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【 外伝 】祈祷
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【 ローレシア帝国 移動魔法陣 】
ザッツロード6世たちが移動魔法で現れる ラーニャがメテーリへ向いて言う
「どう?これが普通の移動魔法よ?」
メテーリが気分の悪そうな表情からラーニャへ向いて言う
「なんだか… 嫌な感じだったわ 例えるなら… そう、あの シリウスB様の移動プログラムみたいな」
【 ガルバディア城 玉座の間 】
シリウスBが目を瞑った状態で一瞬表情が引きつる
【 ローレシア帝国 移動魔法陣 】
ヴァッガスが言う
「メテーリ、例えが悪いと思うぜ もし今シリウス様が俺たちを見てたら どーすんだよ?」
メテーリがヴァッガスへ向いて言う
「うるさいわね しょうがないじゃない?他に例えられるものが無いんだから」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「移動魔法陣は一見魔術の類に見えるけど その実 地面の下には ガルバディアの機械が埋められているからね?機械的に感じるのは当然だよ」
ミラが呆気に取られて言う
「え…?知らなかったわ」
ザッツロード6世が感心して言う
「ヴィクトール様は 本当に色々な事をご存知なのですね 尊敬します」
ヴィクトール11世が笑顔で頬を染めつつ言う
「いやぁ~ 大袈裟だなぁ だってこれは シリウスBに猫化された時に 偶然知った事なんだ あの時僕は なんとなく何処か掘りたい衝動に駆られちゃってね?それで ガルバディアの移動魔法陣を掘ったら怒られちゃって その時にシリウスBから聞いたんだよ …てへっ」
ザッツロード6世が言う
「シリウスBに… 猫化?」
ヴィクトール11世が笑顔で頷いて言う
「うん!それにしても、あの時は痛かったなぁ~ シリウスBってば わざわざ僕を殴る自分の手を プログラム強化してたんだよ?酷いよね?」
ヴィクトール11世がフード越しに自分の頭をさする ザッツロード6世が呆れつつ疑問して言う
「は… はぁ そうだったんですか… 猫化ってなんだろう?」
ロドウが現れて言う
「ヴァッガス!メテーリ!ザッツロード王子たちも!」
皆がロドウへ向き メテーリが言う
「ロドウ!?」
ロドウがやって来て言う
「移動魔法の光が見えたから もしかしてと思って」
ガイが空から降り立って言う
「全員無事であったか ローレシアへ向かい 連絡も無いままに戻らず 心配していたのだぞ?一体何処へ行っていたのか?」
ヴァッガスが頭を掻きながら言う
「あぁ 悪ぃ!ガルバディアから連絡しようと思ったんだけど 通信が繋がらなくってよ?」
ガイが驚いて言う
「ガルバディア!?シリウス様の元へ行っていたのか!?」
ザッツロード6世たちが肯定する様に苦笑する ガイが驚いてから苦笑して言う
「そうか…何にしても 無事であって良かった …それで、こちらの方は?」
ガイがヴィクトール11世を見る ザッツロード6世が言う
「あ、ガイ隊長 こちらの方が以前 僕の話した」
ヴィクトール11世が微笑して言う
「新世界 ガルバディア国王シリウスAの猫 ヴィクトール11世です もしや貴方が ローレシア帝国最強の長剣使い 元ローゼント国国王の子孫である 多国籍部隊隊長ガイ殿では?」
ガイが衝撃を受ける 皆が驚き メテーリが言う
「そ、それじゃ 前にリジューネ陛下が言ってた ガイがローゼントの王じゃないかって…」
ガイが表情を困らせて言う
「そ…それは 言わないで置いて欲しかったのですが…」
ヴィクトール11世が疑問して言う
「え?そうだったの?それはごめん 僕だったら言いたいと思うんだけどなぁ~?」
ヴィクトール11世が首を傾げる
多国籍部隊宿舎 会議室
ザッツロード6世たちとガイたち ヴィクトール11世が椅子に座り話し合っている ザッツロード6世が驚いて言う
「ガイ隊長たちも ヴィクトール11世様も…」
ヴィクトール11世が言う
「そうなんだ?通りで 君たちと初めて会った時から なんとなく そんな感じはしてたんだよね」
ガイが言う
「私が思うに ヴィクトール11世様は我らほど 魔物の力を与えられてはいない… 確かシリウス様は 我らに与える魔物の遺伝子情報は30%とおっしゃられていたが ヴィクトール11世様は恐らく…20%かそれ以下ではないかと」
ヴァッガスがヴィクトール11世の匂いをかいで言う
「ああ… んなもんかもな?」
ヴィクトール11世がヴァッガスの行動に嫌そうな顔をしてから言う
「僕は余りそういうのは分からないのだけれど 取り合えず 僕は君の事が何となく嫌いなんだよね?きっと君が取り込んだ情報は 僕とは相性の悪い魔物のものなんじゃないかな?」
ヴィクトール11世がヴァッガスを見る ヴァッガスが衝撃を受けて言う
「んなぁ!?…お、俺だって!今だから言うが 最初っからあんたの事は好かなかったんだ」
ヴィクトール11世が呆気に取られて言う
「そうなんだ?ふーん… まぁ、魔物と一言で言っても 種類は豊富だし 何なのかは分からないけど ま、良いよね?僕は君が嫌いって事だけだよ!あははははっ!」
ヴァッガスが衝撃を受け言う
「んなぁ!?お、俺はヴォーガウルフの遺伝子情報だけっど それを抜きにしたって 俺はアンタみたいな奴は嫌いだぜ!」
ヴィクトール11世が疑問して言う
「ヴォーガウルフ?ふーんそうなんだ?僕は秘密だよ けど、ヴォーガウルフって元は狼だから イヌ科って事だね?なら最初から僕の敵かも?あっち行ってくれないかな?フーッ!」
ヴィクトール11世が猫の様に威嚇する ヴァッガスが怒って言う
「ああ!行ってやるよ!俺だってアンタの横は気に入らねぇえ!ヴゥーッ!」
ヴァッガスが席を立ってうなり声を向けてから別の席へ移動する 2人以外の者たちが一部始終を呆れて見ていて ラーニャが言う
「ヴァッガスがイヌ科のヴォーガウルフなら ヴィクトール様はネコ科の魔物って事?」
ミラが言う
「それ以前に ヴィクトール様は最初から 自分はネコだって言ってなかった?」
ラーニャが首を傾げつつ言う
「そう言えば…」
ガイが気を取り直して言う
「それで、先ほどヴィクトール様が仰られていた 宝玉を使っての この世界を救う方法なのだが」
皆が気を取り直してガイを見る ガイが言う
「私は 例え機械兵の殲滅が出来ずとも その作戦を実行に移すべきであると思う」
ヴァッガスが言う
「そうだよな!俺らにも出来る事があるってんなら 全力でやるまでだぜ!」
ヴィクトール11世が言う
「実は私も そのつもりでローレシア帝国へ向かおうとしていたんだ シリウスBから 私で実験をした事を施したと言う 君たちの話を聞いていたからね」
ヴィクトール11世がガイたちを見る 後に首を傾げて言う
「…けど、君たちは一見しても 普通の人と変わらない 何の魔物の情報を入れられているか 外見からは分からないんだね?」
ガイたちが疑問する ヴィクトール11世の尻尾が不満そうに揺れるが 誰の目にも入っていない ザッツロード6世が視線を落として言う
「私では… 機械兵と戦う事は出来ない 宝玉の結界が無ければ 悪魔力の中を移動する事すら出来ないんだ…」
ガイが苦笑して言う
「我々が作戦実行のために他国へ向かえば このローレシア帝国の防衛力が低下する ザッツロード王子ほどの力を持った方が残って下されているとすれば とても心強く思います」
ザッツロード6世がガイの慰めにすまなそうに苦笑する ロドウがメテーリへ向いて言う
「メテーリ…」
メテーリが目を強くとじて言う
「分かってるわよ!」
皆の視線がメテーリへ向く メテーリが誰とも視線を合わせず悔しそうに言う
「私も… 私もシリウスB様に魔物の力を貰ってれば良かったのよっ あんたたちと 同じにしてもらってればっ!」
レーミヤが苦笑して言う
「回復魔法を行えるのは聖魔力よ 例え悪魔力の中であっても その中に含まれる微量の聖魔力を使っているのだから メテーリさんが魔物の力を得る事は きっと出来なかったと思うわ」
メテーリが言う
「けど…っ」
ガイが言う
「メテーリ、貴女には…」
メテーリが聞きたくないと両手で耳を塞ぐ ガイが言う
「なんとか我々と共に 付いて来て欲しい」
皆が驚く メテーリが驚きに眼を見開き ガイへ向く ガイが微笑して言う
「もちろん、無理強いはしない しかし、出来る事なら 移動魔法同様にミラ殿から あの宝玉の結界を張る方法を伝授してもらい 我らと共に可能な限りを行き 無理がある時には一時的にローレシア帝国へ 移動魔法で避難する… この様な事を頼むのは心苦しいが 貴女が共に来てくれる事は 我々にとって大きな力だ」
メテーリが呆気に取られて言葉を失う ロドウが笑顔で言う
「メテーリの警護は もちろん僕の担当だよね?」
ヴァッガスが笑んで言う
「当然だぜ!お前がメテーリを守っててくれりゃ 俺とガイは 気兼ねなく張り合えるっからな?おまけに 無茶しちまった時には すぐ回復してもらえるんだぁ …まぁ その度に やれ、馬鹿だの 何だのって 小言ばかり言われっちまうが あれも慣れりゃ 按摩みてぇなモンだぜ」
ガイたちが笑みを合わせメテーリへ向く メテーリが呆気に取られた状態から泣き出して言う
「ば… ばかぁ…っ」
ヴァッガスが焦って言う
「なぁ!?ば、馬鹿はどっちだ!?折角連れて行こうってぇのにっ な、泣くんじゃねぇって!」
メテーリが涙を拭いながら言う
「な、泣いてなんてないわよっ ば、馬鹿ヴァッガスっ!」
ヴィクトール11世が笑んで言う
「良かった!正直 一緒に作戦を実行する人が居なかったら どうしようかって 思ってたんだ!」
ガイたちが微笑してヴィクトール11世へ向く ヴィクトール11世が笑顔を向ける ザッツロード6世が視線を外し悔しそうに唇を噛む ラーニャたちが心配する
多国籍部隊の兵舎を出たザッツロード6世たち ザッツロード6世が無言のままローレシア城へ向かう ラーニャ、ミラ、レーミヤが心配そうに顔を見合わせ ラーニャが言う
「ね、ねぇ ザッツ?」
ザッツロード6世が振り返る ラーニャが慌てる レーミヤが苦笑して言う
「この世界を救う為の方法が… す、少なからずあって 良かったわね?」
ラーニャが慌てて言う
「そ、そうそう!それにあれって ちょっとあの… 夢の世界と似てるわよね!?宝玉の力で 世界を救っちゃおうーって!」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「そうだね… けど、折角夢の世界で経験したのに 現実世界では僕らは参加出来ないね」
ラーニャとレーミヤが衝撃を受ける ミラが溜息をついて言う
「それで?ザッツは何処へ向かってるのかしら?」
ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「え…?何処って…」
ミラが言う
「リジューネ陛下に 何て報告するつもりなの?」
ザッツロード6世が困って言う
「あ… そうだね えっと…」
ザッツロード6世がローレシア城の方を向き 一瞬の後 驚いて言う
「ん?…あれはっ!?」
ラーニャたちが疑問し ザッツロード6世の視線の先を見て 驚き ラーニャが言う
「え!?何で!?リジューネ陛下!?」
リジューネが城から出て 門兵らの敬礼を確認した後 遠くから自分を見ているザッツロード6世らに気付き苦笑する ザッツロード6世たちが駆け寄って来て ザッツロード6世が言う
「リジューネ陛下!?一体 どうなされたのです!?」
リジューネが言う
「ザッツロード王子 私はこれから この世界を救う為 過去に滅亡した それら各国を巡って参る」
ザッツロード6世が驚いて言う
「滅亡した国を!?それはどう言う事です!?」
リジューネが言う
「すまないが 時間が惜しい 詳しくを知りたくば ソルベキアの研究者Tへ訪ねるが良いだろう」
リジューネが歩き出す ローレシア第一部隊が整列し 第一部隊長と副隊長がリジューネを迎える ザッツロード6世たちがリジューネの後姿を見る ラーニャがザッツロード6世へ向いて言う
「ザッツ!」
ザッツロード6世が頷いて言う
「うん すぐに確認へ向かおう!」
ザッツロード6世たちが頷き合い 走ってローレシア城へ入って行く
機械室
研究者Tが嫌そうに言う
「はぁ… また説明ですか?申し訳ないのですが 機械の事に詳しくない方へ CITCの説明をするのは とても面倒でしてね?明日にして頂けませんか?」
ザッツロード6世が研究者Tを押し留めて言う
「急いでいるんです!リジューネ陛下が何をしに向かったのか!それが知りたいんです!」
研究者Tが作業を行いながら言う
「ああ、それでしたら 一言で言えば 電源を入れに行ったのですよ」
ザッツロード6世が言う
「電源!?それは… どう言う事です!?」
研究者Tが溜息を吐いて言う
「はぁ… だから、それを説明するのが 面倒だと言っているんです 王子はリジューネ陛下が何をしに向かったのかを 知りたかっただけではないのですか?」
ラーニャが怒って言う
「あんったねぇ!ザッツは 新世界ローレシアの王子様よ!?」
研究者Tが言う
「存じておりますよ?デネシア王家の名を持たぬ 仮の王の息子殿 しかも 第二王子では… 新世界へ戻られても この世界に留まられても どちらにせよ ローレシアの王にはなれませんなぁ?」
ラーニャが呆気に取られてから怒って言う
