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【 外伝 】悪魔力との闘い

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【 ローレシア帝国 玉座の間 】

リジューネが怒って言う
「ザッツロード王子は まだ見付からないのか!?」
兵が言う
「はっ!申し訳ありません 城下の隅々まで探させておりますが 未だ発見には至っておりません」
リジューネが怒りを押し殺して言う
「クッ… 新世界の軟弱王子と 好きにさせていたのが仇となったか」
大臣Aが言う
「陛下 ザッツロード王子は魔法を使えます 宝玉を持って行かれたのでしたら 結界の外 悪魔力の濃度も気にせず どこへでも行く事が可能です」
大臣BがAへ向いて言う
「しかし、ザッツロード王子は結界から出て 何処へ行こうと言うのか?この世界の何処を探しても ローレシア帝国以外に人の住める場所などありません」
大臣Aがハッとして言う
「ではっ もしやガルバディアでは?ガルバディアでしたら 悪魔力の濃度も薄く 人が留まる事も可能です!」
大臣Bが言う
「それか 多国籍部隊を真似 ローンルーズへエネルギーの調達に向かったのでは?」
大臣AがBへ向いて言う
「何故 宝玉を盗んでまでそのような事を?現状エネルギーは足りているのだぞ?」
リジューネが言う
「何の根拠も無い憶測をしても意味が無い だが、宝玉はこのローレシア帝国の宝だ 何としてでも取り戻さなければならない」
大臣A、Bがリジューネへ向き 大臣Aが言う
「しかし、宝玉を持ち 何処へでも行ける状態で 何の手がかりも無い者の行方を調べるなど困難です」
リジューネが一瞬間を置いた後言う
「テスクローネを呼べ」
大臣A、Bが疑問し 大臣Bが言う
「テスクローネ殿は ザッツロード王子との面識は 差ほどあるとは思われませんが」
リジューネが言う
「テスクローネの力でザッツロード王子を探させる」
大臣A、Bが顔を見合わせる リジューネが言う
「彼は以前 私が隠密にガルバディアへ向かった事を知っていた 当人はガルバディア城のモニターで 私を確認したとだけ言っていたが たかだか玉座を離れた私が 何の根拠も無くガルバディアまで向かっていると想定する事は困難なはず… 恐らく彼は 私の生態識別情報を元に その居場所を特定したのだ」
大臣A、Bが感心の声を上げる リジューネが言う
「直ぐにテスクローネを呼び ザッツロード6世の捜索をさせろ!」

機械室

テスクローネが目を閉じ軽く顔を上げて言う
「お断りです」
大臣Bが驚いて言う
「な、なんですと!?」
テスクローネが目を開き大臣Bをしっかりと見て言う
「お断りする と言ったのです 私はリジューネ陛下の道具ではありません」
大臣Aが慌てて言う
「道具だなどと!我々… いや、リジューネ陛下は 貴方に御依頼をなさっておられるのですぞ!?」
大臣Bが改めて言う
「そ、そうです!依頼を達成していただければ それ相応の報酬も用意いたします」
テスクローネが呆れて言う
「その報酬は いつ頂けるのでしょうかね?先の報酬だって 未だに頂けておりません この状態で また新たな依頼ですか?」
大臣A、Bが慌てて言う
「で、でしたら!先の報酬は 今すぐ用意させましょう!」
「ええ!そうですとも!今すぐ用意させます それで、それをお受け取りになられたら こちらの依頼も受けて頂けるという事で宜しいですかな?」
テスクローネが目を閉じて言う
「いいえ お断りです」
大臣A、Bが衝撃を受け言う
「「な、なんですとー!?」」
テスクローネが微笑して言う
「私も一人の人として忙しいのですよ 先の報酬を頂きましたら 直ぐにでも執り行わねばならない事があるのです」
テスクローネが立ち上がり大臣A、Bへ向いて言う
「と、言う事で 今すぐ 前回の報酬を頂きましょうか?お約束の600ゴールドを ね?」
テスクローネが微笑する 大臣A、Bが顔を見合わせる

玉座の間

大臣Aが汗を拭きつつ言う
「…と、申します訳で はぁ はぁ…」
大臣Bが息を切らせつつ言う
「はぁ、はぁ、て、テスクローネ殿は お力添えを頂けないとの 事です…」
リジューネが怒って言う
「クッ…こんな時にっ!力を持ちながらも それを人々の為に使わぬとは!奴には愛国心… いや!同じ国に住む者としての 共存意識はないのか!?」
大臣Aが言う
「テスクローネ殿のお力添えを頂けない以上 ソルベキアの者へ依頼するのは如何でしょう?ガルバディアの力で出来る事なら 彼らにも 真似が出来るやも知れません」
大臣Aが軽く喜んで言う
「おおっ そうです陛下 彼らなら陛下のご依頼を 喜んで受けてくれる筈です …まぁ 報酬はテスクローネ殿の倍は掛かるかと思われますが」
大臣Aがハッとして言う
「ああっ 報酬っ!そうだった… テスクローネ殿への報酬を渡させる様 連絡をせなんだ…」
大臣Bが衝撃を受け大臣Aへ向いて言う
「ああっ そ、そうだった~ 会計管理は3階西塔…」
大臣A、Bが顔を見合わせ 一瞬の後互いに言い合う
「お前が行ってくれ わしゃ 陛下からの指示を受け取らねば」
「お前が行けば良いじゃろう!だいたい わしが陛下へお伝えすると言うたのに 何でお前まで玉座の間に来おったのか!」
「会計関係はお前の担当じゃろう!わしゃ 陛下からの指示書を管理するまでの担当じゃ!」
「そのお前の指示書が不明確じゃっから 確認しに来たんじゃ!お前の責任じゃろ これを持って行くのはお前じゃ!」
大臣Bが書類を突き出す 大臣Aが衝撃を受け 渋々受け取ってリジューネへ言う
「リ、リジューネ陛下 ザッツロード王子の件で お悩みの所申し訳ありませぬが テスクローネ殿への報酬は 最終決定であった600ゴールドで 宜しかったでしょうか?」
リジューネが一瞬の間を置いた後言う
「テスクローネへの報酬は 当初の予定であった200ゴールドだ」
大臣A、Bが驚く リジューネが微笑して言う
「…と、言いたい所だが 彼は600年前から封じられていた ローレシア帝国の貴重なる資料を 復活させてくれた よって、報酬は300ゴールド それで、今後のローレシア帝国への助力を約束させろ」
大臣A、Bが顔を見合わせ大臣Aが言う
「し、しかし テスクローネ殿は もう依頼は受けないと」
リジューネが言う
「約束を取り留め ザッツロード6世の捜索依頼を了承すると言うのなら その時点で600ゴールドを手渡せ 捜索依頼の報酬は 言い値で構わぬとも 付け加えてな」
大臣Bが心配そうに言う
「もし… テスクローネ殿が全てを否定し 今後は一切手を貸さないと言いましたら どの様に致しましょう?」
リジューネが軽く笑って言う
「テスクローネが何をしようと言うのかは知らぬが 奴は親に勘当され 住む場所も無い文無しだ 全てを否定すると言うのなら 報酬は200 …ふふっ それなら 従わざるを得まい?」
大臣A、Bが表情を困らせつつ言う
「た…確かに たった200ゴールドでは 住む場所を得る事も難しく 日々の食にあり付くのがやっと…」
「まして、テスクローネ殿は 大富豪の息子 現在のローレシア城での暮らし振りからしても 不自由な生活に対応出来るとは思われません」
リジューネが言う
「今すぐテスクローネの元へ行き 再度 依頼を伝えて参れ!」
大臣A、Bが衝撃を受ける リジューネが怒って言う
「2人で行け!」
大臣A、Bが怯えて言う
「「はっ ははーっ!」」
大臣A、Bが走って出て行く

【 ソイッド村 近郊 】

ヴァッガスがはっとして叫ぶ
「チッ… おいっ!魔物が集まって来やがったぜ!?」
ガイが頷いて言う
「よし、では」
ガイがザッツロード6世へ向いて言う
「ザッツロード王子 魔物は我々が退治します 王子とお仲間の方は 宝玉の力を維持したままお待ち下さい」
ガイがメテーリへ向いて言う
「メテーリ、ザッツロード王子と彼女らへバリアを!」
ザッツロード6世が言う
「ガイ隊長!我々も戦います!」
ガイが一瞬驚いてから困って言う
「し、しかしっ 王子と皆様に何かあっては」
ザッツロード6世が一歩踏み出して言う
「宝玉の力の及ぶ範囲であれば 我々も戦えます 皆さんの邪魔はしません」
ザッツロード6世がガイ、ロドウ、ヴァッガスを見る ザッツロード6世が続けてラーニャへ向いて言う
「ラーニャ、宝玉の維持を頼む」
ザッツロード6世がラーニャへ宝玉を手渡す ラーニャが衝撃を受け慌てて言う
「え!?わ、私!?」
ミラが一歩踏み出して言う
「いいえ 私がやるわ 宝玉へ力を送るのは 少しコツがあるのよ 私、慣れてるから それに、ザッツへの支援魔法は ラーニャの方が相性が良いでしょうし?」
ザッツロード6世が一瞬疑問する ラーニャが赤くなって言う
「ちょ、ちょっとミラ!?それどー言う意味よ!?」
ミラが宝玉を奪い取るようにして言う
「どうと言う事じゃないわよ 貴方の方が 夢の世界でザッツへ支援魔法を送っていたでしょ?」
ラーニャがハッとして慌てて言う
「あ、あああっ ああ~っ そ、そう言う事?」
ミラがそっぽを向いて言う
「そう言う事よ 他に何かあるって言うのかしら?」
レーミヤがくすくす笑う ラーニャが恥ずかしがって怒る
「もぉお~っ!」
ザッツロード6世が首を傾げた後レーミヤへ向いて言う
「レーミヤ」
レーミヤがザッツロード6世へ向いて頷いて言う
「ええ、加速の支援魔法は 私にしか出来ないものね?」
ザッツロード6世が頷き剣を構える ガイが不安そうに見ていると ヴァッガスが来て微笑して言う
「まぁ、邪魔にならねぇ~ようにする ってーんだから 良いじゃね~の?」
ガイが困って言う
「う… うむ… そう であろうか…?」
ロドウが微笑んで言う
「ガイはローゼントの騎士だもんね?王族を守るのが勤めだもん」
ガイが衝撃を受け慌てて言う
「い、いやっ それは その…」
ヴァッガスが他方へ向いて言う
「…来るぜ!」
皆が向くと共に 魔物が周囲を囲う

【 ローレシア帝国 結界端 】

フォーリエルが声を上げつつ剣を振るう
「うおぉおおーーっ!」
フォーリエルの大振りな大剣が中型の魔物を切り裂き その勢いのまま地に刺さって抜けなくなる フォーリエルが衝撃を受け焦って言う
「あっ!や、やべっ!」
フォーリエルが振り返ると 大型の魔物が襲い掛かって来る フォーリエルが焦る 魔物の攻撃がフォーリエルへ襲い掛かる フォーリエルが目を見開くと目前でプログラムが発生し魔物の攻撃が防がれる フォーリエルが笑むと 地に刺さっていた剣に数字の羅列が纏わり すんなり抜ける フォーリエルが声を上げて魔物に斬り掛かる
「だぁああーーっ!」
フォーリエルの攻撃で大型の魔物が一刀両断される 多国籍部隊の隊員らが見ていて言う
「す… すげえ…」
「中型の魔物を一撃で倒すのも凄いが… 奴の大剣は大型の魔物まで一撃で倒せるのか」
フォーリエルがほっと溜息を吐いて隊員らを確認した後 周囲を探し 遠くにテスクローネの姿を見つけ微笑する

