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ガチ猫勢、柏木の部屋20
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休みの日、私は初めて柏木の家に足を踏み入れた。
クッキーをモドキと一緒に作ってもらったお礼にと、焼き菓子を近くの洋菓子店で買って持っていたら、良かったら一緒にお茶しましょうと誘われたのだ。
普段、どんな風にモドキが柏木と過ごしているのかも気になって、そのまま誘いにのってみた。
柏木の部屋は、私の部屋と隣同士で構造は、似ている。いや、ほとんど一緒だ。
だが、住む人が違えば、家具の配置が違う。家具の配置が違えば、部屋の雰囲気も違う。これほどまでに、猫愛がさく裂した部屋だとは思わなかった。
まず、柏木の履いているスリッパが、猫の足仕様。茶トラのモフモフスリッパ。カーテンも猫柄。青いカーテンに白抜きで小さな猫がぶら下がった柄がついている。
上等そうな猫タワー、テレビの前のテーブルは肉球の形。ラグも、猫の形のモフモフラグ。
「うわっ……」
思わず漏れた小さな私の驚きに、
「分かる。儂も最初はドン引きした」
と、モドキがこっそり教えてくれた。
モドキの話によると、柏木は、実家の猫が恋し過ぎて、脳内で猫を飼って生活していたんだそうだ。だから、脳内の猫のために猫タワーまで部屋に完備されている。
脳内の猫と毎日会話し、脳内の猫を可愛がる日々。それが、五年も経てば、こんな風に立派に猫愛溢れる部屋が出来上がってしまったのだという。
「脳内猫……。すごいな。そんなに猫が好きならば、自分でも飼えばいいのに」
テレビの前に飾ってある写真の実家猫のラクシュは、長毛真っ白フワフワのヒマラヤンの雄。強火の飼い主に可愛がられて最高に尊大そうだ。
柏木の親は、柏木以上に猫愛溢れ、もはやラクシュにお仕えしている下僕に他ならないそうだ。柏木以上……。
そんなの可能なんだ……。一度覗いてみたい気もする。
「飼いたいんですけれども、研究で何日も帰れないこともありますし、なかなか難しいんですよ」
柏木は、コーヒーを入れながら答える。
「だから、脳内イメトレで我慢していたんです。そしたら、本田さんが猫を飼い始めて、モドキちゃんと仲良くなれて。本当にラッキーでした」
肉球型テーブルに私と柏木用のコーヒー、私の持ってきた焼き菓子と、モドキ用のチュールが並ぶ。
モドキは、柏木にチュールを開けてもらって、テチテチと舐め始めれば、柏木が嬉しそうにそれを眺めている。
「はあああ。その、両手に持って食べるところ、最高ですね」
コーヒーを飲みながら、柏木が幸せの吐息を漏らす。
「あ、そうだ。クッキー、モドキと一緒に作ってくれたんでしょ? ありがとう」
私がお礼を改めて言えば、
「いえいえ、僕がモドキちゃんと作ってみたかったんです。逆に、本田さんの誕生日をモドキちゃん説得に利用させてもらっちゃいました」
と、返してくる。
見れば、台所にまだ、モドキ作成のクッキーが一枚、うやうやしく飾られている。
動物さんとクッキング……確かに、実現したい夢の一つではある。
ブレない柏木。相変わらず、猫愛はすごい。
クッキーをモドキと一緒に作ってもらったお礼にと、焼き菓子を近くの洋菓子店で買って持っていたら、良かったら一緒にお茶しましょうと誘われたのだ。
普段、どんな風にモドキが柏木と過ごしているのかも気になって、そのまま誘いにのってみた。
柏木の部屋は、私の部屋と隣同士で構造は、似ている。いや、ほとんど一緒だ。
だが、住む人が違えば、家具の配置が違う。家具の配置が違えば、部屋の雰囲気も違う。これほどまでに、猫愛がさく裂した部屋だとは思わなかった。
まず、柏木の履いているスリッパが、猫の足仕様。茶トラのモフモフスリッパ。カーテンも猫柄。青いカーテンに白抜きで小さな猫がぶら下がった柄がついている。
上等そうな猫タワー、テレビの前のテーブルは肉球の形。ラグも、猫の形のモフモフラグ。
「うわっ……」
思わず漏れた小さな私の驚きに、
「分かる。儂も最初はドン引きした」
と、モドキがこっそり教えてくれた。
モドキの話によると、柏木は、実家の猫が恋し過ぎて、脳内で猫を飼って生活していたんだそうだ。だから、脳内の猫のために猫タワーまで部屋に完備されている。
脳内の猫と毎日会話し、脳内の猫を可愛がる日々。それが、五年も経てば、こんな風に立派に猫愛溢れる部屋が出来上がってしまったのだという。
「脳内猫……。すごいな。そんなに猫が好きならば、自分でも飼えばいいのに」
テレビの前に飾ってある写真の実家猫のラクシュは、長毛真っ白フワフワのヒマラヤンの雄。強火の飼い主に可愛がられて最高に尊大そうだ。
柏木の親は、柏木以上に猫愛溢れ、もはやラクシュにお仕えしている下僕に他ならないそうだ。柏木以上……。
そんなの可能なんだ……。一度覗いてみたい気もする。
「飼いたいんですけれども、研究で何日も帰れないこともありますし、なかなか難しいんですよ」
柏木は、コーヒーを入れながら答える。
「だから、脳内イメトレで我慢していたんです。そしたら、本田さんが猫を飼い始めて、モドキちゃんと仲良くなれて。本当にラッキーでした」
肉球型テーブルに私と柏木用のコーヒー、私の持ってきた焼き菓子と、モドキ用のチュールが並ぶ。
モドキは、柏木にチュールを開けてもらって、テチテチと舐め始めれば、柏木が嬉しそうにそれを眺めている。
「はあああ。その、両手に持って食べるところ、最高ですね」
コーヒーを飲みながら、柏木が幸せの吐息を漏らす。
「あ、そうだ。クッキー、モドキと一緒に作ってくれたんでしょ? ありがとう」
私がお礼を改めて言えば、
「いえいえ、僕がモドキちゃんと作ってみたかったんです。逆に、本田さんの誕生日をモドキちゃん説得に利用させてもらっちゃいました」
と、返してくる。
見れば、台所にまだ、モドキ作成のクッキーが一枚、うやうやしく飾られている。
動物さんとクッキング……確かに、実現したい夢の一つではある。
ブレない柏木。相変わらず、猫愛はすごい。
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