「なんですってぇえ~!?」
レーミヤが言う
「機械にはそれ程詳しくありませんが CITCの事でしたら多少なりとも知っています …各国にある 魔力穴に取り付けられ そこに噴出する魔力から 聖魔力や悪魔力を引き抜く事が出来ると」
ザッツロード6世たちが驚く レーミヤが真剣に研究者Tを見る 研究者Tが感心して言う
「ご名答 実に素人らしくも 的を得られた回答です 感心いたしました やはり容姿の良い方は 頭脳の方も宜しいのでしょうかね?」
ラーニャが驚き怒りを増して言う
「な!?…なぁっ!?」
ミラが言う
「一応 あの人にとっては褒め言葉なんでしょうから 黙ってなさいよ?」
ザッツロード6世が研究者Tへ向いて言う
「それで、その事を踏まえた上でなら 説明してもらえますか?」
研究者Tがしょうがないと言った様子で言う
「まぁ 基本の基本が分かってらっしゃるのでしたら リジューネ陛下よりは楽ですからね」
ラーニャが怒って言う
「無駄な事ばっか 言ってないでっ!」
ミラがラーニャの口を押さえる レーミヤが苦笑する 研究者Tが言う
「CITCは各国の魔力穴に 既に取り付けてあるのです しかし、現在はそれら全ての国のCITCの制御に封印がなされている… 唯一 このローレシアの封印は解けましたが 折角全世界に9箇所存在するのですから それら全てを使えば 得られるエネルギーはローレシア1箇所の9倍 世界を救う為に用意するエネルギーも5日で集まります …と、そんな所ですかな?」
ザッツロード6世が驚いて言う
「世界を救うために用意するエネルギーとは!?CITCで聖魔力を引き抜いて 何をするつもりです!?」
研究者Tが一瞬驚いて言う
「おやおや、良く引き抜くのが聖魔力であると分かりましたね?リジューネ陛下は 悪魔力を引き抜いて世界から悪魔力を無くすのか?とおっしゃられ 私は頭を抱えたものですが その通り、引き抜くのは聖魔力です その聖魔力をこの世界中に振り撒き 現存する悪魔力を中和させるのです」
ザッツロード6世が言う
「この世界の悪魔力を中和するなんて そんな大規模な事 本当に…?」
研究者Tが言う
「ご存知ありませんか?そもそも、この世界中に溢れている悪魔力は 元はあの魔力穴から悪魔力を引き抜いて 振り撒いたものなのですよ それなら それと同様に 逆の事をすれば 世界は平和であった頃に戻るのです 簡単な事ですよ」
ザッツロード6世たちが驚き ラーニャが言う
「悪魔力を引き抜いて… 振り撒いた…!?」
皆が顔を見合わせる 研究者Tが言う
「さて、私は作業に戻らせて頂きます あ~忙しい忙しい…」
研究者Tが立ち去る ラーニャ、ミラ、レーミヤがザッツロード6世を見る ザッツロード6世が考えている
通路を歩くザッツロード6世と仲間たち ラーニャが言う
「ねぇ?あの研究者Tが言ってた事 本当かなぁ?」
ミラが言う
「本当かって… どう言う意味よ?」
ラーニャが言う
「その… 悪魔力を引き抜いて 振り撒いた… とか その逆をやれば 平和な頃に戻る~…とか そんな簡単な事なの?」
レーミヤが言う
「悪魔力を振り撒いたというのは 初めて聞いた話だけれど 悪魔力を中和させると言うのは 新世界での夢の話にもあったわよね?…と言う事は もしかしたら 新世界でも考えられていた方法なんじゃないかしら?」
ラーニャが不満そうに視線を逸らして言う
「そ… そっかぁ… そうよね…?けど…」
ラーニャが顔を横に振って言う
「あぁーんっ!もうっ!きっと あの研究者Tが ソルベキアの研究者だからいけないのよ!何だか 信用置けないって感じで!」
ベハイムが苦笑して現れて言う
「それはそれは 耳の痛いお言葉で」
ラーニャが衝撃を受けて叫ぶ
「きゃぁあーっ!」
ベハイムが苦笑する ミラが怒って言う
「ちょっとっ!ラーニャ!」
ザッツロード6世が表情を困らせて言う
「すみません 仲間が失礼な事を… えっと確か以前 リジューネ陛下が新世界へ 通信を行おうとした時に」
ベハイムが微笑して言う
「はい、私はベハイム・フロッツ・クラウザーと申します 研究者Tが… 皆さんに何か失礼を働いたのでしたら 彼に代わり 私が謝罪いたします」
ベハイムが頭を下げる ザッツロード6世が慌てて言う
「ああっ いえっ!クラウザーさんが謝るような事はっ …うん?クラウザー?」
ベハイムが疑問し微笑し軽く首を傾げて言う
「はい?」
レーミヤが言う
「確か… 以前にもそのお名前を聞いた事があったわね えっと…」
ラーニャとミラがハッと気付いてラーニャがベハイムを指差して叫ぶ
「あーっ!」
ラーニャとミラが声を合わせて言う
「「スファルツ卿ーっ!」」
ベハイムが呆気に取られる ザッツロード6世が慌てて言う
「ふ、二人ともっ!」
レーミヤが苦笑して言う
「そ、そうね スファルツ卿にとても良く似てらっしゃるわ しかし、あの方は 新世界の先住民族なのだから」
ラーニャが気付いて言う
「あ、そっかぁ」
ミラが視線を逸らして言う
「そうね、うかつだったわ」
ベハイムが苦笑して言う
「はっはっは… これは驚きました スファルツ… 私の曾祖父の名が それでした スファルツ・レイロルト・クラウザー… ソルベキアの歴代でも もっとも優秀とされたハッカーでしたが その自信からか あろう事か ガルバディアのセントラルコンピュータへのハッキングを行い ベネテクトの強固なプロテクトプログラムを受け そのまま 意識が戻らなくなってしまったそうです」
ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「まさか…」
ラーニャたちが顔を見合わせる ベハイムが言う
「所で、お話中の所 申し訳ないのですが」
ザッツロード6世が慌てて気を取り直して言う
「は、はいっ!?」
ベハイムが言う
「リジューネ陛下がどちらに居られるか… ザッツロード王子はご存知であられますでしょうか?」
ザッツロード6世が疑問して言う
「え?リジューネ陛下は ソルベキアの… 研究者Tの指示で ローレシアを離れていらっしゃるそうですが?」
ベハイムが呆気に取られて言う
「そうでしたか… 研究者Tの指示で?」
ミラが言う
「貴方は知らなかったの?」
ベハイムが苦笑して言う
「はい、お恥ずかしながら 私はリジューネ陛下の信頼を失ってしまい しばらくローレシア専属のプロジェクトチームから離れていたのです しかし、気になる事を見つけ 汚名挽回とまではならずとも お役に立てないかと参じたのですが」
ラーニャが興味津々に言う
「その気になる事って!?」
ベハイムが呆気に取られる レーミヤが苦笑して言う
「駄目よ ラーニャ クラウザーさんは リジューネ陛下へご報告にいらしたのだから」
ラーニャが言う
「そっかぁ 先に私たちに言っちゃったんじゃ 汚名挽回にならないものね?」
ザッツロード6世が焦る ベハイムが軽く笑って言う
「あっはっは… いや、失礼 しかしこの事は もしかすれば このローレシアに住む 全ての人々に関わる事となるかも知れません リジューネ陛下が居られないのでしたら ザッツロード王子にお伝えするのも 正しいのかもしれませんね?」
ザッツロード6世が反応して言う
「全ての人々に関わる!?…それは つまり」
ベハイムが言う
「ザッツロード王子 実は この世界のソイッド村に 転送装置らしきものがある との情報を入手しました その装置は 新世界との転送を 数人とは言え 可能とする」
ザッツロード6世がハッとして言う
「ソイッド村の!?」
ザッツロード6世の脳裏にソイッド村での出来事が蘇る ベハイムが言う
「資料を基に計算を行った所 その転送に使用したエネルギーは とても少なかったのです 単純に考えても このローレシア帝国にある転送装置より 格段に精度の良い転送装置があると思われます もし、それを確認する事が出来れば 仮にそれを使用出来ずとも ローレシア帝国の転送装置の性能を 飛躍的に向上させる事が出来る筈です」
ラーニャとミラがザッツロード6世を見る ザッツロード6世が考えながら言う
「この世界を救う作戦は行われているけど どれも確実に成功するとは言い切れない… それならっ」
ザッツロード6世がベハイムへ向いて言う
「クラウザー殿 我々は一度 ソイッド村へ行っています 今なら移動魔法を使用して その装置を確認しに向かうことも可能です」
ベハイムが一瞬呆気に取られて言う
「え?…そう なのですか ああ… 以前ローレシアから脱走された あの時に… しかし、宝玉が無いのでは ただ行く事が出来ても 悪魔力の中であっては 捜索は出来ませんが?」
ザッツロード6世が言う
「ソイッド村は 結界に守られています 移動魔法で直接その中へ入れば 捜索も可能です」
ラーニャたちが驚いて言う
「ザッツ!?」
「結界の事は…っ!」
ザッツロード6世が言う
「それと、クラウザー殿 出来れば 我々と一緒に ソイッド村へ行き その装置を確認してもらえませんか?我々では 機械の事は分かりません」
ベハイムが驚く ザッツロード6世がベハイムを見つめる ベハイムが硬直から解かれて言う
「ザッツロード王子… 私は 皆さんの信用を受けられない ソルベキアの民ですよ?ソイッド村の結界の事を言ってしまったり まして 行動を共にしようなどと」
ザッツロード6世が微笑して言う
「私は 貴方を信じます」
ベハイムが驚きに言葉を失う ラーニャたちが呆気に取られ顔を見合わせた後苦笑してザッツロード6世とベハイムを見る
【 旧ローゼント国 移動魔法陣 】
リジューネとローレシア第一部隊が現れる リジューネが宝玉を手に掲げようとして気付き 動作を止めて言う
「…ここもか」
第一部隊長が一歩踏み出して言う
「アバロンだけではなく ローゼントにも結界が…」
副隊長がリジューネへ向いて言う
「陛下、やはりまた…?」
リジューネが間を置いてから言う
「恐らくそうだろう …構わぬ 行くぞ」
リジューネが歩き出す 第一部隊長と副隊長が返事をして 第一部隊長が言う
「はっ!進軍!リジューネ陛下に続け!」
リジューネを先頭に全員がローゼント城へ向かう
ローゼント城 宝玉の間
ローレシア第一部隊が入り口付近を警戒している リジューネと第一部隊長、副隊長が入室して リジューネが部屋の中心で輝く宝玉を見て光に目を細める 第一部隊長と副隊長がリジューネの動向を見つめる リジューネが歩き出し 第一部隊長が続き 副隊長が続こうとして何かに気付き横を向く
リジューネが宝玉の前に立ち 一度目を閉じてから宝玉を外し 台座の内部を見る 第一部隊長がリジューネの動向を見つめる中 副隊長が身を屈め 床にある骸を見て悲しそうに目を細める
リジューネが宝玉を台座に戻して言う
「よし、ここのCITCも封を解除した 次へ向かう」
リジューネが振り返る 第一部隊長が敬礼して言う
「はっ!承知しました!」
リジューネが副隊長の様子に気付いて近くへ着て言う
「どうした?」
副隊長がハッとしてリジューネへ向き直り 慌てて敬礼して言う
「あっ!し、失礼しました!」
リジューネが副隊長の見ていたものへ視線を向けて言う
「…骸か ここの者も 同じだな」
副隊長が一瞬驚いて言う
「え!?あ… はい、リジューネ陛下も 気付かれていたのですね?」
リジューネが言う
「ああ… 最初の出発地点であったデネシアからアバロン、ツヴァイザー、スプローニ… あのローンルーズでさえ同じだ この宝玉の間に続くまでの道には 皆 2人一組となった骸が 残されている」
第一部隊長がやって来て疑問して言う
「2人一組になった骸…ですか?そちらが何か…?」
リジューネが骸を指差して言う
「これだ …通常のものとは違い 必ず剣を持った骸が もう一つの骸を庇うように重なり 息絶えている そして、この剣の大きさから考え… 彼はアバロンの大剣使い それに、庇われているのは その相棒 ガルバディアのベネテクトだ」
第一部隊長がハッとして言う
「ガルバディアのベネテクト!?…そういわれてみれば 下に庇われている骸は 戦士にしては武器も持たず 随分とガタイの細い」
リジューネが言う
「ああ それだけではない ベネテクトはプログラムと言う力を使用するのに 極小の機械を体内に取り入れていると言う その機械は余りに小さすぎるため 肉眼で確認する事は出来ないが 風化すると周囲のそれ同士が固まり 銀色に輝くと言う」
第一部隊長と副隊長が骸を見る 下に庇われている骸には 銀色の砂が点在して輝いている 副隊長が悲しそうに微笑して言う
「アバロンでもガルバディアでもない国であっても 彼らはその地を守ろうとしたのでしょうか?」
リジューネが苦笑して言う
「そうだな 自分たちの命を犠牲に 彼らが守ろうとしたものは 恐らく あの宝玉であったのだろう 宝玉は 結界を張り その国を守っていた」
第一部隊長と副隊長が頷く 束の間を置き 第一部隊長が言う
「…しかし陛下?宝玉が健在であり 結界を張っていたのだとしたら 機械兵は近づけなかった筈 彼らは一体何と戦っていたのでしょうか?」
リジューネが第一部隊長の言葉に一瞬呆気に取られた後考えながら言う
「うん?…そうだな 機械兵でなければ 魔物… いや、悪魔力の影響を受けたそれらが 結界の中に入る事は無い… では、そうとなったら?う~ん…」
リジューネが腕組みをして深く考える 第一部隊長と副隊長が呆気に取られ顔を見合わせる 部屋の外から兵が現れて言う
「隊長、お時間が掛かっているようですが 何か?」
リジューネが兵の声にハッと我に返り 慌てて振り返って言う