フォーリエルが言う
「いやぁ~助かったぁ~」
テスクローネが苦笑して言う
「フォーリエル、自信を持つのは良いが それで本当に命を落としては大変だ」
フォーリエルが苦笑して頭を掻いて言う
「面目ねぇっ やっぱ 俺には重過ぎるのかなぁ…」
フォーリエルが大剣を眺める テスクローネが微笑して言う
「フッ… いや、良く使いこなしてるんじゃないのかな?強いて言えば 少々冷静さが足りないのかも?」
フォーリエルが一瞬止まり考えた後 苦笑して言う
「いや、今日はいつも以上に冷静だったぜ けど、あの瞬間何となく… 誰かさんが守ってくれそうな気がしてよ?ちょっと無茶したら あーなっちまったって感じで」
フォーリエルが笑う テスクローネが呆気に取られた後苦笑して言う
「私が君のコンディションを確認する為に送った プログラムを感じ取っていたと?」
フォーリエルが苦笑して言う
「ははっ さぁね?俺は機械だのプログラムだのには疎いもんで」
テスクローネが苦笑する フォーリエルが言う
「けど、その代わり お前のテンションが低いって事にだけは鋭いんだ でぇ?…どーしたんだよ?」
テスクローネが呆気に取られる フォーリエルが言う
「城に報酬の催促に行ったんじゃなかったのか?もしかして、まだ用意されて無かったとか?」
テスクローネが視線を逸らして言う
「あ… うん…」
フォーリエルがテスクローネの顔を覗き込んで言う
「それだけじゃないだろ?」
テスクローネが沈黙する フォーリエルが顔を上に上げて言う
「はぁーっ!ったくっ!何であの女帝様は 約束を守ってくれないかねー!?報酬は直ぐに用意させるって言ってたんだろー?団子屋を始める機材だの何だのって もう発注してあるのによー!?…それで?後何日待てって?」
テスクローネが少し間を置いてからフォーリエルへ200ゴールドを手渡す フォーリエルが呆気に取られた後首を傾げて言う
「ん?こらぁ… 200ゴールド?俺にくれるって言ってた分か?」
テスクローネが苦笑して言う
「ああ、今まで… 色々迷惑を掛けた」
フォーリエルが呆気に取られた後 軽く笑って言う
「なーんだよ!報酬は貰えたんじゃねーか!?」
テスクローネが微笑して言う
「ああ、全額貰った」
フォーリエルが笑顔で200ゴールドを数える テスクローネが視線を向けないで言う
「迷惑ついでに… フォーリエル 色々発注していた物を 全てキャンセルして来てもらえるか?」
フォーリエルが驚いてテスクローネを見る テスクローネが視線を向けないまま言う
「キャンセル料は掛からないと思うが もし、必要だと言われてしまった時には すまないが その金から」
フォーリエルがテスクローネの横顔を見て言う
「…テス?何だよ?どういう事だ?」

【 ローレシア帝国 玉座の間 】

リジューネが怒って言う
「テスクローネが依頼を断っただと!?」
大臣Aが杖をついて言う
「はい… 残念ながら 我々も様々な手を尽くしましたが…」
大臣Bが倒れた状態で言う
「テスクローネ殿は 私の手から200ゴールドを奪い取るようにして 立ち去ってしまいました… その際に 私はぎっくり腰になってしまって」
衛兵らが呆気に取られていた状態から慌てて大臣Bへ駆け寄り身を起こそうとする 大臣Bが痛がる リジューネが玉座の肘掛を叩いて言う
「ええいっ!ならば仕方が無い!ソルベキアの!」
大臣Aが腰を下ろしながら言う
「はい、私ももはやそれしかないと思い 勝手ながら」
ベハイムが入室して来る 大臣Aが言う
「ベハイム・フロッツ・クラウザー殿を お呼びして置きました」
べハイムが形式ばった礼をする リジューネが悔しそうに言う
「…大臣、私の考えを良く読み 備えてくれた クラウザー殿 急な呼び出しをすまない 単刀直入だが」
べハイムが顔を上げて言う
「既にお話は聞き及んでおります この城から脱走した ザッツロード6世を捜索する様にと」
リジューネが言う
「可能か?」
べハイムが言う
「確実に… とは言い切れませんが あらゆる手を尽くそうと思います」
リジューネが言う
「うむ それで… 何か必要なものはあるか?」
べハイムが微笑して言う
「はい、このローレシア帝国のシステムを最大限に利用する為にも 再三お願いを致しておりました 国家機密情報の閲覧を お許し頂きたいと存じます」
リジューネが視線を強め べハイムと視線を合わせる 少しの間の後 リジューネが重い口を開く
「…許可する」
べハイムが無言で礼をする リジューネが唇を噛む

【 ソイッド村 近郊 】

ザッツロード6世が声を上げ魔物へ向かって魔法剣を振るう
「やあーっ!」
魔物が一刀両断される ザッツロード6世がハッとして振り返る 別の魔物がザッツロード6世へ襲い掛かる ザッツロード6世がレーミヤへ視線を向けて言う
「レーミヤ!」
レーミヤが詠唱を終えた加速魔法をザッツロード6世へ放つ ザッツロード6世が魔法を受け取ると同時に魔物の攻撃を回避する 続いてラーニャが支援魔法を手に叫ぶ
「ザッツ!受け取って!」
ザッツロード6世がラーニャの声に剣を掲げ 支援魔法を受け取ると 魔法剣で魔物を攻撃 着地と共に更に攻撃して魔物を倒す

ロドウとガイが呆気に取られてそれらを見ており ヴァッガスがにやりと笑んで口笛を吹いて言う
「ヒューッ や~る~」
ザッツロード6世が周囲を確認し 剣を収めながら言う
「よし… これで 周囲の魔物は一掃されたかな?」
ガイが気を取り直し微笑してザッツロード6世の近くへ来て言う
「はい、立ち込めていた魔物の気配も無くなりました ご協力を感謝します ザッツロード王子」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「いやぁ~ 僕らが退治した魔物は 大した力を持たない小者ばかりだったし… 僕らでも相手に出来る者と戦わせようと 返って気を使わせてしまったんじゃないかな?」
ザッツロード6世が苦笑して頭を掻く ガイが呆気に取られた後慌てて言う
「とんでも無いっ!確かに、大型で力の強い魔物を選んで戦いはしておりましたが それは小規模部隊での戦略として当然の事 迅速に強者を倒し それによる 弱い魔物の自ずからの撤退を誘発すると共に、可能な限り残る魔物も処理をする …しかし、宝玉の結界と言う 限られた空間に居る仲間を守りながらの戦いは とても神経を使わされます」
ヴァッガスが笑んで言う
「その点、今回は その守んなきゃならねー仲間を 王子様がばっちり守ってくれるからよ?俺らも戦い易かったぜ!な?」
ロドウが微笑んで言う
「うん!ローンルーズで戦ってた時より ずっと楽だったね!」
メテーリが衝撃を受け怒って言う
「わ、悪かったわね!私だって迷惑掛けてるって 分かってたんだから!」
ロドウが気付き苦笑して言う
「あれ?そうだったの?ごめん」
メテーリがムスッとする ロドウが困った顔で苦笑する ザッツロード6世がその様子を見てから言う
「…あはっ そう言って貰えると 僕も嬉しいです」
ザッツロード6世が微笑する ガイが呆気に取られた後腑に落ちない様子で首を傾げる ヴァッガスが気付き呆れて言う
「だぁ~から ガイは ほんっとに 言葉の分からねぇ~奴だなぁ?」
ザッツロード6世が疑問し ガイがヴァッガスの言葉に苦笑する ヴァッガスがザッツロード6世へ向いて言う
「ガイは、本心で王子の実力を褒めてるんだぜ?俺だってそうさ?あんたの力は 昔の俺たちの力を遥かに超えてる 正直びっくりしたぜ 力を貰ってもいねぇ~状態で しかも、王子様がよぉ?あのレベルの魔物を相手に出来るだなんて …もしかしてぇ、新世界には あのレベルの魔物がゴロゴロ居るモンなのか?」
ヴァッガスがザッツロード6世の顔を覗き込む ザッツロード6世が呆気に取られた後慌てて言う
「え?い、いやぁ、僕もあんなに強い魔物と戦ったのは初めてで …と言うより、新世界には 本当は魔物なんて 居なかったので」
ヴァッガスが呆気に取られてガイへ向く ガイが驚いた状態から考えて言う
「では、ザッツロード王子は 新世界の… シリウス様が創られたと言う 意識のみの世界において あれ程の力を 身に付けられたのだろうか?」
ザッツロード6世が微笑して言う
「はい、実は… 今だから言えますが こうして現実世界で魔法剣や支援魔法を受けて戦うと言う事自体が 初めてでした ハハ…」
ガイたちが驚く ザッツロード6世が苦笑する メテーリが呆気に取られて言う
「ゆ、夢の中で見てた事を 初めてやったって言うの!?」
ラーニャが首を傾げて言う
「そう言えば… そうだったんだ?」
レーミヤが苦笑して言う
「上手く行って良かったわね」
ミラが言う
「ま、意識だけであっても アレだけやってれば身に染み付いちゃうわよ」
ロドウが言う
「すご~い」
ヴァッガスが焦って言う
「お、おいっ 凄いとか何だとかって 問題かよ!?」
ガイが驚いた表情から真剣に考えて言う
「…もしやそれが 新世界の シリウス様の力なのか…?」
ザッツロード6世がガイへ向いて言う
「え?新世界の?」
ガイが慌てて言う
「あ、いや 何でもありません」
ザッツロード6世がガイの返答に微笑んだ後改めて言う
「所で、さっきヴァッガス副隊長が サラッと言ってらした “力を貰ってもいない” と言うのは?今の私が昔の皆さんより強いと言う事は 今の皆さんの強さは 誰かに力を貰った為であると?」
ガイたちが衝撃を受け皆の視線がヴァッガスへ向く ザッツロード6世が微笑んで言う
「その力を皆さんに与えたのは やっぱり 例のシリウスBなのでは?この旧世界のガルバディア国王 シリウスBは 皆さんのローンルーズでの作戦に 力を貸しただけでは無く 本当は皆さんへ 力を与えていたのですね?」
ガイたちが困るメテーリがヴァッガスへ向いて言う
「ヴァッガス?」
ヴァッガスが落ち込んで言う
「う… 悪ぃ 余計な事言っちまった…」

