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百夜の秘書
三、
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午後三時半。
鳳梨と天藍の朗らかな商談の間、蝶はその横に静かに立っていた。
しかし内心は、強い尿意に苦しんでいた。
「……っ、……」
彼のパンパンに膨れ上がった膀胱に、先ほど飲み干した紅茶の水分がギュウギュウと入り込み、出口の括約筋を圧迫する。
気を抜けば、今にもその水分が勢いよく飛び出してしまいそうな程であった。
それでも、鳳梨やその従者に不自然に思われないため、出口をキュッと閉め、時折服の下でクロスした膝と膝をすり合わせる程度で、尿意を誤魔化していた。
そうして十五分後、二人の商談が終わる。
「ではよろしくね、鳳梨さん。……蝶、帰るよ」
「はい。鳳梨様、ありがとうございました」
蝶は精一杯、冷静な声で挨拶をする。
その服の下では、足がガクガクと震えていた。
旅館行きの船に乗るため、乗船場へ行く。
旅館に着くまで、今から十五分程だった。
しかし、蝶はそれすらも待てないほど、もう我慢の限界だった。
「……旦那様」
「ん?」
二人は、所謂VIPルームと称されるような、特別な人間だけが使用できる乗船場の待合室の個室にいた。もう少しで、目的の船が到着する。
蝶は意を決し、震える声で、天藍へ初めての言葉を告げた。
「お手洗いに、行かせてください……っ」
服の下で、貞操帯に開けられた一つの小さな穴から、我慢できなかった一滴の雫が溢れ、太腿を伝った。
蝶は、もう排泄を我慢することができなかった。
いつもの澄まし顔を苦痛に歪ませ、姿勢を崩し、引かせた腰をくねくねと艶めかしく揺らしていた。
その蝶の様子に、天藍は面白そうに聞いた。
「へえ、どうしてだい?」
「……っ……お小水が、したい、です」
また蝶の太腿に、たらりと一滴の液体が流れていく。蝶は慌てて、括約筋にキューッと力を込めた。
天藍は満足げな笑みを浮かべ、蝶に視線を合わせる。
「どれくらい?」
「……と、とても……っ」
「じゃあ、部屋に戻ったらね」
「………………」
部屋に戻ったら。
その言葉は、少なくともあと十五分の我慢を蝶に強要させることを意味していた。
蝶は腰を落ち着きなく揺らしながら、天藍をすがるような目で見つめた。
「い、今から、は……そちらに、お手洗いが」
公衆トイレへの看板を示すが、天藍は首を横に振る。
「二人で個室に入る気? 僕らを知っている誰かが見てたらどうするの?」
確かに、天藍の言う通りだ。旅館の評判に何かあったら困る。
……けれど、蝶は今にも、もう、
「僕、出張前に言ったよね? 二時間はトイレにいけないよ、って」
「……………」
そうだ、部屋を出てから、まだ二時間も経っていない。
蝶は絶望感に襲われ、また一滴、たらりと尿を出口から溢してしまった。
天藍は微笑んだまま、
「あと、その動き、人前ではみっともないからやめて欲しいんだけど」
「…………っ」
蝶は身体を揺らすのをやめ、引いた腰を伸ばした。
「んっ…!」
しかし途端に強い排泄欲求に襲われ、蝶は耐えられず、ショロッと、またほんの少しだけ漏らしてしまった。
……ぽたぽたぽたっ
とうとう、足元のコンクリートの床に、その液体が落ちた。
天藍は、すぐそれに気づき、ニヤリと笑った。
「蝶、ここはトイレじゃないよ?」
「違っ、こ、これはっ、汗、ですから……っ!」
蝶は慌ててそう否定するが、ぽたっ、ぽたっと、我慢できなかった熱い液体が、また二滴落ちる。
羞恥心で、蝶はその白い頬を真っ赤に染めた。
なんとかそのおもらしを止めたそのとき、目的の船が到着した。
天藍はくすりと笑い、
「そう。じゃあ、船に乗ろうか」
天藍と蝶は、船に乗り込んだ。
蝶は旅館までの十五分間、全ての気を、その出口を締めることに費やしていた。
しかしそれでも生理的欲求に耐えられず、おおよそ一分につき一、二度、ぽたりぽたりと貞操帯から雫を溢し、人知れず床を濡らしていた。
もちろん、天藍には見られており、水滴が落ちるたびに蝶は顔を覗かれ、その度に蝶は目を逸らし続けていたのだが。
旅館に着く頃には足元に小さな水たまりができてしまい、蝶は赤面したが、何せここは船だ、床の少しの水たまりなど、外から偶然に入りこんだ水飛沫と何も変わらず、誰も気に留めなかった。
そうしてなんとか、蝶は服を濡らすことなく、旅館にたどり着いた。
「おかえりなさいませ、旦那様、蝶様」
客の出入の多い夕方ということもあり、正面玄関で従業員が一斉に頭を下げた。
「皆、お疲れ様」
「ただいま戻りました」
天藍は微笑み、蝶は変わらずの無表情で挨拶をする。
もちろん、蝶は腰を揺らしたり足をクロスしたりしたい気持ちを押さえ込み、必死に平静を装っているのだが。
しかし近くにいた女将が、蝶の顔色を見て、心配そうに首を傾げた。
「蝶様? お疲れでございますか?」
「……いえ、問題ありませんが」
蝶は平然と答える。
ぱたっ
しかしその瞬間、蝶の足元の板張りに水滴が落ち、彼はサッと血の気がひいた。
……こんな、何十人も周りに人がいるところでちびってしまえば、流石に勘付かれる……!
