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第16章 策略
第3の勢力
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和人は再び加わったエリーを見て、心強さを感じた。
彼女の存在は、これからの冒険において重要な要素になるだろう。
ふと、和人は思いついた。
「そういえば、エリーは風の魔法を使えるんだよな。じゃあ、次の目的地に向かう前に、少し特訓をしないか?全員の力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ」
ルークの解読が終わるまでの間、4人はそれぞれの役割を話しながら、それぞれが訓練を始める。
涼音はソフィーに相手の殺気を読み取る訓練と、風の力をさらに強化するために、ソフィーは魔法剣士に限りなく近い存在ということもあり、エリーに風魔法を教わりつつ涼音からも居合抜きのやり方を学んだ。
和人は膨大な魔力を得る為に大気中から更に強い魔力が吸収できるように訓練していた。
そして、数日が立った頃、ルークが全員を集めた。
「この分厚い本の解読が終わりました。これは極めて重要なことです。まずは、魔物が狂暴化しつつある現象は、和人さん・・・あなたが集めた宝石が原因見たいです。宝石をいくつも持っていることで異空間が生まれてしまい、魔物が出現したと考えられます。恐らくは共鳴しているんでしょうね。本には、それぞれの宝石が共鳴すると書いてありましたから、それと後2つ、デュランダルにある宝石とヴァリアスにある宝石。その二つが集まると宝石は変化して一つに融合するそうです。力の使い方については様々書いてありましたが、強力な力を発するらしいです」
「なるほど・・・デュランダルとヴァリアスはそのことを知らずに争い合っているのかな?」
和人が首をかしげながら言うと。
「いえ、違います。両国にある宝石は別です。二つは最も強力なものらしいです。ですので、2つ集めるだけでも一国を滅ぼすだけの力を発揮するそうです。もっとも、使うには高ランクな魔法師が必要不可欠らしいですが・・・しかし、デュランダルは剣の国であり魔法を使える存在は少ないです。つまりは、宝石の奪還と共に高ランクの魔法師を捕らえるのが妥当ではないかと・・・もしそうだとしたら、魔法師は魔力は全て吸い取られることになるでしょうね。つまり、宝石の生贄になるということです。もしそうでしたら、恐ろしいことです。和人さんは、もうするべきことを考えているのではありませんか?」
和人が立ち上がってテーブルに両手をつくとこれからの方針を話し出した。
「ああ、ルークの言うとおりだ。やるべきことは決めてある。だが戦力が足りない」
和人はみんなを見てから更に続けた。
「俺は義勇軍を組織して、両国の宝石を奪い取ってやろうと考えてる。メリットは戦争がなくなる、デメリットは戦争が激化する。第3の勢力になるわけだからな。どちらから攻めるかも考えているが・・・例えば先にデュランダルを攻めて戦力を削ぎ落すと、ヴァリアスから密偵が来ていた場合、そこをついてヴァリアスはデュランダルに一気に攻め込むだろうな・・・」
「和人、あんたそんなことを考えていたの?」
涼音が動揺して言うと、和人は涼音を見て言った。
「あと一つあるんだよ。その宝石を集めて融合したとき、もしかしたら元の世界に帰れるんじゃないかってな」
和人の途方もない考えに皆が沈黙した。
先に話し出したのはソフィーだった。
「ずいぶんと大掛かりなことをサラッというわね・・・だったら傭兵の国セネルに行くのはどうかしら?あそこは国王もいない自由国家よ。それにセネルには私の友人もいるわ。友人から友人へと話を広めていって、うまくいけば、仲間が増えるわ」
「まあ、それが妥当だろうな。セネルならヴァリアスからの流れ者も良そうだし、剣士と魔法師の部隊が作れそうだが・・・問題はどう組織するかなんだが。ラノベを参考にするか・・・」
「ラノベ??」
ソフィーが首をかしげている。
「いや、なんでもない。とりあえずはセネルを目指すか・・・みんな、どうだろ?」
「和人、あんた本気で言ってるの?これはゲームじゃないのよ?こんな大それたことをしたら、両国から反逆者扱いになるし、相手は国家権力よ?みんなを危険な目にも合わせることになるし・・・忍び込んで、こっそり宝石を奪った方が良くない?」
涼音が不安げに言うと、和人は話をつづけた。
「ああ、それなら俺も考えた。ソフィーの黒龍の力で幻惑魔法を使って姿を消して奪い取る手も考えたが、宝石がなくなれば、戦争はさらに激化するんじゃないかな?デュランダルならヴァリアスが盗み取った。ヴァリアスならデュランダルが盗み取った。なんてことにもなりかねない。俺たちがただ帰るためだけに奪うってのもちょっとな。どうせなら、この世界をどちらかの国が統一して戦争をなくしてから帰るのが一番なんじゃないかな?」
みんなはまだ不安げな表情をしている。
大それたことに、それぞれが考え込んでいるのだろう。
「俺はセネルの国王になろうってんじゃないんだ。そこでだ、ルーク・・・お前の知り合いに位の高くて信頼のおける貴族はいるか?」
「そうですね~・・・デュランダルとヴァリアスの両方に知り合いはいますが、連絡を取って一度集まって話し合うべきかと・・・事が事なだけに時間がかかりますね。セネルにいきなり国王といわれて、セネルの住人が納得するのかと、自由奔放にやっている冒険者たちも面白くはないでしょうし事を慎重に運ばなければなりません」
「それなら、俺に案がある。かなりの賞金をエサにコロシアムで名を上げるんだ。コロシアムを建設しないとならないけどな。パーティー形式の大会を開くんだ。たぶん、俺たちにかなうやつらはいないだろう。当然、腕の立つ奴らはいるだろうが、涼音にソフィーにエリー、そして俺。このパーティーで負けるはずがないと俺は思ってる。この計画は1年かけて行う。1か月ごとに大会を開いて名を上げるんだ。そして仲間を募る。そのうえで最終的に名を上げた俺たちが国王を立てるんだ。」