皆が歩く中 ラーニャが言う
「へぇ~ ファクトリーを壊すだけじゃなくって 力をくれたり バリアを張ってくれたり 移動魔法をしてくれたり」
ロドウが笑顔で言う
「うん、それに たまに僕たちが見落とした機械兵を プログラムで攻撃して 倒してくれたりもしてたんだよ」
ヴァッガスが驚いて言う
「あ!?まじかよ!?」
ロドウが頷いて言う
「うん!僕はメテーリの保護もしなきゃいけない分 ガイやヴァッガスの後方に居たから だいぶ前から気付いてたんだ でも、何だかこっそり やってるみたいだったから 言わない方が良いのかな~って思って …あ、でも日記には書いてあるけどね?」
ヴァッガスが衝撃を受けて言う
「それは書いちゃ駄目だろ!?」
ガイが苦笑して言う
「私がそれに気付いたのは 最後より2つ前の 第3ファクトリーであった …シリウス様は 常に我らと共に戦って下されていたのだと」
ヴァッガスが衝撃を受けて言う
「お、おい!?んじゃ 気付いてなかったのは 俺とメテーリだけかよ?」
メテーリが怒って言う
「失礼ね!私はっ!…そりゃぁ~機械兵を倒してくれてたのは知らなかったけど あんたたちが無差別な攻撃をして ファクトリーに衝撃をあたえちゃってるのを シリウス様がフォローしてくれてるって事には 誰よりも早く気付いてたんだから!」
ヴァッガスが衝撃を受け慌てて言う
「なぁ!?そ、それじゃ… いや!それとこれじゃ 話がちげーだろ!?」
メテーリが怒って言う
「違うくないっ!馬鹿ヴァッガス!」
ヴァッガスが衝撃を受け慌てて言う
「ちょっ!ちょっと待て!俺のその呼び方を デフォルト化するんじゃねーって!」
ザッツロード6世がヴァッガスとメテーリのやり取りに軽く笑った後 ガイへ向いて微笑して言う
「では、シリウスBは 皆さんの仲間なのですね?」
ガイたちが一瞬呆気に取られ顔を見合わせた後微笑し ガイが頷いて言う
「はい シリウスB様は 紛れも無く 我々の仲間です …如何にリジューネ陛下が否定されようとも 私には あのシリウスB様が 破壊神ソルと言う この世界や新世界のシリウス様の敵である等とは どうしても思えません」
ヴァッガスが真剣な表情で言う
「ああ、俺もだ リジューネ女帝の事は正直好きにはなれねぇが それを度外視たって 俺はシリウスB様を 信じるぜ」
ロドウが笑顔で頷く メテーリが一瞬呆気に取られた後視線を逸らして言う
「…で、でもさぁ?リジューネ陛下が言ってた事も 気にならない?あの… シリウスB様が 破壊神ソルと 同じ姿だって」
ガイがヴァッガスとロドウへ視線を向けた後 表情を困らせて言う
「うむ…確かに気にならないと言う事は無いが」
ヴァッガスが苦笑して言う
「そうは言ってもよぉ?俺らは 俺らの神様だって言う もう一人のシリウス様にだって 実際にお会いした事はねぇんだぜ?それを 見た事も聞いた事もねぇ シリウス様やソルって神様の 姿だなんて言われてもなぁ?」
メテーリが表情を困らせつつ言う
「あ、あたしっ 知ってるんだ… 私たちの神様である シリウス様の 姿…」
ガイとヴァッガスが軽く驚き顔を見合わせる ロドウが気付いて言う
「あ、メテーリ?もしかして それって あの言葉じゃない?」
ガイとヴァッガスがロドウへ向く メテーリが困る ロドウが微笑んで言う
「”そのお方 黄金の長き髪に 美しき肌を隠し 愁いを帯びた碧き瞳は 優しく我らを見守る”」
ガイとヴァッガスが初めて聞いた言葉に考え ガイが言う
「その言葉が 我らの神シリウス様の お姿を示す言葉であると?」
ロドウが頷いて言う
「うん、僕らシュレイザーの民だけじゃなくって 色々な国の人が知っている言葉だよ」
ヴァッガスが首を傾げて言う
「ザッツロード王子に伝えた ヴィクトール11世の話じゃ シリウスB様は 俺らの神様だって言われてる そのシリウス様とは双子の兄弟なんだろ?シリウスB様が言ってた シリウスの影だとか 片割れだ~とかってぇのは 結局そういう意味だったって事か」
ガイが言う
「うむ… 恐らくそう言う事になるのだろう」
メテーリが気を取り直して言う
「で、でしょ!?だとしたら… その言い伝えからしても 私たちに力を貸してくれたあのシリウスB様が 本当にシリウス様の双子の兄弟なのかなぁ…?って」
ガイとヴァッガス、ロドウが顔を見合わせる ガイが苦笑して言う
「しかし、双子と言っても 必ずしも瓜二つの姿であるとは限るまい?」
ロドウが微笑んで言う
「似てない双子も 居るって言うものね?」
メテーリが慌てて言う
「けどっ!言い伝えでは 黄金の髪に 美しい肌 青い瞳って言ってるのよ!?いくら姿の似てない兄弟だって!あ、あそこまで 違うって言うのは…」
メテーリが語尾と共に視線を下げる ガイたちが顔を見合わせる ザッツロード6世が言う
「その シリウスBと言うお方の姿は メテーリ副隊長が言うほど 異なる姿なのですか?」
ガイがザッツロード6世の言葉に顔を向け少し困った表情を見せる ヴァッガスが表情を歪ませて言う
「まぁ…言い伝えだの何だのってぇのは 多少良い様に言っちまうもんなんだろ?」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「しかし、どの様に着色しようとも 髪の色や目の色など そういった部分の情報を 変えてしまう事は無いのでは ないでしょうか?」
ラーニャが首を傾げて言う
「そうよね?黒い髪なのに金髪だって言っちゃったりしたら それこそ 言い伝える意味が無いわよね?」
ミラが言う
「でも、髪の色は 当人が意図的に変える事だって出来るじゃない?だとしたら 変えられないのは瞳の色って事よね?」
ラーニャが言う
「そっかぁそれじゃ、シリウス様が 青い目だって事は変わらないのね?」
ザッツロード6世が言う
「へぇ… それじゃ、僕らの世界のガルバディア国王も 本当は金髪に青い瞳… バーネット陛下に近い感じなんだろうね?」
ガイがハッとして言う
「そうか… ザッツロード王子」
ザッツロード6世と共に皆がガイへ向く ガイが言う
「王子や皆様方は 新世界にて 我らの神であるシリウス様を お目にした事があられるのでは?例え現実世界では無くとも その、夢の世界と言う シリウス様のお力の中ででも」
ガイたちがザッツロード6世たちへ向く ザッツロード6世が苦笑して言う
「それが… 残念な事に 僕らが対面していたのは ガルバディア国王の身代わりを行っていた デスという名のガルバディアの民… ああっ えっと… こちらの世界の言い方で言えば ベネテクト …だったもので」
ガイたちが一瞬呆気に取られた後 ガイが考えながら言う
「ふむ… そうか確かに、神とも言われるシリウス様であるのなら 近衛騎士であったベネテクトへ 代役を託す事もあるのかもしれないな」
ヴァッガスが首を傾げて言う
「んなら 俺らの仲間をしてくれた シリウスB様も 代役のシリウスB様なのかぁ?」
ラーニャが呆れて言う
「な~んだか 分からなくなって来ちゃった」
ザッツロード6世とレーミヤが苦笑し ミラが怒る ヴァッガスとロドウが苦笑し ガイが言う
「ああ、どちらにしろ 我々へ力を与え 共に戦って下された あのシリウスB様は 我々の仲間だ 破壊神ソルなどでは 決して無い」
ヴァッガスが笑んで言う
「おうっ!あのシリウス様の事は 俺も信じるぜ!」
ロドウが笑顔を見せる メテーリが困って言う
「そ、それは…っ 私だって!信じたい… と、思ってるけど…」
ヴァッガスがハッと顔を上げて言う
「あ!やべぇっ!」
ガイが顔を上げ言う
「話に気を取られ 奴らの気配に気付くのが遅れてしまったか」
ロドウが言う
「メテーリやザッツロード王子たちは 僕が守るよ!」
ヴァッガスとガイがロドウへ視線を向け頷く ラーニャがはっとして言う
「え!?何!?も、もしかして!」
ザッツロード6世が言う
「この旧世界の機械兵には 残念ながら僕らでは歯が立たない 戦いはガイ隊長たちへ一任して ラーニャとレーミヤは 2人でソードバリアを張ってくれ」
ミラが言う
「それなら 2人も宝玉の力を使ったら良いわ 宝玉は使用する者たちの魔力の同調さえ出来ていれば 同時に複数人の魔力を増幅できるはずだから」
レーミヤが頷いて言う
「宝玉へ皆で力を送るのは 夢の世界では 宝玉の起動と言う事で行っていたけれど これも方法は同じね」
ザッツロード6世が言う
「それじゃ、僕はソードバリアの魔法は使えないから ラーニャとレーミヤの魔力を同期させる様に やってみるよ」
レーミヤが頷いて言う
「ええ、ザッツならきっと適任だわ お願いね」
レーミヤが微笑する ザッツロード6世が一瞬呆気に取られた後頷いて言う
「うん まかせてくれ」
ラーニャが泣き言を言う
「ああ~んっ あんな難しい事を 現実世界でする事に なるだなんてぇ~」
レーミヤが苦笑する

【 ローレシア帝国 玉座の間 】

リジューネが言う
「ソルベキアの研究者らへ依頼した ザッツロード王子らの捜索は まだ結果を得られては居ないのか?」
大臣Aが言う
「彼らも夜を徹して作業を行って居る様ですが 残念ながら 未だ良い報告は頂けておりません」
大臣Bが言う
「リジューネ陛下 彼らは既に このローレシア帝国の国家機密情報の殆どを閲覧しております このままでは ソルベキアの民である彼らに ローレシアの情報を全て与えてしまう事にもなりかねません 現在ローレシアに残る情報の最たる部分は 全て電子処理化されており 我らローレシアの者は その解析を行えていないのが現実」
大臣AがBを見た後リジューネへ向いて言う
「それでは!奴らの方が我らを越え ローレシアの重要情報を得てしまうと言う事になります!リジューネ陛下!ここはもう… ザッツロード王子らの事より 奴らへ渡ってしまう 情報を守る事の方が ローレシアを守る事になるのではないでしょうか!?」
リジューネが微笑して言う
「そう声を荒げるな大臣 私とて馬鹿ではない 彼らソルベキアの研究者らへ閲覧させているものは 過去、このローレシアに残されている様々な機械を制御していた ガルバディアの民が使用していたもの… 一般とまでは言わないが 城に仕える上層部の者であれば 誰しもが知りえていた情報だ 間違っても 国を乗っ取られる危険が 生じる程のものではない」
リジューネが電子本を見せて言う
「この国の最も重要な情報は 全てこの中にある ローレシアの王である 私にしか見られぬ様 シリウス様のお力が 今も我らローレシアを守って下されているのだ 安心しろ」
大臣A、Bが呆気に取られ顔を見合わせた後苦笑して言う
「そうでしたか… それはそれは 無用な騒ぎ立てを行い申し訳ありませんでした」
「それでしたら安心ではありますが ローレシアの最重要機密はリジューネ陛下以外の 我らも知りえる事が出来ませんで… 少々寂しくもございますな?」
リジューネが呆気に取られて言う
「うん?…それもそうだな では、この中にある事で お前たちにも知らせてやれる事があれば 私の口から伝えよう お前たちは 私と共にこのローレシアを守る 大切な者たちであるのだからな」
リジューネが微笑する 大臣A、Bがリジューネの微笑に一瞬見とれつつ 慌てて言う
「ややっ 流石は我らローレシアの王 リジューネ陛下です!」
「ええ!その通り!我らもこのローレシアを守る為 これからもリジューネ陛下のお力になれる様 微力ながらお仕えさせて頂きますぞー!」
リジューネが軽く笑う 伝達の兵が言う
「申し上げます!ベハイム・フロッツ・クラウザー殿が リジューネ陛下へのお目通りを求めております!」
リジューネが顔を上げて言う
「通せ!」
大臣A、Bがハッとして脇に控える べハイムが現れ礼をする リジューネが言う
「クラウザー殿 報告は聞いている 状況は思わしく無いそうだな?」
べハイムが礼を深くして言う
「リジューネ陛下へ 喜ばしい報告をもたらせぬ事を 大変心苦しく思っております」
リジューネが言う
「前置きは良い その状態で 私の前へ現れたと言う事は 再びローレシアの国家機密情報の 提供を求めに来たのであろう?」
べハイムが苦笑して顔を上げ言う
「流石はリジューネ陛下 お話が早くて助かります」
リジューネが言う
「世辞も不要だ」
べハイムが微笑して言う
「では」
リジューネが言う
「先日現れた際にも言ったが 貴殿らへ提供できる情報は全て渡した」
べハイムが苦笑して言う
「はい、確かに 国家機密情報は一通り拝見させて頂きました しかし、国王クラスの者にしか見る事の出来ない ガルバディアのプログラムを解析する その情報が収められていると言う ローレシアの最上級国家機密である情報を」
リジューネが言う
「ザッツロード王子の捜索は 終了だ」
べハイムが呆気に取られて言う
「は?…今、何と?」
リジューネが言う
「貴殿らへ依頼していた ザッツロード王子の捜索は 取り止めると言っているのだ」
べハイムが一瞬言葉を失った後少し慌てて言う
「取り止める…?しかし ザッツロード王子は ローレシア帝国の宝玉を 持ち出したのでは?」
リジューネが目を細めて言う
「何故、貴殿がそれを知っている?」
べハイムがハッとして言う
「…っ そ、それは」
リジューネが言う
「国の宝である宝玉を 奪われたなどと言う醜態は 上層部ではここに居る大臣たちと 宝玉の保管を任されていた数人の警備兵のみが知る 第一級国家機密だ 貴殿らへの閲覧許可を与えた覚えは無い」
べハイムが黙るリジューネが言う
「私は第三級から第二級までの閲覧許可を出すと共に 貴殿へ第一級国家機密には触れぬ様にと警告した …もっとも 命じただけで 鍵は一つであったのだ 貴殿はいつでも それを見る事が出来た」
べハイムが視線を下げて言う
「…申し訳ありません 結果を焦る余り 陛下のご命令に背いてしまいました」
リジューネが言う
「私は貴殿を試した訳ではない 第一級国家機密は 上位に置かれているだけで 実際には この国の醜態を知らせる ただの記録情報なのだ 貴殿らへ任せていた 捜索依頼の手助けになる様なものなど 存在しなかった」
べハイムが顔を上げ表情を困らせて言う
「しかしっ …お言葉ですが陛下 ザッツロード王子らが 宝玉と言う強い力を放つ物を所持していると言う事実は 彼らを捜索するに当たっての大きな手がかりにも成り得ます 第一級国家機密は …いえ、事あらゆる情報と言うものは 我らにとっての大きな力なのです 従って」
リジューネが言う
「以前に私の捜索を行ったテスクローネは このローレシアの国家機密情報所か 内部情報にすらアクセスする事も無く 共に誰からも情報を得ない状態で 私の居場所を突き止めた… それも たった一人でだ 貴殿らは何人で どれだけの大切なエネルギーを使用して 今に至るのか?」
べハイムが黙る リジューネが一息吐いて言う
「ザッツロード王子の捜索は終了だ 貴殿らへ与えた情報と 貴殿らへ依頼した依頼内容 それら全ての口止めを含め 今までの報酬を今日中に用意させる …最も いくら払った所で 情報の流出を 防ぐ事は叶わぬだろうがな?…大臣!」
大臣A、Bが慌てて返事をする
「「は…!ははっ!」」
リジューネが大臣らへ向いて言う
「このローレシア帝国の国宝が ザッツロード王子に奪われ それを現在捜索中だと言う 無様な情報を城下へ流せ 共に、彼ら もしくは 宝玉を発見した者には 相応の報酬を支払うと」
大臣らとべハイムが驚き 大臣が言う
「し、しかし陛下!?」
「ザッツロード王子は 城下には既に居られないと言う 兵士らからの報告が」
リジューネが軽く言う
「構わぬ 後にソルベキアの民から知らされるよりも早く ローレシアからの情報として流せ!…勇者として崇めていた 新世界ローレシアの王子に裏切られ 国宝を奪われるだけでなく それを隠し他国の力に頼って捜索していると 思われるよりはマシだ!」
べハイムが悔しそうに言う
「リジューネ陛下!我らソルベキアの者が ローレシアの機密情報を リークする等と言う事はございません!」
リジューネが蔑んで言う
「ふふ…っ 何を今更言うのかクラウザー殿 私は知っているのだぞ 貴殿らがこのローレシアの情報を 城下の情報員へ渡し 金を得ていると言う事を」
べハイムが表情を困らせて言う
「そ、それは …確かに、研究員の中には 金銭欲しさにその様な事を行った者も 少なからず居りました しかし!例えそうであっても 彼らはこのローレシアやリジューネ陛下を 不利にする情報は 決して流してはおりません!陛下、ローレシアは古くから 隠し事が多過ぎるのです 城下に居ります多くの者たちは ローレシアからの情報の少なさ故に 不信感を募らせて居ります 我々は そんなローレシアやリジューネ陛下の為にも」
リジューネが溜息を吐いて言う
「もう良い」
べハイムが焦って言う
「リジューネ陛下!」
リジューネが静かに言う
「…私が欲しいのは 信頼だ クラウザー殿」
べハイムがリジューネを見る リジューネが言う
「第一級国家機密に関しては 試すつもりは無かったが 結果として 貴殿らの事は良く分かった …大臣、私の決定は変わらぬ」
リジューネが大臣らへ顔を向ける 大臣らが了解の礼をして言う
「「はい、」直ちに取り掛かります」
大臣らが立ち去る リジューネがべハイムへ向く べハイムが閉じていた目を開き言う
「陛下からのご期待に答えられなかった事を とても残念に思います しかし、」
リジューネが疑問してべハイムを見る べハイムが微笑して言う
「このローレシア帝国の …我らの女帝陛下であられる リジューネ陛下が 人と人との信頼を重視されるお方であったと言う この事は 私にとって何よりの報酬でした」
リジューネが一瞬呆気に取られる べハイムが礼をして立ち去る リジューネが見つめる

