二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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 その日は普段と違い1人家の周りを歩いていた。
 付いていくと言われたが考えたいこともあったので1人がいいと言えばくれぐれも家から離れるなと約束させられた。

 「愛されてますねぇ………」

 心地良い風を身体に受けながら見晴らしのいい場所を探す。
 方向音痴とは言えある程度は道は覚えた。
 念のため家が視界に入るように注意しながらも望む場所を探し歩き続ける。
 道々仲間たちに挨拶しながら老人のお散歩のようにゆっくりと周りを見て回る。

 「明るい所がいいですね」

 いつだって明るく自分以上に元気だった彼女に暗い場所は似合わない。

 「でもちゃんと風も感じられる場所で……」

 心配しながらも温かく見守ってくれた彼にもこの心地良い風を感じて欲しい。
 
 「周りに花でも植えますか」

 色とりどりの花を植えればきっと喜んでくれるだろう。
 どうしようかと考えながら歩き続けていれば小高い丘が見えてきた。
 あの上ならといいかもと登ろうとしたが登り口が見つからない。
 どうしようかと悩んでいればーー

 「わっ……ってスノーですか。驚いた」

 突如持ち上げられた身体に驚き振り向けば最早縁の何倍だろう大きさにまで成長したスノーがその長い尾を縁に巻きつけていた。

 「もしかして運んでくれるんですか?ありがとう」

 乗れとばかりに背に乗せられ登っていくスノーに感謝する。
 
 「スノーも大きくなりましたね。もう私が会った時のスノーのお母さんとそう変わりませんよ」

 「シュウシュ」
 
 初めて会った時はかなりの衝撃だったが、あの時託された卵がもうここまで大きくなったのかと感慨深い。
 日々成長していく子どもたちにも嬉しさ半分、そのままでいて欲しいという寂しさのようなものも半分ある。
 
 「背に乗せてもらうという約束も果たせましたね」

 いつか乗せて欲しいという約束が叶えられるほど大きくなったスノー。
 本当ならもう縁の手は必要ないだろうが今も一緒にいてくれる。
 寂しいからと手を離せない縁に、けれど嫌がることもなく他の子たちと同じようにママといいに甘え側にいてくれる。

 「……私は本当に我儘ですね」

 「シュウ?」

 周りはどう思っているか良い子だ、優し過ぎると言うが縁自身は自分のことを我儘で自己満足な怠け者だと思っている。
 きっと言えば皆は否定するだろうが、変われもしないだろうからそれでもいいかと開き直ってもいる。

 「ちょうど良いのでスノーのお母さんも一緒に並べてあげましょう」

 ここまで来たのは両親の墓を作るため。
 ならばその隣に1つ加えることに何も問題はない。
 両親ならばきっとスノーのお母さんを見ても驚きはしても嫌うことはないだろうから。
 怖いもの知らずな母など生きていれば興奮して喜んでいただろう。

 「ありがとうスノー。……うん、ここが良いですね」

 運んでもらった丘上は予想通り日も辺り風も感じられる気持ちの良い場所だった。
 適度な大きさの石を探し形よく削ると墓石にすることにした。
 母のためにと可愛らしい形にしようとも思ったが、以前ロンたちに絵心がないと言われたためそれは諦め名前だけ彫ることにしておいた。
 
 「……と言っても埋めるものはないんですけどね。スノーのお母さんには貰った鱗を埋めておきましょうか」

 遺骨も形見も持っていないため両親の墓は空だが、元々それが分かっていながら作ろうと思ったので問題はない。
 
 「ここなら私たちの家も周りも全て見渡せますね」

 きっとここから皆を優しく見守ってくれることだろう。
 
 「花は今度子どもたちを呼んで植えましょう。木を植えるのもいですね。夏は涼しいですし、雨風を凌いでもくれます」

 今でも両親のことを思い出すと悲しみはある。
 けれどそれ以上に楽しかった思い出も多く、今こうして家族に囲まれ幸せに暮らせている自分を両親にも知って欲しかった。
 ここに両親はいない。
 形ばかりの墓だが、縁の中にある両親が皆を見守ってくれているようにと作った。
 
 「………悲しかった。2人がいなくなって何度死にたいと思ったか分からない。でも…………よかった。生きててよかったって今は思える。まぁ死んでこちらに来たんですけどね」

 こちらに来るきっかけは自分の死だったが、それによって今の幸せが手に入った。
 寄り添うように近くに来たスノーを撫でるとギュッと抱きつく。

 「スノーはこちらに来て初めて出来た私の子です。とても大きくて、とても可愛くて、とても綺麗で、とても優しい私の子」

 人ではないが愛しい我が子。
 自慢の子だと両親の墓に言う。

 「子は持てないと諦めてましたけどたくさん出来ましたよ」

 同性愛者な自分は一生子は持てないと思っていた。
 両親には申し訳なかったが無理に女性と結婚しても幸せには出来ないと諦めていたのだ。
 だが今や自慢の子が6人もいる。
 血は繋がっておらずとも、人ではなかろうが大切な子たちだ。

 「私を愛してくれる人も4人も出来ました。母さんと似ていてすごく逞しい人たちです」

 番たちを母に似ているというのもどうかと思うが、見た目の割に男らしかった母が縁は大好きだった。
 
 「私の心配症は父さんに似たのかも」

 思い出すのはいつも無茶ばかりする母を心配そうに見つめる父の顔。
 大切な人に似た大切な人たちが出来た。
 
 「今度はみんなを連れて来ますね。2人にも私の大切な家族を見てもらいたい。ありがとう、私を産んでくれて。ありがとう、私を育ててくれて。ありがとう………私を愛してくれて」

 今胸を張って言える。

 「私は幸せです」

 今度はみんなを連れてくると約束するとスノーと2人家族が待つ家へと一緒に帰るのだった。

 


 
 



 
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