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診療所74
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「ラクシュ!!」
私が声をかけると、ラクシュはゆっくりと目を開けてくれた。
良かった。生きていた。
ラクシュがチラリとモドキを見る。
「すまんな。ちょっと話を聞いて……。か、薫???」
モドキが、ラクシュに何か言おうとしていたが、そんなの待っていられない。
むんずとラクシュを掴んで、用意しておいたキャリーケースに突っ込んで扉を閉める。
「話は、後!! 今は、一刻を争うの!! マロン!モドキ! 走って!!」
私は、走り出す。
行く先は、おソノさんの診療所。
「あいつ……。しょうがないな」
モドキがため息をつく。
モドキが連絡を入れた柏木両親が途中で合流して、車に乗せてくれる。
診療所では、柏木母の連絡を受けたおソノさんが待っていてくれた。
「源助……モドキ。手伝って! ラクシュの言葉を正確に伝えてくれ!!」
おソノに言われて、モドキがラクシュと一緒に診察に入っていく。
モドキなら、どこが痛くてどんな症状なのかを、おソノに正確に伝えられる。おソノの言葉も、ラクシュに正しく伝えてあげられるだろう。
柏木両親は、おソノに途中で追い返されてしまった。待合室でウロウロと落ち着かなく歩きすぎたのだ。連絡するから、帰っていろ! 邪魔だ!! と、一蹴されてしまった。
……飼い主が帰されたということは、命は大丈夫になったこと?
おソノは、何の説明もせずに、また診察に戻ってしまった。
私は、マロンと二人で、待合でじっと待つ。
コツン
ガラスを叩く音がして振り向けば、烏がいる。岡っ引き烏だ。
私は、外に出て烏に、
「ありがとうね。助かった。今度、改めてモドキとマロンと一緒に挨拶にいくよ」
と礼を言う。
烏は、縦に一度首を振って、満足そうに飛び立った。
今度会えば、また、鮪のぶつ切りをご馳走しなければ。
「か、薫さん!! 薫さん!!! ら、ラクシュ、ラクシュ……ええっと、薫さん!!」
タクシーから降りた柏木が、大混乱のまま走ってくる。
久しぶりに会う柏木の顔は、涙でぐちゃぐちゃだ。試験が終わってから着信に気づいて、慌てて返信して大混乱のままタクシーに飛び乗ったというところか。
ギュッと抱きしめられる。
「会いたかったです!!」
「いいから、今はラクシュだろ!! 早くいけ!!」
び、びっくりした。
まだ心臓がバクバクといっている。
不意打ちはやめていただきたい。
柏木は、慌てて診察室に入っていく。
専門知識のある柏木なら、おソノの助手として、診察室で役に立つだろう。
柏木が診察室に消えてしばらくして、おソノとモドキが出てくる。
「なんとかなったよ」
おソノがニコリと笑う。
「あ、ありがとうございます」
私は、おソノに頭を下げる。
「礼を言うのは、こっちだよ。ラクシュを探し出してくれて、モドキを貸してくれて」
「儂には、礼はないのか? おソノ?」
「分かっている。モドキが、正確にラクシュの病状を説明してくれて、私の言葉をラクシュに伝えてくれたから。だから、高齢のラクシュでも負担なく手術が出来たんだ。本当に、ありがとう」
おソノが、モドキと私に頭を下げて礼を言う。
キャリーケースの中で眠っていたマロンは、それを見てワンと鳴く。
「マロンもありがとうね。マロンの鼻が無ければ、追跡なんて出来なかったもの」
私がマロンに礼を言えば、マロンが当然でしょ?なんておすまし顔をして可愛い。
「優一さんは?」
「ラクシュとずっと話をしている」
「モドキ、通訳は要らないの?」
私の言葉に、
「無粋だな。そういうところだぞ、薫」
と、モドキがフッと笑う。