「い、今はっ その事を考える時では無い!次の国へ!…シュレイザーへ向かうぞ!」
第一部隊長と副隊長が慌てて敬礼して返事をする
「「は… はっ!」」
リジューネが退室して行く 兵が疑問して第一部隊長へ向いて言う
「何か…あられたのですか?」
第一部隊長が言う
「あ、いや…」
副隊長が苦笑して言う
「リジューネ陛下は 元々はアバロンの… アバロンのお方は 実は考え事に弱いとか…」
リジューネの声が部屋の外から響く
「第一部隊長!副隊長!部隊を先導する貴殿らが 何をもたもたしているのかっ!?」
第一部隊長と副隊長が衝撃を受け慌てて言う
「「はっ!直ちにっ!!」」
兵が呆気に取られる 第一部隊長と副隊長が走って行く 台座では宝玉が輝いている
【 旧スプローニ国 玉座の間 】
メテーリが台座の宝玉に祈りを捧げている
スプローニ城 城下町
ヴァッガスが4本足で駆けて狼の様に魔物に襲い掛かり 両腕に縛り付けた刃で魔物を切り裂く 着地したヴァッガスが睨み付ける その先 機械兵に上空から長剣が降り注ぎ ガイが機械兵を鋭く見上げた瞬間 機械兵の切り裂かれた箇所に火花が散り ヴァッガスとガイが退避したところへ機械兵が倒れて爆発する ヴァッガスとガイが周囲を確認する
ヴィクトール11世が素早く旋回し 敵を見失って周囲を探す機械兵の後ろから 大剣を振り上げ叫びながら叩き切る
「やぁああーーっ!」
ヴィクトール11世の大剣が地面ぎりぎりまで勢い良く振り下ろされ 機械兵が振り返ろうとした状態で止まり ヴィクトール11世が退避した場所へ倒れる ヴィクトール11世が機械兵を振り返り 勝利を確認して笑顔を見せるとフードが後退し猫耳が現れる ヴィクトール11世があっと気付き 慌ててフードを直す ガイとヴァッガスがやって来てヴァッガスが言う
「ヴィクトール!こっちは片付いたぜ!そっちは?」
ヴィクトール11世が振り返り微笑して言う
「うん!こっちも終わった所だよ!」
ガイが苦笑して言う
「ヴァッガス やはり… ヴィクトール様を 呼び捨てにするのは どうかと思うのだが?」
ヴァッガスがガイへ振り返って言う
「あぁ?」
ヴィクトール11世がガイへ向いて言う
「良いんだよ ガイ 僕は君たちと目的を同じくして 共に戦う仲間だ ガイも、僕の事は呼び捨てで良いんだよ?僕もそうする!ね?」
ヴィクトール11世が笑顔を向ける ガイが表情を困らせて言う
「私の事は 呼び捨てにして頂いて まったく問題ありませんが 貴方様は…」
ロドウがやって来て言う
「あ、居た居た 皆 揃ってるよ?メテーリ」
ロドウが後ろを振り返る ガイたちがロドウを見た後 ロドウの視線の先メテーリを見る メテーリが言う
「ああ、なら皆も一緒で …ねぇ!ヴィクトール!ちょっと アンタに見てもらいたいんだけど!」
ガイが衝撃を受ける ヴィクトール11世が笑顔でメテーリへ答えて言う
「うん?僕に?分かった 今行くよ!」
ヴィクトール11世がガイへ向いて言う
「ほら?彼女も僕を呼び捨てにしてくれているし!おまけに 『アンタ』だって!僕、初めて言われたよ!あははははっ!」
ヴィクトール11世が上機嫌でメテーリの下へ向かう ガイが呆気に取られる ヴァッガスが呆れて言う
「流石メテーリだぜ」
ガイが変わらぬ表情で言う
「…ああ あそこまで言えるとは もはや 賞賛に値する」
ヴァッガスが衝撃を受けガイへ言う
「賞賛ってっ!?そら ちょっと違うだろっ!?」
メテーリがガイたちへ向いて叫ぶ
「ちょっと!?貴方たちも急いで!ガイ!アンタ ローゼントの王様なら もっと率先しなさいよ!?」
ガイが衝撃を受け困惑した表情のまま言う
「あ、ああ… すまん…」
ヴァッガスが呆れて言う
「…こらぁ 賞賛にも 値しちまうかもな?」
メテーリが叫ぶ
「ヴァッガス!」
ヴァッガスが衝撃を受け慌てて言う
「のわぁあっ!はいはいはいーっ!我らのメテーリ女王様ーっ!」
メテーリがCITCを指差して言う
「この機械、他の国でも 宝玉の台座にあったのよ 何だと思う?」
ヴィクトール11世がハッとして言う
「これは…っ!」
ガイとヴァッガスが覗き込み ガイが言う
「こんな所に機械が?」
ヴァッガスが言う
「宝玉の台座の下にあるって事は 宝玉に関係してんのか?」
メテーリが言う
「それに、これもそうなんだけど 前のツヴァイザーの方も… 何って言ったら良いのかな?なんかこう… 生きてる感じ?」
ガイとヴァッガスが衝撃を受け ヴァッガスが言う
「い、生きてるって お前…」
ガイが言う
「これは機械であるからして 生命は無いと思われるのだが?」
メテーリが衝撃を受け怒って言う
「そ、それくらいは私だって分かってるわよ!そうじゃなくって!だから、何って言うか~っ」
ヴィクトール11世が真剣な表情で言う
「どう言う事だっ?何故CITCの封印が解かれているんだ!?」
ガイたちが驚き ヴァッガスが言う
「し…しーあいてぃーしー?」
メテーリが言う
「何それ?もしかして、この機械の名前?」
ロドウがハッとして言う
「思い出した!シュレイザーの歴史書に書かれていたよ!?ガルバディアのベネテクトたちが 相棒の大剣使いと共に 命を駆けて 封印に向かったって言う!」
ガイが驚いて言う
「その封印が解かれていると…っ!?」
ヴィクトール11世が言う
「僕が以前 力を失った宝玉を回収に来た時には 全てのCITCのプログラムが停止されていた… それなのにっ!?」
ヴァッガスが真剣な表情で言う
「ガルバディアのベネテクトや大剣使いたちが 命懸けで封印したものが 解かれちまってるって…?それも、以前ヴィクトールが来た時には封印されてたってんなら 封印が解かれたのは最近だって事か!?」
ヴィクトール11世が考える ガイがヴィクトール11世へ向いて言う
「ヴィクトール様、貴方様が以前この地を訪れたというのは どれほど前の話になるのでありましょうか?」
ヴィクトール11世が振り向いて言う
「僕が1人で回っていた時は 移動魔法なんて使えなかったから 今よりずっと時間が掛かったんだ でも… メテーリ、さっき言ってたよね?このスプローニの物とツヴァイザーの物も 生きている感じがしたって?それは CITCのプログラムが実行されている状態という事だと思う それなら こことツヴァイザー以外の物は そうは感じなかったの?」
メテーリが言う
「うん、アバロンのもローゼントのも 生きてる感じはしなかった だから、何かのお呪い程度にしか思ってなかったのよ」
ヴァッガスが言う
「アバロンやローゼントの台座にも ひっついてやがったって事か」
ガイがハッとして言う
「そういえば…」
皆がガイに注目する ガイが皆へ向いて言う
「皆は気付かなかったか?アバロンとローゼント それに対し ツヴァイザーとスプローニは」
ヴァッガスがハッとして言う
「そうか!ツヴァイザーとスプローニは 魔物や機械兵の新しい残骸が多くありやがった!」
ヴィクトール11世が驚いて言う
「確かにっ!…僕はただ 機械兵や魔物同士の争いによって出来たものだと思ってしまったけど 同じ場所に共存していたそれらが その2国に限って 急に争いを始めるのは不自然だ」
ロドウが驚き視線を下げた先 ハッと気付いて言う
「あっ ここのもだ…!」
皆がロドウへ向く ロドウが床にある骸を見て言う
「あの骸」
ヴィクトール11世がロドウの視線の先を見て言う
「ああ、あれはね?さっき君が言った CITCを命懸けで封印するために向かった ベネテクトとその相棒の…」
ロドウが言う
「うん、同じ様な骸が 各国にある事には気付いていたんだけど ツヴァイザーとこのスプローニだけ」
ロドウが良いながら骸へ近づき しゃがんで言う
「ほら、ここに」
皆がやって来てロドウの示すものを見る メテーリが言う
「あ!これっ!」
ロドウが言う
「確か ローレシアで死者を弔う印だよね?戦場で亡くなった者たちが 家族や仲間の元へ戻れる様にって …この印がね?ツヴァイザーとここにだけあったんだ 他の国にも同様の骸があったのに 印があったのはその2国だけなんだよ」
ガイが言う
「描かれてから 間もないな?」
ヴァッガスが近づき 匂いをかいで言う
「…ん?この匂い どっかで嗅いだ事があるぜ?えっと…」
ヴァッガスが悩む ガイが言う
「では、我々がシリウス様から力を頂いた後 少なくともヴァッガスが 出会った事のある人物という事か」
メテーリが言う
「ちょっと!ヴァッガス!誰よ!?早く思い出しなさいよ!」
ヴァッガスが衝撃を受け慌てて言う
「だぁあー そう急かすなよっ!?俺だって一人一人の人の匂いが分かるようになっても それが誰だって分かるまでには時間が掛かったんだ 記憶にはあったって それが誰だったか思い出すのは大変なんだぜ!?」
ガイが真剣に印を見て言う
「これは… 恐らく指先で描かれている この細さから見て とても痩身な男… もしくは、女性ではなかろうか?」
メテーリが衝撃を受け怒って言う
「ヴァッガス!早く思い出しなさいっ!!」
メテーリがヴァッガスをつねる ヴァッガスが痛がって叫ぶ
「いででででっ!何でつねるんだよ!?俺が力を得てから会った女なんて… リジューネ陛下かそれか 兵舎の食堂のおばちゃん位だぜ?」
メテーリが驚いて言う
「リジューネ陛下が!?」
ヴァッガスが困り焦って言う
「いや、待てっ 落ち着けって?リジューネ陛下の匂いならすぐ分かる これは… そんな匂いじゃねぇ けど…」
ヴァッガスが匂いをかいで考える ヴィクトール11世が首を傾げて言う
「食堂のおばちゃん …ではないよね?」
ガイが表情を困らせて言う
「いや …確かに とてもパワフルなお方なのですが 流石にここまでは来られないかと」
ロドウが苦笑して言う
「ガイ… そんなに真剣に答えなくても 良いと思うよ?」
ヴァッガスが考えながら言う
「なんっつーか… 例えるならメテーリみてぇな感じなんだよな?魔法を使う…」
メテーリが首を傾げて言う
「魔法使い?リジューネ陛下は 魔法は使えないって噂だし… …あ!もしかして!」
【 シュレイザー城 玉座の間 】
リジューネがCITCの封印を解いている 第一部隊長がそれを見つめていた視線を変える 第一部隊長の視線の先 副隊長が骸の前に印を描き 骸を見て祈りを捧げる
シュレイザー城 城門前
リジューネを先頭に城から出て来た所で リジューネが何かに気付き空を見上げて言う
「うん?」
ガイたちがメテーリの対人移動魔法で凄い勢いで飛んで来る ヴァッガスが叫ぶ
「メテーリ!やべぇえぞ!ぶつかっちまうーっ!」
メテーリが涙ながらに叫ぶ
「きゃぁあーっ!リジューネ陛下!避けてぇええーーっ!」
リジューネが驚き呆気に取られて言う
「なっ!?」
第一部隊長が叫びながらリジューネを突き飛ばす
「リジューネ陛下っ!」
リジューネが突き飛ばされると同時にガイたちが先ほどまでリジューネの居た場所に突っ込む 激しい轟音にリジューネと第一部隊員たちが驚き呆気に取られ 副隊長が慌てて言う
「隊長!」
リジューネがハッとして言う
「ライハス隊長!無事かっ!?」
爆煙が収まった所に 頭を抱えるヴァッガスとガイ 苦笑するロドウ そしてメテーリが第一部隊長を下敷きに座り込んで居て メテーリが言う
「はぁ~ あっぶなかったぁ~」
ヴィクトール11世が軽やかに着地して言う
「もう少しで対人移動魔法の相手であった リジューネ女帝に突っ込む所だったね!けど この感じ 僕はとっても懐かしかったよ!あははははっ!」
第一部隊長が苦しそうに言う
「リ…リジューネ陛下…」
第一部隊長が気絶する リジューネが慌てて言う
「ライハス隊長っ!?メ、メテーリ副隊長!即座にその場を降りよ!命令だっ!」
メテーリが疑問する
副隊長が第一部隊長へ回復魔法を施している リジューネが言う
「断る 私はこの世界を救うため CITCの封印を解除しているのだ」
ヴィクトール11世が踏み出して言う
「CITCは人の手に負える物ではないんだ!このままでは 過去の過ちを繰り返してしまう!」
リジューネが言う
「私とて この世界が悪魔力に覆われた原因が そもそもあのCITCであった事位は知っている」
ヴィクトール11世が驚いて言う
「なっ!?…では何故!?」
リジューネが言う
「そうであっても シリウス様は この世界のCITCを “破壊する” ではなく “封印する” 事でお止めになられた それは即ち この世界の悪魔力を中和させるために この機械が再び必要であった為であると …私は そう考えた」
ヴィクトール11世が呆気に取られた後視線を落として言う
「シリウスが… シリウスがどうやってこの世界を救おうとしていたのか それは 僕にも分からない… けどっ!」
リジューネが気付いて言う
「『シリウス』だと?貴様っ!シリウス様を呼び捨てにするなど 恐れ多いっ 大体 貴様は何者だ!?」
ヴィクトール11世がハッとして言う
「それはっ …貴方はきっと信じてくれないだろうけど 僕はっ!」
皆がハッとする 周囲に機械兵や魔物が集まる リジューネが表情をしかめて言う
「しまった…っ 囲まれたかっ」
皆が戦闘体制に入る リジューネが剣に手を掛けて言う
「移動魔法陣までは遠い… くそっ 私1人では 皆を向かわせる事が…っ」
ガイがリジューネの前に立って言う
「リジューネ陛下 奴らは我々が片付けます どうか 第一部隊の者へも 戦闘行動は止めさせ 皆で我らの後方へ固まって下さい」
リジューネが驚いて言う
「何を言うっ!?ここはもはや 一か八か 一点集中で 移動魔法陣までの道を 切り抜けるしかっ!」
