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追憶:泣沢女2
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水神の泣沢女と出会った巫女はその後も自分にあっていない泣き女という役柄をやっていた。
変わったことと言えば一つある。
涙が勝手に出てくるようになったのだ。ただひたすらに涙腺が緩むのを待つだけじゃなくなった、涙を流すときだけ巫女自身、誰かに憑依されているような感覚があった。
それに周りからの評判も良くなった。今までは「変な泣き方」だったり「儀式に相応しくない」など言いたい放題の村人達が多かった。
今では「神々しさが見える」なんて言われている。わけがわからない。
巫女は儀式の後またあの井戸へと向かった。
予想通り友人となった泣沢女が井戸の淵に座って待っていた。
「貴方の助けになっているようでよかった」
泣沢女は微笑ましい表情を見せると巫女の側までやってくる。
泣沢女は巫女に1つの朝顔を渡した。
「屋敷の側で咲いている。綺麗だから貴方にあげるわ」
巫女はそれを受け取ると空にかざして透かして見る。とても美しい青い朝顔だった。
ありがとう
巫女はそういうと朝顔に口づけをし泣沢女の耳へとかけた。
泣沢女は驚いていたがとても嬉しそうに笑った。巫女はそれを見てこの神と人間の隔てがないことに感謝している。とてもこの時間が楽しい。
儀式の後に井戸に向かっては泣沢女とたわいのない話をしていた。
そんなある日、巫女のもとに村の者達がやってきた。
そしてこう言う。
「最近巫女殿が死者と会話をしていると言う噂が立っている。それが事実というのなら巫女としての役目を放棄しているも同然だ」
私は泣き女としてちゃんと死者を弔っています、何か不満がございますでしょうか
「井戸で誰もいないのに話しかけているってもっぱら噂だぜ、それによぉ村でも最近霊の被害が多いいんだ、そこのところどうなのよ?巫女様は」
悪い噂が立ってしまった。
泣き女の一家に養子として迎え入れられた巫女はそもそも村からの信用が少ない。血筋を引いていないから、本当に巫女としての役目を果たせているか村の者達は目をギラギラとさせている。
最近までは巫女のことを神々しいなんて言っていたくせに、悪い噂はすぐに広まる。
「この村から出て行ってもらおうか、巫女殿」
心臓が脈打つ。
焦燥感や失望感、ドロドロの感情が巫女の内側にあった。
そもそも巫女がいなくなった後儀式はどうなるのか、泣き女がいなくなるのは大丈夫なのか。村の合意でまた新しい泣き女を作り上げるのだろうか。
考えることすべてが馬鹿馬鹿しくなり巫女は冷笑した。
分かりました、出て行きます
そういうと巫女は井戸へと向かった。
村の外れにある井戸はあまり誰もこない。なのに村の者達に見られてしまった。井戸へ向かう途中巫女は色々なことを考えていた。
泣沢女は今日も井戸で待っているはずだ。早く、この村から離れるべきだったのだ。
足取りがだんだんと軽くなっていた。けれどその足取りがぴたりと止まる。
後頭部に強い衝撃を受けた。
痛い
視界が曲がり、何かが飛んでいる。体制を崩した巫女は誰かに押さえつけられた。
そして何度も何度も、何度も固いもので何かに殴られた。
それは死を連想させる。
「貴方のせいで!!弔えなかったせいで!!私の夫は怒り狂ってる!!怖くて、怖くて、怖くてたまらないのよ!!」
そう叫びながら木の棒を振りかざす姿が見える。
巫女の意識が途絶えた。
いつもより井戸に来るのが遅い巫女が心配になった泣沢女は村の様子を見てこようと思った。立ち上がると泣沢女はいつも巫女が通る道を歩く。しかし、道中血痕が見えた。
不穏な気配と虫の音に泣沢女はあたりを見回した。
あるのは血のついた木の棒。
冷や汗を流しながら、あたりを探し回る。
涙が出てきた。そして雨も降る。まるで今の焦燥感を表しているかのように雨は降ってきた。
あたりを見回しても、探しても誰もいなかった。ふと、気付いた泣沢女は崖の下を見た。
雨の音が強くなる。
崖の下にいたのは赤い小袖を着た少女。血に染まったその小袖は緑の生い茂る中、よく目立つ。
泣沢女は急いで崖下へと降りた。降りてすぐ気づいた。
巫女が死んでいる。
傍に立つとそっと巫女の冷え切った手を握った。
水神には死者を蘇らせる力などない。
「嫌よ…………!死なないで……!」
泣き叫びながら泣沢女は言った。
泣沢女が巫女の目を見つめていると、ほんの微かだが、口元が動いたような気がした。
何も聞き取れない。雨の音と心臓の音が強すぎて、何も聞こえない。
けれど泣沢女にはわかる。
巫女が何度も何度も言ってくれたその言葉。
ひとりぼっちの巫女に友として寄り添ってくれて、
沢山の愛をくれて、
「ありがとう」
