二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
304 / 475

感謝を

しおりを挟む
 その日は普段と違い1人家の周りを歩いていた。
 付いていくと言われたが考えたいこともあったので1人がいいと言えばくれぐれも家から離れるなと約束させられた。

 「愛されてますねぇ………」

 心地良い風を身体に受けながら見晴らしのいい場所を探す。
 方向音痴とは言えある程度は道は覚えた。
 念のため家が視界に入るように注意しながらも望む場所を探し歩き続ける。
 道々仲間たちに挨拶しながら老人のお散歩のようにゆっくりと周りを見て回る。

 「明るい所がいいですね」

 いつだって明るく自分以上に元気だった彼女に暗い場所は似合わない。

 「でもちゃんと風も感じられる場所で……」

 心配しながらも温かく見守ってくれた彼にもこの心地良い風を感じて欲しい。
 
 「周りに花でも植えますか」

 色とりどりの花を植えればきっと喜んでくれるだろう。
 どうしようかと考えながら歩き続けていれば小高い丘が見えてきた。
 あの上ならといいかもと登ろうとしたが登り口が見つからない。
 どうしようかと悩んでいればーー

 「わっ……ってスノーですか。驚いた」

 突如持ち上げられた身体に驚き振り向けば最早縁の何倍だろう大きさにまで成長したスノーがその長い尾を縁に巻きつけていた。

 「もしかして運んでくれるんですか?ありがとう」

 乗れとばかりに背に乗せられ登っていくスノーに感謝する。
 
 「スノーも大きくなりましたね。もう私が会った時のスノーのお母さんとそう変わりませんよ」

 「シュウシュ」
 
 初めて会った時はかなりの衝撃だったが、あの時託された卵がもうここまで大きくなったのかと感慨深い。
 日々成長していく子どもたちにも嬉しさ半分、そのままでいて欲しいという寂しさのようなものも半分ある。
 
 「背に乗せてもらうという約束も果たせましたね」

 いつか乗せて欲しいという約束が叶えられるほど大きくなったスノー。
 本当ならもう縁の手は必要ないだろうが今も一緒にいてくれる。
 寂しいからと手を離せない縁に、けれど嫌がることもなく他の子たちと同じようにママといいに甘え側にいてくれる。

 「……私は本当に我儘ですね」

 「シュウ?」

 周りはどう思っているか良い子だ、優し過ぎると言うが縁自身は自分のことを我儘で自己満足な怠け者だと思っている。
 きっと言えば皆は否定するだろうが、変われもしないだろうからそれでもいいかと開き直ってもいる。

 「ちょうど良いのでスノーのお母さんも一緒に並べてあげましょう」

 ここまで来たのは両親の墓を作るため。
 ならばその隣に1つ加えることに何も問題はない。
 両親ならばきっとスノーのお母さんを見ても驚きはしても嫌うことはないだろうから。
 怖いもの知らずな母など生きていれば興奮して喜んでいただろう。

 「ありがとうスノー。……うん、ここが良いですね」

 運んでもらった丘上は予想通り日も辺り風も感じられる気持ちの良い場所だった。
 適度な大きさの石を探し形よく削ると墓石にすることにした。
 母のためにと可愛らしい形にしようとも思ったが、以前ロンたちに絵心がないと言われたためそれは諦め名前だけ彫ることにしておいた。
 
 「……と言っても埋めるものはないんですけどね。スノーのお母さんには貰った鱗を埋めておきましょうか」

 遺骨も形見も持っていないため両親の墓は空だが、元々それが分かっていながら作ろうと思ったので問題はない。
 
 「ここなら私たちの家も周りも全て見渡せますね」

 きっとここから皆を優しく見守ってくれることだろう。
 
 「花は今度子どもたちを呼んで植えましょう。木を植えるのもいですね。夏は涼しいですし、雨風を凌いでもくれます」

 今でも両親のことを思い出すと悲しみはある。
 けれどそれ以上に楽しかった思い出も多く、今こうして家族に囲まれ幸せに暮らせている自分を両親にも知って欲しかった。
 ここに両親はいない。
 形ばかりの墓だが、縁の中にある両親が皆を見守ってくれているようにと作った。
 
 「………悲しかった。2人がいなくなって何度死にたいと思ったか分からない。でも…………よかった。生きててよかったって今は思える。まぁ死んでこちらに来たんですけどね」

 こちらに来るきっかけは自分の死だったが、それによって今の幸せが手に入った。
 寄り添うように近くに来たスノーを撫でるとギュッと抱きつく。

 「スノーはこちらに来て初めて出来た私の子です。とても大きくて、とても可愛くて、とても綺麗で、とても優しい私の子」

 人ではないが愛しい我が子。
 自慢の子だと両親の墓に言う。

 「子は持てないと諦めてましたけどたくさん出来ましたよ」

 同性愛者な自分は一生子は持てないと思っていた。
 両親には申し訳なかったが無理に女性と結婚しても幸せには出来ないと諦めていたのだ。
 だが今や自慢の子が6人もいる。
 血は繋がっておらずとも、人ではなかろうが大切な子たちだ。

 「私を愛してくれる人も4人も出来ました。母さんと似ていてすごく逞しい人たちです」

 番たちを母に似ているというのもどうかと思うが、見た目の割に男らしかった母が縁は大好きだった。
 
 「私の心配症は父さんに似たのかも」

 思い出すのはいつも無茶ばかりする母を心配そうに見つめる父の顔。
 大切な人に似た大切な人たちが出来た。
 
 「今度はみんなを連れて来ますね。2人にも私の大切な家族を見てもらいたい。ありがとう、私を産んでくれて。ありがとう、私を育ててくれて。ありがとう………私を愛してくれて」

 今胸を張って言える。

 「私は幸せです」

 今度はみんなを連れてくると約束するとスノーと2人家族が待つ家へと一緒に帰るのだった。

 


 
 



 
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

処理中です...