ガイが振り返り微笑して言う
「我らへ お任せを」
リジューネが驚き呆気に取られて言う
「っ…?う、うむ… 分かった…」
リジューネが気を取り直して 第一部隊へ指示を送る
「第一部隊!総員!防御体制へ移行!多国籍部隊の彼らの後方へ固まれ!」
【 ソイッド村 】
ザッツロード6世が言う
「クラウザー殿、如何ですか?」
ベハイムが微笑んで言う
「はい、これなら十分 解析が行えます」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「良かった~ 後、何回ローレシアとソイッド村を行き来したら良いかと 流石に心配してしまいました」
ベハイムの周囲を埋め尽くさんとする機械が置かれている ベハイムが苦笑して言う
「ザッツロード王子に 荷物運びをさせてしまい 本当に申し訳ありませんでした …あ、女性方にも 重い物を運ばせてしまい」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「彼女たちは最初から荷物運びはしていませんでしたけど… でも、移動魔法に関しては 礼を伝えておきます 彼女たちの移動魔法の丁寧さは 僕など足元にも及びませんから」
ベハイムが微笑して頷いて言う
「はい、よろしくお願いします …では ここからは 私の頑張りを お見せする番ですね?」
ザッツロード6世が微笑して言う
「朗報を期待してます!」
ベハイムが頷く
ザッツロード6世が造船所の出入り口から出て来る ラーニャがだらけて言う
「あぁ~もうっ!絶対に嫌!今度こそ私 移動魔法やらないから!」
レーミヤが苦笑して言う
「そうは言っても あの転送装置を解析するには 多くの機械が必要だというのだから」
ミラが言う
「ローレシアの人たちに 気付かれないように持ち出す…って言うのが 結構大変なのよね…」
ザッツロード6世がやって来て微笑して言う
「解析に必要な機械は 全て揃ったって 皆に御礼を伝えて欲しいって言われたよ それから、後は任せてくれって」
ラーニャが大きく息を吐いて言う
「や~っと 終わったぁあ~っ!」
ミラが苦笑する レーミヤが微笑んで言う
「これからは クラウザーさんのお食事を運ぶ位で 良さそうね?ソルベキアの方は どの様なお料理がお好みなのかしら…?」
ラーニャが石化してから言う
「それも私たちの仕事~っ!?」
ミラが視線を逸らして言う
「ソルベキアのプログラマーって… きっと作業に時間が掛かるんでしょうね?そんな気がするわ…」
ザッツロード6世が一瞬驚いてから軽く笑って言う
「あはは… そんな気がする だなんて ミラにもヴィクトール様やヘクターみたいに アバロンの力が備わって来たのかな?」
ミラが衝撃を受け慌てて言う
「わっ!?私はソイッド族よ!?アバロンの力なんて備わるはずないじゃない!?ザッツじゃあるまいしっ!」
ザッツロード6世が疑問し苦笑して言う
「え?僕はローレシアの民だよ アバロンの力は 欲しくても備わらないさ」
ミラが言う
「そぉ?ザッツはアバロンかぶれだから 備わってしまいそうよ?」
ラーニャが笑って言う
「あ!それ分かる分かる!」
ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「え?そうかい?…ちょっと嬉しいかな?」
ラーニャが怒って言う
「喜んでどうするのよっ!?馬鹿ザッツ!」
ザッツロード6世が呆気に取られた後 照れて言う
「え?…えへへ」
ラーニャが衝撃を受ける ミラが溜息を吐く レーミヤが苦笑する
【 スプローニ城 城門前 】
第一部隊員らが呆気に取られ 第一部隊長が言う
「…信じられん 人が… 機械兵と同等 …いや、それ以上の力で」
リジューネが険しい表情で見つめる 副隊長が怯えて言う
「あれは… 人の力なんかじゃないっ まるで…っ」
ガイの剣先の前 機械兵が地面に倒れる ガイが周囲を確認する ヴァッガスが立ち上がり ガイへ振り返って笑みを見せる ガイがヴァッガスの笑みを受け微笑する ヴァッガスがハッとして叫ぶ
「ガイっ!後ろだ!」
ガイがハッとして振り返る 機械兵が武器を振り下ろす ガイが気を取り直し空へ回避しようとする 先ほど倒した機械兵がガイの足を掴む ガイがハッとして言う
「なっ!?しまったっ!」
ヴァッガスが叫ぶ
「ガイーっ!」
ガイが焦って機械兵へ向く 機械兵が武器を振り下ろしている途中で衝撃を受け反り返る ガイが一瞬驚いた後 長剣で足を押さえる機械兵へ攻撃を与え 飛び退くと同時に機械兵が倒れ その後ろに プログラム魔法剣を構えたリジューネが居る ガイが驚いて言う
「リジューネ陛下…!?」
リジューネが剣に付けられている機械の電源を切り 剣を収めて言う
「詰めが甘いぞ 多国籍部隊隊長」
ガイが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「申し訳ありません 助かりました」
リジューネが背を向けて言う
「…礼は不要だ 今の事を後の教訓として覚えておけ …と、貴殿の御尊父に教わった言葉だ 剣術と共にな」
ガイが驚く リジューネが振り返り微笑して言う
「それと 助けられたのは こちらの方だ …私は 危うく彼らの命を落とさせる所であった」
ガイが言う
「リジューネ陛下…」
リジューネが第一部隊へ向かって行く ガイが見つめているとヴァッガスが来て言う
「ハッ…兵士たちの命を心配してたとは 意外だったぜ」
ガイが微笑して言う
「…恐らく 以前ガルバディアへ彼らを連れて行ったのも 断腸の思いであったのだろう」
リジューネが第一部隊員らのもとへ辿り着くと 第一部隊長が言う
「リジューネ陛下」
リジューネが言う
「…移動魔法陣への道は切り開かれた 行くぞ」
副隊長が言う
「陛下 お次はどちらへ?残るは ガルバディアですが…」
リジューネが立ち止まって言う
「…奴には敵わぬ ガルバディアは諦め ローレシアへ帰還する」
副隊長が返事をする
「はっ!」
第一部隊長がガイたちを見てから リジューネへ近づき小声で言う
「陛下っ 奴らは!?…あの力 ただ事ではございませんっ」
リジューネがガイたちを見る リジューネの視線の先 ガイたちが集まり話をしている リジューネが視線を逸らして言う
「彼らは 我らローレシア帝国の多国籍部隊 その彼らには… 彼らの作戦を遂行させておけ」
第一部隊長が驚いて言う
「し、しかしっ」
リジューネが歩き出す 第一部隊長が慌てて言う
「陛下っ!?そ、総員!リジューネ陛下に続け!」
リジューネと第一部隊が移動魔法陣へ向かって行く ガイがその様子を見て微笑する
宝玉の間
メテーリが宝玉を置いて祈りを捧げる 仲間たちが後方で見守る中 ヴァッガスがガイへ向いて言う
「あのリジューネ女帝は 俺たちが置いて行った宝玉を取っちまったりは… してねぇだろうなぁ?」
ガイが微笑して言う
「断言は出来かねるが… 恐らく それは無いだろう」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!僕もそう思う!まぁ…何となくだけどね?えへへっ」
メテーリが祈りを捧げ終え 宝玉を見て微笑する ロドウが笑顔で言う
「それにしても 宝玉を安定させるのに メテーリの力が必要だったなんて ガイは… それでメテーリを連れて行こうとしたの?」
ガイが苦笑して言う
「いや、そんな事はまったくもって無い 私も宝玉の安定にメテーリの力が有効であるとは 思いもしなかったのだ」
ヴィクトール11世が言う
「彼女の力が有効と言うよりも 僕らの力がちょっと問題なんだよ ほら、魔物の遺伝子情報が入っちゃってるでしょ?宝玉は 元々人を守る為に 作ったものだったらしいから」
ガイたちがヴィクトール11世を見てガイが言う
「なるほど…」
ヴィクトール11世が微笑して言う
「けど、一応 そんな僕らでも 出来なくはないってシリウスBが言ってたよ だから… 安心して!」
ヴィクトール11世が笑顔になる ガイたちが衝撃を受けヴァッガスが言う
「安心してって… 何に安心しろってんだ!?」
メテーリが来て言う
「何騒いでるのよ?何の話?」
ヴァッガスが困って言う
「あ、あぁ… いや、何でも」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!例え ローレシア第一部隊の隊員たちに 化け物扱いされても 僕らはちゃんと人だから安心して!って話!」
ガイたちが衝撃を受け ヴァッガスが焦って言う
「そういう意味だったのかよ!?」
ロドウが苦笑して言う
「化け物かぁ… それはちょっとショックかなぁ…」
ガイが苦笑して言う
「そういえば その言葉には あのシリウス様ですら 平静を乱されていたな… 今なら その気持ちも 少しは分かる気がする」
メテーリが衝撃を受け焦って言う
「ち、違うわよ!ガイたちは化け物なんかじゃない!何処からどう見たって 昔と変わらない!普通の人じゃない!?」
ロドウが苦笑して言う
「ぼ… 僕はだいぶ昔と変わったけどね?特にサイズ的に…」
メテーリが衝撃を受け慌てて叫ぶ
「貴方のは夢が叶ったんでしょ!?」
ロドウが照れる
「え?えへへ…っ」
ヴィクトール11世が表情をゆがめて言う
「何処からどう見ても 普通の人かぁ~…」
ヴィクトール11世の尻尾が人知れず動く ヴァッガスが悪戯っぽく笑んで言う
「化け物上等!」
皆が驚く ヴァッガスが胸を張って言う
「化け物みてぇに強くって 頼りになる仲間だろ!?俺らは皆の為に戦うんだ!化け物だろうと何だろうと関係ねぇえ!要はその力で 何をやるかって事だぜ!」
ガイが苦笑し頷いて言う
「うむ、そうだな なんと言われようと 我らは我らの正義のために戦う 人々には… その結果を見て 判断して頂こう」
メテーリが呆気に取られてから噴出し 笑って言う
「なーんだ ガイってやっぱり ローゼントの王様丸出しだったのね!?自分たちの行動で 人々に判断を仰ごうだなんてさ!?」
ガイが衝撃を受け焦って言う
「そ、それは…っ い、いや、これは 多国籍部隊隊長としてっ!いや、そもそもの 私の性格がっ」
皆がガイの矛盾に笑う ヴァッガスが笑いながら言う
「だから、元々王様だから 性格が王様なんじゃねーか!」
ガイが分からず疑問して焦って言う
「そ、それはっ …否!ヴァッガスも同様の事を 言ったではないか!?」
ヴァッガスが笑んで言う
「俺はみんなの為に戦うって言ったんだぁ どっちかっつったら 家族や仲間 自分に関係のある奴らの為だな!」
ガイが衝撃を受け怒って言う
「なぁーっ!何を言うっ!?自分に関係のある者だけを守ろうなどとっ!ヴァッガス!貴殿はそれでもっ!」
ロドウが笑顔で落ち着かせようと言う
「まぁまぁ…」
ガイ以外が笑う ガイが怒っている
【 ローレシア帝国 移動魔法陣 】
リジューネと第一部隊が 移動魔法で現れる
ローレシア城 玉座の間
リジューネが入って来ると 大臣らが表情を困らせて居り 研究者Tが振り返って言う
「これはこれは リジューネ陛下 各国の移動魔法陣が使用出来たとは言え とてもお仕事のお早い事で…?お勤めご苦労様でした」
リジューネが研究者Tへ鋭い視線を送った後 目を伏せて言う
「各国のCITCは封印を解除した これで」
研究者Tが首を傾げて言う
「ガルバディアのCITCは 未だ封じられておる様ですが?」
リジューネが目を開き言う
「ガルバディアは神の国だ その国の封印に手を付ける等 出来よう筈もあるまい」
研究者Tが言う
「お言葉ですが… それでは 私の計算が」
リジューネが言う
「計算が狂うのなら やり直せ チャージの日数が 5日から10日になろうが構わぬ」
研究者Tがムッとしてから言う
「…分かりました でしたら その様に致します」
リジューネが不満そうな息を一つ吐いてから玉座へ向かう 研究者Tが近くへ言って言う
「それはそうと リジューネ陛下」
リジューネが研究者Tへ鋭い視線を向けて言う
「今度は何だ」
研究者Tが苦笑しながら言う
「はっはっは いや、お厳しいですな?私はリジューネ陛下のお力になれる様にと 提言を致しておりますのに」
リジューネが視線を向けないで言う
「用があるのではないのか?無いのなら 直ぐに計算のやり直しでもするが良い」
研究者Tが笑んで言う
「その前に、リジューネ陛下へ 私の言葉が正しい事を 証明して見せようと思うのです」
リジューネが研究者Tへ向いて言う
「証明だと?」
研究者Tが微笑して言う
「はい、リジューネ陛下が私に厳しいお言葉を掛けるのも ひいてはガルバディアのCITCの封印をそのままに逃す事も 全ては私の言葉に 信用が置かれないからではないかと…」
リジューネが一瞬反応し視線を逸らして言う
「…そんな事は無い」
研究者Tが首を傾げて言う
「そうでしょうか…?」
リジューネが顔を向けて言う
「くどいぞっ そもそも 貴様の言葉を疑っているのであれば わざわざ第一部隊の隊員らの命を危ぶませてまで 各国の封印を解きに回ったりはせん!」
研究者Tが微笑して言う
「それもそうですね …もっとも 他に手が無かったのでしたら 話は別ですが」
リジューネが不満を抑えている様子で言う
「何を証明して見せるのか?と 私は聞いている」
研究者Tが笑って言う
「あっはっは はい、そうでしたね では 御帰国されたばかりで お疲れかと思われますが どうか機械室まで ご足労頂けませんでしょうか?」
リジューネが疑問して研究者Tを見る 大臣らが表情を困らせ顔を見合わせる