そう言った。
巫女の目は死んだ者となった。
泣沢女は一日中泣いた。
雨はその日一日中降り続けた。
変わったことと言えば一つある。
涙が勝手に出てくるようになったのだ。ただひたすらに涙腺が緩むのを待つだけじゃなくなった、涙を流すときだけ巫女自身、誰かに憑依されているような感覚があった。
それに周りからの評判も良くなった。今までは「変な泣き方」だったり「儀式に相応しくない」など言いたい放題の村人達が多かった。
今では「神々しさが見える」なんて言われている。わけがわからない。
巫女は儀式の後またあの井戸へと向かった。
予想通り友人となった泣沢女が井戸の淵に座って待っていた。
「貴方の助けになっているようでよかった」
泣沢女は微笑ましい表情を見せると巫女の側までやってくる。
泣沢女は巫女に1つの朝顔を渡した。
「屋敷の側で咲いている。綺麗だから貴方にあげるわ」
巫女はそれを受け取ると空にかざして透かして見る。とても美しい青い朝顔だった。
ありがとう
巫女はそういうと朝顔に口づけをし泣沢女の耳へとかけた。
泣沢女は驚いていたがとても嬉しそうに笑った。巫女はそれを見てこの神と人間の隔てがないことに感謝している。とてもこの時間が楽しい。
儀式の後に井戸に向かっては泣沢女とたわいのない話をしていた。
そんなある日、巫女のもとに村の者達がやってきた。
そしてこう言う。
「最近巫女殿が死者と会話をしていると言う噂が立っている。それが事実というのなら巫女としての役目を放棄しているも同然だ」
私は泣き女としてちゃんと死者を弔っています、何か不満がございますでしょうか
「井戸で誰もいないのに話しかけているってもっぱら噂だぜ、それによぉ村でも最近霊の被害が多いいんだ、そこのところどうなのよ?巫女様は」
悪い噂が立ってしまった。
泣き女の一家に養子として迎え入れられた巫女はそもそも村からの信用が少ない。血筋を引いていないから、本当に巫女としての役目を果たせているか村の者達は目をギラギラとさせている。
最近までは巫女のことを神々しいなんて言っていたくせに、悪い噂はすぐに広まる。
「この村から出て行ってもらおうか、巫女殿」
心臓が脈打つ。
焦燥感や失望感、ドロドロの感情が巫女の内側にあった。
そもそも巫女がいなくなった後儀式はどうなるのか、泣き女がいなくなるのは大丈夫なのか。村の合意でまた新しい泣き女を作り上げるのだろうか。
考えることすべてが馬鹿馬鹿しくなり巫女は冷笑した。
分かりました、出て行きます
そういうと巫女は井戸へと向かった。
村の外れにある井戸はあまり誰もこない。なのに村の者達に見られてしまった。井戸へ向かう途中巫女は色々なことを考えていた。
泣沢女は今日も井戸で待っているはずだ。早く、この村から離れるべきだったのだ。
足取りがだんだんと軽くなっていた。けれどその足取りがぴたりと止まる。
後頭部に強い衝撃を受けた。
痛い
視界が曲がり、何かが飛んでいる。体制を崩した巫女は誰かに押さえつけられた。
そして何度も何度も、何度も固いもので何かに殴られた。
それは死を連想させる。
「貴方のせいで!!弔えなかったせいで!!私の夫は怒り狂ってる!!怖くて、怖くて、怖くてたまらないのよ!!」
そう叫びながら木の棒を振りかざす姿が見える。
巫女の意識が途絶えた。
いつもより井戸に来るのが遅い巫女が心配になった泣沢女は村の様子を見てこようと思った。立ち上がると泣沢女はいつも巫女が通る道を歩く。しかし、道中血痕が見えた。
不穏な気配と虫の音に泣沢女はあたりを見回した。
あるのは血のついた木の棒。
冷や汗を流しながら、あたりを探し回る。
涙が出てきた。そして雨も降る。まるで今の焦燥感を表しているかのように雨は降ってきた。
あたりを見回しても、探しても誰もいなかった。ふと、気付いた泣沢女は崖の下を見た。
雨の音が強くなる。
崖の下にいたのは赤い小袖を着た少女。血に染まったその小袖は緑の生い茂る中、よく目立つ。
泣沢女は急いで崖下へと降りた。降りてすぐ気づいた。
巫女が死んでいる。
傍に立つとそっと巫女の冷え切った手を握った。
水神には死者を蘇らせる力などない。
「嫌よ…………!死なないで……!」
泣き叫びながら泣沢女は言った。
泣沢女が巫女の目を見つめていると、ほんの微かだが、口元が動いたような気がした。
何も聞き取れない。雨の音と心臓の音が強すぎて、何も聞こえない。
けれど泣沢女にはわかる。
巫女が何度も何度も言ってくれたその言葉。
ひとりぼっちの巫女に友として寄り添ってくれて、
沢山の愛をくれて、
「ありがとう」
そう言った。
巫女の目は死んだ者となった。
泣沢女は一日中泣いた。
雨はその日一日中降り続けた。
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