ダークオベリオン ~剣と魔法が支配する世界~ 

詩樹

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第7章 「ヴァリアス領地」

ヴァリアス領地探索2

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一方その頃。
両国では小競り合いをしながらもデュランダルでは数日間姿を消している涼音を捜索しながら。
そしてヴァリアスも同様に和人を探しながら、幾度となく小競り合いをしていた。
和人と涼音は、所持金をはたいて移動手段として2頭の馬を買った。
そしてラリサ村へと向かい、着くなり、早々食堂へ入って、とりあえず食事をとりながら二人は、この近くにある遺跡について話し合っていた。

「この遺跡には何か秘密が隠されているのかもしれんな」と和人が言った。

涼音は食事をしながら考え込んでいた。

「確かに、何か重要なものが隠されている可能性はあるけど、それを見つけるためにはどうすればいいのかしら」


和人は口を開いたが、その時、隣のテーブルから声が聞こえてきた。
村の老人たちの会話だった。

「あの遺跡には、伝説の宝物が眠っているという話を聞いたことがあるよ。でも今は魔物の住処になっていて誰も近づけんという話だ。実際、何人かの冒険者が遺跡に行ったまま帰ってこんというのが村中に広まってるしのぅ」

「ああ、あの遺跡には近づかん方がええ。何人もの冒険者や賞金稼ぎのやつらが帰ってこんって噂だしのぅ。おおかた金に目がくらんだ愚か者が危険をかえりみずに本当にあるのかもわからん伝説の宝物とやらを手に入れようとしたんだろうよ」

二人は興味津々で老人に近づいて聞き返した。

「その話は本当ですか?その宝物には何があるんですか?」と和人が尋ねた。

老人は微笑んで答えた。

「その宝物は、古代の魔法使いが作り出したと言われる『魔法の石』らしいんじゃ。その力は、願いを叶えることができ、人々を幸せにすると伝えられておるよ」

二人の目は輝きを帯びた。

「その話がもし本当なら、その伝説の宝物を手に入れて、戦争をなくし、世界を救うことができるかもしれない!それと俺たちも元の世界に戻れるかもしれないな。行く価値はあるな」

涼音も同じように頷いた。

「そうだね、私たちにはその力が必要だねー。遺跡に行って、その魔法の石を手に入れるしかないわね。それで戦争も収まって、私たちも元の世界に帰れるかもしれないわね」

二人は食事を終えると、遺跡へ向かうために準備を始めた。
話し合いの結果、翌朝に出発することにした。
今回は魔物の住処になっていると事前にわかっていることもあり、慎重に進まなければならない。
そして、翌朝が来た。
二人は念のために村に売っていた薬草などを買い遺跡に向かって出発した。
地図を広げながら道中を進んでいくと遠くに建物が見えてきた。
二人は目を合わせると馬を走らせ建物に向かって進んでいくと、前回と同様にボロボロに崩れかけている遺跡が見えた。
馬車を降りて手綱を木にくくりつけると、慎重に中へ入っていった。

「ちょいまち、お前に水の加護をかけておくよ。俊敏さも上がるし防御力も上がるし、お前の水を使ったスキルの威力も上がるはずだ。俺は・・・後ろから、こっそり付いていくよ」

「あんたね、男でしょ?普通男の子が女の子を守らない?」

涼音が言うと和人は頭を掻きながら「すんませんねー」と一言言うと詠唱を始めて、涼音にクリスタルシールドという水の防御を張り、更にアイスエリアという水のフィールドを張った。
涼音は渋々と遺跡の中に進むと早速のお出迎えが来た。
二人の目の前には複数の魔物と奥には巨大な魔物がいる。

「さっそくのお出迎えね。雑魚なら一瞬だわ。和人はあのでかいのを倒すのに出来るだけ強力な魔法をお願いね。じゃあ、行くわよ!」

涼音は風のごとき素早さで水の刃を放ち、雑魚を瞬殺した。
どや顔で和人の方を見ると、涼音は油断していた。
奥にいた巨大な魔物が体に似合わず素早い動きで涼音の背後に回るなり、かぎ爪で涼音の背中を攻撃し、涼音は衝撃で数メートル飛ばされ、横たわってしまった。
和人は素早くファイヤーウォールを張り廻らわせ涼音のもとへ向かった。

「涼音!しっかりしろ。今直してやる」

巨大な魔物は咆哮を上げながら、かぎ爪の連撃で張り巡らせたファイアーウォールに向かって連撃している。
和人は素早く詠唱をはじめ両手を涼音の背中に手をかざして癒しの魔法をかけた。

