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それからの生活

怪盗キャット 14

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 夜中。
 台所で動く小さな影がある。
 影は、冷蔵庫の上に登って、吊戸棚の扉を器用に開ける。

「薫め。こんなところに隠しおって」

 影が見つけたのは、ズワイガニのカニ缶。
 確か、薫の実家から届いた段ボールの中にあの缶詰があったはずなのに、いつも台所の下の方に置いてある缶詰や乾物を入れる箱に、あのカニ缶の姿だけがない。
 
 薫は、モドキが食べちゃうから、優一さんにあげた。と、言っていたが、そんなはずがない。あれは、薫の大好物でもある。自分で食わない訳がないし、柏木なら、薫の好物と知っている物を、そうですか、じゃあ、僕が食べますね! と、受け取らない。

「この儂の推理能力を甘くみおって! お見通しじゃ!」
 
 ジャンプすれば、ギリギリ届く高さ。
 飛んで前足で弾き落とせば、手に入れられるだろう。
 幸い、今、この部屋には、マロンしかいない。マロンは、スヤスヤと眠っている。薫は、隣の柏木の部屋にいる。警備は手薄だ。

 今なら、あのカニ缶を手に入れて、腹いっぱいに満喫できる。
 なんなら、冷蔵庫の冷えたビールを一本ついでに拝借してしまうのも、いいんじゃないか?
 だいたい、薫は厳しすぎる。
 猫なんだからと、ビールは、お猪口に少しだけ。カニ缶は、ネットで良くないという情報を得たらしく、喰わせてもらえなくなってしまった。
 この通り、儂は問題なく平気なのだから、もっと寄こせば良いのに。
 この、ラブリーモフモフバディには、きっとその方が良い。痩せては、質感が良くなくなるだろう。

 さあ、獲物は目の前だ。
 モドキは、猫の身体能力を生かして、高々と飛び上がる。

 全ては、あの秘宝かにかんを手に入れるため。

「もらったぁ!!」

 モドキは計算通りに、飛び上がってカニ缶を台所の床に弾き落とす。
 ガラガラと大きな音を立ててカニ缶は台所の床に転がる。
 完全なる勝利だ!!

「そこまでよ!!」

 突然、玄関が開いて、薫と柏木が顔を出す。

「すごい! さすがモドキちゃん!! あんな高い吊戸棚から取り出せちゃうんだ!」

 柏木が感動している。

「ね、言ったでしょ? この毛むくじゃら、油断も隙もないのよ」

 薫がむくれている。

「おのれ、罠であったか!!」

 チラリと壁をみれば、ペット用のカメラがある。カメラは、吊戸棚の方へ向けられている。
 わざと警備を手薄にして、監視していたのだ。
 クッ!! モドキの口から悔しさがにじみ出る。
 勝ち誇った薫が、モドキの前に仁王立ちする。

「観念してお縄につきなさい! 怪盗けむくじゃら!! 証拠は十分すぎるほどあがっているのよ!! 隠しておいたチュールが減っていることにもちゃんと気づいてるんだからね!!」
「くそ!! このような稚拙な罠にひっかかるとは!! 無念じゃ!!」
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