【 ソイッド村 近郊 】

ガイたちとザッツロード6世たちがソイッド村へ向かって歩いている ラーニャが疲れた様子で言う
「あ~~ もうっ!お願いだから 残りのソイッド村までの間に 機械兵は来ないで~!」
ザッツロード6世とレーミヤが苦笑してラーニャを見る ヴァッガスが言う
「確かに 機械兵の襲撃がこうも続くと 流石にくたびれるぜ~」
ガイが微笑して言う
「あの丘を越えたのだ ソイッド村はもうすぐ 機械兵と戦う事は もう無いだろう」
ラーニャが言う
「え~?そりゃ~ さっき丘を越えはしたけど 貴方だってソイッド村へ行った事は無いんでしょ?なのに どうしてもうすぐだって分かるの?」
ガイが頷いて言う
「ああ、ソイッド村へ行った事は無いが この機械には ソイッド村や現在地の情報が映し出される様になっている 地図とは違い 我々の居場所も分かると言う とても便利な機械だ」
ガイがGPSのモニターを見せる ザッツロード6世たちが見て驚く ザッツロード6世が言う
「凄い… ローレシアの場所やソイッド村、キャリトールやテキスツも映ってる」
ラーニャが言う
「あ!この真ん中で光ってるのが 今の私たちの場所って事!?」
ガイが頷いて言う
「ああ、こうすれば… 更に詳細な地形なども表示される」
GPSの画面が拡大され詳細画像になる ザッツロード6世たちが歓声を上げる ミラが言う
「この絵が正しければ ソイッド村は私たちの すぐ目の前って事ね」
ラーニャが言う
「この森に遮られているせいで 全然見えなかったのよ!…まぁ、そんな所が ソイッド村らしいわよね?」
ミラが怒って言う
「それはどういう意味!?」
ラーニャが苦笑して身振りで抑える ガイがミラの手に握られている宝玉を見て言う
「この機械は便利ではあるが エネルギーが無くては動かない物なのだ 今回は貴殿らが宝玉を用意すると聞いて もしやと思い持参し正解であった… それはそうと、貴女は ローレシアを出てより今までの間 常に結界を張り続けているが 魔法というものはとても精神力を消費するものと聞く 大丈夫なのか?」
ヴァッガスが言う
「あー そうそう!俺も気になってたんだよ 全然辛そうに見えねーけどよぉ?本当は無理してんじゃねぇのか?」
メテーリがラーニャへ向いて言う
「そうよ あんた仲間なんだから 言われなくても交代するとかしなさいよ」
ラーニャが怒って言う
「失礼ね!ちゃんと交代するって言ったわよ けど、本人が大丈夫だって言うんだから しょうがないじゃない!?」
ミラが言う
「ええ、本当に大丈夫よ 心配してくれてありがとう でも、私たちソイッド族は 年に一度皆で力を合わせて丸々一週間 村の御神像に魔力を送り続けるの それに比べれば たった3日間宝玉に魔力を送る事位 大した事じゃないわ」
レーミヤが微笑して言う
「そう言えば ソイッド村にはそう言う儀式があるって話を 聞いた事があったわ 確か… 精霊祭 だったかしら?」
ラーニャが呆れて言う
「あっきれた~ 精霊様の像に一週間も お祈りみたいに魔力を送り続けるだなんて 一体どんな御利益があるって言うのよぉ?」
ミラが怒って言う
「失礼ね!精霊祭は 古くから伝わる神聖なものなの それに 精霊様の像ではなくって 御神像よ!」
メテーリが言う
「御神像って事は 私たちの神様である 新世界のシリウス様の像って事よね?やっぱり… あの絵にある様な 金髪で青い目の綺麗な像なの!?」
メテーリが目を輝かせてミラへ問い詰める ミラが呆気に取られて言う
「え?えっと… ど、どうかな シリウス様の…?ガルバディア国王の像だなんて 聞いた事はないけど 像には名前なんかも彫られてなかったし …髪や目の色なんかは分からないわよ 石の色なんだから」
メテーリがハッとして頬を赤らめて言う
「あ、そそ… そっかぁ 像だもんね 色は分からないか… あ!で、でも!すっごく綺麗な 男の人でしょ!?少し細身の!」
ミラが困りつつ考えながら言う
「えっと… そうね… 男の人で 綺麗…というか とても優しそうな でも、弱々しい感じではなくって」
メテーリが喜んで言う
「うんうん!分っかるー!」
ガイたちが顔を見合わせ ロドウが首を傾げて言う
「え?シリウス様は 男性なの?」
ミラとメテーリが衝撃を受ける ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「え?シリウス様って言うのは 僕ら新世界のガルバディア国王の事だよね?僕らの世界では 男性の王と女性の女王は明確に呼び分けているんだ それもあって ガルバディア国王は 男性だろうと… 僕も思っていたのだけど?」
ガイたちが顔を見合わせガイが言う
「こちらの世界では 長くに渡りローレシアの王が男性であった事もあり リジューネ陛下へ変わった今であっても それほどはっきりとした呼び分けは 行われていない様に思われるが…」
ロドウが言う
「それもあるけど、ローレシアは女性の王を嫌う部分があるんだよ ずっと昔にね 600年以上前の話だけど 一人だけ居たローレシアの女王様が 何かとても悪い災難に会ってしまったんだって それ以来 ローレシアは女王を置かない様にしてたんだ けど 先代国王のハリヤーグ陛下には 一人娘のリジューネ王女様しか居なかったから 女性の王様になっちゃうけど 仕方なく リジューネ陛下がローレシアの王になったんだよ」
ヴァッガスが言う
「なるほど だから あの女帝様は 何だかいっつも神経張ってるみてぇ~な 堅苦しい感じなんだな?」
ザッツロード6世が残念そうな表情で言う
「きっとリジューネ陛下も それが分かっているから 払拭しようと苦しんでおられるんだろうね」
ラーニャが話を聞き一息吐いて言う
「はぁ~ 王様も大変なのね?」
ザッツロード6世が苦笑する 皆が森へ入って行く

【 ローレシア帝国 城下町 】

フォーリエルが嬉しそうに言う
「ジャーン!どうよ!?」
テスクローネが驚いて言う
「こ…これは…」
テスクローネが移動式屋台を前に驚いている フォーリエルが笑んで言う
「昔の仲間によ、聴いた事があったんだ ちゃんとした店舗じゃねーんだけど こんな風に車輪が付いてて何処にでも店を持って行ける 屋台って言う移動式の飯屋があったって だから、団子屋の設備を注文してた 道具屋のおっちゃんたちに頼んで 探してもらってたんだ」
テスクローネが呆気に取られる フォーリエルが屋台台を点検しながら言う
「ちょっと古いけど 塗装をやり直して設備も付ければ 十分使えると思う な?これで 団子屋を開始出来るぜ!テス!」
テスクローネが呆気に取られたままフォーリエルを見てから微笑して言う
「フォーリエル… 私は 君は設備のキャンセルへ 向かってくれただけであると… まさか こんな… うん?これらの資金は!?道具も揃えた上で この屋台を探して譲ってもらうには 200ゴールドでは足りなかった筈だ」
フォーリエルが一瞬呆気に取られた後 視線を泳がせて言う
「ああ~ まあ、そっちは 出世払いのツケと言うか… 道具屋のおっちゃんに頼み込んで… 後~ 大した額じゃねーけど 傭兵やって貯めてた分もあったし …何とかな?」
テスクローネが呆気に取られた状態から 苦笑して言う
「君は余り言わないが 大剣使いフォーリエルの名は 傭兵としてかなり売れている だからこそ、その道具屋の店主も 君への貸付を了承したんだ …もし私であったなら 返済の信用を得る事は不可能だった …その上 私の為に 君自身の蓄えまで使うだなんて」
テスクローネが表情を困らせて微笑する フォーリエルが一瞬困った後 気を取り直し笑んで言う
「何言ってんだよテス!俺はお前の相棒だろ!?お前が困ってる時は俺が助ける 俺がヤバイ時はお前が助ける!だろ!?」
テスクローネが呆気に取られた後苦笑し 微笑んで言う
「うん… ありがとう、フォーリエル 私の相棒」
フォーリエルが一瞬驚いた後 笑って言う
「おう!…けどよ!本当の勝負はこれからだぜ!?テス!」
テスクローネが軽く笑い頷いて言う
「うん、団子屋を成功させて 早く返済をしないとな?」
フォーリエルが笑って言う
「ああ!」