「水よ、わが求めに応じよ。ヒールウォーター!」

涼音の身体が水に包まれると柔らかな水色の光と共に涼音の背中の傷が見る見るうちにふさいでいったがかなりの深手で完全には治ってはいない。

「このやろーーー!!焼き尽くしてやる!灰になりやがれー!」

和人はキレて全身が練り上げられた闘気のように炎に包まれ両手で杖を掲げると詠唱を始めた。
しかし、魔物の連撃によりファイアーウォールが次々と破られ、和人は避けながら長い詠唱を続け、唱え終えると魔物の目の前に接近して杖で顔面を押し付けた。

「食らえやー!塵となりやがれ!スピリームエクスプロード!」

凄まじい爆発を受け巨大な魔獣は激しい炎に包まれもがき苦しんでいるが、まだ息絶えてはいない。続けざまに和人は炎系でも最大級を誇るカグヅチを放った。
カグヅチ、この魔法は神の如き炎を創り出し放つ攻撃、周りに被害が出ないのはファイアーウォールの効果である。
さすがの魔物も炎で手足が次々と焼け落ち、頭が転げ落ちた。
和人はすかさず涼音のもとへ向かい無事を確かめると手持ちの薬草も涼音の背中に塗り付けた。

「ありがと、和人。魔物は倒したようね・・・ちょっと歩けそうにないわ。でもだいぶ楽になったから」

ひとまず涼音の無事を確認すると和人は一人で遺跡の奥へと向かうことにした。
魔物の軍勢は、どうやらあれだけだったみたいで、遺跡内は和人の足音以外は静まり返っていた。
周りを見渡すと壁には、やはり何らかの壁画が描かれており、魔法使いだろうか、魔法を放っているようにも見え、その相手はドラゴンのようにも見えた。
更に奥へ進むと前回と同様に石でできた箱状のものの中にうっすら光る石が見えた。
周りには金色の財宝だろうか、色々と見えたが目もくれずにうっすらと光る石を手に取った。

「これか・・・なんか力が湧いてくるような感じがするな。何かの付与がかけられているのかな・・・杖に宝石が付いたような感覚に似てるな。それと、石碑に古代文字が書かれてるな。今回は綺麗なまま残ってる。とりあえず、メモっとくか」

和人は古代文字のメモを取り宝石を持って涼音のところに向かって、肩を貸して涼音を起こして馬のところまで向かい二人は村へ戻った。
すぐさま治療院のもとへ向かい涼音矩量をしてもらった。
傷が治るまで数日間、村に滞在することになった。
涼音を治療院に預け、和人は例の老人がいないか村中を探し回った。
探し回った結果、老人は酒場にいた。
和人は近づいて行って声をかけた。

「話し中すいませんね。この古代文字って読める人はいないかな?」

和人は古代文字を老人に見せると、首をかしげてから、少し考えてからこう言った。

「村長なら読めるかもしれんのぅ。村長の家は村はずれにあるから・・・ちょっと待ってな。地図を書いてやるわぃ」

老人から地図をもらい、和人は地図を見ながら村長の家まで向かった。

「たぶん、ここだな。すいませーん。誰かいますかー?」

ドアをノックしながら言うとドアがゆっくりと開いた。

「あー、村長さんですかね?突然だけど、これって読めますかね?」

和人はいきなり古代文字を村長らしき老人に見せた。

村長は古代文字を見つめると、しばらく考え込んだ後に微笑みながら言った。

「これは古代の魔法言語だねぇ。ワシは昔、魔術師として修行したことがあるので、少しは読めるかもしれんのぅ。どれ、貸してごらんなさい」

古代の魔法言語・・・和人はメモしたものを手渡して読んでもらうことにした。

「この魔法石メイクトゥルーには人々が幸せになるようにと願いを込めて私のすべての魔力を込めて作り上げたもの。
正しきものが使えば幸福の道へ、悪しきものが使えば厄災の道へ。力を解き放てば世界を変える事が可能になることでしょう。また悪しきものが使えば、世界は厄災に包まれ不幸な道へ・・・正しきものが使うことをせつに願う・・・・・」

村長はそう読み上げた。
和人はその言葉の意味はなんとなく理解できた。使い方によっては良い方向へも行くし悪い方向にも行くのだろうと。
村長の家を出ると治療院へ向かって涼音に事情を話した。

「なるほどねー。メイクトゥルーって名前なんだね。私が持っても何も感じ取れないわ。単なる光る石にしか見えないわ。魔力を持った人じゃないと使えないんじゃないのかなー」

「背中の傷は大丈夫か?俺がもっと注意を引き付けていれば、こんな目には合わなかったな。すまん、これからは慎重に事を運ぼう。俺たちが来てから魔物の数も増えたらしいからな。これからも戦闘は間逃れないと思う。注意深くいこう」

数日が経ち、涼音の傷も回復した。
二人は食堂へ行き、食事をとりながら、これからのことを話し合っていた結果、ヴァリアス領土内にはこれ以上収穫はなさそうだと二人は考えていた。
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