「私も戦争がなくなって平和になればいいと思いますが、本当にそんなことが出来るんでしょうか?」
エリーは不安げに言うが反対はしていない感じで、みんなも反対という意見はなかった。
むしろ、やり遂げてみようと思い始めている。
ルークも考えながらもデュランダルとヴァリアスの帰属に集まる算段を立ててくれた。
「私が各領主に声をかけていったんここに集まって貴族会議をしましょう。実はバロックを処罰してくれたのも私の知り合いの貴族なんです。その方にも声をかけましょう。失敗しないためにも慎重にやらなければなりません。計画を立てるだけでも一月はかかるでしょうね。とりあえず、皆さんはここに滞在してください。一緒に貴族会議に参加してもらわなければなりません」
みんなからは不安げな表情が消え、和らげな表情に変わっていった。
決意を固めた和人を含めた4人は貴族会議が終わるまではコリン村に滞在し、それぞれが献身的に鍛錬を積み重ねることになった。
それから数日が経過し、ルークの呼びかけで位の高い貴族たちが次々とコリン村へと集結しつつあった。
貴族の数は全部で5人。
中には国王の相談役を担っていた貴族もいて、領主の経験がある貴族や商人を束ねる貴族と様々だった。
そして、貴族会議の日が訪れた。
「みんな、まずは集まってくれてありがとう。礼を言う。それぞれの自己紹介をしてくれないかな?」
貴族たちは目を合わせてから、それぞれの自己紹介をしてくれた。
「私は商人を束ねる貴族の家系で名前はペールといいます。両国とも友好な関係にあります」
「次に私ですね。独自の自警団を持っています。主に治安維持をしています。名前はミッチェルといいます」
「私も同じく自警団を組織している貴族の家系です。内乱が起きたら静める役目をしています。かつては戦争時における両国の参謀を務めていました。名前はピートとといいます」
「では私も自己紹介をしましょう。私は政治や法律などを担っている貴族です。名前はローレンスといいます
「最後に私ね。私はフローレンシアといいます。貴族の中では最もくらいが高い位置にいます。国王の相談役など色々とやっていました」
話を聞いてる限りでは5人の貴族は信用に値すると和人は思っていた。
全員、頭の切れが早く会議は順調に進んでいく。
商人を束ねる貴族は商人たちを使って建築に詳しい者を集めることと貿易を盛んにするといい、コロシアムの建設はすぐにも出来そうだ。
政治に詳しい貴族は法律を立てる案を出し、かなりの数の自警団を持つ貴族はセネルの見回り役を担うといい、セネルの治安も何とかなりそうだ。
かつて戦争の参謀を務めていたという自警団を持つ貴族も治安維持に協力するとかって出た。
5人の中で一番位の高い貴族は4人の貴族のまとめ役をすると意見していた。
涼音たちは鍛錬に鍛錬を重ね、あらゆる局面での戦術も出来つつあった。
「コロシアムはどれくらいで完成しそうだ?」
和人は各貴族に尋ねた。
「セネルの治安も維持される形になるので、数日で完成するかと思います」
「話が早くて助かる。よし!準備が整い次第、セネルを統括するぞ!統括するのは貴族だけど・・・」
和人は涼音に頭を叩かれた。
「偉そうに言ってんじゃないわよ。どうせラノベで読んだなんかの案をまとめたんでしょ・・ったくもう」
貴族の自警団がコリン村に集結するのを待って、そろい次第セネルに向けて出発することになった。
集まるまでは数日かかるという。
その間に承認を束ねる貴族は一足先にセネルに旅立ち、コロシアムの建設を急いだ。
自警団の数は合わせて1000人は超えていた。
数日後・・・
コリン村に全員が終結した。
住人がおびえるといけないと思い、和人の案で自警団は村には入らず迂回して、そのままセネルに向かった。
「よし、俺たちも行くか。みんな、長い作戦になるけど力を合わせてなんとかやり遂げよう」
和人たちは独自のルートでセネルへと旅経つのだった。
セネルに着くと商人にある屋敷へ案内された。
その屋敷は商人たちを束ねる貴族の計らいで建てられた和人たちの屋敷だった。
召使も何人かいて屋敷の前には見張りの兵士が二人立っていた。
そして、コロシアムもすでに完成していた。
セネルにはかなりの数の住人が増えたこともあって、街を広げる手はずがされており、まるで城下町のようになっていた。
「これは凄いな・・・俺たちのために建ててくれた屋敷もかなりでかいな」
以前のセネルとは違い貿易も盛んで色んな店も出来ていて、ギルドも新しく建て替えられていて、出入りする人たちも様変わりしていた。
以前は盗賊みたいな悪人も数多くいたが今ではまっとうな冒険者が殆どだった。
流れ者もセネルに住みたいと申し出る人々もいた。
すでに法律も出回り、コロシアムも完成しており、教育機関や病院なんかも建てられていて店も充実していた。
コロシアムの入り口付近には開催日の掲示板や受付のための建物も建てられており、街中が活気づいていた。
「ここが俺たちの計画の出発点だ。コロシアムの情報は、すでに各地に広まってるみたいだし、とんでもないスキルを持ったやつも出てくるかもしれないな」
「そうね、私たちは勝ち続けないとこの計画は成り立たない。ソフィークラスの強いのが出てきてもおかしくないわね。当時は私の中じゃ、デュランダルのアリシアが一番強いと思っていたもの」
一通り街を見て回ってから屋敷へ帰ると、そこにはルークの姿が見えた。
「あれ?ルーク、コリン村を離れてどうしてここに?様子でも見に来たのか?」
「いえ、コリン村は私の信頼のおける古い友人の貴族に任せてきました。この大掛かりな作戦に私もなにかお力になれればと思い、セネルに住むことにしました。私の役目はセネルでの秘書をしようと思いまして。これだけ街が大きくなってしまっては5人の貴族たちでは手に余ると思いまして協力させていただくことにしました」
「そういうことか・・・ルークがいてくれると心強いよ。じゃあ、一つ頼みたいことがあるんだ。貧困で生活に困っている住人も中にはいるはずだ。出来る限りでいいから手を差し伸べてやって欲しい。よろしく頼む」
和人はルークと握手をして結束を束ねた。
そして、数日後、ついにコロシアム第一戦目の開催が近づき受付が始まっていた。