【 ローレシア城 玉座の間 】

リジューネが言う
「城下の者たちの反応はどうだ?」
大臣Aが言う
「はい、ザッツロード王子への批判もありますが そちらは 王子らがこちらの世界に現れてからの長さも影響して それほど大きなものとはなっておりません …元より 新世界の勇者ザッツロード6世王子への期待は 先の多国籍部隊によるローンルーズの活躍もあって もはや潰えていると言っても過言ではありません」
大臣Bが言う
「それもあってか 今回の事も王子が何らかの成果を示そうと 事に及んだのではないかと言う考えが 大半を占めております 共に、リジューネ陛下が ザッツロード6世王子を新世界の王弟として 丁重に接しておられる事も知られております故に 今回の事へ対するリジューネ陛下への批判は 思いの他少なく留まっております」
リジューネが言う
「私への批判は 今に始まった事ではない 民が騒がぬのは ローレシアの女王の災いとしては それ程の事ではなかったと言う事なのだろう」
大臣らが慌てて言う
「その様な事は…っ」
リジューネが言う
「ザッツロード王子の捜索や 宝玉の奪還報酬の方へはどうだ?一利の期待を持ち テスクローネの参入を期待したが 彼…もしくは 彼に接する者からの名乗りは無いか?」
大臣らが顔を見合わせて言う
「残念ながら…」
「今の所 テスクローネ殿、共に関する方や 有力な者からの名乗りは 確認出来ておりません」
リジューネが視線を下げて言う
「…そうか やはり 戻ってはくれぬか」
大臣らが言う
「テスクローネ殿の居場所に関しては確認が取れています ローレシア城を出たテスクローネ殿は 予てよりフォーリエル殿が入居していた 多国籍部隊の宿舎に身を置いております」
「多国籍部隊の宿舎は その部隊の結成に過去、多くの者が資金援助を行った事もあり 一般の兵士宿舎よりは良いと言われていますな」
「とは言え、テスクローネ殿が フォーリエル殿の一人部屋に 居候しているのでは手狭でしょう まして御曹司であられるテスクローネ殿なら 近い内に音を上げられるのでは?」
リジューネが少し考えてから言う
「彼は私の元を去る際に 何かやりたい事があるとの旨を言っていた 内容までは聞き及んでいないが その為にも 以前の報酬が必要であったと …もし、それが 現状で可能であるのだとすれば 彼が住まいの不便に音を上げ こちらの餌に寄って来る事は無いだろう …ザッツロード王子 いや、宝玉の奪還は 諦めざるを得ないかもしれん」
大臣らが困った様子で顔を見合わせる リジューネが言う
「構わぬ、現状 ローレシアのエネルギーは足りているのだ 万が一の為の宝玉ではあったが その奪還に それ以上のエネルギーを消費しては意味が無い ソルベキアの研究員は 予定通り半数を切捨て 今後は エネルギーの使用を 以前と同様に新世界とのやり取りにのみに絞らせ 節約をさせろ」
大臣らが言う
「畏まりました ソルベキアの研究員へは 私めの口より お伝えいたします」
「エネルギーの使用制限に関しては テスクローネ殿より リジューネ陛下の生態識別と音声によって 制御が可能であると聞き及んでおります ご足労ではありますが どうかリジューネ陛下 機械室へご同行頂けますでしょうか?」
リジューネが苦笑して言う
「ふっ… エネルギーの分配システムは テスクローネの力を用いずとも行える様にしておくと聞いたが そういう事であったのか 信用の置けぬソルベキアの者を使う必要も 彼の力も必要ないのでは 私が再び呼び出す口実も作れぬ まったく 何処までも先を読む男だ…」
リジューネが立ち上がり 大臣らと共に玉座の間を出て行く

【 ソイッド村 】

ラーニャが驚いて言う
「ちょっと!?これ どう言う事!?」
ガイたちが驚いて見つめている ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「…どうして 無人のはずのソイッド村に 結界が!?」
皆の前に ローレシア帝国と同様の結界に守られたソイッド村が広がっている ガイたちとザッツロード6世たちが頷き合い 村へ走って行く

ザッツロード6世とガイたちが周囲を見ながら歩き ザッツロード6世が言う
「やっぱり人は居ない だとすれば この結界は ローレシア帝国と同様に ガルバディアの機械か何かが?」
ガイが振り向いて言う
「ローレシアの結界も 歴代の国王の血を引く者が 定期的にその意思を示さねば 維持されないと聞いている」
メテーリが言う
「だから皆 ローレシアに女王様を置く事へ 反対が出来なかったのよね?」
ラーニャが言う
「だったら 王様は別の人にして 結界の維持だけをリジューネ陛下がやれば良かったんじゃない?」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「いや、そんな事を言っては リジューネ陛下に失礼だよ 王族である彼女に 王座を他者へ譲って 自分はただ 結界の維持だけを行えだなんて」
ラーニャが呆れた様子で言う
「ふ~ん そうなの?やっぱり 王様たちって国や国民の為だとか言うのは建て前で 本当は王様で居たいのね?」
ザッツロード6世が困った様子で苦笑する レーミヤが苦笑して言う
「一国を維持するという事は 簡単な事ではないのよ?なのに、そんな事を言っては リジューネ陛下だけでなく 各国の王様や ザッツにも失礼よ?ラーニャ」
ラーニャが不満そうな表情をして言う
「けどぉ~…」
ミラが言う
「彼らは王として 人々の敬愛を受けるだけの苦労を強いられるのよ ま、自分の事しか考えないラーニャには分からないでしょうね?」
ラーニャが怒って言う
「失礼ね!私だって 夢の世界で ヴィクトール陛下やバーネット陛下を見てたのよ!王様が大変で偉いって事位 分かってるわ!」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「う… そうだね… あの二人は 王様としても王族としても とてもふさわしい方々だった… ラーニャが納得するのは 僕も分かるよ」
メテーリが気付き微笑して言う
「そうなんだ?つまり、一番身近に居るのに ザッツロード王子を見てたんじゃ 分からなかったのね?」
ザッツロード6世が衝撃を受け落ち込む ミラが呆れ レーミヤが困った様子で苦笑する ラーニャが疑問する ヴァッガスが言う
「メテーリ、また余計な事言ったぜ?」
メテーリが首をかしげる ガイがザッツロード6世の近くへ行って頭を下げて言う
「部下が失礼な事を… お詫び致しますザッツロード王子」
ロドウが苦笑して言う
「うーん それを謝っちゃうのも ちょっと 話を肯定しちゃう気もするけど」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「は… はは…っ いえ、気にしないで下さい… 夢の世界で鍛えておきましたから…」
メテーリが不思議そうに言う
「それじゃ~ 貴方って夢の世界でまで」
ガイ、ヴァッガス、ロドウが慌ててメテーリの口を止める ザッツロード6世たちが苦笑する

ミラを先頭に歩いて来たザッツロード6世とガイたち ミラが驚いて言う
「え?どうして…」
ラーニャが疑問し、ミラの視線の先を見て言う
「え?何?今度は… あー!あれ!」
ザッツロード6世が言う
「宝玉だ!」
ザッツロード6世たちが宝玉の台座へ駆け寄る ガイたちが続いて来て ガイが言う
「うむ、どうやら あの宝玉から力を得て 下にある装置が結界を作っている様だ」
ガイと皆が結界を見上げる ザッツロード6世が頷いて言う
「うん そうみたいだね しかし、一体誰がその維持を行っているのだろう?」
ヴァッガスが周囲の匂いをかいで言う
「周囲に俺ら以外の人は居ねーぜ?誰かが来たって残り香も まったくねぇ」
ガイが頷いて言う
「辺りの形跡からしても 定期的に人が訪れている様子は 見受けられ無いな」
ミラを覗くザッツロード6世たちとガイたちが顔を見合わせる ミラが言う
「この場所 新世界では 御神像がある場所なのよ それに… 結界を維持している力 この感じ …間違いない この力は新世界の ソイッド村の皆の力だわ!」
皆が驚く

ミラが宝玉の力を確認している ラーニャが言う
「つまり 新世界のソイッド村の人たちが 旧世界のソイッド村を守っている… って事よね?」
レーミヤが微笑して言う
「そうね きっと精霊祭と言う名で 毎年、一週間もの期間を掛けて この旧世界のソイッド村 …自分たちの本当の故郷を守る為 力を送っていたのでしょうね」
ザッツロード6世が少し残念そうに微笑して言う
「新世界のローレシアには ソイッド村の人々に関して そう言った記述は残されていなかった 彼らは独自の文化を持ち 独自の生き方を続ける とだけ… もっとローレシアの者が ソイッド村の人々と交流を続けていれば もしかしたら 僕らが 旧世界の事を忘れてしまう事もなかったのかもしれない…」
レーミヤが苦笑して言う
「それを言ったら 私たちテキスツの人々も もっと隣村のソイッド族と 交流を持つべきだったのかもしれないわ」
ラーニャが不満そうに言う
「そうかなぁ?ソイッド村の人たちは 元々他町や村の人たちと交流を持つ事が嫌いなのよ?私たちが仲良くしようとしたって きっと向こうが断るわよ」
ガイが考えながら言う
「以前の話で ソイッド族はローレシアの転送装置を使用せずに 新世界へ向かった…と 話していただろう?彼らが 他の新世界の人々と違い この世界の自分たちの村を守っていた事と 何か関係があるのではないだろうか?」
メテーリが不満そうに言う
「大体、何でその ソイッド族の末裔である彼女が 仲間の貴方たちへ 色々伝えたりして無いのよ?あなたたちって 本当は仲良しじゃないの?」
ザッツロード6世が呆気に取られる ラーニャが怒って言う
「あんた!相っ変わらず 失礼ね!ミラは私たちの仲間で ちゃんと 仲良… な、なな 仲良し…」
ラーニャが顔を赤くして言葉に詰まる ミラがやって来て言う
「私も精霊祭で行っていた事が 本当は この旧世界のソイッド村を守るための儀式であったなんて事は 知らなかったのよ もし知っていたのだったら 旧世界の話が出た時点で 話していたわ」
ロドウがミラへ向いて言う
「それじゃ その精霊祭っていうのは そもそも何のためにやっていると 思っていたの?」
ミラが不意を突かれた様子で一瞬呆気に取られてから考えて言う
「何のためにって… それは勿論 普段から私たちへ力を与えて下さっている精霊様へ 私たちの力を送る事で恩返し… いえ… 違うわ 確か…」

回想

ミラの母親が振り返り微笑して言う
『一年に一度 御神像へ力を送る事で 私たちは、私たちのソイッド村を 守っているのよ』
幼いミラが首を傾げて言う
『村を?御神像に力を送らないと このソイッド村はどうなってしまうの?』
幼いシラがミラへ向いて言う
『村が壊れてしまうかもしれないのよ?大きな津波が来るの』
ミラがシラへ向いて言う
『つなみ?』
母親が微笑んで言う
『うっふふ… シラは良く知っているわね?』
シラが満足そうに笑む ミラが膨れっ面を見せる 母親が言う
『でも、それは 別のお話 津波からはあの御神像の神様が守ってくれるから 大丈夫なの 精霊祭で私たちが力を送るのは 村へ入り込もうとしている 悪い精霊を防いでいるのよ?』
ミラとシラが疑問し顔を見合わせた後母親へ向く 母親が微笑して言う
『私も 悪い精霊というのが どんな精霊なのかは分からないわ でも、村を襲う大津波からは 私たちの神様が守って下さる 村へ入り込もうとしている 悪い精霊からは 私たちの善い精霊様が守って下さるの… だから、二人とも 村にある御神像にも 精霊様にも いつもお礼の気持ちを忘れないでね?』
ミラとシラが理解できない様子を見せ 顔を見合わせた後 シラが笑顔で言う
『うん!私分かったわ!』
ミラが衝撃を受け慌てて言う
『わっ私も分かったもん!』
母親が笑う

回想終了

メテーリが言う
「何よぉ それじゃずっと昔から 貴方のお母様はちゃんとシリウス様に 感謝の気持ちを忘れない様にって 言ってらしたんじゃない?」
ミラが衝撃を受け慌てて言う
「そ、それは…っ え?違うわよ」
ミラが気付いて言う
「母さんは 私たちの神様にって言ってたわ それは あの御神像の事よ シリウス様だなんて 一言も言ってないわ」
メテーリがミラに詰め寄って言う
「だから!その御神像はシリウス様の姿をしているんでしょ!?だったら 貴方たちの神様って言うのはシリウス様の事よ!」
ミラがメテーリに詰め寄って言う
「しつこいわね!だから何で御神像が シリウス様の姿だって決めるのよ!?貴方は新世界のソイッド村に行った事でもあるって言うの!?大体 シリウス様は 長い金髪 で 憂いを帯びた青い瞳 って言うんだから 髪は長くて 目は悲しそうなんでしょ!?御神像は そんな姿じゃないわ!」
メテーリが更に寄って言う
「新世界になんて行かなくったって知ってるわよ!髪は短くて 目は優しくても強気な感じよ!ソイッド族の人たちに 優しく手を差し伸べて 安心させてくれる とても素敵な方だわ!」
周囲にいたザッツロード6世やガイたちが驚き ミラが呆気に取られて言う
「…なんで 御神像の姿が手を差し伸べているって事まで 知ってるのよ?」
メテーリが衝撃を受ける ザッツロード6世がハッとして言う
「あ、もしかして この前の話で言い掛けていた ソイッド族から託された絵って言うのは」
ラーニャが呆気に取られて言う
「絵?」
メテーリが皆の視線にハッと焦った後表情を困らせて言う
「うぅ… やっぱり余計な事 言っちゃったぁ~…」