機械室
リジューネたちが現れる 研究者Tが笑んで言う
「現在までにチャージされた 中和作業を行うためのエネルギーは25%です」
リジューネが疑問して言う
「25%?封印を解いたばかりにしては 随分多い様に思うが?」
研究者Tが笑んで言う
「とは言いましても この25%は 試験的にチャージしておりましたものです」
リジューネが言う
「試験的に?」
研究者Tが笑んで言う
「はい、リジューネ陛下 我々ソルベキアの研究者らとて 世界を救うほどの大事ともなれば 心配にもなります 世界中の悪魔力を中和する前に まずは一つ 実験をしたいと思い その為に 先だってこのローレシアのCITCにて チャージを行っておりました」
リジューネが一瞬呆気に取られて言う
「実験だと?…そうか 確かにそうだな 相手は人や動物 更には機械兵までもを 悪しきものへと変える力 それらを全て中和させる程の大事では …それで、その実験というのは?」
研究者Tが笑んで言う
「実験とは言え 多くのエネルギーを使うのですから それを無駄には出来ません 相応の中和作業を行い 悪魔力の脅威を無くそうと言うものです …そう このローレシア大陸のね!」
リジューネが驚く 研究者Tが自信を持って言う
「他の大陸に先立ち このローレシア大陸にある全ての悪魔力を 中和させて ご覧に入れましょう!」
リジューネが呆気に取られる
城下町
フォーリエルが嬉しそうに団子を食べ言う
「あーん うんうん… いやぁ~ やっぱテスの団子は 美味いよなぁ!?」
テスクローネが微笑んで言う
「先日フォーリエルが良いと言ってくれた 甘いタレの団子はとても好評だったよ これからは定番商品にしようと思う 名前は みたらし団子でね?」
フォーリエルがテスクローネの言葉に考えながら言う
「みたらし団子…?へぇ 面白い名前だな!俺はてっきり 甘タレ団子とか 甘々団子かと思ったぜ!…それにしても まさかあんな甘いタレを付けた団子が 美味いとはな~」
テスクローネが言う
「うん、それに みたらし団子は意外な事に 女性だけでなく 男性客も喜んでくれているんだ」
フォーリエルが笑顔で言う
「だろぉ!?俺が美味いってんだから そらぁ他の男だって 美味いって言うさ!」
フォーリエルがニコニコする テスクローネが軽く笑んだ後言う
「ふふっ …しかし、草団子を変化させた あん団子は やはり女性の方が喜んでくれるよ 男性からの注文は… フォーリエルぐらいだ」
フォーリエルが驚き首を傾げて言う
「あぁ!?そ…そうかぁ?俺は美味いと 思うんだけどなぁ?」
テスクローネが苦笑して言う
「フォーリエル …もしかして 団子の味見まで 私に気を使って 美味いと言ってくれているんじゃないのか?褒めてくれるのは嬉しくはあるが 味見役としては 公平な意見を欲しい時もあるのだが?」
フォーリエルが衝撃を受け 慌てて言う
「おっ 俺は!団子の味見は本気で!美味いもんは 美味いって言ってるぜ!気なんて使ってねぇって!」
テスクローネが呆気に取られてから苦笑して言う
「そうか… ふふっ 分かったよ 疑って悪かった」
フォーリエルがそっぽを向いて言う
「おうっ そうだぜ!相棒の言葉を疑うなんて いけねぇ事だ!そんなに信じられねぇんなら 一度まずい団子を俺に出してみろよ?」
テスクローネが呆気に取られ首を傾げて言う
「まずい団子か… 考えた事も無かったが ある意味、それを考える事も 美味い団子を作るのには 必要な事かもしれない… それじゃ フォーリエル!」
フォーリエルが疑問する テスクローネが笑顔で言う
「これからは まずい団子を研究するから その味見役に」
フォーリエルが衝撃を受け慌てて言う
「だあぁあ ま、待てっ!俺が悪かったーっ!」
テスクローネが呆気に取られた後軽く笑い 笑い出す フォーリエルがテスクローネの笑顔を見て表情を綻ばせ 一緒に笑う 団子屋の客が言う
「うん?な、なんだ!?あれ!」
テスクローネとフォーリエルが疑問し 声の方を見る 店の客や道行く人が 団子屋の客の指差すものを見る 皆の視線がローレシア城へ向く フォーリエルが驚いて言う
「ローレシア城が!」
皆の視線の先 ローレシア城に強い光が集まっている
ローレシア城 機械室
ソルベキア研究者が言う
「出力最大!中和システム 異常なし!」
ソルベキア研究者が言う
「照射範囲!ローレシア大陸」
機械室の機械が高鳴る リジューネが視線を強めて見つめる
城下町
多くの人々がローレシア城を見上げる フォーリエルがテスクローネへ向いて言う
「テス!?一体 何が起こってんだ!?」
テスクローネが視線を強めると周囲にプログラムが現れ ローレシア城を覆う光りを解析して言う
「っ!あれはっ 聖魔力!エネルギーの塊だ!それにっ …この数値は尋常じゃない!結界を張るエネルギーを遥かに越えている 一体何をっ!?」
フォーリエルが一度ローレシア城を見た後テスクローネへ問う様に見つめる テスクローネがハッとして言う
「…まさかっ!」
ローレシア城 機械室
ソルベキア研究者が言う
「エネルギー装填完了!」
ソルベキア研究者が言う
「システム!オールクリア!」
研究者Tが頷き 指差して叫ぶ
「聖魔力を照射しろ!」
ソルベキア研究者がスイッチを押す
城下町
皆の視線の先 ローレシア城に集まっていた光が 一瞬消えたかと思うと激しく光り上空へ放たれ その光が落ちてくる 皆が驚き 悲鳴を上げながら光から身を守る体制を取る テスクローネが目を見開き呆気に取られる フォーリエルがテスクローネを庇う様に光りから防御する
光りが止み 皆が恐る恐る目を開いて周囲を見る 皆が疑問して自分の手や近くのものや人を見る フォーリエルが目を瞬かせて言う
「な… 何だったんだ?何か… まだ目が眩んでるみてぇに…」
テスクローネが呆気に取られて言う
「…違う 皆がそう感じるのは この光に慣れていないから …悪魔力の霧が消えた 本当の世界の色を 知らないからだ」
フォーリエルが疑問して言う
「本当の… 世界の色?」
誰かが空を指差して言う
「み、見ろ!空が!」
フォーリエルが空を見上げて言う
「あ… 青い!?空が!…まるで 昔の絵に描かれている空みてぇだ!」
誰かが言う
「ローレシアが… リジューネ陛下が 悪魔力を追い払ったのか!?」
皆が驚き 間を置いて喜びの歓声が上がる
「すごいっ!あの悪魔力を!」
「悪魔力を… リジューネ陛下が!我らのローレシアが 悪魔力に勝ったんだ!」
皆が喜ぶ フォーリエルが驚いた表情から喜び 笑顔になってテスクローネへ向いて言う
「テス!?そうなのか!?ローレシアが!あのリジューネ女帝様が 悪魔力を追い払ったのか!?」
テスクローネが呆気に取られて居る
ローレシア城 機械室
リジューネが研究者Tへ向いて言う
「…どうなったのだ?」
研究者Tが笑い出す
「は…はは…ははは… あははははっ!」
リジューネが心配して他の研究者を見る ソルベキアの研究者らが機械を操作して言う
「ローレシア大陸の悪魔力濃度4.98… 基準値を下回りました!悪魔力は 中和されました!」
リジューネが驚く ソルベキアの研究者が言う
「結界装置冷却 システム イエローからグリーンへ移行中 異常なし」
ソルベキアの研究者が言う
「悪魔力中和作戦 79%の成功を確認!」
研究者Tが大笑いして言う
「あーはっはっはっはっは!やったぞ!ガルバディアの機械を!?一度も失敗させずに成功させた!ソルベキア史上初の快挙だぁあ!あーはっはっはっはっは!!」
リジューネが静かに言う
「作戦は 成功か…」
リジューネが握り締めていた拳の力をそっと抜く
城下町
人々が喜び合っている フォーリエルが笑んで言う
「すっげぇえじゃねーか!新世界の力を借りずに!この世界の力だけで 悪魔力をぶっ倒したんだろ!?なぁあ!テス!お前も喜べって!」
テスクローネが呆気に取られたまま言う
「…駄目だ …ただ この大陸の悪魔力を中和させるだけではっ」
フォーリエルが不意を突かれて言う
「…あ?」
機械兵からの砲撃が結界のプログラムをすり抜けローレシア城へ被弾する 皆が驚き 続く砲撃に悲鳴を上げ逃げ惑い始める
ローレシア城 機械室
リジューネが慌てて言う
「何事だっ!?」
ソルベキアの研究者らが慌しく作業を行い言う
「結界外部からの砲撃を確認!結界プログラムが… 効力を持ちません!」
リジューネが驚いて言う
「馬鹿なっ!?結界が効力を持たないとはっ!?機械兵からの攻撃ではないのか!?一体何からの攻撃だ!?直ぐに敵を確認しろ!」
ソルベキアの研究者らが操作を行い モニターに移動魔法陣から現れる機械兵の映像が出る リジューネが驚いて言う
「あ…あれはっ!中部大陸 カイッズ国周囲で製造された機械兵!」
研究者Tが驚いて言う
「何故だっ!?機械兵は 悪魔力の薄い場所では 起動エネルギーを得られない!奴らは 動く事が出来ない筈っ!一体どうして!?奴らはどうやって動いている!?」
機械兵からの砲撃でローレシア城が揺れる 皆が怯み リジューネが言う
「それよりも防衛だ!結界はどうなっている!?何故 結界プログラムの効力が弱まっているのだ!?」
ソルベキアの研究者らが確認して言う
「結界プログラムに変化はありません!既存のプログラムを間違いなく実行しています!」
リジューネが言う
「ならば プログラムを強化しろ!もっと強力な結界を張り ローレシア帝国を守るんだ!」
ソルベキアの研究者が振り返って言う
「出来ません!結界プログラムを強化するなどっ ガルバディアのプログラムを上回る結界は 我々には作れません!」
リジューネが目を見開いて言う
「何だと… ではっ どうしろとっ!」
機械室の扉が開く 皆が振り返る フォーリエルが荒い息を整える中 フォーリエルの背からテスクローネが降りながら言う
「結界プログラムを 対物バリアプログラムへ移行するのです 悪魔力へ対する防御が無くなる分 同じエネルギーでも対物防御力は倍増します そして これは緊急事態 …残念ながら 転送装置使用の為 別途保護していたエネルギーを使うしかないでしょう リジューネ陛下!」
リジューネがハッとして言う
「分かった!すぐに分配プログラムの変更を!」
研究者Tが言葉を失う テスクローネに続きリジューネが操作盤へ近づき 生態識別パネルに手を付いて言う
「エネルギーの分配を変更する!」
モニターにプログラムが流れた後 エラー表示が出る テスクローネとリジューネが疑問し テスクローネが確認作業をする リジューネが再び言う
「どうした!?私の音声を認識しろ!私の名はリジューネ・デネシア このローレシアの王だ!」
プログラムが流れた後再びエラー表示が出る リジューネが疑問して言う
「何故だ!?前回は…っ」
テスクローネがハッとして言う
「リジューネ陛下の認識履歴にバグがっ これは…」
テスクローネが作業を続ける リジューネがテスクローネへ向いて言う
「どうした!?何があった!?」
テスクローネが結論に驚いて言葉を失う リジューネが慌てて言う
「テスクローネ!」
テスクローネが何とか言葉を口にする
「エ、エネルギーが…っ 転送の為に保管していたエネルギーが 全て使われてしまっている!359秒前!?先ほどのっ!あの中和作業に!」
テスクローネが研究者Tへ向いて言う
「貴方ですか!?リジューネ陛下の生態識別システムを偽造して!あの中和に ローレシアのエネルギーを 全て 利用してしまったのですね!?」
リジューネが驚いて言う
「何だと…っ!?転送の為に残しておいたエネルギーを使ってしまったのか!?何故そんな勝手を!?私はそんな事を許した覚えは無いぞ!」
研究者Tがリジューネを見ながら困り果てて言う
「わ…私はっ 悪魔力の中和をっ 中和作戦を成功させようとっ …こ、この世界の悪魔力を無くしさえすればっ て、転送装置などっ 使用する必要もっ!」
テスクローネが言う
「機械兵は 悪魔力を体内に蓄積させる事が出来るんです そもそも ただ大陸の悪魔力を消したって 魔力の存在する限り 悪魔力だけを全て消す事は出来ない 中途半端な中和作業などは持っての外!奴らは 悪魔力の存在する大陸でエネルギーを蓄え このローレシアを攻撃しに来ますよ!何度でもね!そして、奴らの狙いは CITCを制御する力!ローレシアは奴らに わざわざ制御装置の在り処を 知らしめてしまったのですよ!」
リジューネが驚いて研究者Tへ向く 研究者Tが悔しそうに目を強く瞑り俯いている リジューネが言う
「CITCの制御装置… 研究者T!」
リジューネが研究者Tへ向く 研究者Tがリジューネを見る リジューネが言う
「その制御装置と言うのは ローレシアに存在するのか?」
研究者Tが視線を下げて言う
「は…はい…」
リジューネがテスクローネへ向いて言う
「ならばテスクローネ CITCで得られるエネルギーを使い バリアプログラムを放つ事は出来ないのか?」
テスクローネが呆気に取られる 研究者Tが言う
「勿論可能です CITCは魔力穴から聖魔力、もしくは悪魔力を取り出す道具 そして、聖魔力は全てのエネルギーの源」
リジューネが言う
「直ちにCITCを利用し!ローレシア帝国へバリアプログラムを放て!」
テスクローネがリジューネへ向いて言う
「リジューネ陛下!CITCはこの世界を闇に落とした元凶です!それを利用しようなどと!」
リジューネがテスクローネへ向いて言う
「例え何であろうと 今このローレシアを …そこに住む全ての人々を守るには 他に方法が無い!違うか!?」
