こわがりちゃんとサイキョーくん!

またり鈴春

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こわがり花りんと魔王サマ

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「あわわわわわ、わわわ……!」

 唇が震えて、声にならない声が出る。
 本当は、今すぐにでも逃げ出したい。
 怖い妖怪から、一秒でも早く逃げたいよ!

「なんで、わたしばかり、いつもこんな目に……!」

 どうして、わたしは妖怪が視えるんだろう?
 なぜか妖怪には、私が「視える人」ってバレてるし……。
 朝みたいに「妖怪から話し掛けられる」事はしょっちゅうだし!
 他の人は視えないのに、どうしてわたしだけなの!?

「~っ!」

 悲しくなって、思わず目をつむる。
 すると――
 震えるわたしの肩に、大きな手が乗っかった。

 ポンッ

「いやー! 妖怪ー!」
「ちげーよ! 俺だ!!」
「あ、なんだ。千景くんか……」

 妖怪じゃないと分かり、安心する。
 だけど千景くんは、ホッとしたわたしの背中を、思い切り叩いた。
 まるで、カツをいれるように。

 バシンッ

「いったー!?」
「おい。妖怪を前に、気を抜いたり、暗くなったりすんじゃねーよ。
 すぐ”乗っ取られる”ぞ」
「え、”乗っ取られる”……?」

 不思議に思っていると、千景くんは二本の指をピンと空に伸ばし、とあるポーズをした。
 え……あの構えって、確か!

「こっちが乗っ取られる前に――聞きたいことだけ聞いて、さっさと祓うぞ!」

 あのポーズは、陰陽師がよくする「祓い」のポーズ!
 どうして千景くんが!?
 っていうか、妖怪を祓えるの!?
 ワタワタ慌てるわたしをムシして、千景くんは祓いのポーズのまま、ゆっくりモヤに近づく。

「おい妖怪、聞きたいことがある。
 お前は、妖怪がかけた呪いを解く方法を、知っているか?」
『……』

 大人しいから、もしかしたら話を聞いてくれる妖怪なのかな?って。
 そう思った時だった。

『ギャオ―!!』

 モヤは、ケモノみたいな声を出す。
 まるで、千景くんを威嚇しているみたいだ。

「また”コレ”か。お話にならねーな」
「お話しにならなかったら、どうするの……!?」

 すると千景くんは「決まってるだろ」と、モヤを見つめた。

「何も情報を持ってないなら、この妖怪に用はない。
 だけど、野放しにしたら被害が出る凶暴さだ。
 だったら祓う――それだけだ」
「え……」

 妖怪に向かって突進していく千景くん。
 そんな彼に、必死に手を伸ばす。

「待ってよ!!」

 グイッ

 わたしは間一髪で、千景くんの腕をつかまえる。
 そして「滅」と構えた手を、わたしの両手で覆った。

「な……ジャマなんだよ、どけ!」
「いや、どかない!」
「どかないと、俺もお前も、あの妖怪に――!」

 その時。
 千景くんが何かに気付き、私の頭を、思い切り下に押した。
 それと同時に、すぐ近くで、

 ガガッ

 と、建物が崩れるような音が響く。
 な、何の音!?
 まるで工事現場みたいな音がしたよ!?

「ふー。間一髪だったな」
「いったい、何が……」
「アレを見ろ」

 千景くんは、ある方向を指さす。
 そこは、校舎の壁。
 だけど校舎の壁に……恐竜が爪でひっかいたの?ってくらい、大きな傷が何本も入っていた。
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