どうして、こういう時ですら、この猫は、一言多いのか……。
私が声をかけると、ラクシュはゆっくりと目を開けてくれた。
良かった。生きていた。
ラクシュがチラリとモドキを見る。
「すまんな。ちょっと話を聞いて……。か、薫???」
モドキが、ラクシュに何か言おうとしていたが、そんなの待っていられない。
むんずとラクシュを掴んで、用意しておいたキャリーケースに突っ込んで扉を閉める。
「話は、後!! 今は、一刻を争うの!! マロン!モドキ! 走って!!」
私は、走り出す。
行く先は、おソノさんの診療所。
「あいつ……。しょうがないな」
モドキがため息をつく。
モドキが連絡を入れた柏木両親が途中で合流して、車に乗せてくれる。
診療所では、柏木母の連絡を受けたおソノさんが待っていてくれた。
「源助……モドキ。手伝って! ラクシュの言葉を正確に伝えてくれ!!」
おソノに言われて、モドキがラクシュと一緒に診察に入っていく。
モドキなら、どこが痛くてどんな症状なのかを、おソノに正確に伝えられる。おソノの言葉も、ラクシュに正しく伝えてあげられるだろう。
柏木両親は、おソノに途中で追い返されてしまった。待合室でウロウロと落ち着かなく歩きすぎたのだ。連絡するから、帰っていろ! 邪魔だ!! と、一蹴されてしまった。
……飼い主が帰されたということは、命は大丈夫になったこと?
おソノは、何の説明もせずに、また診察に戻ってしまった。
私は、マロンと二人で、待合でじっと待つ。
コツン
ガラスを叩く音がして振り向けば、烏がいる。岡っ引き烏だ。
私は、外に出て烏に、
「ありがとうね。助かった。今度、改めてモドキとマロンと一緒に挨拶にいくよ」
と礼を言う。
烏は、縦に一度首を振って、満足そうに飛び立った。
今度会えば、また、鮪のぶつ切りをご馳走しなければ。
「か、薫さん!! 薫さん!!! ら、ラクシュ、ラクシュ……ええっと、薫さん!!」
タクシーから降りた柏木が、大混乱のまま走ってくる。
久しぶりに会う柏木の顔は、涙でぐちゃぐちゃだ。試験が終わってから着信に気づいて、慌てて返信して大混乱のままタクシーに飛び乗ったというところか。
ギュッと抱きしめられる。
「会いたかったです!!」
「いいから、今はラクシュだろ!! 早くいけ!!」
び、びっくりした。
まだ心臓がバクバクといっている。
不意打ちはやめていただきたい。
柏木は、慌てて診察室に入っていく。
専門知識のある柏木なら、おソノの助手として、診察室で役に立つだろう。
柏木が診察室に消えてしばらくして、おソノとモドキが出てくる。
「なんとかなったよ」
おソノがニコリと笑う。
「あ、ありがとうございます」
私は、おソノに頭を下げる。
「礼を言うのは、こっちだよ。ラクシュを探し出してくれて、モドキを貸してくれて」
「儂には、礼はないのか? おソノ?」
「分かっている。モドキが、正確にラクシュの病状を説明してくれて、私の言葉をラクシュに伝えてくれたから。だから、高齢のラクシュでも負担なく手術が出来たんだ。本当に、ありがとう」
おソノが、モドキと私に頭を下げて礼を言う。
キャリーケースの中で眠っていたマロンは、それを見てワンと鳴く。
「マロンもありがとうね。マロンの鼻が無ければ、追跡なんて出来なかったもの」
私がマロンに礼を言えば、マロンが当然でしょ?なんておすまし顔をして可愛い。
「優一さんは?」
「ラクシュとずっと話をしている」
「モドキ、通訳は要らないの?」
私の言葉に、
「無粋だな。そういうところだぞ、薫」
と、モドキがフッと笑う。
どうして、こういう時ですら、この猫は、一言多いのか……。
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