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それからの生活

思わぬ強敵 21

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 西島は、本日も楽しそうにコウメの羽を撫でている。
 白いコウメの羽は、とても触り心地が良いし、コウメの方も、西島に撫でられてとても嬉しそうだ。

「西島……ちょっといい?」

 小松が何やら思いつめた顔で、西島に話しかけている。
 これ、僕がここに居ても良いのだろうか?

「なに? 小松」

 コウメを止まり木に移して、西島が小松に向き合う。
 何が始まるんだろう。ドキドキする。
 僕は、息を殺して、パソコンの影に隠れる。
 
「あのさ」

 小松の声が上ずっている。
 え、ひょっとして?
 ついに西島が女性だと小松が気づいたとか?

「あの……さ」

 ワクワクして僕は、物陰から見守る。
 もしそうならば、うまくいけばとても楽しい。
 三人しかいないゼミだから、ちょっと気まずい時や、僕邪魔かな? と思う瞬間が来るかもしれないが、それでも、ゼミの友達が幸せな関係になるなら、大歓迎だ。

 あ、……でも、西島が断ったら、どうなるんだろう。
 間に挟まれた僕は、どうしたら良いんだろう?
 まあ、そんな酷い振り方は、流石にゼミの仲間にはしないかな。たぶん。たとえ西島と言えども。

「何よ。さっさと言いなさいよ」

 もごもごと言い難そうにしている小松に、西島がイラつく。
 西島、待ってあげて! だって、とても勇気がいることなんだよ?
 頑張れ! 小松!

「えっと……西島ってさ……」

 彼氏がいるのかどうかを、先に確認するつもりかな?
 
「彼氏いるの?」

 おお、これを聞くということは、やっぱりそうなんじゃない?
 小松が西島に恋心を持ったというのは、決定じゃない?

「え? 彼氏?」

 思ってもみなかった質問だったようで、西島は戸惑っている。
 そう言えば、僕も知らない。
 西島、彼氏いるのかな?
 サバゲーとか、男性と知り合う機会の多い趣味を持っている西島だから、彼氏がいてもおかしくはない。
 人をリア充と揶揄っておきながら、自分もリア充だったというオチも十分にある。

「彼氏……ねえ」

 西島が考え込む。
 どういうこと? 彼氏がいるかいないかって、そんなに悩むこと? えっと、言うのか嫌ってことかな?
 人のことをリア充だとからかったくせに……。いやいや、それは、今は関係ない。

「わ、言い難かったらいいんだ」

 小松がひよる。
 そうだよな。そこを話してくれないということは、脈無しと考えて当然かもしれない。
 分かるよ。小松。それ以上は聞きにくいよな。

「別に言い難い訳ではないんだけれども、犬は彼氏に入る?」
「「犬?」」

 つい、僕も声を出してしまった。

「私には、命よりも大切な、『高見沢たかみー』という名前の飼い犬がいるのよ。それを彼氏とカウントするなら、完全に彼氏だなと思って」
「おお。なるほど……」
「だって、できればずっと傍にいたいし、癒しだし。それって彼氏も同然でしょ? オスだし」

 うーん。分からなくもない。僕にも、最愛のラクシュがいる。
 
「イケメンなのよね~。これよりもイケメンの男が来たら、人間の彼氏も考えなくもないかな♪」

 こ、これは……小松はフラれた?
 えっと、どうなんだろう?
 ライバルは、たかみー。ずいぶんと強敵だ。


 


 
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