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No.50
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(怖っ…!)
あんなに怖い兄を、サーシャは見た事が無かった。
兄は、サーシャの前では何時も蕩ける様な甘い笑顔を浮かべている。そんな兄が、まるでゴミを見る様な目でこの国の王子を見つめていた。
「やぁ、アラン。……全く、君くらいだよ。王子である私をそんな目で見るのは。本来なら、不敬罪で家族にまで類が及ぶよ?」
「いいの?」と言わんばかりに、クリスは意地悪く笑いながらアランに問いかける。
しかし、アランは動揺一つせずに言った。
「その時は、アベルシュタイン家全員で他国に亡命します」
「冗談だよね?」
「本気です」
真面目な顔で言い切るアランに、クリスは苦笑いを浮かべて降参した。
「冗談だよ。だがら、真面目な顔で亡命するなんて言わないでくれ。そんな事になったら、私が父上に叱られてしまう」
「そのまま、性格も矯正して貰えばいいんじゃ無いか?」
そう言って、アランはサーシャの元に早足で近寄る。そうして、サーシャを抱き上げると心配そうに声をかける。
「サーシャ、大丈夫?この腹黒性悪王子に、何かされなかったか?何処も、触られて無いか?」
「おいおい、私は変質者扱いか?」
クリスの言葉を無視して、アランはサーシャの全身を隈無くチェックする。そうして、クリスが口付けをした一房の髪に目を止める。
「………お前、サーシャのこの髪に触れたな?」
ーー何故分かった。
サーシャは勿論の事、クリスも何も言っていない。何より、クリスが口付けした時にアランは居なかった。これには、流石のクリスも引き攣った笑みを浮かべる。
「………アラン?どうして、そう思ったんだ?」
「此処から、お前の匂いがする」
「いや、それ本当に怖いから」
(同感です)
クリスは、真顔でそう言った。
流石のサーシャも、この言葉には少し…いや、かなりドン引きだ。
「可哀想に。直ぐにお風呂で綺麗にしてあげたいけど、父様がサーシャを呼んでいるんだ」
「お父様が?」
「うん、だがら行こうね。………お前も来い」
サーシャには甘く、クリスには冷たくそう言ってアランは歩き出す。
「全く、本当にアランはいい度胸してるよね」
そう言って、クリスも文句を言わずに後に続く。アランに運ばれている途中、さり気無くクリスを見る。すると、ずっと此方を見ていたのだろう。バチっと目が合う。
そうして、クリスが目で語り掛けてきた。
『また後でね』
それに対して、サーシャは無視を決め込んで返事を返す。
(もう二度と会いたくないわ)
だが、この王子は何らかの理由を付けて会いに来るだろう事は容易に想像出来た。出そうになる溜息を飲み込んだ所で、応接室に着いたのだった。
あんなに怖い兄を、サーシャは見た事が無かった。
兄は、サーシャの前では何時も蕩ける様な甘い笑顔を浮かべている。そんな兄が、まるでゴミを見る様な目でこの国の王子を見つめていた。
「やぁ、アラン。……全く、君くらいだよ。王子である私をそんな目で見るのは。本来なら、不敬罪で家族にまで類が及ぶよ?」
「いいの?」と言わんばかりに、クリスは意地悪く笑いながらアランに問いかける。
しかし、アランは動揺一つせずに言った。
「その時は、アベルシュタイン家全員で他国に亡命します」
「冗談だよね?」
「本気です」
真面目な顔で言い切るアランに、クリスは苦笑いを浮かべて降参した。
「冗談だよ。だがら、真面目な顔で亡命するなんて言わないでくれ。そんな事になったら、私が父上に叱られてしまう」
「そのまま、性格も矯正して貰えばいいんじゃ無いか?」
そう言って、アランはサーシャの元に早足で近寄る。そうして、サーシャを抱き上げると心配そうに声をかける。
「サーシャ、大丈夫?この腹黒性悪王子に、何かされなかったか?何処も、触られて無いか?」
「おいおい、私は変質者扱いか?」
クリスの言葉を無視して、アランはサーシャの全身を隈無くチェックする。そうして、クリスが口付けをした一房の髪に目を止める。
「………お前、サーシャのこの髪に触れたな?」
ーー何故分かった。
サーシャは勿論の事、クリスも何も言っていない。何より、クリスが口付けした時にアランは居なかった。これには、流石のクリスも引き攣った笑みを浮かべる。
「………アラン?どうして、そう思ったんだ?」
「此処から、お前の匂いがする」
「いや、それ本当に怖いから」
(同感です)
クリスは、真顔でそう言った。
流石のサーシャも、この言葉には少し…いや、かなりドン引きだ。
「可哀想に。直ぐにお風呂で綺麗にしてあげたいけど、父様がサーシャを呼んでいるんだ」
「お父様が?」
「うん、だがら行こうね。………お前も来い」
サーシャには甘く、クリスには冷たくそう言ってアランは歩き出す。
「全く、本当にアランはいい度胸してるよね」
そう言って、クリスも文句を言わずに後に続く。アランに運ばれている途中、さり気無くクリスを見る。すると、ずっと此方を見ていたのだろう。バチっと目が合う。
そうして、クリスが目で語り掛けてきた。
『また後でね』
それに対して、サーシャは無視を決め込んで返事を返す。
(もう二度と会いたくないわ)
だが、この王子は何らかの理由を付けて会いに来るだろう事は容易に想像出来た。出そうになる溜息を飲み込んだ所で、応接室に着いたのだった。
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