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肩に六キロ載せて旅なんてできるのか21
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部屋の中でテレビを観てばかりだと健康に悪いだろうということで、休日にモドキと一緒に散歩する。
本当は、ネットで見た、猫を背中に載せて旅する男性の動画を観て感化されて、やってみたくなったというのが動機。モドキなら、突然逃げ出して迷子になるなんてことはないから平気、
余裕だと思ったのだが……重い。
六キロ、重いな。めちゃくちゃ肩がこる。
とあるアニメのサトシ君は、自分の相棒を肩に載せて走り回っているが、あれ、サトシ君十歳設定だったよな?なんの疑問も持たずに、可愛い相棒を連れて旅なんて素敵♪と観ていたが、無理だろ。これ。
あの相棒の生き物も、設定上六キロだったから、今、リアルにサトシ君の気持ちを体感しているのだが、おおよそ十歳の子どもが平然と走り回れる重さとは思えない。
数学の問題に出てくる、どこまでも一定の速度で休まずに歩き続けるタカシ君といい、アニメのサトシ君といい、空想世界のお子様たちは、とんでもなくタフガイが多い。
きっと、彼らが大人になれば、世界を征服することも容易だろう。タカシ君とサトシ君の異世界頂上決戦では、世界が震撼するような激戦が予想されるはずだ。
「ほれ、薫。キリキリ歩かんか。駄馬め」
モドキが肩の上で文句を言う。ポフポフとピンクの肉球で頭を叩いてくる。
モドキとしては、馬上の将軍の気分なのだろう。将軍としては、馬は速やかに進んでくれなければ、気分が出ないというところか。
「馬いうな。ちょっとダイエットすれば? 重すぎ」
私は、モドキのモチモチの腹をムニムニしながら言い返す。
「何をいうか。この魅惑のナイスバディ。モチフワ感が儂のチャームポイント。この体型を維持するために、たゆまぬ努力をしておるのだ」
「努力? え、そんなのしてたっけ?」
日々のモドキの姿に、努力の必要そうな状態が見当たらない。欲望のままに、のん気に過ごしているのだと思っていた。
「おろかものめ。程よく睡眠をとって、美味しくご飯を食べること。これこそ、幸せバディの秘訣ではないか」
フフンと、モドキが胸を張る。
相変わらず、口の減らない屁理屈猫だ。
……まあ、私も、このモドキのフワフワ触感が減れば、少し寂しくはあるのだが。
目的地は、ペット同伴可のオープンカフェ。近所におしゃれなカフェが出来て、ワンコを連れた人が食事をしているのを観て、行ってみたいと思っていた場所。
犬を中心としたペットを連れて入店して、ご飯を食べることが可能で、ペット用の減塩のメニューなんかも用意されている。
事前に猫だということは伝えている。しっかり躾されている子で、脱走等の対策など飼い主の責任管理で行ってくれるなら大丈夫だと言っていた。
メニューを広げて、まずモドキのメニューを選ぶ。
鶏ささみと人参のサラダ。鮪のぶつ切り、小エビのペースト、……可愛い盛り付けでどれも美味そうだが、高い。 お値段が可愛くない。
「モドキ、一個だけだからね。お財布の事も考えて」
こっそり小声でモドキに忠告する。
「わかっておる。薫が金銭的にそう裕福ではないのは、一目瞭然」
貧乏、一目瞭然なんだ。悪かったな。
ほんとうにモドキは一言多い。
モドキは、鮪のぶつ切りを選ぶ。ちっこい皿に盛りつけて九百円は高いが、仕方ない。私のパスタ、七百円の方が安いのは、気のせいだと思っておこう。
店員を呼んで注文をして、柏木にメールする。「モドキと一緒にペット同伴カフェ中」と、モドキを肩に載せて歩く写真や、カフェでくつろぐ写真を送る。ちょっと自慢したかっただけなのだが、こんなメールを打てる相手がいるのは、楽しい。
猫友、素晴らしい。
「わ、羨ましいです。今度は、誘って下さい。僕も、モドキちゃんを肩に載せて歩きたいです。カフェ行きたいです」と、柏木から返信。そう、動物を肩に載せて歩くことへの憧れを分かってくれるのは、嬉しい。
