長い詠唱を唱え始めると同時にシンシアが幻惑を見せる魔法を矢に込めた。
クレアの合図でベルクールが一斉射撃を放った。
ヴァリアスの軍勢は幻惑によって突然目の前に兵士が現れたと思い詠唱を済ませてある部隊から順に激しい魔法を幻惑の兵士に向けて放っている。
幾度となく現れる幻惑に魔法を放った一列目が下がり2列目、3列目と次々に魔法を繰り出している。
その時、エリスは気づいた。
「これは幻惑魔法だ!構わずに突っ切れ!」
再び進行が始まると和人は目前に範囲魔法を繰り出そうとしていた。
「やむおえないか・・・炎よ、爆ぜ、爆発の雨となり、全てを爆発させ、この世を焦がせ・・・スピリームエクスプロード!」
敵軍の目前に炎の激しい攻撃が繰り出された。
「和人さん、準備が出来ました!行きます!知の精霊よ、辺りを泥濘とかせ!」
敵兵は泥濘にはまり敵兵は身動きが取れずにいた。
すかさず和人が馬に乗りこみエリスとオルスターの元へ向かった。
「エリス!オルスター!聞いてくれ、俺たちに戦う意思はない!話を聞いてくれないか?!」
「和人!セネルの悪逆非道、許しません!全力をもってセネルと壊滅します!」
「違うんだ!誤解だ・・・現に怪我人は出ていないだろ!何かの策略にハマってしまっているんだ!」
「和人!一騎打ちよ!覚悟なさい!」
和人の声はエリス達には届かなかった。
エリスは自在に魔法を使える。
和人は一騎打ちをする以外に方法は浮かばなかった。
「仕方ない・・・わかった。俺が勝ったらセネルまで来てくれないか?」
そして二人の戦いは始まってしまった。
先制したのはエリスの魔法だった。
光の閃光を無数に放ち、和人はファイヤーウォールでそれを防ぎつつ、フレイムバレットで光の閃光にぶつけて相殺しつつ水系統の魔法に切り替えウォータージェイルを放ち、エリスと水の牢獄へと拘束するが、エリスも水系統の魔法に切り替えウォータージェイルを破り、ウォーターカッターを数限りなくはなっていく。
和人は自信に風魔法をかけて素早さを付与して交わしつつもフレイムカッターで相殺している。
あくまでも傷つけたくないと思い、わざと相殺している。
「和人!なぜ本気を出さない?!私を甘く見ているの?!覚悟なさい!」
エリスも自信に風魔法をかけ素早さを付与し目くらましに閃光を放つと、和人は眩しさに目を閉じた瞬間にエリスが間を詰め和人の身体に手を当てると直接ウォーターカッターを連撃した。
直撃した和人は吹き飛ばされ、身体からは鮮血が飛び散った。
「っ・・・・・エリス」
苦痛に顔が歪み、ゆっくり立ち上がると気絶させるほかに方法はないと感じ、杖を掲げ詠唱を唱え始めた。
「森羅万象、全ての在るものよ、無と還れ、創生の炎よ、来たれ・・・フレイムドラゴンブレス!」
エリスは激しい炎に包まれ、苦痛の叫びをあげている。
和人はすかさず、追い打ちをかけた。
「炎よ、我が敵に衝撃を!フレイムショック!」
エリスの全身に衝撃が加わりエリスが倒れこんだ。
気絶しているエリスに駆け寄り、ヒールウォーターで傷をいやした。
続いてオルスターが目の前に来た。
「オルスター・・・お前もやるのか?俺はエリスを気絶させただけだ。やり合う気なんて全くない。信じてくれないか?」
「二人の戦いを見て、それは感じ取れた。敵意がないこともわかった・・・お前は傷つきながらもエリスの身を案じて戦っていたな。お前ほどの腕があればエリスを焼き尽くすこともできただろう・・・だが、お前はそれをしなかった。わかった。エリスを連れて一度セネルに向かおう」
こうして戦いは幕を下ろし、オルスターの一声で魔法師部隊の動きは止まり、オルスターは兵を引き上げ城の警備に当たらせるように命じた。
「ありがとう、オルスター。エリスはいったんセネルの治療院で休ませる。オルスターにも聞いてもらいたいことがあるから一緒にセネルに来てくれ。今回の一件はデュランダル側が仕掛けたものだと証明して見せる」
オルスターには疑いはあったが、事実、誰も死者は出ていない。
魔法兵団を引き上げ、エリスとオルスターはセネルへと向かうこととなった。
この先の戦いはいったいどうなるのだろうか・・・
噂でセネルへ攻め込んだことも知って、急ぎ足で執務室のドアの前に立つと何やら話し合いをして居る声が聞こえてきた。