ざっと見る限り、魔法師を含めたパーティーなんかもあり、見たことのない武器を持ったグループもあり、受付内は活気づいていた。
それぞれが力試しのためか、それとも賞金目当てか、ざわつきなどでごった返していた。
和人たちはコロシアムの雰囲気に圧倒されつつも、決意を新たにした。
涼音が言った。
「私たちのパーティーの出番はいつだろう?みんなが注目しているなかで戦うのは緊張するけど…」
ソフィーが微笑みながら返す。
「でも、私たちなら大丈夫よ。力を合わせれば、どんな相手でも倒せるはず!」
和人は頷き、仲間たちの信頼を感じた。次の瞬間、アナウンスが響き渡り、第一戦の組み合わせが発表された。
「コロシアム、初の開催!第一回目の発表されたパーティーはコロシアムの中央へと出場してください!」
2つのパーティーは横一列に向かい合わせとなり、ルールの説明を受けてきた。
基本的には相手を死に至らしめる術式、及び、それに相当する攻撃はなし。
まずは第一試合めが始まった。
一つのパーティーは剣士のみのパーティー、もう一つは魔法部隊もいるパーティーだった。
初戦から、なかなかいい試合ぶりを見せていた。
観客もセネルでのコロシアムの戦い合いに盛り上がりを見せていた。
「観客は盛り上がっているけど、雑魚ね。私たちの敵じゃないわね。」
「ああ、そうだな。魔物との戦いで、俺たちは何度も修羅場をくぐってきてるからな。だが本気を出すのはやめておこう。わざと接戦に持ち込んで観客を盛り上げて、なるべく互角の試合を演じて勝っていこう。なんというか、観客がいると少し緊張するな。今回がコロシアムでの初めての大会だ。広まって間もないから強敵は出てこないだろうが、変わったスキルや強い魔法を持つ奴らが出たら、貴族に話を持ち掛けてもらってスカウトしよう。大会を重ねるごとに強者が出てくるだろう・・・さて、俺たちの試合が次だな。芝居をしなければいけないのは面倒だけど、まずは互角の戦いを演じて行こう」
そして、和人たちの試合の時が来た。
わざと威力を押さえた魔法を使って互角の戦いを演じつつ徐々に相手を追い込んでいく。
相手は剣士のみのパーティー。変わったスキルも持ち合わせてはいない低レベルの試合。
互角の戦いを演じて、なんなく勝利を収めた。
「手を抜くのって難しいのね。私は退屈だわ」
ソフィーは物足りなさに一言言った。
その点、涼音は手を抜く心得は持っている。
それは剣道部での後輩の指導をよくしていたからだった。
「なんだか後輩に教えてる感じ。とりあえず、優勝は頂ね」
試合は次々と行われ、和人たちも勝ち抜いてた。
そして、コロシアム初の大会の決勝戦を迎えることとなった。
「決勝戦の相手、一人だけずば抜けて強いのがいたわね。あの剣士なんだか妙な技を使っていたわね・・・試合が終わったら貴族に頼んで私たちの真の目的は言わず、自警団に加わらないか交渉してもらいましょうか」
「そうだな、試合を見ていた限り、本気を出していないように見えた。何か切り札を持ってるんじゃないかな?涼音はやつと一騎打ちをしてみてくれないか?俺たちは他の連中の相手をする。今回のスカウトは、実力を見て、ふさわしい人物を貴族に頼んでスカウトしよう」
そして、アナウンスが鳴り響いた。
「ついに決勝戦がやってまいりました!両パーティーともこれまで素晴らしい試合を見せてきていました。果たして優勝者はどちらの手に渡るのでしょうか!それでは、試合開始!」
和人たちはわざと相手パーティーをばらけさせて、妙な力を持つ剣士と涼音の一騎打ちに持ち込んだ。
その剣士からは微かだが魔力が感じ取られた。
「涼音、あいつはたぶん魔法を使ってくると思う。剣に魔法を込めるのか、それとも魔法を放ってくるのか。念のため警戒しつつ互角の戦いに持ち込んでから、やつを追い詰めていってくれ。そうすれば必ず切り札を出してくるはずだ」
「わかったわ、まずは立ち回ってから、剣に水の力を加えて攻撃してみるわ」
涼音との一騎打ちが始まった。
和人たちは4人を相手にして互角の戦いを演じて倒すことが出来た。
残りは涼音との一騎打ちのみ。
和人たちは、それを見守ることにした。
涼音が間合いを図ると、剣術のみで相手を押し切っていくと、相手の持つ剣から光が発せられてきた。
それに合わせるように涼音も剣に静の力を宿した。
相手は、身のこなしが素早く戦いなれている感じだった。
先読みも中々のもので涼音は徐々にペースを上げていくと、相手の剣に電撃を帯びてきている。
涼音は一気に間合いを詰めつと剣と剣がぶつかり合った瞬間、涼音から苦痛の声が聞こえてきた。
「なるほど、そういう事ね・・・あの電撃、触れるだけでこっちにもダメージが来るわね。まさか全身に電気が走るなんて思いもよらなかったわ。水との相性は悪いわね。だったら、風を纏わせるか・・・」
再び両者がぶつかり合い、涼音は電撃を受けながらも攻撃を仕掛けていく。
そして相手は素早く後方に引くと剣を振り回した。
すると剣から電撃がほとばしって飛んできた。
涼音は避けながらも相手に接近して、風を帯びた剣で攻撃を繰り返している。
その速度は徐々に上げていくと相手もそれに合わせてスピードを上げて交わしていく。
相手が後退すると同時に涼音は真空の連撃を繰り出した。
避けきれずに何度も涼音の攻撃がヒットしていきダメージが蓄積されていった。
最後の技なのだろうか、相手の全身が電撃で帯びていく。一種のバリアにもなっている様子だった。
剣を当てても電撃で当たる前に防がれている。
相手が剣を掲げると電撃がより一層強まり最後の攻撃に出た。
電撃の剣を振り上げて間を詰めると、剣での攻撃ではなく肩で涼音に当ててバランスを崩させ、激しい電撃を涼音に繰り出した。
涼音の全身が電撃に包まれていくが鍛錬を重ねてきた甲斐もあって全く効いてはいないが効てるふりをしている。
「そろそろ決めちゃうか・・・」
涼音は片膝を立てて、ダメージを受けた感じに見せてから、立ち上がって、風の力を自信と剣に宿して速度を上げて一撃のもとに相手を倒した。
場内はわき上がり、拍手と声援に包まれていた。
第一回目の優勝者として、和人たちは称えられトロフィーのようなものと賞金を受け取った。