テスクローネが驚きリジューネを見つめる リジューネがテスクローネを見つめる テスクローネが視線を落とし目を閉じて考えた後 横目にフォーリエルを見てから言う
「…分かりました」
ソルベキアの研究者らが頷き合い操作をしながら言う
「CITC制御信号を確認」
「システム正常!聖魔力の抽出を開始します!」
テスクローネが一度目を閉じた後 ゆっくり目を開き周囲にプログラムを発生させて言う
「エネルギーの充填を確認 ハイスペック・バリアプログラムを実行する」
テスクローネの周囲にプログラムが放たれると同時に モニターにプログラムが転送され バリアプログラムが起動する
城下町
人々が逃げ惑う中 誰かがハッと気付いて空を見上げる 機械兵からの攻撃がバリアに衝撃を吸収され無効化する 人々が徐々に気付き始め 皆が空を見て心配そうに微笑して 仲間たちと顔を見合わせる
ローレシア城 機械室
リジューネがほっと息を吐いて言う
「…何とか持ち応えたか」
テスクローネが言う
「これは 単なる時間稼ぎでしか ありません」
リジューネがテスクローネへ向く テスクローネが言う
「このバリアを張り続ける事は とても多くのエネルギーを使用します 魔力穴から聖魔力を引き抜けば 残るのは悪魔力です 使用される事の無い悪魔力は どんどん世界に溢れ それから身を守るため ローレシアは更に聖魔力を引き抜く …その結果が この世界です」
テスクローネがリジューネへ向く リジューネが表情を険しくして言う
「…やはり我らは 新世界へ逃げる事でしか 生き延びる事は出来ぬのか」
テスクローネが間を置いてから席を離れて言う
「後は… ソルベキアの彼らが操作出来ます 私は これで」
テスクローネが去って行く リジューネがあっとテスクローネを振り返る フォーリエルがリジューネを見た後 テスクローネに続く
ローレシア城 城門前
テスクローネとフォーリエルが城から出て来る ガイたちが走ってローレシアへ向かって来ている ヴァッガスが言う
「あ!おいっ!あいつ!」
ガイがハッとしてから頷いて言う
「うむ!」
ガイたちがテスクローネとフォーリエルの前に走って来る 皆が立ち止まり ヴァッガスが言う
「おいっ!お前!この前の!」
ガイがフォーリエルへ向いて言う
「フォーリエル、貴殿らは何か知らないだろうか!?このローレシア大陸の異変 この大陸のみ 悪魔力が」
ヴァッガスが言う
「それだけじゃねぇ!悪魔力が無くなった代わりに 倍以上の機械兵が押し寄せてやがるぜ!?このままじゃ 結界が持たねぇんじゃねぇかって位よ!?」
テスクローネが視線をそらして俯く ガイたちが疑問する フォーリエルが言う
「ガイ隊長、ヴァッガス副隊長方も… 折角 隊長たちが 命懸けで集めて来た エネルギーだったってーのにっ!」
フォーリエルが悔やむ ガイたちが顔を見合わせ ガイが言う
「どうした?何があった!?」
【 ソイッド村 】
ベハイムが微笑んで現れて言う
「大変お待たせいたしました ザッツロード王子 お仲間の皆様」
ラーニャがだらけて言う
「もぉ~ 待ちくたびれたぁ~」
ベハイムが苦笑して言う
「申し訳ありません これでも 精一杯急ぎ 我ながら優秀な解析作業を行えたと 自負している所なのですが…」
ミラが振り向いて言う
「それはつまり、自慢出来るほどの物を 手に入れたって事よね?」
ベハイムが微笑して言う
「はい これで皆様の手料理が 食べられなくなるのは とても残念ですが 最高の結果をローレシアへ持ち帰る事が出来ます」
レーミヤが微笑んで言う
「気に入って頂けたのでしたら ローレシアへ戻っても またご用意させて頂きますよ?ね?ラーニャ」
ラーニャがまんざらでもない様子で言う
「まぁ どうしてもって言うなら…」
ベハイムが衝撃を受け慌てて言う
「あ、いえ…っ キャリトールの珍味に関しては ソルベキアの私には 少々理解が難しく…」
ラーニャが疑問して言う
「え?私、キャリトールの里料理なんて 出してないわよ?レーミヤと同じ ただの玉子焼きよぉ?」
ベハイムが衝撃を受けて言う
「あっ!…あれが …玉子焼き…」
ミラがそっぽを向いて言う
「イカ墨でも混ざってるのかと思ったわ」
ラーニャが疑問して言う
「わざわざ そんな手間なんて掛けなかったけど?」
ミラが溜息を吐き レーミヤが苦笑する ベハイムが周囲を見渡して言う
「…と、ザッツロード王子は どちらへ?」
ラーニャが立ち上がって言う
「ザッツなら 何かさっき 急に…」
ミラが言う
「ちょっと見て来る とか言って走って行ったわ 見るって言ったって ソイッド村は周囲を森に囲まれているのだから 何も見えないのに」
ベハイムが不思議そうに言う
「…そうでしたか」
レーミヤが言う
「ザッツが向かったのは 丁度、移動魔法陣のある 村の出入り口の方だったから 皆で行きましょう?」
皆がやって来ると ザッツロード6世が村の出口 結界の外に立っている 皆が驚き 顔を見合わせた後走って向かい ラーニャが叫ぶ
「ちょっと!ザッツっ!」
レーミヤが言う
「結界の外へ出ては 危険だわ!悪魔力に晒されてしまっては!」
ザッツロード6世が皆へ振り返る 皆が結界の端で立ち止まると ザッツロード6世が苦笑する 皆が驚き顔を見合わせると ラーニャが言いながら結界を出る
「ザッツ!聞いてるの!?」
ミラが慌てて言いながら追う
「ラーニャ!」
結界の外に出た ラーニャとミラが呆気に取られる 結界の内側に居るレーミヤとベハイムが顔を見合わせ疑問してから結界の外へ向かう ベハイムが驚いて言う
「こ…これはっ!?」
ザッツロード6世が言う
「悪魔力が… 中和されているんだ」
ベハイムが呆気に取られて言う
「これが… 中和… 悪魔力と聖魔力が 同量であると言う 最も自然の姿…」
ベハイムが空を見上げて驚く ラーニャが空を見て微笑して言う
「わ~… 青い空なんて久しぶりっ!」
ミラが微笑して言う
「ええ…」
レーミヤが微笑んで言う
「新世界では当たり前の空が こんなにも綺麗だなんて…」
ラーニャがザッツロード6世を見る ザッツロード6世が俯いて真剣な表情をしている ラーニャが疑問して言う
「ザッツ?何よ… 折角の青い空が 嬉しくないの?皆 こんなに喜んでるのに」
皆がザッツロード6世へ向く ザッツロード6世がラーニャの言葉に顔を上げてから慌てて言う
「あ、ああっ その… 最初は 僕も驚いて とても嬉しい気分になったんだけど その後になって 何だか… 急に心配になってしまって」
ミラが言う
「心配に?何が心配だって言うの?」
ベハイムが真剣に言う
「もしこれが… 彼らの… ソルベキアの研究者たちの行いだとしたら…っ ザッツロード王子 私も 一つ気掛かりな事があります ソイッド村の転送装置の解析も終わりました 直ぐにローレシアへ戻りましょう!」
ザッツロード6世がベハイムへ向いて頷く ラーニャたちが呆気に取られつつ顔を見合わせる
【 ローレシア帝国 上空 】
ザッツロード6世たちが移動魔法で空を移動している中 皆が驚いてミラが言う
「な、何なの!?あの機械兵の数!」
ラーニャが指差して言う
「見て!あれ!」
ザッツロード6世が驚いて言う
「ガイ隊長!?ヴァッガスにロドウ副隊長… ヴィクトール様も!」
ベハイムが言う
「恐れていた事が…っ」
皆がベハイムを見る
ザッツロード6世たちがローレシア帝国の移動魔法陣に到着する レーミヤがザッツロード6世へ言う
「それで、何処へ向かうの?」
ザッツロード6世が言い掛ける
「うん、まずは」
ラーニャとミラが同時に言う
「ガイ隊長たちの!」「ローレシア城へ!」
ラーニャとミラが顔を見合わせ ラーニャが言う
「すぐに皆の応援に行かなきゃ!」
ミラが言う
「ローレシア城へ行って 何が起きているのかを 確認するのが先でしょ!?私たちじゃ 機械兵には敵わないのよ!?」
ラーニャとミラが視線で喧嘩してからザッツロード6世へ向く ザッツロード6世が強い視線で言う
「ガイ隊長もヴィクトール様も 少し動きが鈍っている様に見えた きっと各国を回った作戦からの連戦で 疲れが出ているんだと思う ラーニャたちはガイ隊長の所へ行って 戦いのサポートをして欲しい 僕はリジューネ陛下の下へ行って このローレシア帝国に 何が起きているのかを確認して来る」
ラーニャとミラが呆気に取られ顔を見合わせる レーミヤが微笑して言う
「ええ!ザッツの指示に従いましょう?2人共?」
ベハイムが言う
「私はザッツロード王子と共に参ります」
ザッツロード6世がベハイムへ向いて頷いて言う
「はい、ソイッド村の転送装置の事もあるし クラウザー殿が居てくれれば 僕も機械の話に対し心強いです」
ベハイムが微笑して頷く ラーニャとミラが呆気に取られたまま顔を見合わせ ハッとしてラーニャが言う
「あっ えっとっ そ、そうね!そんな感じに!」
ミラが言う
「ええ、良い判断だわ さ、行きましょ!」
皆が頷き合い それぞれの方向へ分かれ走って行く
ローレシア帝国 結界端
ヴァッガスが給水を片手に言う
「そうなんだよ!まったく 後先考えねぇで ソルベキアの馬鹿研究者の言いなりになっちまって!あの女帝様が!」
メテーリが言う
「リジューネ陛下も まさか転送の為のエネルギーを 研究者Tって奴に使われちゃうとは 思わなかったんでしょ?リジューネ陛下も… 騙されたのよ」
ヴァッガスがメテーリへ向いて言う
「何だよメテーリ!お前 あの女帝様に 味方するつもりか!?」
メテーリが慌てて言う
「そ、そういうつもりじゃないけど!一応っ!…リジューネ陛下も 危険を犯してでも この世界を救おうと思って やったんじゃ ないかなぁ…って」
ヴァッガスが少し認めつつもフンッと顔を背けて言う
「ハッ!なんにしたって お陰でこの有様だぜ!」
ラーニャが言う
「それでっ 何であんたたちが無理して戦ってるのよ!?あんな数の機械兵に 勝てるわけないじゃない!?」
ヴァッガスが給水を飲み干して言う
「勝てるだなんて 俺たちだって思っちゃいねぇ!けど、バリアを張るのに聖魔力を使ったら その分 どんどん悪魔力を増やしちまうんだぜ!?だったら 少しでもエネルギーの消費を抑えるために 一体でも多くの機械兵をぶっ倒してやろうってよ」
ミラが驚いて言う
「そんなっ!無茶よ!」
ヴァッガスが言う
「無茶でもしょうがねぇさ!他に方法がねぇんだ!」
ヴァッガスが立ち上がって言う
「俺らに出来る事は これだけなんだ ここなら 限界ギリギリまで戦っても 直ぐにバリアの中に逃げ込める けど、機械兵ファクトリーじゃ そうは行かねぇ 力尽きた瞬間にやられっちまう …俺たちでも ローンルーズ以外の機械兵ファクトリーは ぶっ壊しにいけねぇんだ」
ヴァッガスが走り去る メテーリが俯いて言う
「ヴァッガスの馬鹿はさ 最初他の機械兵ファクトリーへ行こうとしたのよ 無理だと分かってても… けど、皆で何とか止めたの 無駄死にする位なら ここで戦うべきだって」
ラーニャたちが表情を悲しめてヴァッガスの姿を見る ヴァッガスが機械兵と全力で戦っている レーミヤが言う
「ガイ隊長やヴィクトール様も?」
メテーリが言う
「あぁ、あの二人は 考え事をするのは戦場が良いとかって?」
ラーニャたちが衝撃を受ける メテーリが言う
「神経が研ぎ澄まされて 良い案が浮かぶんだとか言ってたわ …本当かどうか分からないけど」
ラーニャたちがガイたちを見る
ローレシア城 玉座の間
リジューネが言う
「安心しろ、ザッツロード王子 多国籍部隊の彼らが 各国へ置いた宝玉を回収し その力を使用する様な事はしない」
ザッツロード6世が言う
「え…?そう ですか …しかし、このままでは 悪魔力が増え続け いずれは この旧世界が!」
リジューネが間を置いて言う
「CITCを使用せず 時間を得る方法が 一つだけ残されている …無論 機械兵ファクトリーの破壊等では無くな」
ザッツロード6世が驚いて言う
「その方法とは!?私に出来る事でしたら 直ぐにでも!」
リジューネが言う
「貴殿の力は 必要ない 必要なのは… そうだ もはや 方法を選んでなどはおれぬ 理想などは追わず 現実を見なければ」
リジューネが立ち上がり大臣へ向いて言う
「大臣、研究者Tを呼べ!」
大臣らが驚いて言う
「え!?」
「研究者Tをですか!?」
ベハイムが乗り出して言う
「陛下!彼は確かに優秀な研究者ではありますが 後に生じるリスクに対し鈍感である所があります 彼へ何かを命じるのでしたら 私も共に!」
リジューネが歩き振り返って言う
「リスクなど… これは最終手段だ 時間を掛けている暇はない 大臣!何をしている!?直ぐに奴を機械室へ呼び付けろ!私も向かう」
大臣らが慌てて返事をする リジューネが立ち去る ザッツロード6世がベハイムへ向いて言う
「リジューネ陛下が何をなさろうとしているのか 分かりますか?」
ベハイムが考えて言う
「この状態で CITCを使わず ローレシア帝国や人々を守る方法… 考えられる事は!」
機械室
リジューネが研究者らの作業を見つめる ベハイムが言う
『リジューネ陛下はっ ガルバディアのエネルギーを 奪うつもりかもしれません!』
玉座の間
ザッツロード6世が驚いて言う
「あのリジューネ陛下が!?」
ベハイムが視線を下げて言う
「リジューネ陛下は ガルバディアを… 神の国である シリウス様の居城を守るために 過去 何度も自ら研究者を連れガルバディアへ赴き ガルバディアの保存プログラムに異常が無いかを確認させていました ガルバディアはローレシアの王が その保全を任された国… それでも 危険の生じるその作業へ向かう王は 歴代のローレシア王を見ても リジューネ陛下ただお1人 誰よりもシリウス様を愛し お慕いしていたリジューネ陛下が そのガルバディアから…」