「秘宝の奪還は無理だったか・・・セネルにある5つとヴァリアスにある一つを奪い取れさえすれば我らが野望をなしとげられるというの。セネルがあれほどの戦力を持っているとは」
「しかし、アリシアには感謝だな。七賢人についての情報は役に立った。すべての秘宝を手にいれ、国王に成り代わって我らが世界を支配する。国王には死んでもらい、我らがデュランダルを支配し、秘宝の力によって世界を我らがものに・・・」
「しかし、アリシアはどうするか・・・反逆者として捕らえるか、暗殺するか。教会全員の魔力を注いでマダスカスの力によって召喚されしゼルガディスがおればヴァリアスとてかなうまい。教会の司教と信者はマダスカスに吸い取られてしまったが、なんとでも言い訳が立つ」
アリシアは恐ろしい企みを聞いてしまって愕然としていた。
更に話は続いていた。
「国王にはすでに毒を盛っておる。時期に精神が崩壊するだろう」
「すでにデュランダルは我らが手中。手はず通りだ。ヴァリアスに向けて使者を送ろう。セネルからの使者と偽って両国を戦わせて戦力を削ぎ落そうではないか」
執務室にいる二人は王の相談役と側近。
名前はガルヴァーとランガス。
昔から信用を置けないとアリシアが思っていた人物。
「私はどうしたら良いのだろう・・・とりあえず、教会!教会の様子を見に行ってみよう」
急ぎ足で協会に向かい、扉を開けると静まり返り、人の姿が見えない。
誰かいないか何度も叫ぶが、声が反響してこだまするだけだった。
アリシアは急ぎ自分の兵士たちのところへ向かい、ひとまず抜け出してこれからの方針を考えることに決めた。
兵士たちには城を出たところで待機するように命じた。
再びアリシアは城へ戻り、ガルヴァーとランガスに作戦があると申し出た。
「失礼します。急ぎ伝えたいことがあります。国王はどちらに?」
「アリシアか、今回はご苦労だったな。国王は今はお休みになられている。話なら我らが聞こうではないか。顔色が悪いようだが、それでなんだね?」
「はい、我らはこれより、独自に動きヴァリアスに向かい戦力を落とそうと作戦を立てました。そのうえで、ヴァリアスとセネルの両軍を戦わせ、更にセネルの戦力も減らそうと考えております」
「それは良い考えだが、すでに私の命でヴァリアスにセネルからの使者として送っている。近いうちにセネルとヴァリアスは戦うことになるだろう。そこでだ、アリシアにはやってもらいたいことがある。深夜、ヴァリアスに忍び込み国王の暗殺を頼みたい。これは戦争を終わらせ、平和な日々を送るための大事な役割だ。やってくれるかな?」
恐ろしい考えにアリシアは血の気が引いたが、表情には出さずに命令に従うと返事をした。
「では、私は早速準備を整えてまいります。失礼します」
急ぎ兵士たちのところへ戻り、いったん身を隠すことにした。
アリシアは考えていた。
「私はいったいどうすれば・・・事情を話してヴァリアス側に和解を申し入れ、指揮下に入るか・・・・・
それとも、涼音のいるセネルに身をおくか・・・ヴァリアスの国王の考えも分からなく、その側近たちの考えも分からない。
もしデュランダルのガルヴァーとランガスのような考えを持っていたとしたら・・・
どちらにしても戦いは避けられない運命にある」
この先、どうなるのか慎重にことを考えるべきだとアリシアはひしひしと考えていた。
一方でヴァリアスには使者がおとずれ、手紙が渡された。
受け取ったのはエリスだった。
内容を読んだエリスは国王に進言し、会議が開かれることとなった。
「われらセネルはヴァリアスの秘宝を奪還するため、近日中にヴァリアスへ攻め込む予定だ。全勢力を投入して城下町もろとも城を攻め落とす覚悟がある。非戦闘員であろうと容赦はしない。われらセネルの目的はヴァリアスの壊滅にある。前進あるのみだ!」
「セネルがそこまで悪逆非道だったとは・・・急ぎ城下町の入り口に軍を配備して警戒に当たれ!」
エリスの側近に命じるとすぐさま編成され、守りを固めた。
そして会議はまだ続いている。
「ここは攻め込まれる前に打って出てはどうだろうか?セネル側には剣士もいる。接近戦になれば魔法師部隊は詠唱が間に合わない。デュランダルの動きも気になるが・・・全勢力を投入すれば、そこにつけ入ってデュランダルが攻め込んでくる確率もある。夜更けならばデュランダルも攻め込む確率が低い。守りは最小限に抑えて大部隊で進軍しようと思うのだが・・・」