涼音は剣士に近寄って話しかけてみた。
「あなた、なかなか強いわね。それは電撃の魔法なの?ただ者じゃないことは確かよね?」
「俺は賞金稼ぎを生業にしているんだ。この剣は依頼を受けているときに財宝に埋もれていた剣なんだよ。手にしてみると電撃が発せられてね。それを頂いてきたってわけさ。ヴァリアス出身だから魔法も使えるが援護魔法師か使えないんだ。だから剣に雷系統の魔力を込めて強化してる」
「私は涼音。冒険者よ。あっちにいるのが私の仲間。あなたの名前は?」
「俺の名前はアレフ、魔法剣士といったところかな。このメンバーは即席なんだ。俺は単独で各依頼を受けていて仲間はいないんだ。君は本気を出してはいなかったんじゃないか?直接剣を交えて、俺はそう思った。なんで弱いふりをしてるんだ?」
「事情があってね。私たちにはやるべきことがあるのよ。また会いましょ。アレフ」
早速、和人は貴族に頼んでアレフと名乗った人物をスカウトしてもらうことにした。
スカウトについてはミッチェルとピートが交渉にあたってもらい、事情を聞いたアレフは快く引き受けてくれた。
そして月日は流れ1年が経過した。
その間、貴族たちは各自が動き回ってセネルもほぼ統一された形になっていた。
コロシアムで仲間になってくれた人数は全部で8人。
いずれも凄腕だ。
試合を重ねる中で涼音に匹敵する強さを持った剣士もいて魔法に関しても和人に匹敵するほどの使い手もいた。
仲間となった8人が和人たちの屋敷へ招かれる事になった。
貴族たちが根回しをして、ポツポツと和人たちの屋敷へ集まり始めた。
全員が揃ったところで再度会議を行う手はずになった。
まず最初に行ったのは和人たち一行と仲間になった8人との話し合いだった。
みんな揃ったところで客間へと案内された。
「みんな、まずは仲間になってくれてありがとう。貴族から聴いているとは思うが、俺たちはこれから大掛かりな作戦を開始する。自警団の和人月を追うごとに増えていき、軍事力の備えも準備が整った状態にある。まずは、みんな再度、自己紹介をしてくれないか?」
8人が顔を合わせそれぞれが名乗り出した。
「まずは俺から自己紹介をしよう。俺の名はアレフ、一番初めにあんたらと戦ったね。雷系統を得意としている、主に援護魔法が中心だが剣に魔法をかけることによって電撃を付与することが出来る。あんたらに負けてから鍛錬を重ねて上達している感じだ」
「次は私ね。ご覧の通り魔法師よ。氷魔法を得意としているわ。高ランクの魔法も使用できるわ。名前はアリスよ」
「次は私が・・・確か決勝でお会いしましたよね。負けちゃいましたけど。それぞれの特性を生かして戦法を考えるのが得意よ。それと、闇の魔法が得意分野です。幻惑から支援、攻撃まで一通り使えます。私の名前はシンシアよ」
「次は俺だな。俺の武器は大鎌だ。力が強いのが自慢だ。防御をされても、それを貫通して攻撃を当てることが出来る。魔法に近いけど、魔法ではない。これは鎌に付与された力なんだ。致命傷にはならないが防がれてもダメージを与えて隙を作り、更に攻撃を繰り出すって感じかな。俺の名前はクロームだ」
「じゃあ、次はおれか。試合でもあったな。あんたらの強さは本物だ。手加減しているのも分かってる。特にソフィアンと涼音とか言ったな。ソフィアンは全く全力を出していなかっただろ?涼音も同様だな。何か奥義なんかもあるんじゃないか?俺の武器は、この2本の剣だ。1本には水の力が込められている。そしてもう一本には雷の力が付与されている。同時に使うと雷の威力を大幅に上げることが出来る。俺の名前はラルクだ」
「私かしらね、レイピアが武器よ。魔法は風魔法が得意よ。涼音さんだったかしらね。全身に風魔法をかけて移動と剣速を上げる事が可能よ。でも涼音さんの方が早かったわね。私は言ってみれば魔法剣士ね。名前はマーリンよ」
「よし、私ね!得意とする攻撃は精霊を媒体とした古式魔法が得意よ。主に奇襲に向いているは。風・水・雷・火の精霊を使うことが出来るわ発動速度は魔法師には劣るけど、威力には自信があるわ。名前はクレアよ」
「最後は俺か。武器は弓だ。最大で3本の矢を一発で打てる。弓は家宝でね。異能の力が備わってる。矢がなくても、その力を使えば魔法にも劣らない力を発揮することが出来る。名前はベルクールだ。よろしくな」
こうして8人がそれぞれ得意とするスキルと名前の紹介をした。
和人はみんなに礼を言うと作戦を説明した。
「分かっているとは思うけど、ここセネルは以前の法治国家とは違ってきている。しっかりと規律のできた街へと変わっている。統括しているのは最も位の高い貴族のフローレンシアだ。ここをまとめている貴族は全部で5人いる。もう一人いるが直接的には関わってはいない。まずは先に目的を言おう。俺たちは、これからデュランダルとヴァリアスとやり合う。長い間続いている戦争に終止符を打つ。それと同時に2国が管理している宝石を奪い取る。その宝石は七賢人という古代に存在した名のある錬金術師が7つ作った宝石がある。俺たちはすでに5つ所持している。すべてが揃うと融合されて一つの宝石へと変化する。両国の戦争の原因は、両国が持っている宝石の奪い合いが原因だ。俺たちは第3の勢力になり、ことを構える。すでに貴族たちの手で兵士たちも揃ってる。両国にバレないように攻撃を仕掛けて宝石の奪還と国をぶっ潰す」
8人は計画を聞いて驚いているものもいれば、やる気満々の人もいる。
更に説明を続ける。
「俺たちを指揮するのは貴族だ。かつて戦争において参謀を務めている貴族で名前はピートという貴族だ。その補佐には自警団得お束ねて治安維持をしている貴族で名前はミッチェル。この二人が主に作戦立案などを立てる。俺たちは、それに従って行動することになる。俺はこれからフローレンシアのところに行って話し合いをしてくる。作戦開始までは、まだ間がある。皆には連係プレイが必要だと俺は思う。その間、みんなで演習やら訓練やらしてもらいたいと思ってる。作戦開始までの間、各自で鍛錬を積み重ね、力の底上げと連係プレイを中心に動いてもらいたい。意見のあるやつはいるか?」
それぞれの意思はけっそくされていて特に意見をするメンバーはいなかった。
