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小梅です47
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自分の姿に撃沈されて瀕死の重傷の私に、柏木から返信が来る。「リラックス中だったんですね。自然体の姿に癒されました」なんて、温かい言葉。
その優しさが嬉しい。「僕は、相変わらずゼミ室で皆で泊りです。近くに銭湯があって良かった」という言葉と共に送られてきたのは、風呂上りだろう柏木が、首からタオルをかけて笑っている姿。
スウェットの上下で、私のあげた毛布にくるまっている。
待って、後ろに写っているのは、……同級生? 女の子だ……。え、けっこう美人……。この間、柏木が寝そべっていたソファーに横になって、白いオウムを愛でている。
つい「後ろの美人は、女の子は、誰?」と送ってしまう。柏木から「よく雌だって分かりましたね。小梅っていいます。ゼミの教授の愛鳥です。得意な言葉は、『チクショー』です」と返信。
いや、私は、人を聞いている。美「人」と言っているだろうが。美鳥の情報は、今は良いんだ。ぶれないな、柏木優一。こんちくしょう。
「あ、人も写り込んでいましたね。彼女は、ゼミの友達です。今、狭いこの部屋には、男女五人くらいいるので、失敗して写ってしまいました」と柏木から追加の情報。
五人もいるんだ。じゃあ、安心か? 同じゼミ生なんだから、男性だろうが女性だろうが、交流するのは当然だし、実験だって一緒にやっているのもおかしくない。そんなことを咎めるようならば、メンヘラ彼女になってしまう。ここは、我慢だ。柏木は、正樹とは違う。柏木を信じないと。
頑張れ、本田薫。
自分が思った以上にメソメソと正樹の浮気に傷付いてトラウマを抱えたままなのに、腹が立つ。七年の歳月恋人だった人の裏切りは、私に大きな傷をつけている。
柏木に「そうなんだ。皆で頑張ってて大変だね」と送りたいのに、どうしてか、指が止まる。
突然、電話がかかってくる。
「薫さん。今、電話大丈夫ですか?」
久々の柏木の声。
「うん。大丈夫」
ダイジョブ。大丈夫。大丈夫? 電話は、大丈夫。時間は平気。でも、泣きそうだ。
「薫さん、大好きです」
「ふへえ?」
突然の柏木の攻撃に、私は、変な声が出る。
「あれ? モドキちゃんから、こういえば、薫さんからも嬉しい言葉をもらえるって教えてもらったのですけれど。僕じゃやっぱり駄目ですか?」
モドキのしわざか。全くあの猫もどきは! マジ本当に猫か疑いたくなる。
ちらりと見れば、モドキは、マロンと素知らぬ顔で遊んでいる。
モドキの奴。後でモフモフルーズスキン・マッサージの刑だ。
「……わ、私もよ。愛している」
必死で紡ぎ出す言葉。
大好きと言われたら、愛していると返す。愛していると言われたら、大好きと返す。モドキとの約束。
そんなの柏木に教えないでほしい。
だって顔から火が出て目がチカチカする。
その優しさが嬉しい。「僕は、相変わらずゼミ室で皆で泊りです。近くに銭湯があって良かった」という言葉と共に送られてきたのは、風呂上りだろう柏木が、首からタオルをかけて笑っている姿。
スウェットの上下で、私のあげた毛布にくるまっている。
待って、後ろに写っているのは、……同級生? 女の子だ……。え、けっこう美人……。この間、柏木が寝そべっていたソファーに横になって、白いオウムを愛でている。
つい「後ろの美人は、女の子は、誰?」と送ってしまう。柏木から「よく雌だって分かりましたね。小梅っていいます。ゼミの教授の愛鳥です。得意な言葉は、『チクショー』です」と返信。
いや、私は、人を聞いている。美「人」と言っているだろうが。美鳥の情報は、今は良いんだ。ぶれないな、柏木優一。こんちくしょう。
「あ、人も写り込んでいましたね。彼女は、ゼミの友達です。今、狭いこの部屋には、男女五人くらいいるので、失敗して写ってしまいました」と柏木から追加の情報。
五人もいるんだ。じゃあ、安心か? 同じゼミ生なんだから、男性だろうが女性だろうが、交流するのは当然だし、実験だって一緒にやっているのもおかしくない。そんなことを咎めるようならば、メンヘラ彼女になってしまう。ここは、我慢だ。柏木は、正樹とは違う。柏木を信じないと。
頑張れ、本田薫。
自分が思った以上にメソメソと正樹の浮気に傷付いてトラウマを抱えたままなのに、腹が立つ。七年の歳月恋人だった人の裏切りは、私に大きな傷をつけている。
柏木に「そうなんだ。皆で頑張ってて大変だね」と送りたいのに、どうしてか、指が止まる。
突然、電話がかかってくる。
「薫さん。今、電話大丈夫ですか?」
久々の柏木の声。
「うん。大丈夫」
ダイジョブ。大丈夫。大丈夫? 電話は、大丈夫。時間は平気。でも、泣きそうだ。
「薫さん、大好きです」
「ふへえ?」
突然の柏木の攻撃に、私は、変な声が出る。
「あれ? モドキちゃんから、こういえば、薫さんからも嬉しい言葉をもらえるって教えてもらったのですけれど。僕じゃやっぱり駄目ですか?」
モドキのしわざか。全くあの猫もどきは! マジ本当に猫か疑いたくなる。
ちらりと見れば、モドキは、マロンと素知らぬ顔で遊んでいる。
モドキの奴。後でモフモフルーズスキン・マッサージの刑だ。
「……わ、私もよ。愛している」
必死で紡ぎ出す言葉。
大好きと言われたら、愛していると返す。愛していると言われたら、大好きと返す。モドキとの約束。
そんなの柏木に教えないでほしい。
だって顔から火が出て目がチカチカする。
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