今度は、柏木も一緒に来よう。どうやって載せれば、肩がこらずに歩けるか、柏木なら良いアイデアを出せるかもしれない。
本当は、ネットで見た、猫を背中に載せて旅する男性の動画を観て感化されて、やってみたくなったというのが動機。モドキなら、突然逃げ出して迷子になるなんてことはないから平気、
余裕だと思ったのだが……重い。
六キロ、重いな。めちゃくちゃ肩がこる。
とあるアニメのサトシ君は、自分の相棒を肩に載せて走り回っているが、あれ、サトシ君十歳設定だったよな?なんの疑問も持たずに、可愛い相棒を連れて旅なんて素敵♪と観ていたが、無理だろ。これ。
あの相棒の生き物も、設定上六キロだったから、今、リアルにサトシ君の気持ちを体感しているのだが、おおよそ十歳の子どもが平然と走り回れる重さとは思えない。
数学の問題に出てくる、どこまでも一定の速度で休まずに歩き続けるタカシ君といい、アニメのサトシ君といい、空想世界のお子様たちは、とんでもなくタフガイが多い。
きっと、彼らが大人になれば、世界を征服することも容易だろう。タカシ君とサトシ君の異世界頂上決戦では、世界が震撼するような激戦が予想されるはずだ。
「ほれ、薫。キリキリ歩かんか。駄馬め」
モドキが肩の上で文句を言う。ポフポフとピンクの肉球で頭を叩いてくる。
モドキとしては、馬上の将軍の気分なのだろう。将軍としては、馬は速やかに進んでくれなければ、気分が出ないというところか。
「馬いうな。ちょっとダイエットすれば? 重すぎ」
私は、モドキのモチモチの腹をムニムニしながら言い返す。
「何をいうか。この魅惑のナイスバディ。モチフワ感が儂のチャームポイント。この体型を維持するために、たゆまぬ努力をしておるのだ」
「努力? え、そんなのしてたっけ?」
日々のモドキの姿に、努力の必要そうな状態が見当たらない。欲望のままに、のん気に過ごしているのだと思っていた。
「おろかものめ。程よく睡眠をとって、美味しくご飯を食べること。これこそ、幸せバディの秘訣ではないか」
フフンと、モドキが胸を張る。
相変わらず、口の減らない屁理屈猫だ。
……まあ、私も、このモドキのフワフワ触感が減れば、少し寂しくはあるのだが。
目的地は、ペット同伴可のオープンカフェ。近所におしゃれなカフェが出来て、ワンコを連れた人が食事をしているのを観て、行ってみたいと思っていた場所。
犬を中心としたペットを連れて入店して、ご飯を食べることが可能で、ペット用の減塩のメニューなんかも用意されている。
事前に猫だということは伝えている。しっかり躾されている子で、脱走等の対策など飼い主の責任管理で行ってくれるなら大丈夫だと言っていた。
メニューを広げて、まずモドキのメニューを選ぶ。
鶏ささみと人参のサラダ。鮪のぶつ切り、小エビのペースト、……可愛い盛り付けでどれも美味そうだが、高い。 お値段が可愛くない。
「モドキ、一個だけだからね。お財布の事も考えて」
こっそり小声でモドキに忠告する。
「わかっておる。薫が金銭的にそう裕福ではないのは、一目瞭然」
貧乏、一目瞭然なんだ。悪かったな。
ほんとうにモドキは一言多い。
モドキは、鮪のぶつ切りを選ぶ。ちっこい皿に盛りつけて九百円は高いが、仕方ない。私のパスタ、七百円の方が安いのは、気のせいだと思っておこう。
店員を呼んで注文をして、柏木にメールする。「モドキと一緒にペット同伴カフェ中」と、モドキを肩に載せて歩く写真や、カフェでくつろぐ写真を送る。ちょっと自慢したかっただけなのだが、こんなメールを打てる相手がいるのは、楽しい。
猫友、素晴らしい。
「わ、羨ましいです。今度は、誘って下さい。僕も、モドキちゃんを肩に載せて歩きたいです。カフェ行きたいです」と、柏木から返信。そう、動物を肩に載せて歩くことへの憧れを分かってくれるのは、嬉しい。
今度は、柏木も一緒に来よう。どうやって載せれば、肩がこらずに歩けるか、柏木なら良いアイデアを出せるかもしれない。
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