作戦開始までの間、力の底上げとれんけいが取れるように訓練に励むこととなった。
彼女の存在は、これからの冒険において重要な要素になるだろう。
ふと、和人は思いついた。
「そういえば、エリーは風の魔法を使えるんだよな。じゃあ、次の目的地に向かう前に、少し特訓をしないか?全員の力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ」
ルークの解読が終わるまでの間、4人はそれぞれの役割を話しながら、それぞれが訓練を始める。
涼音はソフィーに相手の殺気を読み取る訓練と、風の力をさらに強化するために、ソフィーは魔法剣士に限りなく近い存在ということもあり、エリーに風魔法を教わりつつ涼音からも居合抜きのやり方を学んだ。
和人は膨大な魔力を得る為に大気中から更に強い魔力が吸収できるように訓練していた。
そして、数日が立った頃、ルークが全員を集めた。
「この分厚い本の解読が終わりました。これは極めて重要なことです。まずは、魔物が狂暴化しつつある現象は、和人さん・・・あなたが集めた宝石が原因見たいです。宝石をいくつも持っていることで異空間が生まれてしまい、魔物が出現したと考えられます。恐らくは共鳴しているんでしょうね。本には、それぞれの宝石が共鳴すると書いてありましたから、それと後2つ、デュランダルにある宝石とヴァリアスにある宝石。その二つが集まると宝石は変化して一つに融合するそうです。力の使い方については様々書いてありましたが、強力な力を発するらしいです」
「なるほど・・・デュランダルとヴァリアスはそのことを知らずに争い合っているのかな?」
和人が首をかしげながら言うと。
「いえ、違います。両国にある宝石は別です。二つは最も強力なものらしいです。ですので、2つ集めるだけでも一国を滅ぼすだけの力を発揮するそうです。もっとも、使うには高ランクな魔法師が必要不可欠らしいですが・・・しかし、デュランダルは剣の国であり魔法を使える存在は少ないです。つまりは、宝石の奪還と共に高ランクの魔法師を捕らえるのが妥当ではないかと・・・もしそうだとしたら、魔法師は魔力は全て吸い取られることになるでしょうね。つまり、宝石の生贄になるということです。もしそうでしたら、恐ろしいことです。和人さんは、もうするべきことを考えているのではありませんか?」
和人が立ち上がってテーブルに両手をつくとこれからの方針を話し出した。
「ああ、ルークの言うとおりだ。やるべきことは決めてある。だが戦力が足りない」
和人はみんなを見てから更に続けた。
「俺は義勇軍を組織して、両国の宝石を奪い取ってやろうと考えてる。メリットは戦争がなくなる、デメリットは戦争が激化する。第3の勢力になるわけだからな。どちらから攻めるかも考えているが・・・例えば先にデュランダルを攻めて戦力を削ぎ落すと、ヴァリアスから密偵が来ていた場合、そこをついてヴァリアスはデュランダルに一気に攻め込むだろうな・・・」
「和人、あんたそんなことを考えていたの?」
涼音が動揺して言うと、和人は涼音を見て言った。
「あと一つあるんだよ。その宝石を集めて融合したとき、もしかしたら元の世界に帰れるんじゃないかってな」
和人の途方もない考えに皆が沈黙した。
先に話し出したのはソフィーだった。
「ずいぶんと大掛かりなことをサラッというわね・・・だったら傭兵の国セネルに行くのはどうかしら?あそこは国王もいない自由国家よ。それにセネルには私の友人もいるわ。友人から友人へと話を広めていって、うまくいけば、仲間が増えるわ」
「まあ、それが妥当だろうな。セネルならヴァリアスからの流れ者も良そうだし、剣士と魔法師の部隊が作れそうだが・・・問題はどう組織するかなんだが。ラノベを参考にするか・・・」
「ラノベ??」
ソフィーが首をかしげている。
「いや、なんでもない。とりあえずはセネルを目指すか・・・みんな、どうだろ?」
「和人、あんた本気で言ってるの?これはゲームじゃないのよ?こんな大それたことをしたら、両国から反逆者扱いになるし、相手は国家権力よ?みんなを危険な目にも合わせることになるし・・・忍び込んで、こっそり宝石を奪った方が良くない?」
涼音が不安げに言うと、和人は話をつづけた。
「ああ、それなら俺も考えた。ソフィーの黒龍の力で幻惑魔法を使って姿を消して奪い取る手も考えたが、宝石がなくなれば、戦争はさらに激化するんじゃないかな?デュランダルならヴァリアスが盗み取った。ヴァリアスならデュランダルが盗み取った。なんてことにもなりかねない。俺たちがただ帰るためだけに奪うってのもちょっとな。どうせなら、この世界をどちらかの国が統一して戦争をなくしてから帰るのが一番なんじゃないかな?」
みんなはまだ不安げな表情をしている。
大それたことに、それぞれが考え込んでいるのだろう。
「俺はセネルの国王になろうってんじゃないんだ。そこでだ、ルーク・・・お前の知り合いに位の高くて信頼のおける貴族はいるか?」
「そうですね~・・・デュランダルとヴァリアスの両方に知り合いはいますが、連絡を取って一度集まって話し合うべきかと・・・事が事なだけに時間がかかりますね。セネルにいきなり国王といわれて、セネルの住人が納得するのかと、自由奔放にやっている冒険者たちも面白くはないでしょうし事を慎重に運ばなければなりません」
「それなら、俺に案がある。かなりの賞金をエサにコロシアムで名を上げるんだ。コロシアムを建設しないとならないけどな。パーティー形式の大会を開くんだ。たぶん、俺たちにかなうやつらはいないだろう。当然、腕の立つ奴らはいるだろうが、涼音にソフィーにエリー、そして俺。このパーティーで負けるはずがないと俺は思ってる。この計画は1年かけて行う。1か月ごとに大会を開いて名を上げるんだ。そして仲間を募る。そのうえで最終的に名を上げた俺たちが国王を立てるんだ。」
「私も戦争がなくなって平和になればいいと思いますが、本当にそんなことが出来るんでしょうか?」
エリーは不安げに言うが反対はしていない感じで、みんなも反対という意見はなかった。
むしろ、やり遂げてみようと思い始めている。
