愛して、哀して、胎を満たして

白亜依炉

文字の大きさ
上 下
16 / 19
監禁前夜

六話・回帰、そして始まったモノ③

しおりを挟む
 後背位をとらされた挙句、なぜか暴れたくとも体が動かぬアイネは与えられる刺激と快楽に女人のように喘ぐほかない。握りしめたシーツは大小入り乱れた皺を作って、縋りついた枕は唾液と涙に濡れそぼる。

(きもちぃ。きもちいい。ちがう。駄目だ。違う。なんで、メアが、ちがう。だって、こんなことシたくない。抱かれたい気分だったけど、本当だけど、メアを穢すのは違う。ちがう、穢すなんて幻想だ。だって、こんなにも、コイツは、愛撫が上手い。ちがう、なんで、どうして、)

 飢えた体に流し込まれる濁流に戸惑いながらも思考を紡ぐ。何度も何度も同じところを通りながら、乱れた思考はそれでも現実を否定したがった。「どれだけ否定しようとも現実は変わらない」と絶望する自身の声を聞きながら。
 けれど、そんな現実逃避も長くは続かなかった。

「はぁ……ごめんね、ちょっと焦らしすぎちゃった。挿れるね」
「ひぁぁっ……え、な……挿れる、って……」

 ちゅぽっと水音を伴ってメアの指がアイネの体内から抜けて、代わりに、秘部に、ソレが当てられて……。アイネに備わった女性の象徴に熱源を当てられ、ぞわりと背筋が粟立った。本気だ。本気なのだ、この男は。

 おそるおそる振り返った。
 視界に映ったのは高揚したように舌なめずりをするメアと、雄々しく天を向くメアの男性器と、煌々とつけられたままの白色の照明。照明を真っすぐに見つめてしまったせいでまた目がチカチカくらくらしてくる……が、今度は本当にそれが灯りのせいなのかは分からなかった。
 それでも、声を震わせながらアイネはメアに懇願をする。

「ま、待って。待てって!! なあ!」
「大丈夫。ちゃんと俺が満たしてあげる。愛してあげる。だって、それがアイネのしたかったことでしょ?」
「ちが、そうじゃなくて…っ、な、なぁ! メア、聞いて……うぁっ、」


 その言葉は、ついぞ聞き入れられなかったけれど。




「ひ、やっ、あぁぁっ、やめ、抜け、抜けってば、…あぁっ」
「ぐっ、あっつ…………あは、あははっ、アイネのナカ、あったかいねぇ……」

 うっそりと笑うその顔は、どうしてもメアには見えなくて。
 がっしりと掴むその腕が、どうしても彼の物には思えなくて。

(ちがう、ちがう、これはちがう……)

 信じてもない神に願わずにはいられない。これは夢だと言ってほしかった。けれど、アイネの切実な願いを叶えてくれる者は居らず、喘ぎを押し殺す為に抱き寄せた枕は歪に茹んだ。
 ほろほろと涙が頬を伝って枕やシーツに染みを増やす。濡れた部位をさらりと撫でて、後背位で緩やかに責め立てるメアは一人勝手な睦言を囁く。

「大丈夫だよ。アイネ」
「俺はもうずーっと一緒だから」
「これからはもう誰にも近付けさせない。触れさせない」
「アイネは何も心配いらないんだよ」
「だから、」

 言葉は途切れ、ぎゅっと強くメアがアイネを抱きしめた。そうしてそのまま、彼の掌はアイネの腹部をゆっくりと撫で始める。大切で愛おしいものを慈しむが如く、肌に触れる指先は優しく柔らかい。同意のない性交を、強姦をしているとは思えない。
 それでも、その背に口付けてから紡がれた言葉はやはりどこか狂気を含んでいて、

「大丈夫、俺がずっと愛して孕ませてあげる」

 流しこまれた言ノ葉が、もう戻れないと告げていた。
しおりを挟む
一言メモ(更新:2024/06/24)更新が一年振りと気付いて自分でドン引きました……申し訳ない……。ゆっくり更新にもほどがある!
感想 0

あなたにおすすめの小説

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

頭の上に現れた数字が平凡な俺で抜いた数って冗談ですよね?

いぶぷろふぇ
BL
 ある日突然頭の上に謎の数字が見えるようになったごくごく普通の高校生、佐藤栄司。何やら規則性があるらしい数字だが、その意味は分からないまま。  ところが、数字が頭上にある事にも慣れたある日、クラス替えによって隣の席になった学年一のイケメン白田慶は数字に何やら心当たりがあるようで……?   頭上の数字を発端に、普通のはずの高校生がヤンデレ達の愛に巻き込まれていく!? 「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」 美形ヤンデレ攻め×平凡受け ※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです ※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...