鳳梨と天藍の朗らかな商談の間、蝶はその横に静かに立っていた。
しかし内心は、強い尿意に苦しんでいた。
「……っ、……」
彼のパンパンに膨れ上がった膀胱に、先ほど飲み干した紅茶の水分がギュウギュウと入り込み、出口の括約筋を圧迫する。
気を抜けば、今にもその水分が勢いよく飛び出してしまいそうな程であった。
それでも、鳳梨やその従者に不自然に思われないため、出口をキュッと閉め、時折服の下でクロスした膝と膝をすり合わせる程度で、尿意を誤魔化していた。
そうして十五分後、二人の商談が終わる。
「ではよろしくね、鳳梨さん。……蝶、帰るよ」
「はい。鳳梨様、ありがとうございました」
蝶は精一杯、冷静な声で挨拶をする。
その服の下では、足がガクガクと震えていた。
旅館行きの船に乗るため、乗船場へ行く。
旅館に着くまで、今から十五分程だった。
しかし、蝶はそれすらも待てないほど、もう我慢の限界だった。
「……旦那様」
「ん?」
二人は、所謂VIPルームと称されるような、特別な人間だけが使用できる乗船場の待合室の個室にいた。もう少しで、目的の船が到着する。
蝶は意を決し、震える声で、天藍へ初めての言葉を告げた。
「お手洗いに、行かせてください……っ」
服の下で、貞操帯に開けられた一つの小さな穴から、我慢できなかった一滴の雫が溢れ、太腿を伝った。
蝶は、もう排泄を我慢することができなかった。
いつもの澄まし顔を苦痛に歪ませ、姿勢を崩し、引かせた腰をくねくねと艶めかしく揺らしていた。
その蝶の様子に、天藍は面白そうに聞いた。
「へえ、どうしてだい?」
「……っ……お小水が、したい、です」
また蝶の太腿に、たらりと一滴の液体が流れていく。蝶は慌てて、括約筋にキューッと力を込めた。
天藍は満足げな笑みを浮かべ、蝶に視線を合わせる。
「どれくらい?」
「……と、とても……っ」
「じゃあ、部屋に戻ったらね」
「………………」
部屋に戻ったら。
その言葉は、少なくともあと十五分の我慢を蝶に強要させることを意味していた。
蝶は腰を落ち着きなく揺らしながら、天藍をすがるような目で見つめた。
「い、今から、は……そちらに、お手洗いが」
公衆トイレへの看板を示すが、天藍は首を横に振る。
「二人で個室に入る気? 僕らを知っている誰かが見てたらどうするの?」
確かに、天藍の言う通りだ。旅館の評判に何かあったら困る。
……けれど、蝶は今にも、もう、
「僕、出張前に言ったよね? 二時間はトイレにいけないよ、って」
「……………」
そうだ、部屋を出てから、まだ二時間も経っていない。
蝶は絶望感に襲われ、また一滴、たらりと尿を出口から溢してしまった。
天藍は微笑んだまま、
「あと、その動き、人前ではみっともないからやめて欲しいんだけど」
「…………っ」
蝶は身体を揺らすのをやめ、引いた腰を伸ばした。
「んっ…!」
しかし途端に強い排泄欲求に襲われ、蝶は耐えられず、ショロッと、またほんの少しだけ漏らしてしまった。
……ぽたぽたぽたっ
とうとう、足元のコンクリートの床に、その液体が落ちた。
天藍は、すぐそれに気づき、ニヤリと笑った。
「蝶、ここはトイレじゃないよ?」
「違っ、こ、これはっ、汗、ですから……っ!」
蝶は慌ててそう否定するが、ぽたっ、ぽたっと、我慢できなかった熱い液体が、また二滴落ちる。
羞恥心で、蝶はその白い頬を真っ赤に染めた。
なんとかそのおもらしを止めたそのとき、目的の船が到着した。
天藍はくすりと笑い、
「そう。じゃあ、船に乗ろうか」
天藍と蝶は、船に乗り込んだ。
蝶は旅館までの十五分間、全ての気を、その出口を締めることに費やしていた。
しかしそれでも生理的欲求に耐えられず、おおよそ一分につき一、二度、ぽたりぽたりと貞操帯から雫を溢し、人知れず床を濡らしていた。
もちろん、天藍には見られており、水滴が落ちるたびに蝶は顔を覗かれ、その度に蝶は目を逸らし続けていたのだが。
旅館に着く頃には足元に小さな水たまりができてしまい、蝶は赤面したが、何せここは船だ、床の少しの水たまりなど、外から偶然に入りこんだ水飛沫と何も変わらず、誰も気に留めなかった。
そうしてなんとか、蝶は服を濡らすことなく、旅館にたどり着いた。
「おかえりなさいませ、旦那様、蝶様」
客の出入の多い夕方ということもあり、正面玄関で従業員が一斉に頭を下げた。
「皆、お疲れ様」
「ただいま戻りました」
天藍は微笑み、蝶は変わらずの無表情で挨拶をする。
もちろん、蝶は腰を揺らしたり足をクロスしたりしたい気持ちを押さえ込み、必死に平静を装っているのだが。
しかし近くにいた女将が、蝶の顔色を見て、心配そうに首を傾げた。
「蝶様? お疲れでございますか?」
「……いえ、問題ありませんが」
蝶は平然と答える。
ぱたっ
しかしその瞬間、蝶の足元の板張りに水滴が落ち、彼はサッと血の気がひいた。
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