ルークも考えながらもデュランダルとヴァリアスの帰属に集まる算段を立ててくれた。
「私が各領主に声をかけていったんここに集まって貴族会議をしましょう。実はバロックを処罰してくれたのも私の知り合いの貴族なんです。その方にも声をかけましょう。失敗しないためにも慎重にやらなければなりません。計画を立てるだけでも一月はかかるでしょうね。とりあえず、皆さんはここに滞在してください。一緒に貴族会議に参加してもらわなければなりません」
みんなからは不安げな表情が消え、和らげな表情に変わっていった。
決意を固めた和人を含めた4人は貴族会議が終わるまではコリン村に滞在し、それぞれが献身的に鍛錬を積み重ねることになった。
それから数日が経過し、ルークの呼びかけで位の高い貴族たちが次々とコリン村へと集結しつつあった。
貴族の数は全部で5人。
中には国王の相談役を担っていた貴族もいて、領主の経験がある貴族や商人を束ねる貴族と様々だった。
そして、貴族会議の日が訪れた。
「みんな、まずは集まってくれてありがとう。礼を言う。それぞれの自己紹介をしてくれないかな?」
貴族たちは目を合わせてから、それぞれの自己紹介をしてくれた。
「私は商人を束ねる貴族の家系で名前はペールといいます。両国とも友好な関係にあります」
「次に私ですね。独自の自警団を持っています。主に治安維持をしています。名前はミッチェルといいます」
「私も同じく自警団を組織している貴族の家系です。内乱が起きたら静める役目をしています。かつては戦争時における両国の参謀を務めていました。名前はピートとといいます」
「では私も自己紹介をしましょう。私は政治や法律などを担っている貴族です。名前はローレンスといいます
「最後に私ね。私はフローレンシアといいます。貴族の中では最もくらいが高い位置にいます。国王の相談役など色々とやっていました」
話を聞いてる限りでは5人の貴族は信用に値すると和人は思っていた。
全員、頭の切れが早く会議は順調に進んでいく。
商人を束ねる貴族は商人たちを使って建築に詳しい者を集めることと貿易を盛んにするといい、コロシアムの建設はすぐにも出来そうだ。
政治に詳しい貴族は法律を立てる案を出し、かなりの数の自警団を持つ貴族はセネルの見回り役を担うといい、セネルの治安も何とかなりそうだ。
かつて戦争の参謀を務めていたという自警団を持つ貴族も治安維持に協力するとかって出た。
5人の中で一番位の高い貴族は4人の貴族のまとめ役をすると意見していた。
涼音たちは鍛錬に鍛錬を重ね、あらゆる局面での戦術も出来つつあった。
「コロシアムはどれくらいで完成しそうだ?」
和人は各貴族に尋ねた。
「セネルの治安も維持される形になるので、数日で完成するかと思います」
「話が早くて助かる。よし!準備が整い次第、セネルを統括するぞ!統括するのは貴族だけど・・・」
和人は涼音に頭を叩かれた。
「偉そうに言ってんじゃないわよ。どうせラノベで読んだなんかの案をまとめたんでしょ・・ったくもう」
貴族の自警団がコリン村に集結するのを待って、そろい次第セネルに向けて出発することになった。
集まるまでは数日かかるという。
その間に承認を束ねる貴族は一足先にセネルに旅立ち、コロシアムの建設を急いだ。
自警団の数は合わせて1000人は超えていた。
数日後・・・
コリン村に全員が終結した。
住人がおびえるといけないと思い、和人の案で自警団は村には入らず迂回して、そのままセネルに向かった。
「よし、俺たちも行くか。みんな、長い作戦になるけど力を合わせてなんとかやり遂げよう」
和人たちは独自のルートでセネルへと旅経つのだった。
セネルに着くと商人にある屋敷へ案内された。
その屋敷は商人たちを束ねる貴族の計らいで建てられた和人たちの屋敷だった。
召使も何人かいて屋敷の前には見張りの兵士が二人立っていた。
そして、コロシアムもすでに完成していた。
セネルにはかなりの数の住人が増えたこともあって、街を広げる手はずがされており、まるで城下町のようになっていた。
「これは凄いな・・・俺たちのために建ててくれた屋敷もかなりでかいな」
以前のセネルとは違い貿易も盛んで色んな店も出来ていて、ギルドも新しく建て替えられていて、出入りする人たちも様変わりしていた。
以前は盗賊みたいな悪人も数多くいたが今ではまっとうな冒険者が殆どだった。
流れ者もセネルに住みたいと申し出る人々もいた。
すでに法律も出回り、コロシアムも完成しており、教育機関や病院なんかも建てられていて店も充実していた。
コロシアムの入り口付近には開催日の掲示板や受付のための建物も建てられており、街中が活気づいていた。
「ここが俺たちの計画の出発点だ。コロシアムの情報は、すでに各地に広まってるみたいだし、とんでもないスキルを持ったやつも出てくるかもしれないな」
「そうね、私たちは勝ち続けないとこの計画は成り立たない。ソフィークラスの強いのが出てきてもおかしくないわね。当時は私の中じゃ、デュランダルのアリシアが一番強いと思っていたもの」
一通り街を見て回ってから屋敷へ帰ると、そこにはルークの姿が見えた。
「あれ?ルーク、コリン村を離れてどうしてここに?様子でも見に来たのか?」
「いえ、コリン村は私の信頼のおける古い友人の貴族に任せてきました。この大掛かりな作戦に私もなにかお力になれればと思い、セネルに住むことにしました。私の役目はセネルでの秘書をしようと思いまして。これだけ街が大きくなってしまっては5人の貴族たちでは手に余ると思いまして協力させていただくことにしました」
「そういうことか・・・ルークがいてくれると心強いよ。じゃあ、一つ頼みたいことがあるんだ。貧困で生活に困っている住人も中にはいるはずだ。出来る限りでいいから手を差し伸べてやって欲しい。よろしく頼む」
和人はルークと握手をして結束を束ねた。
そして、数日後、ついにコロシアム第一戦目の開催が近づき受付が始まっていた。
ざっと見る限り、魔法師を含めたパーティーなんかもあり、見たことのない武器を持ったグループもあり、受付内は活気づいていた。
それぞれが力試しのためか、それとも賞金目当てか、ざわつきなどでごった返していた。
