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それからの生活
部屋、どうしよう 36
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里帰り出産は選択しなかった。
なぜなら、私の実家は、蛙が夜中にミュージカルを開催するくらいにど田舎だから。
病院はあることはあるのだけれども、ちょっと設備的に心配なのだ。
ちゃんとした無免許ではない医者が診てくれるのだとは分かっているが、当然のようにNICU(新生児集中治療室)なんて物は、ない。
もし、産まれた子どもがそういった設備を必要とする状態で産まれたのならば、病院から病院へ救急車を使って搬送されることになる。
万一の場合、そんなことで間に合うのかどうか……。
心配のし過ぎかもしれないが、つい怖くなった。
それで、今の住まいの近くの病院で産むことにしたのだ。
「ならば、この部屋を片付けなければなるまい!」
モドキが断言する。
「ええ、面倒なんだけれども……」
大きくなったお腹。動くのはおっくうだ。
「しかし、この部屋では、『リボン』がどのような事故に遭うか分からん!!」
モドキよ。強引に『リボン』と呼び続けて、名前として定着させる作戦だな。
そういう姑息な手段は、どうかと思うぞ!
でも、そんな事は置いておくとして、ちょっと部屋を見渡せば、不安になってくる。
確かに……。
私の推しグッズ、マロンのおもちゃ、モドキのDVDセット……。
物で溢れ返ったこの部屋。
いわゆる生ごみや空き缶のようなゴミが溜まっている訳ではないが、赤ちゃんが住まうスペースが見当たらない。
え、今からもうちょっと広い家に引っ越すの?
無理でしょ!
「ワン!」
「おお、マロンは聡明じゃな。それも良き案じゃ」
何かをマロンが提案したらしい。
「マロンが、『柏木の部屋としばらくチェンジすればどうか』と申しておる。柏木の部屋の方が片付いているからの。ここよりもマシじゃ。薫が、柏木の部屋で育児を行っている間に、柏木に任せておれば、この部屋も自然と整頓した部屋に変わることじゃろう」
そ、それは、禁断の卑怯な方法。
優一さんの部屋を使った挙句に、私の部屋の片づけをさせるだなんて……。
いや、それは確かに、優一さんの性格だから、『いいですよ』の一言で実現するだろう。
そして、文句も言わずに部屋を片付けてくれるだろう。
待て。それ、卑怯なだけではない。
私の推しグッズを根こそぎ見られてしまうではないか。
それ……ちょっとどころでなく、困るな。夫婦といえども、その辺りのプライベートは大切にしたい。
「駄目でしょ。それは!」
「ふむ……では、自分で片付けるしかなかろう?」
だよね……でも、どうしよう。この部屋は、私と新生児、マロンとモドキで住まうには、ちょっと狭すぎる。
やっぱり、もっとお腹が小さなうちに引っ越しておくべきだった?
「難しく考える必要はない。ベストを考えれば、大きな部屋があった方が良いが、それが叶わぬならば、この溢れ返った荷物を整理して、一時的に預かってもらう事を考えればよいのじゃ。必要最低限。それだけを手元に置き、それ以外は、他の場所に。それこそ、柏木ならば、喜んで預かるだろう?」
そうか。そうよね。
何も最高の環境を目指さなくても、『それなり』を目指せば良いのだ。
うん。それなら、なんとかできそう。
優一さんには、悪いけれども、私の推しグッズを段ボールに入れて、それを優一さんの部屋で預かってもらえば良いのよ。そして、見たい時には、取りにいく。
それなら、何とかなりそうだ。
早速、用意した段ボール。
まず、モドキが入ってそこでくつろぐ。
普段、猫離れした行動しかしない癖に、突然、猫の本能をむき出しにするモドキ。
「何してるのよ。片付けろっていったのは、モドキでしょ? 邪魔なんだけれど」
文句を言う私を見て、モドキがやれやれとため息をつく。
「人間とは憐れなものじゃ。この段ボールの空間の良さを分からぬとは」
段ボールについてモドキが語り出す。
いいから、どいてくれ。せっかく片付ける決意をしたのに、何もできないではないか。
なぜなら、私の実家は、蛙が夜中にミュージカルを開催するくらいにど田舎だから。
病院はあることはあるのだけれども、ちょっと設備的に心配なのだ。
ちゃんとした無免許ではない医者が診てくれるのだとは分かっているが、当然のようにNICU(新生児集中治療室)なんて物は、ない。
もし、産まれた子どもがそういった設備を必要とする状態で産まれたのならば、病院から病院へ救急車を使って搬送されることになる。
万一の場合、そんなことで間に合うのかどうか……。
心配のし過ぎかもしれないが、つい怖くなった。
それで、今の住まいの近くの病院で産むことにしたのだ。
「ならば、この部屋を片付けなければなるまい!」
モドキが断言する。
「ええ、面倒なんだけれども……」
大きくなったお腹。動くのはおっくうだ。
「しかし、この部屋では、『リボン』がどのような事故に遭うか分からん!!」
モドキよ。強引に『リボン』と呼び続けて、名前として定着させる作戦だな。
そういう姑息な手段は、どうかと思うぞ!