ザッツロード6世が視線を逸らして言う
「…確かに、今は どんなに慕っていた方との約束であっても 民の居ないガルバディアを守るより このローレシア帝国を守る事の方が…」
ザッツロード6世がはっとして言う
「しかしっ ガルバディアには!シリウスBが!彼が!それを認めるとはっ!」
ベハイムが驚いて振り向いて言う
「シリウス B!?」
機械室
研究者Tが操作盤を操作しているがモニターを見上げ表情を落とし 振り返ってリジューネを見て顔を横に振る リジューネが一瞬間を置いた後機械室を出て行く
玉座の間
ザッツロード6世がベハイムへ向いて言う
「あのシリウスBに もし ローレシアの人々を守る気があるのなら きっと とっくにエネルギーを送ってくれていると思うんです …しかし、彼は それをしていない きっと 機械兵ではなく この世界の敵と言う者と戦うため エネルギーを渡す訳には行かないのだと思うんです だとしたら!?もし我々が それを奪おうとしたら!?リジューネ陛下や 我々の事を!?」
ベハイムが呆気に取られた状態から 慌てて機械室へ走って行く ザッツロード6世が追う
機械室 前
警備兵が言う
「リジューネ陛下は 先ほどこの部屋を後にされた 陛下からのご命令で 例えザッツロード王子であろうと お通しする事は出来ません」
ベハイムが言う
「リジューネ陛下はどちらへ!?急ぎ伝えねばならない事なのですっ!」
警備兵が言う
「どちらへ向かったかは分かりかねる…が すぐに戻ると仰られていた 急用であるのなら ここで待つ方が 無駄にすれ違ってしまう事も 無いと思うが?」
ベハイムが心配そうな表情を見せる ザッツロード6世が言う
「彼の言う事が正しいと思います ローレシアで機械操作が出来るのは このローレシア城の機械室だけ… すぐに戻られると言うのなら ここで待ちましょう?」
ベハイムが一度ザッツロード6世を見た後心配そうに言う
「シリウス様は 人々の言動を まるで天から見ておられるかの様に ご存知であったと言われています… ガルバディアへ危害を加えようと言う リジューネ陛下の事に そのシリウスBが気付いたら…っ!?」
ザッツロード6世が一瞬呆気に取られてから落ち着いて言う
「落ち着いて下さい クラウザー殿 もし、本当にそうであるなら リジューネ陛下はとっくにシリウスBの手に掛かっています もしかしたら 我々の予想は外れているのかもしれませんよ?それか、その言い伝えの方が 間違っているのかもしれません 私はシリウス様やシリウスB様の事を詳しくは知りませんが ガルバディアの力を使いこなしていた ベネテクトの事は知っています 彼も目の前にある事以外の事を 多く知る事が出来た様ですが 少なくとも その情報だけで 天罰を与えるような事はしませんでした きっと リジューネ陛下の前に姿を現し それを行わない様に助言を与えてくれるはずです」
ベハイムがザッツロード6世を見つめ一つ息を吐いて言う
「はい… 取り乱してしまい 申し訳ありませんでした …そうですね 少なくとも 今はリジューネ陛下の帰りを待ち 我々からも シリウスBの怒りに触れぬ様 進言致さなければなりません」
ザッツロード6世が微笑して言う
「はい、…もしかしたら そんな我々の事を知っているから シリウスBも黙って見ているのかもしれませんね?」
ベハイムが苦笑して言う
「はは…っ 我々の事まで… そうですね、神と呼ばれる程のお方では 全てを見越しているのかもしれませんね?」
多国籍部隊 宿舎裏口
テスクローネが言う
「そんな事を!私がやると思っておられるのですか!?」
リジューネが言う
「…私とて 出来る事なら行いたくは無かった しかし、このままでは…っ 新世界からの助けが来る前に この世界に住む我々は滅亡してしまうっ 貴殿にも分かるはずだ テスクローネ殿」
フォーリエルが言う
「やれやれ このローレシア帝国に住む 全ての民を守る!…とか言ってたくせに 結局 自分の国の民が可愛いんじゃねぇか?結界の縮小を行えば 生きる場所を奪われるのは ローレシア以外の民だもんなぁ!?」
リジューネがフォーリエルへ向いて言う
「皇帝の私と言え 助かる者とそうでない者の人選などは出来ぬ 増してや 何の罪も無い人々の中からそれを選ぶ事など… 従って 結界の縮小は人々には伝えず その時に 結界の外になる場所に居たものは… 助からない 偶然にも結界の内側になる場所に居た者だけが 生き残る事となる …とは言え、ローレシア城が結界の中心である以上 ローレシアの民が多く助かるだろうという事は 否めぬな…」
テスクローネが言う
「例え今 結界の縮小を行い 消費エネルギーを減らした所で 新世界からの助けは いつ来るとも分からない …それなら 最後の瞬間まで この世界で戦い抜いてきた人々と共に その時を迎えるべき出は無いのですか?」
リジューネが言う
「新世界の作戦は 今までより速い速度で進行している 先の作戦再開の時から数え 現行の作戦が結果を出すのが 恐らく今後3日から10日の間だ 現状の結界を維持して持てるのが3日!縮小を行って持てるのが10日!そうとなれば 後者に賭けるのが正しい選択ではないか?」
フォーリエルが言う
「その現行の作戦って奴だって もしかしたら また失敗かもしれないんだろ?」
テスクローネが言う
「残念だが、その可能性が極めて高い 今までの進行率から言って 例え期間が早まろうと 一度の作戦で前のそれを上回る結果を出せるのは 5%~13% 最高の13%であっても 現状では100%の結果には27%も届かない …これは 新世界ガルバディアからのデータを ハックしたものです」
リジューネとフォーリエルが驚く フォーリエルが言う
「テス… お前っ 新世界の情報なんて どうやって!?お前の力は そんな事まで出来ちまうのか!?」
テスクローネが言う
「このデータは 前回の新世界との通信の時 その通信データに紛れ込まされていたもの 送信者の名前は スファルツ・レイロルト・クラウザー あのベハイム殿の曾祖父の名を騙っている事からして 恐らく この世界のソルベキアの民へ向けたものだと思われますが 当の彼らは気付いておられない様でしたね」
リジューネとフォーリエルが呆気に取られる テスクローネが目を伏せて言う
「これでお分かりでしょう?リジューネ陛下 結界の縮小は行わず …最後まで 皆で 今まで通りに過ごし その時を迎えましょう」
フォーリエルが表情を悲しませ俯いて言う
「…それしかねぇのかよ」
リジューネが間を置いて言う
「断る」
フォーリエルとテスクローネが驚いてリジューネを見る リジューネが言う
「私は このローレシア帝国の王だ 彼らの命を預かるものとして 最後の瞬間まで 1人でも多くの者を生かし 新世界へ!シリウス様のもとへ向かわせる!」
フォーリエルが怒って言う
「おいっ!矛盾してるだろ!?1人でも多くの者を生かしたいって言ってるくせに!あんたは結界を縮小して 現状の半分近くの人々を殺しちまおうって言ってるんじゃねーか!」
リジューネが言う
「私は王であっても人だ 絶対ではない 生かす事の出来る少数の為に 大勢の犠牲が出ようとも 遂行しなければならない」
フォーリエルが怒って言い及ぼうとする リジューネがフォーリエルへ剣を向けて言う
「そして、その為には もはや手段を選ばぬと決めたのだ …テスクローネ 貴殿が行わないと言うのであれば 今この場で 私が彼の命を奪おう」
テスクローネが驚いて目を見開く フォーリエルがゆっくり微笑して言う
「リジューネ女帝さんよ…?人質にする相手を間違えてるぜ?俺があんたに敵わないとでも思ってんのか?」
リジューネが横目にフォーリエルを見て言う
「お前こそ 私が最強の剣士の国 アバロンの大剣使いであると 知っているのだろうな?」
フォーリエルがニヤリと笑んで言う
「ああ!知ってるぜ?本人は否定してるけど このローレシア帝国に住む 全員が知ってる有名な話だもんな?」
リジューネが微笑して言う
「否定はしていない ただ、申し訳無いと思っているだけだ ローレシアの王座に着く私が 剣を使う事に」
フォーリエルが言う
「ローレシアは魔法使いの国 剣士とは仲が悪いってのが基本だ …ま、今は その剣士が王様になってるから?ローレシアの連中も仕方なく受け入れてる …あんたを倒しちまったら どの道ローレシアに住む俺ら他国の奴らは 居場所を失っちまうのかな?」
リジューネが剣を構えて言う
「その心配は無用だ 私は お前に倒されたりはしない」
フォーリエルが剣を抜いて言う
「俺は偽者の大剣使いだけど… それでも部隊では ガイ隊長や副隊長方に継ぐって言われたほどの男だぜ?おまけに近くにテスも居るんじゃ 女相手でも容赦はしてやれねぇ 油断してテスの首に剣でも向けられたら それこそこっちの負けだからな?」
リジューネが言う
「私がこの剣を構える時は その様な 姑息な真似はしない 全力で来るが良い 偽者大剣使いフォーリエル お前に 本物の大剣使いの力を見せてやろう」
フォーリエルがムッとする テスクローネがプログラムを見てはっとして言う
「フォーリエル 油断するなっ!」
フォーリエルが驚いて僅かにテスクローネを振り返る リジューネが言う
「…時間が無い 行くぞっ!」
リジューネが向かう フォーリエルがハッとして剣を構え直す
ローレシア帝国 結界端
ガイが一息吐く ラーニャが回復魔法を施しながら言う
「それでー?何か名案が浮かんだりした訳?考えながら戦ってるんでしょう?戦ってると神経が研ぎ澄まされて 考えが纏まるだなんて 信じられないけどー?」
ガイが言う
「うむ… 実は」
ラーニャが注目する ガイが言う
「神経が研ぎ澄まされ 考えが纏まった結果 分かったのだ …この戦いの中において 難しい事を考えている余裕など まったく無いという事が!」
ラーニャが衝撃を受け焦って言う
「なぁっ!?」
ラーニャの回復魔法が失敗し破裂する ガイが痛がって言う
「痛いっ!ラーニャ殿!?」
ラーニャが焦って言う
「きゃぁっ ご、ごめ… だ、だってぇ!」
ローレシア城 機械室前
ザッツロード6世がハッとして向く ベハイムが言う
「リジューネ陛下!」
リジューネがベハイムを見て言う
「クラウザー?ザッツロード王子も そこで何をしている?」
ザッツロード6世が言う
「リジューネ陛下、我々は申し伝えたい事があり リジューネ陛下を お待ちしていました!どうか!」
ベハイムがテスクローネを見て言う
「テスクローネ殿…」
ザッツロード6世が疑問して テスクローネと後ろのフォーリエル その後ろのリジューネの違和感に気付く ベハイムが同様に気付きつつ リジューネへ向いて言う
「リジューネ陛下 テスクローネ殿に 何をご依頼なされたのですか?」
リジューネが言う
「気になるか?クラウザー そう言えば、お前は しばらく頭を冷やすと言っていた割りに どこかへ出向いていた様だったが?また私の期待を裏切るつもりか?」
ベハイムがハッとして言う
「そ… それは」
ザッツロード6世が言う
「リジューネ陛下!クラウザー殿は リジューネ陛下へ忠誠を誓っておられるのです!それなのに!」
ベハイムが焦って言う
「ザッツロード王子っ その事は!…それより リジューネ陛下 教えて下さい テスクローネ殿の大切なお友達に剣を向け 彼にどの様なプログラムを行わせるおつもりです?」
ザッツロード6世がベハイムの言葉に驚き リジューネの手元を見る リジューネが短剣をフォーリエルの背に当てている ザッツロード6世がハッとしてリジューネを見る リジューネが微笑して言う
「目敏いなクラウザー 気付いたのならそこを退くが良い 私は急いでいるのだ」
ザッツロード6世とベハイムが動揺して道を空ける リジューネがテスクローネへ視線を向ける テスクローネが一度目を伏せてから歩き出し 扉の前で顔を向けずに言う
「リジューネ陛下は ローレシア帝国の」
リジューネが短剣を押し付ける フォーリエルが思わず呻く
「うっ!」
テスクローネがハッとして黙り 機械室の扉を開く ザッツロード6世とベハイムが顔を見合わせる リジューネが機械室の扉の前に立って言う
「王子… お仲間の者たちが 結界の端に居るそうだな?余り 離れて居らぬ方が 良いのではないか?仲間として…」
リジューネが機械室へ入り扉を閉める ザッツロード6世が扉を見たまま疑問し ベハイムが考える
ローレシア帝国 結界端
ヴィクトール11世が笑顔で居る ミラが不満そうな顔でヴィクトール11世の頭をフード越しに撫でながら言う
「これで… 本当に回復魔術より効くって言うの?」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!僕はいつも こうやってシリウスに疲れを癒してもらってたんだ!ついでに 『良くやったな』 って言って貰えると嬉しいんだけど!?」
ミラが衝撃受け 嫌がりながらも言う
「え!?えっと… よ… 良く…頑張りましたっ …これで良い?」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!それでも良いよ!後 えらいえらいって付けてね!?」
ミラが更に嫌がりながら言う