和人たちはコロシアムの雰囲気に圧倒されつつも、決意を新たにした。
涼音が言った。
「私たちのパーティーの出番はいつだろう?みんなが注目しているなかで戦うのは緊張するけど…」
ソフィーが微笑みながら返す。
「でも、私たちなら大丈夫よ。力を合わせれば、どんな相手でも倒せるはず!」
和人は頷き、仲間たちの信頼を感じた。次の瞬間、アナウンスが響き渡り、第一戦の組み合わせが発表された。
「コロシアム、初の開催!第一回目の発表されたパーティーはコロシアムの中央へと出場してください!」
2つのパーティーは横一列に向かい合わせとなり、ルールの説明を受けてきた。
基本的には相手を死に至らしめる術式、及び、それに相当する攻撃はなし。
まずは第一試合めが始まった。
一つのパーティーは剣士のみのパーティー、もう一つは魔法部隊もいるパーティーだった。
初戦から、なかなかいい試合ぶりを見せていた。
観客もセネルでのコロシアムの戦い合いに盛り上がりを見せていた。
「観客は盛り上がっているけど、雑魚ね。私たちの敵じゃないわね。」
「ああ、そうだな。魔物との戦いで、俺たちは何度も修羅場をくぐってきてるからな。だが本気を出すのはやめておこう。わざと接戦に持ち込んで観客を盛り上げて、なるべく互角の試合を演じて勝っていこう。なんというか、観客がいると少し緊張するな。今回がコロシアムでの初めての大会だ。広まって間もないから強敵は出てこないだろうが、変わったスキルや強い魔法を持つ奴らが出たら、貴族に話を持ち掛けてもらってスカウトしよう。大会を重ねるごとに強者が出てくるだろう・・・さて、俺たちの試合が次だな。芝居をしなければいけないのは面倒だけど、まずは互角の戦いを演じて行こう」
そして、和人たちの試合の時が来た。
わざと威力を押さえた魔法を使って互角の戦いを演じつつ徐々に相手を追い込んでいく。
相手は剣士のみのパーティー。変わったスキルも持ち合わせてはいない低レベルの試合。
互角の戦いを演じて、なんなく勝利を収めた。
「手を抜くのって難しいのね。私は退屈だわ」
ソフィーは物足りなさに一言言った。
その点、涼音は手を抜く心得は持っている。
それは剣道部での後輩の指導をよくしていたからだった。
「なんだか後輩に教えてる感じ。とりあえず、優勝は頂ね」
試合は次々と行われ、和人たちも勝ち抜いてた。
そして、コロシアム初の大会の決勝戦を迎えることとなった。
「決勝戦の相手、一人だけずば抜けて強いのがいたわね。あの剣士なんだか妙な技を使っていたわね・・・試合が終わったら貴族に頼んで私たちの真の目的は言わず、自警団に加わらないか交渉してもらいましょうか」
「そうだな、試合を見ていた限り、本気を出していないように見えた。何か切り札を持ってるんじゃないかな?涼音はやつと一騎打ちをしてみてくれないか?俺たちは他の連中の相手をする。今回のスカウトは、実力を見て、ふさわしい人物を貴族に頼んでスカウトしよう」
そして、アナウンスが鳴り響いた。
「ついに決勝戦がやってまいりました!両パーティーともこれまで素晴らしい試合を見せてきていました。果たして優勝者はどちらの手に渡るのでしょうか!それでは、試合開始!」
和人たちはわざと相手パーティーをばらけさせて、妙な力を持つ剣士と涼音の一騎打ちに持ち込んだ。
その剣士からは微かだが魔力が感じ取られた。
「涼音、あいつはたぶん魔法を使ってくると思う。剣に魔法を込めるのか、それとも魔法を放ってくるのか。念のため警戒しつつ互角の戦いに持ち込んでから、やつを追い詰めていってくれ。そうすれば必ず切り札を出してくるはずだ」
「わかったわ、まずは立ち回ってから、剣に水の力を加えて攻撃してみるわ」
涼音との一騎打ちが始まった。
和人たちは4人を相手にして互角の戦いを演じて倒すことが出来た。
残りは涼音との一騎打ちのみ。
和人たちは、それを見守ることにした。
涼音が間合いを図ると、剣術のみで相手を押し切っていくと、相手の持つ剣から光が発せられてきた。
それに合わせるように涼音も剣に静の力を宿した。
相手は、身のこなしが素早く戦いなれている感じだった。
先読みも中々のもので涼音は徐々にペースを上げていくと、相手の剣に電撃を帯びてきている。
涼音は一気に間合いを詰めつと剣と剣がぶつかり合った瞬間、涼音から苦痛の声が聞こえてきた。
「なるほど、そういう事ね・・・あの電撃、触れるだけでこっちにもダメージが来るわね。まさか全身に電気が走るなんて思いもよらなかったわ。水との相性は悪いわね。だったら、風を纏わせるか・・・」
再び両者がぶつかり合い、涼音は電撃を受けながらも攻撃を仕掛けていく。
そして相手は素早く後方に引くと剣を振り回した。
すると剣から電撃がほとばしって飛んできた。
涼音は避けながらも相手に接近して、風を帯びた剣で攻撃を繰り返している。
その速度は徐々に上げていくと相手もそれに合わせてスピードを上げて交わしていく。
相手が後退すると同時に涼音は真空の連撃を繰り出した。
避けきれずに何度も涼音の攻撃がヒットしていきダメージが蓄積されていった。
最後の技なのだろうか、相手の全身が電撃で帯びていく。一種のバリアにもなっている様子だった。
剣を当てても電撃で当たる前に防がれている。
相手が剣を掲げると電撃がより一層強まり最後の攻撃に出た。
電撃の剣を振り上げて間を詰めると、剣での攻撃ではなく肩で涼音に当ててバランスを崩させ、激しい電撃を涼音に繰り出した。
涼音の全身が電撃に包まれていくが鍛錬を重ねてきた甲斐もあって全く効いてはいないが効てるふりをしている。
「そろそろ決めちゃうか・・・」
涼音は片膝を立てて、ダメージを受けた感じに見せてから、立ち上がって、風の力を自信と剣に宿して速度を上げて一撃のもとに相手を倒した。
場内はわき上がり、拍手と声援に包まれていた。
第一回目の優勝者として、和人たちは称えられトロフィーのようなものと賞金を受け取った。
涼音は剣士に近寄って話しかけてみた。
「あなた、なかなか強いわね。それは電撃の魔法なの?ただ者じゃないことは確かよね?」