でも、そんな事は置いておくとして、ちょっと部屋を見渡せば、不安になってくる。
確かに……。
私の推しグッズ、マロンのおもちゃ、モドキのDVDセット……。
物で溢れ返ったこの部屋。
いわゆる生ごみや空き缶のようなゴミが溜まっている訳ではないが、赤ちゃんが住まうスペースが見当たらない。
え、今からもうちょっと広い家に引っ越すの?
無理でしょ!
「ワン!」
「おお、マロンは聡明じゃな。それも良き案じゃ」
何かをマロンが提案したらしい。
「マロンが、『柏木の部屋としばらくチェンジすればどうか』と申しておる。柏木の部屋の方が片付いているからの。ここよりもマシじゃ。薫が、柏木の部屋で育児を行っている間に、柏木に任せておれば、この部屋も自然と整頓した部屋に変わることじゃろう」
そ、それは、禁断の卑怯な方法。
優一さんの部屋を使った挙句に、私の部屋の片づけをさせるだなんて……。
いや、それは確かに、優一さんの性格だから、『いいですよ』の一言で実現するだろう。
そして、文句も言わずに部屋を片付けてくれるだろう。
待て。それ、卑怯なだけではない。
私の推しグッズを根こそぎ見られてしまうではないか。
それ……ちょっとどころでなく、困るな。夫婦といえども、その辺りのプライベートは大切にしたい。
「駄目でしょ。それは!」
「ふむ……では、自分で片付けるしかなかろう?」
だよね……でも、どうしよう。この部屋は、私と新生児、マロンとモドキで住まうには、ちょっと狭すぎる。
やっぱり、もっとお腹が小さなうちに引っ越しておくべきだった?
「難しく考える必要はない。ベストを考えれば、大きな部屋があった方が良いが、それが叶わぬならば、この溢れ返った荷物を整理して、一時的に預かってもらう事を考えればよいのじゃ。必要最低限。それだけを手元に置き、それ以外は、他の場所に。それこそ、柏木ならば、喜んで預かるだろう?」
そうか。そうよね。
何も最高の環境を目指さなくても、『それなり』を目指せば良いのだ。
うん。それなら、なんとかできそう。
優一さんには、悪いけれども、私の推しグッズを段ボールに入れて、それを優一さんの部屋で預かってもらえば良いのよ。そして、見たい時には、取りにいく。
それなら、何とかなりそうだ。
早速、用意した段ボール。
まず、モドキが入ってそこでくつろぐ。
普段、猫離れした行動しかしない癖に、突然、猫の本能をむき出しにするモドキ。
「何してるのよ。片付けろっていったのは、モドキでしょ? 邪魔なんだけれど」
文句を言う私を見て、モドキがやれやれとため息をつく。
「人間とは憐れなものじゃ。この段ボールの空間の良さを分からぬとは」
段ボールについてモドキが語り出す。
いいから、どいてくれ。せっかく片付ける決意をしたのに、何もできないではないか。
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