「たしかに・・・セネルは今や第3の勢力。戦力もあり、知恵もある。剣士の部隊と魔法師部隊が揃っているうえに妙な技を使う剣士もかなりいる。中途半端な編成では返り討ちにあってしまう。ことは急を要する。今夜中に部隊をまとめ策を練り、一気に攻め込むしかないだろう」
そして、会議中のことだった。
セネルから使者が送られてきた。
手紙には和解の内容が書かれていたが、信頼度は薄い。
手紙を読むと、すぐさま魔法によって使者は殺されてしまった。
その頃、セネルでは、これからの方針のためにフローレンシアが中心に会議が行われていた。
そして、ミッチェルが話し始めた。
「フローレンシアどの、ヴァリアスに和解のための使者を送ってはみたが、どうみる?」
「そうですね・・・おそらく和解には応じないでしょうね。戦争は間逃れないと思ってよいでしょう。デュランダル側はしばらくは動かないとは思いますが、涼音の言っていた剣士が気がかりですね。話によると、相当な凄腕・・・単身では来ないでしょうが、かなりの強さとのこと。あちら側にも立て直す時間が必要でしょうから、ヴァリアス側に兵を注いでも問題はないでしょう」
突然、兵士が激しくドアをノックしてきた。
「どうぞ・・・それで何事ですか?今は会議中ですよ?」
「それが・・・その・・・このようなものが街の入り口に転がっていまして・・・」
兵士が、「それ」を差し出すとミッチェルが差し向けた使者の首だった。
みんなが驚き、息をのんだ。
和人が口を開いた。
「そんなバカな・・・俺がヴァリアスにいたころ、エリスとオルスターと共に戦ったことはあるが悪意があるやつらじゃない!何かの間違えじゃないのか?ミッチェル、使者はその首で間違いはないのか?」
「ええ、残念ながら間違いありません・・・いったい何故このようなことを・・・」
ヴァリアスは完全にデュランダル側の策略にハマってしまっている。
セネルを悪の軍隊だと思い込んでしまって抑えが効かないほどの激怒。
すでにセネルに向けて軍隊を進行している。
「俺がヴァリアスに行って、直接、エリスとオルスターと話し合うのはどうだろう?」
「和人さんも見ての通り、このような状態です。まず話し合いには応じないと考えるのが妥当だと思います。被害を最小限に抑えて戦争をするしか手立てはないかと・・・おそらくヴァリアスは、すでにこちらに向けて進軍していると考えるべきかと・・・」
「戦いは・・・避けられないという事か・・・死者を出さずに戦を終わらせる・・・そんな手立てがあるか?フローレンシア」
その最中のことだった。見張りに立たせていた兵士がやって来た。
「失礼します!無数の光がこちらに向かってやってきます!」
「まずいな・・・もう攻め込んできているのか。打って出るしかない!みんな、準備を急いでくれ!死者を出さずになんとか防ぎきるぞ!」
和人の一言で、みんなが席を立ち、すぐさま軍が編成された。
一方、その頃、デュランダルではガルヴァーが軍を率いて魔法の聖地へと向かっていた。
「みんな、牽制だけだ。死者は出さず、怪我人は最小限に抑えることに集中してくれ。それと同時に自分の身を第一に考えてくれ!いくぞ!」
和人の一声で全員が動き、アレフの部隊、アリスの部隊、、シンシアの部隊、クロームの部隊、クレアの部隊、ベルクールの部隊の計7つの部隊が編成された。
涼音は怪我を負っているため、いまだ治療院で休息をとっている。
「クレア!頼みがある。地の精霊を使って辺り一面を泥濘にできないか?それで進軍を止める」
「可能です。ただ、少し時間がかかります。時間を稼いでください」
「わかった。ベルクール、敵兵の目前に横一列に矢の連射はできるか?その弓の力で進軍を止めてくれ」
「シンシア、矢に幻惑を見せる魔法を使えないか?幻惑を見せて足止めをしたい」
「わかりましたわ。やって事はないけれども、矢に幻惑の魔法をかけてみます」
「よし!クレアの魔法発動までの時間をみんなで作ってくれ!頼むぞ、みんな!」
クレアは長い詠唱を唱え始めると同時にシンシアが幻惑を見せる魔法を矢に込めた。
クレアの合図でベルクールが一斉射撃を放った。