ロドウが言う
「それじゃ、メテーリはソイッド族の宝であった 新世界の御神像の 元にされたと思われる絵を 見た事があるんだね?」
ガイが考えながら言う
「新世界からこの世界へ力を送る その象徴とされた御神像であるのなら ソイッド族がメテーリの先祖へ託したという その絵の人物である可能性は 極めて高い」
メテーリが言う
「お母さんは 絵の事を シリウス様の絵だって言っていたわ きっとあの絵の人が 私たちの神様であるシリウス様なのよ」
ヴァッガスが首を傾げて言う
「ならよぉ?メテーリは 俺らに協力してくれた あのシリウスB様が 俺らの神様であるシリウス様の双子の兄弟だって事が 分かってたんじゃねぇかよ?」
メテーリが一瞬驚き視線を逸らして言う
「そ、それが…」
ガイたちがメテーリを覗き込む様に見る メテーリが表情を困らせて言う
「に、… 似てないのよ 全然」
ガイたちが驚く メテーリが慌てて言う
「わ、私だって 信じたいって思ってたのよ!?で、でも やっぱり似てないのよ… あの絵のシリウス様の肌は 綺麗な肌色だったし 髪の色も黄色に近い程の金髪だった 目の色だって青かったし… 強いて言えば 髪の長さ位は同じかもしれないけど」
ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「え?あれ?確か シリウス様は 長い髪だって…?」
メテーリがザッツロード6世へ向いて表情を困らせたまま怒って言う
「私だってそう思ったわよ!けどっ 髪の長さなんて いくらだって切るなり伸ばすなり出来るでしょ!?大体!あの絵のシリウス様は そんなの どーだって良い位…!」
レーミヤが苦笑して言う
「その絵の方は メテーリさんに シリウス様であると 思わせるほどの お姿なのね?」
メテーリがレーミヤへ向くレーミヤが微笑む メテーリが苦笑した後頷いて言う
「シリウス様の絵は ローレシア城に何点もあるって言うけど 私たちは見られない… でも、それを全部見ている リジューネ陛下も あのシリウスB様の事を 認めなかったし…」
ヴァッガスが言う
「それでも 俺はあのシリウスB様を信じるぜ」
皆がヴァッガスへ向く ヴァッガスが苦笑して言う
「当ったりめーだろ?あのシリウス様は 俺らの仲間だ 違うのかよ?」
ガイとロドウが微笑する メテーリが表情を困らせたまま俯く ザッツロード6世が言う
「僕は そのシリウスBに直接会っては居ないし シリウス様の絵や 本当のお姿は知らない けど、ヴィクトール11世様は 宝玉を持って 再びガルバディアへ向かった」
ミラが言う
「ザッツ… そのヴィクトール11世様を 追うって言うの?」
ザッツロード6世がミラへ向いて頷いて言う
「うん、そうしたい …だから そうするつもりだ …僕も 自分の意思で動かないと」
ラーニャが軽くふざけて言う
「相変わらず ヴィクトール様を慕って 追い掛けてるだけにも見えるけど?」
ザッツロード6世が苦笑して頭を掻く ミラがラーニャへ怒る レーミヤが微笑して言う
「私も ザッツの意見に賛成するわ 折角 この世界に来たのだから 私たちも出来る事をやらないとね?」
ザッツロード6世が頷く ラーニャが言う
「それじゃ ローレシア城へ移動魔法で行こっか?ガルバディアへ行くなら その方が早いし この結界の中からなら ローレシア城まで飛べるわよ?」
ザッツロード6世が頷いて言う
「うん、ローレシアの宝玉を リジューネ陛下へお返ししないといけないし」
ヴァッガスがそっぽを向いて言う
「そのまま 監禁されちまったりしてな~?」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「そうならない為にも 今回の事に それなりの報告を持ち帰らないと」
ガイが言う
「ソイッド村が 宝玉の力で守られ 健在であったという この情報は その それなりの報告に値するのではなかろうか?この世界において ローレシアとガルバディアの他に 人の住める場所が存在したという事は 大きな朗報だ」

【 ローレシア帝国 機械室 】

リジューネが驚きに目を丸くして言う
「な…ん…だと?」
リジューネの前にある通信モニターに映るイシュラーンが言う
『…新世界にて行われていた 夢の世界の作戦は 再び失敗に終わりました』
リジューネが言葉を失う

【 旧ガルバディア城 玉座の間 】

シリウスBがプログラムを見つめる ヴィクトール11世が言う
「シリウスB やっぱり貴方の力を借りたいんだ シリウスの為にも この世界の為にも それから 新世界の為にも」
シリウスBの玉座の後ろに 力を取り戻した宝玉が置いてある

【 ローレシア帝国 多国籍部隊 宿舎 】

ガイが言う
「では 私はザッツロード王子方を ローレシア城までご案内して来る」
ロドウが言う
「僕も行くよ ガイ」
ガイとロドウが通路を行く 向かい側からフォーリエルがやって来る ガイが気付いて言う
「うん?貴殿は確か」
フォーリエルが気付き言う
「あ、ガイ隊長 お疲れ様っす」
ガイが首を傾げて言う
「何故貴殿が多国籍部隊の兵舎に?」
フォーリエルが疑問して言う
「え?何故って… 俺は前からここの所属っすよ?まぁ、最初は短剣使いのファリス 次は 銃使いのシュリ その後は長剣使いのフォルクレルスライツァーの真似をしてたんっすけど やっぱり俺は 昔からアバロンの大剣使いに憧れてたモンで 真似できる相手が居ないのはちょっと難しいっすけど 最近はもっぱら この姿で居ますね」
ガイが呆気に取られて言う
「な…!?き、貴殿があの ファリスやシュリやフォルクレルスライツァーであったのか!?3名共に脱隊した筈が 突然に戻ってくれたかと思いきや 再び消えてしまい どうなっているのかと頭を悩まして居った」
フォーリエルが驚き 次に喜んで言う
「えー!?マジっすかぁ!?いやぁ~嬉しいなぁ 俺の物真似って ガイ隊長の目にすら分からない程 上手く行ってたんすか!?本物のあの人たちなら もう何年も前にローンルーズへ向かって それっきりっすよ!?」
ガイが残念そうに言う
「ああ… 風の噂でそうは聞いてはいたのだが 同じ部隊で共に戦っていては 何処吹く風と思っていたのだ しかし、そうか… あれは貴殿であったのか」
フォーリエルがバツの悪そうな様子で言う
「あ~… そのぉ… 騙すつもりじゃなかったんすよ?俺はそのぉ~ 何って言うか 自分の好きな戦士の真似をしてないと なんか 上手く戦えないモンで… 多分 自分の力に自信がねぇ~せいだと思うんすけど」
フォーリエルが頭を掻く ガイが苦笑して言う
「いや、種類の違う武器を扱い その武器を扱った有名な戦士の真似を 技術をも交えてあれほど見事に行えるとは 大した特技だ 戦力としては十分と言えよう」
フォーリエルが呆気に取られた後微笑して言う
「ありがとうございます ガイ隊長にそう言って貰えると 俺も少し罪悪感みたいのから 抜け出られる感じっす …あ!それじゃ 迷惑ついでに 今度、ガイ隊長の物真似しても良いっすか!?もちろん 悪い事には使いません!」
ガイが一瞬呆気に取られた後苦笑して頷いて言う
「ああ、貴殿に真似て貰えるよう 私も腕を磨くとしよう」
フォーリエルが笑顔で言う
「もう十分なってますって!」
2人が軽く笑う ガイがハッとして言う
「ああ、すまない 人を待たせているのだった」
フォーリエルが気付いて言う
「あ、そう言えば 副隊長方が 痺れを切らしてました 特に メテーリ副隊長が」
ガイが軽く笑って頷き立ち去る フォーリエルが微笑して歩き始め言う
「さーて テスの美味い団子でも 食いに行くか!」
フォーリエルが立ち去る ガイとロドウがフォーリエルの背を見送ってから 近くの扉へ向き直る

扉の中

ラーニャが心配して言う
「ねぇ ザッツ… ホントに行くの?」
ザッツロード6世が言う
「うん 僕が借り出したのだから 僕がお返ししないと」
ラーニャが言う
「けどぉ~…」
ミラが言う
「それで?『良く返してくれた』って?無罪放免になるとは 流石のザッツでも思ってはいないのでしょ?」
ラーニャが焦って言う
「え!?それじゃ…っ!?」
ザッツロード6世が言う
「ただでは許してもらえないと思う… けど ソイッド村の事を伝えて それで この旧世界の為に 動く事を条件に 執行猶予を与えてもらえないかを 交渉してみるよ」
ミラとレーミヤが心配する ラーニャが困って言う
「執行猶予…?うーん… あのリジューネ陛下が 許してくれるかなぁ…?」
ザッツロード6世が言う
「許してくれるかは正直分からないけど 少なくとも リジューネ陛下は今 この宝玉を心配して待っているだろうから 早くお返ししないと」
ザッツロード6世が笑って宝玉を手に持つ ラーニャがしょうがないと言った様子で苦笑する 扉がノックされる

宿舎 外

宿舎の外に居たヴァッガスとメテーリが振り返り ヴァッガスが言う
「お?ホントに城に行くのか?王子サマ?」
ザッツロード6世が言う
「はい もし投獄されるようなら 僕の代わりに 仲間たちがガルバディアへ向かう事になって居ます」
ガイが言う
「更に、ローレシアからの迎えが来る前に 自らリジューネ陛下の下へ向かわれるそうだ」
ヴァッガスが笑って言う
「ヒュー!良いなぁあんた 気に入った!」
ヴァッガスがザッツロード6世の横に来て言う
「よし!折角 自分から行くってんだ その間にローレシア兵に見つかったりしたら 格好が付かなくなっちまう …だから、裏道を教えてやるよ!」
ヴァッガスが道を示す様に顔を動かす ザッツロード6世が微笑して言う
「ありがとうございます ヴァッガス副隊長」
ヴァッガスが苦笑して言う
「ヴァッガスで良いぜ ザッツロード王子」
ザッツロード6世が微笑して言う
「それじゃ、僕の事も ザッツロード… いえ、ザッツで良いですよ」
ヴァッガスが笑顔で言う
「なら、堅苦しい敬語も無しだ」
2人が笑みを見せる メテーリが言う
「ねぇ、ローレシア城への裏道を行くって事は あの教会の裏を通るって事でしょ?」
ヴァッガスが振り向いて言う
「あの教会?…あぁ、あの古い教会の事かぁ そうだな 丁度あの裏の細道を通るぜ」
メテーリが言う
「なら、私も行くわ」
ヴァッガスが疑問して言う
「あ?」
メテーリがミラへ向いて言う
「私のご先祖様が 貴方たちのご先祖様から預かったんだもの 確認を含めて 貴方に見せるべきでしょ?」
ミラが驚く ラーニャが言う
「もしかして、例の シリウスBの絵…」
メテーリが言う
「そうと決まれば急ぐわよ ローレシア兵に見つかったら それこそ大変なんだから!」
メテーリが先行し ヴァッガスがザッツロード6世たちへ視線を送る ザッツロード6世が頷き 皆が歩き出す