「俺は賞金稼ぎを生業にしているんだ。この剣は依頼を受けているときに財宝に埋もれていた剣なんだよ。手にしてみると電撃が発せられてね。それを頂いてきたってわけさ。ヴァリアス出身だから魔法も使えるが援護魔法師か使えないんだ。だから剣に雷系統の魔力を込めて強化してる」
「私は涼音。冒険者よ。あっちにいるのが私の仲間。あなたの名前は?」
「俺の名前はアレフ、魔法剣士といったところかな。このメンバーは即席なんだ。俺は単独で各依頼を受けていて仲間はいないんだ。君は本気を出してはいなかったんじゃないか?直接剣を交えて、俺はそう思った。なんで弱いふりをしてるんだ?」
「事情があってね。私たちにはやるべきことがあるのよ。また会いましょ。アレフ」
早速、和人は貴族に頼んでアレフと名乗った人物をスカウトしてもらうことにした。
スカウトについてはミッチェルとピートが交渉にあたってもらい、事情を聞いたアレフは快く引き受けてくれた。
そして月日は流れ1年が経過した。
その間、貴族たちは各自が動き回ってセネルもほぼ統一された形になっていた。
コロシアムで仲間になってくれた人数は全部で8人。
いずれも凄腕だ。
試合を重ねる中で涼音に匹敵する強さを持った剣士もいて魔法に関しても和人に匹敵するほどの使い手もいた。
仲間となった8人が和人たちの屋敷へ招かれる事になった。
貴族たちが根回しをして、ポツポツと和人たちの屋敷へ集まり始めた。
全員が揃ったところで再度会議を行う手はずになった。
まず最初に行ったのは和人たち一行と仲間になった8人との話し合いだった。
みんな揃ったところで客間へと案内された。
「みんな、まずは仲間になってくれてありがとう。貴族から聴いているとは思うが、俺たちはこれから大掛かりな作戦を開始する。自警団の和人月を追うごとに増えていき、軍事力の備えも準備が整った状態にある。まずは、みんな再度、自己紹介をしてくれないか?」
8人が顔を合わせそれぞれが名乗り出した。
「まずは俺から自己紹介をしよう。俺の名はアレフ、一番初めにあんたらと戦ったね。雷系統を得意としている、主に援護魔法が中心だが剣に魔法をかけることによって電撃を付与することが出来る。あんたらに負けてから鍛錬を重ねて上達している感じだ」
「次は私ね。ご覧の通り魔法師よ。氷魔法を得意としているわ。高ランクの魔法も使用できるわ。名前はアリスよ」
「次は私が・・・確か決勝でお会いしましたよね。負けちゃいましたけど。それぞれの特性を生かして戦法を考えるのが得意よ。それと、闇の魔法が得意分野です。幻惑から支援、攻撃まで一通り使えます。私の名前はシンシアよ」
「次は俺だな。俺の武器は大鎌だ。力が強いのが自慢だ。防御をされても、それを貫通して攻撃を当てることが出来る。魔法に近いけど、魔法ではない。これは鎌に付与された力なんだ。致命傷にはならないが防がれてもダメージを与えて隙を作り、更に攻撃を繰り出すって感じかな。俺の名前はクロームだ」
「じゃあ、次はおれか。試合でもあったな。あんたらの強さは本物だ。手加減しているのも分かってる。特にソフィアンと涼音とか言ったな。ソフィアンは全く全力を出していなかっただろ?涼音も同様だな。何か奥義なんかもあるんじゃないか?俺の武器は、この2本の剣だ。1本には水の力が込められている。そしてもう一本には雷の力が付与されている。同時に使うと雷の威力を大幅に上げることが出来る。俺の名前はラルクだ」
「私かしらね、レイピアが武器よ。魔法は風魔法が得意よ。涼音さんだったかしらね。全身に風魔法をかけて移動と剣速を上げる事が可能よ。でも涼音さんの方が早かったわね。私は言ってみれば魔法剣士ね。名前はマーリンよ」
「よし、私ね!得意とする攻撃は精霊を媒体とした古式魔法が得意よ。主に奇襲に向いているは。風・水・雷・火の精霊を使うことが出来るわ発動速度は魔法師には劣るけど、威力には自信があるわ。名前はクレアよ」
「最後は俺か。武器は弓だ。最大で3本の矢を一発で打てる。弓は家宝でね。異能の力が備わってる。矢がなくても、その力を使えば魔法にも劣らない力を発揮することが出来る。名前はベルクールだ。よろしくな」
こうして8人がそれぞれ得意とするスキルと名前の紹介をした。
和人はみんなに礼を言うと作戦を説明した。
「分かっているとは思うけど、ここセネルは以前の法治国家とは違ってきている。しっかりと規律のできた街へと変わっている。統括しているのは最も位の高い貴族のフローレンシアだ。ここをまとめている貴族は全部で5人いる。もう一人いるが直接的には関わってはいない。まずは先に目的を言おう。俺たちは、これからデュランダルとヴァリアスとやり合う。長い間続いている戦争に終止符を打つ。それと同時に2国が管理している宝石を奪い取る。その宝石は七賢人という古代に存在した名のある錬金術師が7つ作った宝石がある。俺たちはすでに5つ所持している。すべてが揃うと融合されて一つの宝石へと変化する。両国の戦争の原因は、両国が持っている宝石の奪い合いが原因だ。俺たちは第3の勢力になり、ことを構える。すでに貴族たちの手で兵士たちも揃ってる。両国にバレないように攻撃を仕掛けて宝石の奪還と国をぶっ潰す」
8人は計画を聞いて驚いているものもいれば、やる気満々の人もいる。
更に説明を続ける。
「俺たちを指揮するのは貴族だ。かつて戦争において参謀を務めている貴族で名前はピートという貴族だ。その補佐には自警団得お束ねて治安維持をしている貴族で名前はミッチェル。この二人が主に作戦立案などを立てる。俺たちは、それに従って行動することになる。俺はこれからフローレンシアのところに行って話し合いをしてくる。作戦開始までは、まだ間がある。皆には連係プレイが必要だと俺は思う。その間、みんなで演習やら訓練やらしてもらいたいと思ってる。作戦開始までの間、各自で鍛錬を積み重ね、力の底上げと連係プレイを中心に動いてもらいたい。意見のあるやつはいるか?」
それぞれの意思はけっそくされていて特に意見をするメンバーはいなかった。
作戦開始までの間、力の底上げとれんけいが取れるように訓練に励むこととなった。
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