ヴァリアスの軍勢は幻惑によって突然目の前に兵士が現れたと思い詠唱を済ませてある部隊から順に激しい魔法を幻惑の兵士に向けて放っている。
幾度となく現れる幻惑に魔法を放った一列目が下がり2列目、3列目と次々に魔法を繰り出している。
その時、エリスは気づいた。
「これは幻惑魔法だ!構わずに突っ切れ!」
再び進行が始まると和人は目前に範囲魔法を繰り出そうとしていた。
「やむおえないか・・・炎よ、爆ぜ、爆発の雨となり、全てを爆発させ、この世を焦がせ・・・スピリームエクスプロード!」
敵軍の目前に炎の激しい攻撃が繰り出された。
「和人さん、準備が出来ました!行きます!知の精霊よ、辺りを泥濘とかせ!」
敵兵は泥濘にはまり敵兵は身動きが取れずにいた。
すかさず和人が馬に乗りこみエリスとオルスターの元へ向かった。
「エリス!オルスター!聞いてくれ、俺たちに戦う意思はない!話を聞いてくれないか?!」
「和人!セネルの悪逆非道、許しません!全力をもってセネルと壊滅します!」
「違うんだ!誤解だ・・・現に怪我人は出ていないだろ!何かの策略にハマってしまっているんだ!」
「和人!一騎打ちよ!覚悟なさい!」
和人の声はエリス達には届かなかった。
エリスは自在に魔法を使える。
和人は一騎打ちをする以外に方法は浮かばなかった。
「仕方ない・・・わかった。俺が勝ったらセネルまで来てくれないか?」
そして二人の戦いは始まってしまった。
先制したのはエリスの魔法だった。
光の閃光を無数に放ち、和人はファイヤーウォールでそれを防ぎつつ、フレイムバレットで光の閃光にぶつけて相殺しつつ水系統の魔法に切り替えウォータージェイルを放ち、エリスと水の牢獄へと拘束するが、エリスも水系統の魔法に切り替えウォータージェイルを破り、ウォーターカッターを数限りなくはなっていく。
和人は自信に風魔法をかけて素早さを付与して交わしつつもフレイムカッターで相殺している。
あくまでも傷つけたくないと思い、わざと相殺している。
「和人!なぜ本気を出さない?!私を甘く見ているの?!覚悟なさい!」
エリスも自信に風魔法をかけ素早さを付与し目くらましに閃光を放つと、和人は眩しさに目を閉じた瞬間にエリスが間を詰め和人の身体に手を当てると直接ウォーターカッターを連撃した。
直撃した和人は吹き飛ばされ、身体からは鮮血が飛び散った。
「っ・・・・・エリス」
苦痛に顔が歪み、ゆっくり立ち上がると気絶させるほかに方法はないと感じ、杖を掲げ詠唱を唱え始めた。
「森羅万象、全ての在るものよ、無と還れ、創生の炎よ、来たれ・・・フレイムドラゴンブレス!」
エリスは激しい炎に包まれ、苦痛の叫びをあげている。
和人はすかさず、追い打ちをかけた。
「炎よ、我が敵に衝撃を!フレイムショック!」
エリスの全身に衝撃が加わりエリスが倒れこんだ。
気絶しているエリスに駆け寄り、ヒールウォーターで傷をいやした。
続いてオルスターが目の前に来た。
「オルスター・・・お前もやるのか?俺はエリスを気絶させただけだ。やり合う気なんて全くない。信じてくれないか?」
「二人の戦いを見て、それは感じ取れた。敵意がないこともわかった・・・お前は傷つきながらもエリスの身を案じて戦っていたな。お前ほどの腕があればエリスを焼き尽くすこともできただろう・・・だが、お前はそれをしなかった。わかった。エリスを連れて一度セネルに向かおう」
こうして戦いは幕を下ろし、オルスターの一声で魔法師部隊の動きは止まり、オルスターは兵を引き上げ城の警備に当たらせるように命じた。
「ありがとう、オルスター。エリスはいったんセネルの治療院で休ませる。オルスターにも聞いてもらいたいことがあるから一緒にセネルに来てくれ。今回の一件はデュランダル側が仕掛けたものだと証明して見せる」
オルスターには疑いはあったが、事実、誰も死者は出ていない。
魔法兵団を引き上げ、エリスとオルスターはセネルへと向かうこととなった。
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電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
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