【 ローレシア帝国 玉座の間 】

「ザッツロード6世王子の御帰城です!」
ザッツロード6世が伝達の兵の声と共に入室してリジューネの前に立ち止まる リジューネが顔を向けて言う
「ザッツロード王子 良くぞ戻られた」
ザッツロード6世が宝玉を取り出し向けて言う
「無許可でお借りした事を お詫びします」
リジューネが無表情に大臣らへ視線を向ける 大臣Aが軽く返事の礼をしてザッツロード6世の元へ行き 宝玉を受け取り 確認して言う
「確かに、このローレシア帝国の宝玉です」
ザッツロード6世がリジューネへ向いて言う
「リジューネ陛下、我々は その宝玉の力を用いて ソイッド村へ」
リジューネがザッツロード6世の言葉を制して言う
「先に言う ザッツロード王子」
ザッツロード6世が一瞬驚きつつも言う
「え?…あ、はい」
リジューネが言う
「昨日、貴殿の居らぬ間に 新世界ローレシア イシュラーン殿より連絡が入った」
ザッツロード6世と後ろのラーニャたちが驚き顔を見合わせる ザッツロード6世が言う
「父上から 何と!?」
リジューネがザッツロード6世を見つめ 束の間を置いて言う
「新世界の作戦は 再び 失敗に終わったそうだ」
ザッツロード6世とラーニャたちが驚き呆気に取られ ラーニャが思わず言う
「そんな…っ」
リジューネが言う
「イシュラーン殿は 更なる作戦の再開を行うと申されていた しかし、ここまで来ては… もはや その作戦とやらが 成功する時が来るのかすら 分かりかねる」
ザッツロード6世が言い返そうとするが リジューネが続けて言う
「更に言えば その時まで このローレシア帝国のエネルギーが持続するのかも危ういのだ 従って 我々はこれ以上 新世界からの連絡を 黙って待つ訳には行かない」
ザッツロード6世が慌てて言う
「待って下さい!リジューネ陛下 新世界の作戦は 私の父 イシュラーンの代から その方向性を変え 現在は成功への糸口が見えていると申しておりました!それに、作戦工程に掛ける その時間も短くする事が可能になったと 作戦のやり直しが短時間の内に出来るのであれば 成功の時までの期間もきっと短く済む筈です!」
リジューネが言う
「予てより 我らは新世界からの連絡を待ちながらも 我ら自身にも 出来る事はないかと探していた そして、唯一見付けた その物には 厳重な封がされていたのだ この機械」
リジューネの言葉に合わせ大臣Bが手にしていた布を外し ザッツロード6世へ見せる ザッツロード6世がハッとして言う
「あの機械は!」
リジューネが言う
「ソルベキアの者に確認させた所 この機械はCITCと呼ばれるものであり 世界の力を取り出す事が出来ると言う これを使えば わざわざローンルーズのファクトリーを破壊するなどと言う危険を冒さずとも 我らは多くのエネルギーを得る事が出来たそうだ」
ザッツロード6世が呆気に取られて見る リジューネが言う
「しかし、先ほども言った通り これには厳重な封がなされている それを解除出来るのは」
リジューネがザッツロード6世を見る ザッツロード6世が驚いて言う
「えっ?」
リジューネがザッツロード6世を見据えて言う
「遠い過去 新世界へ向かったローレシア王の遺伝子情報を持つ ザッツロード王子 貴殿を置いて 他には居ないとの事」
ザッツロード6世と仲間たちが呆気に取られる ソルベキアの研究者Tが現れて言う
「ご協力頂けますね?ザッツロード6世王子」
ラーニャたちがザッツロード6世を見る ザッツロード6世が少し考えてから顔を上げて言う
「リジューネ陛下 聞いて下さい」
リジューネたちが一瞬驚きつつ 平静を装ってザッツロード6世を見る ザッツロード6世が言う
「我々は お借りしたローレシアの宝玉を使用し この世界のソイッド村へ向かいました そこで、遠い過去 ソイッド村に現れた シリウス様の情報を確認するに至りました」
リジューネが驚いて言う
「シリウス様の!?」
ザッツロード6世が言う
「はい、そして それにより 現在この世界のガルバディアには 新世界へ向かったシリウス様ではない もう一人のガルバディア国王が居られるという事も分かりました」
リジューネが目を見開く ザッツロード6世が言う
「そのお方は 通常の人とは異なる姿をされているとの事ですが 恐らくそれは ガルバディアの機械の力を使っている為だと 私は思います 本来の姿は バーネット… いえ、新世界に居られる シリウス様のご子息に よく似て居られました」

回想

ザッツロード6世たちが メテーリの指差す先 教会地下の壁に掛けられている シリウスBの絵を見て驚いている

回想終了

ラーニャがハッとして言う
「そういえばっ」
ミラが言う
「…そうね 気付かなかったけど 言われてみれば」
リジューネが視線を強める ザッツロード6世が言う
「リジューネ陛下 その機械 CITCは 扱いを誤れば とても危険な物になるはずです ですから それを試すと言うのでしたら」
ザッツロード6世がリジューネを見据えて言う
「一度私をガルバディアへ向かわせる 許可を下さい」
リジューネが驚く ザッツロード6世が言う
「私が この世界のガルバディア国王 シリウスBに会って参ります」
その場に居る者たちが息を飲んでリジューネの返答を待つ リジューネが間を置いて言う
「許可は出来ぬ …と申したら?」
ザッツロード6世が間を空けずに言う
「私も その機械を使う為の協力を 拒否します」
ラーニャたちが困惑して顔を見合わせる

ザッツロード6世たちが玉座の間を出て行く 大臣らがリジューネの元へ言って言う
「リジューネ陛下 宜しかったのですか?」
「宝玉を回収したとは言え ガルバディアへ向かう事へ 許可を与えてしまわれるとは」
リジューネが言う
「構わん これで 彼の遺伝子情報を使う事に対し 一応の了承は得た」
大臣Aが言う
「と、申されましても ガルバディアへ向かったザッツロード王子の身に何かあり 万が一王子の帰還が叶わないような事になっては その了承も意味がございません やはり了承だけではなく 実際に機械の封を解かせてから 向かわせるべきではありませんでしたでしょうか?」
リジューネが微笑して言う
「ふ…っ その必要は無い むしろ 王子には帰還して貰わぬ方が 都合が良いかもな …フェルム伯!」
リジューネの呼び声にフェルムが現れる 大臣Aが疑問する リジューネが微笑して言う
「どうだ?ザッツロード王子の遺伝子情報は 確認出来たか?」
フェルムが笑んで言う
「はい、王子が使われていた寝室より採取いたしました 毛髪より取り出した遺伝子情報との照合が 無事確認出来ました これで…」
大臣Aがリジューネへ向く リジューネが微笑して言う
「彼はフェルム・フォルカインド伯 あのフェルム・テスクローネの お父上だ」
大臣Aが驚いて言う
「なんとっ テスクローネ殿の…っ なるほど それでザッツロード王子の遺伝子情報などを」
フェルムが言う
「残念ながら 私はテスクローネの様にプログラムなどは出来ません ザッツロード王子の遺伝子情報を採取出来たのも この機械があってのお陰です」
フェルムが機械を見せて言う
「これは昔 私の店へ出入りする業者との取引を 間違いなく行うために 私がテスクローネに作らせた物 プログラムなどの扱えぬ私でも使える様にと 作られております」
リジューネが言う
「フェルム伯は 他にも このローレシアを守るために役立つものがあれば 提供を惜しまないと言ってくれた」
大臣Aが微笑んで言う
「それはそれはっ 何と愛国心に優れたお方か」
リジューネが大臣Aの言葉を肯定する様に頷く フェルムが微笑して言う
「この国へ身を置くものとして 当然の事です」
大臣Aが言う
「お父上のフェルム伯が その様におっしゃって下されていると知れば テスクローネ殿も再び 我らローレシアへ 力を貸して下されるかもしれませんな?」
フェルムが言う
「息子の件では リジューネ陛下ならびに皆様のお手を煩わせたと聞き 大変申し訳なく思っております」
リジューネが首を傾げて言う
「…うむ それはそうと、失礼だが フェルム伯」
リジューネの言葉に皆の視線が向く リジューネが言う
「貴殿とテスクローネ殿は 随分似て居られない様だが?テスクローネ殿は孤児か 何かであったのだろうか?」
フェルムが一瞬間を置いて言う
「実は… 彼は私の子では無いだけではなく この時代の子でも無い 滅亡したガルバディアのプログラマー ベネテクトの生き残りなのです」
リジューネと大臣らが驚き リジューネが視線を強めて言う
「ガルバディアの… ベネテクトに生き残りがあったとは …それで、この時代の子では無いと言うのは?600年間 ガルバディアのプログラムを行える者が 無かったと言う意味か?」
フェルムが言う
「テスクローネが生き残りと言っても おおよそ600年前にベネテクトが絶滅した事に 変わりはありません 彼は 我がフェルム家に代々受け継がれて来た ガルバディアの機械の中に封じられていた子なのです 私の代になり お恥ずかしい事ながら 代々受け継いで来たフェルム商の暖簾を下ろさなければならない事態が起こりまして その際に 借金の形に取られる前にと 封印を解いた所 幼いテスクローネが目を覚ましたのです 彼の知能を得て 店はどんどん回復され 再び 国一番の問屋となりましたが」
リジューネが言う
「店のために使われたと思った彼が 貴殿の元を飛び出し その命を絶とうとした …フォーリエルに会ったのはその頃と言う事か?」
フェルムが言う
「彼とは以前から面識があり 度々店にも尋ねに来ておりました 元は私どもの店の商い相手の息子さんでしたからね しかし、随分昔に ご両親が亡くなられ それ以降 私は彼の姿も見ておりませんでした …が、もしかしたら テスクローネとは会っていたのかもしれません」
大臣Bが言う
「フォーリエル殿に関して 我らも調べを進めておりましたが 15年前まで彼のお父上が営われていた 武器屋が閉業してからと言うもの それ以降彼の行方は分かっておりません 確認が取れたのは 丁度テスクローネ殿を発見した多国籍部隊の報告書にのみ 兵士名簿に彼の名が入っております」
大臣Aが言う
「多国籍部隊は ローレシアの正規部隊とは違い 18歳未満でも入隊が認められます …しかし、彼の両親が無くなり 武器屋が閉業した頃の彼の年齢では 恐らくその多国籍部隊であっても 入隊は不可能であったと思われます」
大臣BがAへ向いて言う
「多国籍部隊の保護の下 孤児院にでも入っていたのではないか?」
大臣AがBへ向いて言う
「そちらも確認はしてあるが 多国籍部隊の専属孤児院にも 他の孤児院にも 彼の名は無かったんじゃ」
リジューネが大臣らへ言う
「では、引き続き テスクローネとフォーリエルについて 調べを続けておけ」
大臣らが了解の礼をする リジューネがフェルムへ向いて言う
「フェルム伯 貴殿にも 引き続き手を貸してもらう事となるだろう また 何かローレシア、ひいてはこの世界の為に 役立ちそうなものが手に入った時には」
フェルムが微笑んで言う
「はい、もちろん すぐに陛下の元へ お届けに上がります」
フェルムが深々と頭を下げて去って行く 大臣らがリジューネに近づいて大臣Aが言う
「テスクローネ殿も お父上と同様に協力的であって下されば良かったのですが」
リジューネが苦笑して言う
「協力的…?フッ どうせ テスクローネが出て行った後の経営が悪化したのだろう 今回の遺伝子情報を取り込む機械とて 貸しはするが渡す事は出来ないと… おまけに一度の貸し出しに 扱いが難しいだの何だのと 理由を付けて高額の賃貸料を請求して来た」
大臣Bが苦笑して言う
「あのテスクローネ殿と言い フェルム伯と言い… 血は争えませんなぁ あぁ、血は繋がっておらなかったのでしたか?」
リジューネが軽く笑って言う
「血など 繋がって居ろうが無かろうが あの親に育てられては そうもなるのだろう …この世界の金など 新世界へ行けばただの紙屑であると言うのに」

