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こわがり花りんと魔王サマ
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しおりを挟む「なに、これ……?」
「茶色い妖怪の攻撃」
「ひ……っ!?」
どうやら、さっき建物が崩れるような音は、これが原因らしかった。
こんなのが体に当たったら、一発で死んじゃうって……!
「千景くん、助けてくれてありがとう……!」
お礼を言うわたしに、千景くんは「なぁ」と不満げな声だ。
「お前は、アレをどうしたいわけ?
なんでさっき、俺を止めた?」
――ジャマなんだよ、どけ!
――いや、どかない!
「そ、それは……」
茶色の妖怪を、チラリと見る。
すると妖怪も、ずっと私たちを見ていた。
『ニンゲン、絶対に許さない……!』
妖怪は、まだモヤのまま。
だけど、そのモヤの中央に、赤い目が浮き上がった。
その目は、モヤと一緒にユラユラ動く。
すると、なんだか妖怪が、泣いているように見えた。
「あの妖怪は……人間に、怒ってるんだよ」
「それで?」
「どうして怒ってるか、話だけでも聞いてあげたいなって……」
「……」
千景くんを見ると、オニみたいな顔をした彼と目が合った。
ヒ―!
ここにも一匹、妖怪がいます!
「そんなあほくさい理由で、俺を止めたのか」
「あ、アホくさいって……!
人間に怒っているのに、理由も聞かずに一方的に祓ったら……。
恨みが残って、また新しい妖怪が生まれるかもしれないよ!?」
「そんときゃ、また祓えばいいだけの話だ」
「う……」
でも、それじゃあ……。
恨みから生まれた妖怪は、いつ自由になるの?
妖怪だからって、話も聞かずに祓うのは、違う気がする……。
――こわがりの花りん~
――こわがりちゃーん
「……っ」
一方的な態度は、必ず、相手を傷つける――
わたしはソレを、痛いほど知っている。
「わたしは、やっぱり話を聞いてあげたい。
妖怪が、どうして人間に怒ってるか、話を聞く。
祓う祓わないは、その後に考えるってことで……どう?」
「……」
すると千景くんは、構えていた手をスッと降ろした。
そして「あほらし」と。
一言だけ呟いて、この場から立ち去ろうとする。
ん?
”立ち去ろうとする”!?
ガシッ
「おわ! ビックリした。なんだよ、離せよ」
「絶対にイヤ! どうして帰ろうとするの!?」
去ろうとする千景くんの腕を、ガッチリ捕える。
この状況で、わたしを一人にしないでよ!
「そもそも、千景くんが妖怪に会いたいって言ったんじゃん!」
「うるせーな。お目当ての妖怪じゃなかったんだよ。
それに――
お前にはお前のやり方があるんだろ? じゃあ、やってみろよ」
「千景くん……っ」
なんだかんだ、心の底では応援してくれるの?
あの千景くんに、少しだけ胸がときめいたよ!
だけど――
「俺は巻き込まれたくないから退散するけどな」
「それはアンマリだよ、千景くん!」
胸のときめきが、一気に動悸へと変わる。
まさか、応援の「お」の字もないとは……!
クラスメイトがピンチだってのに、ハクジョー者!
「ちょっとは手伝ってくれても、」
「自分でまいた種だろ。自分でオトシマエをつけろってこった」
そして、すたこらっさっさ、と。
千景くんは、本当に行ってしまった。
……いいもん。
こうなったら、わたし一人でなんとかするもん!
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