城外

ザッツロード6世たちが出て来ると ヴァッガスとメテーリが振り返り ヴァッガスが悪戯っぽく笑んで言う
「お?捕まらずに出て来たかー!」
メテーリが怒って言う
「こらっ ヴァッガス!」
ザッツロード6世が軽く笑い ヴァッガスたちの前で立ち止まる ヴァッガスが首を傾げて言う
「それで?これからどーすんだ?」
メテーリが言う
「ガルバディアに行くにしたって 宝玉が無ければ行けないし」
ザッツロード6世が微笑して言う
「うん、確かにローレシアの宝玉は返還してしまったけど ガルバディアは ヴァッガスやメテーリ副隊長も行った場所だ」
メテーリが軽く言う
「別にメテーリで良いけど?」
ザッツロード6世が軽く笑って言う
「あは…ありがとう それじゃ 早速だけどメテーリ」
メテーリが軽く衝撃を受けて言う
「わ、割とあっさり言うのね… 何よ?ザッツ」
ラーニャがミラへこっそり言う
「ザッツはそう呼んで良いって言ってないのに 当然の様に言うのね」
ミラが呆れて言う
「まぁ 良いんじゃないの?どうせ良いって 言うでしょうし」
ザッツロード6世が言う
「僕たちを 移動魔法でガルバディアへ 飛ばして欲しいんだ」
沈黙が流れる ザッツロード6世が疑問し 首を傾げて言う
「…あれ?何か…?」
ヴァッガスが言う
「その移動魔法って~のは」
ラーニャが首を傾げて言う
「そう言えば ガルバディアのシリウスBには 移動の世話にもなったって 言ってたわよね?それってもしかして…」
メテーリが開き直って言う
「そうよ!私は移動魔法が出来ないの!」
ザッツロード6世が驚いて言う
「えぇええーっ!?」
メテーリが衝撃を受けザッツロード6世へ掴み掛かって言う
「うるさいわね!しょうがないでしょ!?出来ないものは出来ないのよ!」
ザッツロード6世が苦笑したままメテーリを落ち着かせる様に手を向けて言う
「あ、ああ、ごめんっ 悪気はなかったんだけど ちょっと… その、驚いてしまったものだから」
ヴァッガスが言う
「ザッツがそんなに驚くほど 移動魔法ってのは簡単な魔法なのか?あんなすげー事が出来るなんて 俺には信じられねぇ位だけどな?」
ザッツロード6世がヴァッガスへ向いて言う
「対人移動魔法は確かに少し難しいけど 移動魔法陣を使用してのものなら それ程難しくないよ 魔法陣に流れている魔力を感じて 同調させれば良いだけなんだ」
ザッツロード6世がメテーリへ向く メテーリが一瞬怯んでから視線を逸らして言う
「やり方ぐらい 私だって知ってるわよ」
ザッツロード6世が一瞬驚いてから苦笑して言う
「え?それなら?」
メテーリが言う
「それでも出来ないの!」
ザッツロード6世が驚いて言う
「え?…そう なのかい?どうしてだろう?メテーリは魔力を収集する能力も十分だし 回復魔法だって とても上位のものを使いこなしているのに」
ミラがハッとして言う
「そういえば…っ 彼女が回復魔法を使っている時に思ったんだけど」
皆の視線がミラへ向く ミラがメテーリを見て言う
「貴方、普通の魔法使いと違って 精霊様に呼びかけているでしょう?」
ラーニャが驚いて言う
「えぇえーっ!?嘘ぉ!?」
メテーリが表情を困らせて言う
「そ… それはっ」
ミラが言う
「私たちソイッド族も 移動魔法陣を使っての移動魔法は苦手なのよ あの魔法陣の魔力はとても機械的だもの だから 私たちは基本的に 対人移動魔法で移動魔法を覚えてから 移動魔法陣を使ったものにも慣れるようにするの」
ラーニャがメテーリへ向いて言う
「でも、貴方はキャリトールの魔法使いでしょ?それなのにどうして?」
皆の視線がメテーリへ向く メテーリが後ずさりつつ慌てて言う
「勘違いしないで!私は 精霊様に語り掛けてなんていないわ!私はっ …教会のシリウス様に お願いしてるのよっ」
ラーニャが疑問して言う
「え?教会のシリウス様?あの絵にって事?」
ザッツロード6世が微笑して言う
「それじゃ、シリウスBにって事かな?」
メテーリがザッツロード6世の言葉に シリウスBの姿を思い出し 強く顔を横に振って言う
「ち、違うっ!違うわよ!あの人じゃない!シリウス様よ!」
皆が疑問した後 ミラが言う
「なら、それでも良いわ 目的地のガルバディア シリウスBの事を強く思って 対人移動魔法の呪文詠唱をしてみて そうすれば 彼の居るガルバディアへ移動する事が出来るから」
メテーリが驚く ミラが微笑して言う
「貴方なら出来るわよ」
メテーリがミラの微笑に呆気に取られる ミラが言う
「私も手伝うから ソイッド族の宝である あの絵を大切にしていてくれたお礼よ 一度でも移動を成功させれば 次からは 誰の所へもすぐに飛んで行ける 移動魔法はすばらしい力よ」
メテーリが表情を困らせつつ言う
「でも… 失敗したら大変だわ」
ラーニャが軽く笑って言う
「大丈夫よ 何処へ飛ばされたって 私たちがフォローしてあげるし」
ザッツロード6世が軽く笑って言う
「新世界まで飛ばされたりしたら びっくりだけどね」
ヴァッガスが笑んで言う
「お!?良いな!一度新世界ってやつを見てみたかったんだ」
メテーリが驚いて言う
「ま、まさか ヴァッガスまで付いて来るって言うんじゃ!?」
ヴァッガスが疑問して言う
「あ?んなの当ったり前だろ?お前が行くってーのに ここで手なんか振ってなんてやれるかよ?」
皆が微笑してメテーリを見る メテーリが表情を困らせつつも怒って言う
「…もうっ!本当に 何処へ飛ばされても 知らないんだから!」
皆が笑い ミラが言う
「それじゃ、呪文を教えるわ」
メテーリが渋々頷く

【 ガルバディア城 玉座の間 】

シリウスBが目を開く

城門前

ヴィクトール11世が城から出て来る その手に宝玉の入った袋が握られている ヴィクトール11世が何かに気付き顔を上げて言う
「ん?」
ヴィクトール11世の横の壁に凄い勢いで何かが突っ込んで来る ヴィクトール11世が驚いて叫ぶ
「ニャギャァアーーっ!?」
ヴィクトール11世が穴を覗き込んで言う
「ニャ… ニャにかな?隕石…?」
ヴィクトール11世の近くの縁に手が掛かる ヴィクトール11世がびくっと驚く 続いてザッツロード6世が顔を上げる ヴィクトール11世がハッとして言う
「き、君はっ!」
ザッツロード6世がヴィクトール11世を見上げて言う
「ヴィ…クトール様…」
ザッツロード6世が気絶する ヴィクトール11世が慌てて言う
「わーっ!君ーっ!しっかり!死んじゃ駄目だニャーっ!」

ザッツロード6世が目を開く ヴィクトール11世が振り向き微笑して言う
「良かった 気が付いたね?」
ザッツロード6世が起き上がり頭を抑えつつ言う
「ヴィクトール様… あれ?何でヴィクトール様が?」
ヴィクトール11世が苦笑して言う
「それはこちらの台詞だよ シリウスBと別れて ガルバディア城を出た途端 君たちが物凄い勢いで飛んで来て」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「そうでした… 僕らは メテーリの初めての移動魔法で 吹っ飛ばされてしまって …あっ!皆は!?」
ザッツロード6世が慌てて周囲を見る ヴィクトール11世が微笑して言う
「大丈夫、彼女らは君より軽症で あの穴から出てすぐシリウスBの所へ行ったよ 君だけ打ち所が悪かったのか 気を失ってしまったから 僕がここで看ている事にしたんだ… それにしても まさか移動魔法で気絶してしまうだなんてね?ふふふっ」
ヴィクトール11世が笑う ザッツロード6世が衝撃を受け苦笑して頭を掻いて言う
「はは… お恥ずかしい おまけに 何だかヴィクトール様が ニャーニャー言ってらしたような気もして」
ヴィクトール11世が衝撃を受け言う
「そ、それは 気のせいだニャ…」
ザッツロード6世が宝玉の袋に気付いて言う
「あ、ヴィクトール様、その袋は確か」
ヴィクトール11世が気付いて言う
「ん?ああ、そうだよ」
ヴィクトール11世が宝玉の袋に手を伸ばす ザッツロード6世が言う
「シリウスBに修復を お願いすると」
ヴィクトール11世が頷いて言う
「うん!全て修復して回復もしてもらったよ ほら!」
ヴィクトール11世が袋の中を見せる 宝玉が輝きを取り戻している ザッツロード6世が微笑して言う
「良かったー」
ヴィクトール11世が笑顔で頷いて言う
「うん!君も心配していたみたいだったものね!僕も君に見せる事が出来て良かったよ!えっとー… ラッツロード9世!」
ザッツロード6世が衝撃を受け言う
「ザッツロード6世です… あ、そ、それで!宝玉が回復したという事は!」
ヴィクトール11世が微笑んで言う
「うん!これで、僕は この旧世界を守ろうと思うんだ!」
ザッツロード6世が表情を明るめる その前で ヴィクトール11世が表情を落として言う
「…でも 残念な事にシリウスBは 旧世界を救う作戦に 手を貸してはくれないと言うんだ」
ザッツロード6世が驚いて言う
「え!?それは 一体っ!?」

玉座の間

ヴァッガスが踏み出して言う
「何でだよ!?シリウス様!?前は俺たちに手を貸してくれるって!この世界を救う為に!」
シリウスBが軽く息を吐いて言う
「この世界を救う… 簡単に言うな その為には」

城内 通路

ヴィクトール11世が先行して歩きながら言う
「この旧世界を救うには 宝玉の力を取り戻して 各国の魔力穴を塞ぎつつ 宝玉の結界を張る …そうすれば いずれ殆どの国が ローレシア帝国と同じ様に 自給自足で人々が生きられる様になる 問題は悪魔力よりも 通常の人では倒す事が出来ない 機械兵をどうするかって事だ けど、それは シリウスBが協力さえしてくれれば 何とかなるんじゃないかって思ったんだけど」
ザッツロード6世が後ろに続きながら言う
「多国籍部隊の彼らが ローンルーズの機械兵ファクトリーを破壊した際 シリウスBが手を貸してくれたと聞きました しかも、大量の機械兵の動きを 一度に全て止める事も出来たとか」
ヴィクトール11世が頷いて言う
「うん、シリウスBなら 僕もその程の事は出来ると思ってたよ なんと言っても この世界の王だからね 神とまで言われるほどの力だ それくらいは出来る …でも」

玉座の間

シリウスBが言う
「私は現在 機械兵の相手などをしている暇も 余裕も無いのだ 従って この世界を救う行動を開始すると言う ヴィクトール11世へ手を貸してやる事も出来ないと断った」
ラーニャが怒って言う
「そんなのおかしいじゃない!?アンタはこの世界の神様なんでしょ!?シリウスAに代わって この世界を守るって言ったんじゃない!?」
シリウスBが言う
「そうだ 私は現在 奴に代わりこの世界を守っている 従って お前たちの作戦に手は貸せない」
ラーニャたちが疑問して ミラが言う
「世界を守っているから 世界を救おうとする私たちに 手を貸せない?」
ヴィクトール11世とザッツロード6世がやって来て ヴィクトール11世が言う
「シリウスBは この世界と共に新世界までを守っているんだよ 他の神様からね」
ザッツロード6世がヴィクトール11世へ向いて言う
「他の神様から?」
メテーリがハッとして言う
「まさか 破壊神ソルから!?」
シリウスBが言う
「お前たちには関係の無い話だ その名も 安易に口にするな」
ザッツロード6世が言う
「しかし!この世界を脅かそうと言う者と 戦っているのでしたら この世界に住む我々も 共に戦うべきなのでは!?」
シリウスBが言う
「無力な貴様らに 何が出来る?」
ザッツロード6世が驚いて言葉を失う ヴィクトール11世が微笑して言う
「僕らは僕らの敵と戦えば良いんだと思うよ ザッツロード6世」
ザッツロード6世がヴィクトール11世を見てから視線を落として言う
「はい… でも、確かに無力ですね この世界の敵と言う他の神にも この世界の中に居る機械兵にも 僕らは敵わない…」
シリウスBがザッツロード6世を横目に見る ヴィクトール11世が微笑して言う
「そんな事無いよ 新世界の皆が来てくれれば きっと皆で力を合わせて この世界を機械兵から救える その後は その僕らがシリウスたちに力を貸して この世界の敵である 他世界の神とも戦うんだよ 僕らの世界を守るためにね!」
シリウスBが僅かに驚いてヴィクトール11世を見る ザッツロード6世が呆気に取られた後ヴィクトール11世を見上げ悲しそうに微笑して言う
「やっぱり ヴィクトール様は凄いです」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「当然だよ!だって僕は シリウスの猫だもん!」
ザッツロード6世が衝撃を受け 困惑して言う
「は… はぁ…? …猫?」
ヴィクトール11世が笑顔で頷いて言う
「うん!」
ザッツロード6世たちの目に見えない位置で ヴィクトール11世の尻尾が嬉しそうに揺れている シリウスBだけが気付いている

【 ローレシア帝国 機械室 】

リジューネが入室すると 研究者Tがやって来て言う
「リジューネ陛下 CITCの設定が終了しました」
リジューネが言う
「よし、では予定通り 悪魔力を中和させる チャージを開始しろ」

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