「うぅう~っ …え、…えらい えらい…」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!それでも良いや!それじゃ 全部繋げて もっと優しく!愛情も込めてね?それからー」
ミラが怒って言う
「ああーっ!もう!これなら普通に回復魔術使った方が楽よ!」
ヴィクトール11世が首を傾げて言う
「え?そうなの?僕はこっちの方が効くし 嬉しいし 魔力も使わないんだから 効率的で良いと思うんだけど?」
ミラが怒って言う
「魔力は使わなくても 他のいろんな負担がかかるわよ!馬鹿っ!」
ヴィクトール11世が衝撃を受け慌てて言う
「あーっ!駄目だよ!馬鹿じゃなくて 馬鹿猫って言ってくれなきゃ~!」
ミラが怒って言う
「いい加減 人になりなさいよ!」
ヴィクトール11世が言う
「えー!?だって 猫だもんー」
ミラが怒って言う
「何処がよ!?ザッツより大男だって言うのに!少しはヴィクトール13世様を見習ったらどうなの!?」
ヴィクトール11世が思い出すように考えてから気付き 笑顔で言う
「13世か!懐かしいなぁ~ 彼も可愛い猫だったよね!かれこれ何十年になるのかな?元気にしてるかなぁ?立派な猫になってると良いんだけど…」
ミラが怒って言う
「だから!何処が猫だって言うのよ!?」
【 ローレシア城 機械室 】
研究者Tが振り返って言う
「リジューネ陛下 …どうやら 説得の方は成功されたようですね?」
リジューネがテスクローネへ視線を送る テスクローネが視線を受け一度逸らしてから仕方なく操作盤へ向かう リジューネが言う
「テスクローネ殿は 予定通り 説得に応じてくれた」
研究者Tが微笑して言う
「流石は アバロンの…」
リジューネが研究者Tへ睨みを効かせる 研究者Tが微笑して言う
「おっと… 口が勝手に 気を付けませんといけませんね」
リジューネがふんと視線を逸らしフォーリエルへ向き意識を集中させる フォーリエルが舌打ちをする テスクローネが視線を向けないままに顔を顰めモニターを見上げてから 周囲にプログラムを発生させる テスクローネのプログラムがモニターに転送され流れる フォーリエルが表情を悩ませ 背に突きつけられた短剣を気にする リジューネが小声で言う
「この部屋にある機材は ローレシア帝国に張られている結界は勿論 人々の生活に無くてはならぬ 全てを司っている 無駄な足掻きを行い それらを傷付ける様な馬鹿な真似はするな」
フォーリエルが表情を顰めて言う
「ならいい加減 背中のモンをどかしてくれねぇか?そんな場所じゃ 暴れて逃げ出したりも出来ねー …それが分かって 無茶するほど俺は馬鹿じゃねーんだぜ?」
リジューネが言う
「それでも外す事は出来ない… 研究者T!テスクローネ殿のプログラムを 確認しているだろうな?」
研究者Tが笑んで言う
「はい、勿論です」
リジューネがテスクローネを見て言う
「聞こえていたか?テスクローネ殿?」
テスクローネがムッとして言う
「下品なハッキングには とっくに気付いています!ハッキングとも呼べぬ 堂々とした接続に 苛立たされているのですからっ ミスを起こさない為にも これ以上… その手を強めたら許しませんよ!?」
リジューネが軽く笑んで言う
「ふっ… 研究者Tは 貴殿のプログラムにミスが無いかを確認しているのだ 重要なプログラムでは仕方もあるまい?そう 気を荒立てるな」
テスクローネが 間を置いて言う
「…範囲を狭めるだけでも 消費エネルギーを減らす事は可能です 人々に避難を行わせるべきでは ないのですか?」
リジューネが言う
「例え 全ての民を助けた所で 新世界へ転送させる事が出来る人数は限られている …この結界縮小における人選は …転送人数への対応とも取れるのだ」
テスクローネが言う
「転送装置の能力を上げる事は きっと可能です 方法はこれから調べるにしても 今その人選を行うべきでは 無いのでは?今は 可能な限りの人々をっ!」
リジューネが言う
「後の混乱を最小限に収める為にも 今こそ切り捨てる… 転送装置の能力を上げるなど その研究をする時間も エネルギーも無いのだ」
テスクローネが振り返って言う
「しかし!」
テスクローネの周囲のプログラムが消える リジューネが素早く短剣をフォーリエルの背から首へ移動させテスクローネへ見せ付けて言う
「話は終わりだ 作業を続行させろ テスクローネ」
フォーリエルが歯を食いしばって言う
「…っ ちくしょぉ…っ」
リジューネが短剣を押し付ける フォーリエルの首に僅かに傷が出来血が滲む テスクローネがはっとして悔やみつつ向き直り プログラムを再開させる リジューネが僅かに力を抜く フォーリエルが俯く テスクローネがモニターを見上げ困惑した後 強く目を瞑ってプログラムを流す 研究者Tが微笑して言う
「結界縮小プログラムが開始されました リジューネ陛下」
リジューネが言う
「うむ、引き続き 確認作業を頼むぞ 研究者T」
研究者Tが微笑して言う
「心得ております」
テスクローネが悩み苦しんでいる フォーリエルが見えないながらも感じ取り悔しがっている
ローレシア帝国 城下町
道行く人が違和感を感じ周囲を見渡す
ローレシア帝国 結界端
機械兵と戦っている ガイ、ヴァッガス、ヴィクトール11世が違和感を感じ周囲を見て 仲間同士で顔を見合わせる 支援魔法を送ろうとしていた ラーニャ、ミラが同じく顔を見合わせる ロドウに回復魔法を掛けていたレーミヤが空を見上げ ロドウが言う
「何だろう?何だか… 結界の内側なのに…」
【 ガルバディア城 玉座の間 】
シリウスBが目を開く
【 ローレシア城 機械室 】
ソルベキアの研究者が言う
「バリアプログラムへの供給エネルギーを50%カットします」
ソルベキアの研究者が言う
「バリアプログラムの縮小開始を確認 縮小率3%…5,6…」
テスクローネが唇をかみ締めて俯き悔しそうに思う
『何の罪も無い人々を… 私は… この手で…っ』
テスクローネが操作盤に置いている自分の手を見つめる その手の近くに小さなプログラムが発生する テスクローネが気付き疑問する 小さなプログラムが動きテスクローネが読解する
『お前のプログラムを 気付かれぬ様に鈍化する 彼らを信じ 作業を続けろ』
テスクローネが一瞬呆気に取られた後 同じ様に小さなプログラムを発生させる
『彼らとは?貴方は 誰です?』
ローレシア帝国 結界端
機械兵と戦っている ガイ、ロドウ、ヴァッガス、ヴィクトール11世 彼らの脳裏にシリウスBの声が響く
『ガイ、ヴァッガス、ロドウ… ついでに ヴィクトール11世』
ヴィクトール11世が衝撃を受けて言う
「ついでっ!?」
メテーリが疑問してガイたちを見る
ローレシア城 機械室
ソルベキアの研究者がカウントアップを続けている
「縮小率10%を確認 12,13,14…」
リジューネが短剣の感触を確認しつつテスクローネを見る テスクローネが緊張の面持ちで視線だけをリジューネへ向ける 研究者Tが疑問して言う
「ふむ… 意外でしたな エネルギーのカットを一度に行っても 縮小率は急激には 起きないとは…」
リジューネがテスクローネへ視線を強める テスクローネがハッとして視線を正面へ戻す 研究者Tが操作を行って言う
「ああ…なるほど 結界維持システムは エネルギーを一定量蓄積させ 結界を放っているのか… これなら確かに…」
リジューネが納得して強めていた視線を和らげる テスクローネが緊張を少し緩和して考える
『研究者Tが もし、この作業に 結界維持システムを経由していないと言う事へ 気付いてしまったら…っ』
テスクローネの脳裏にシリウスBの声が響く
『その心配は不要だ 奴の確認しているプログラムは 既に私の擬似システムプログラムへと すり替えてある』
テスクローネが驚く テスクローネの脳裏にシリウスBの声が響く
『奴よりも 後ろの女帝に気を付けろ 彼女もまた 我らガルバディアの力を凌ぐ 自然の力を併せ持つ者 アバロンの民…』
リジューネが何かに反応し視線を強める テスクローネがハッとして言う
「リジューネ陛下っ」
リジューネが答える
「何だ」
テスクローネが言う
「私は… 命令通りプログラムを行っています 今からではプログラムの取り消しも出来ない …いい加減 フォーリエルの首から その物騒なものを退かして下さい」
リジューネが僅かにフォーリエルの首から短剣を離す フォーリエルが少し緊張を解く リジューネが手を止めて言う
「…いや、まだだ」
テスクローネが疑問する リジューネが言う
「私の直感が そう囁いている」
テスクローネが驚く リジューネが言う
「テスクローネ 何かを企てようと言うのなら この者の命が無い 肝に銘じておけ」
テスクローネが目元を緊張させつつ モニターへ向き直り目の前を強く見つめる
城下町
ガイたちが人々を誘導して叫ぶ
「急げっ!町の中央 古き教会よりローレシア城側へと 避難するのだ!」
ロドウが子供たちを大勢抱えて言う
「時間が無いよ!荷物なんて持たないで!早く避難するんだよ!」
ヴァッガスが道に座り込んでいる老人に言う
「生きてさえいれば!もう一度戻って来れる!俺が機械兵どもをぶっ倒して 必ず取り返してやるぜ!だから 俺を信じて 今は避難するんだ!」
メテーリが子供たちの手を引いて言う
「信っじられないっ!リジューネ陛下は この子達まで見捨てようというの!?」
ヴィクトール11世が物陰を覗き込み 笑顔で言う
「ほらっ み~つけた!」
ヴィクトール11世の視線の先 猫が子猫を守ろうと威嚇している ヴィクトール11世が手を伸ばすと 猫が引っ掻く ヴィクトール11世が悲鳴を上げて言う
「ニャーッ!ニャにするの!?僕は君の仲間だよっ!?」
猫が威嚇する
ローレシア城 機械室
ソルベキアの研究者がカウントアップを続けている
「…57、58 縮小率 60%を確認」
研究者Tが言う
「ふむ、結界維持システムのエネルギーが もうじき無くなります 縮小率のカウントは もう必要無いでしょう」
リジューネが言う
「城下の様子をモニターに出せ」
テスクローネがはっと焦る リジューネが言う
「…どうした?城下の中央 ローマリック教会に設置してある 監視モニターの映像を出せ …テスクローネ」
テスクローネが一瞬間を置いて言う
「…ローレシア帝国の監視モニターは ソルベキアの管轄です 私は… 縮小プログラムの調整で手が離せません」
リジューネが言う
「研究者T… いや、誰か ソルベキアの管轄であるのなら 映像を繋ぐ事くらい出来よう?」
ソルベキアの研究者が操作を行って言う
「ローマリック教会の監視モニターの映像を メインモニターへ繋ぎます」
テスクローネが焦る リジューネがモニターを見つめる モニターに黒い羽がドアップで映る リジューネが視線を強める 黒い羽が動き カラスがモニターを覗き込む
城下町 ローマリック教会
カラスが監視カメラのレンズに向かって何度も鳴く 監視カメラが位置を動かすと それを追い駆けてレンズを突っ突いて何度も鳴く
ローレシア城 機械室
リジューネが怒って言う
「ええいっ!もう良い!映像を消せ!」
モニターの映像が消される フォーリエルが軽く笑って言う
「ぷっ はは…っ カラスの巣の中にでも カメラを置いちまったのかぁ?」
リジューネがムッとして フォーリエルを脅している短剣を近づける フォーリエルが一瞬表情を怯ませた後苦笑する
城下町 ローマリック教会
カラスが監視カメラを覗き込んだ後 城下を見渡し ローレシア城を見上げる メテーリが子供たちの手を引いたまま何かに気付き 空を見上げ ローマリック協会のカラスが居た場所を見上げるが 何も見えない メテーリが首を傾げる
ローレシア城 機械室
ソルベキアの研究者が言う
「縮小率100%を確認」
テスクローネが言う
「バリアプログラム… 結界の範囲は 以前の半分 ローレシア城を中心とした 半径50キロ圏内になりました」
リジューネが言う
「ご苦労」
フォーリエルが責任を感じて目を伏せる テスクローネが振り返り リジューネを見て言う
「リジューネ陛下… いつまで私の相棒に 剣を向けているつもりですか」
リジューネが反応すると同時に テスクローネがリジューネの手に雷撃を与える リジューネが一瞬悲鳴を上げると短剣が落ち テスクローネが加速してリジューネの手から落ちた短剣をキャッチし そのままリジューネへ怒りの視線と共に向けて言う
「次の時は 容赦しません」
リジューネが呆気に取られる フォーリエルが驚きつつも微笑しリジューネから離れ テスクローネの手から短剣を取り リジューネへ柄を向けて言う
「その時には テスじゃなくって 俺がアンタに剣を突きつける筈さ」
リジューネが一瞬間を置いてから鼻で笑い言う
「ふっ… どうかな?今の所は 負け犬の遠吠えにしか聞こえぬが?まぁ、楽しみにしておいてやろう」
リジューネが短剣を受け取る フォーリエルが軽く笑う テスクローネがフォーリエルへ向いて言う
「行こう フォーリエル」
フォーリエルがテスクローネを見るとテスクローネが歩き出す フォーリエルがリジューネを見てから テスクローネに続く リジューネが2人を見た後 振り返って言う
「被害状況を確認しろ」
城内 通路
テスクローネとフォーリエルが通路を歩く フォーリエルがテスクローネを見て 表情を落とし周囲へ視線を泳がせてから意を決して言う
「テス 悪ぃ…」
テスクローネが疑問して振り返る フォーリエルが立ち止っていて言う
「俺のせいで… お前に あんなプログラムやらせちまって…」
テスクローネが言う
「フォーリエル…」
フォーリエルが悔しそうに俯いて言う
「俺が守ってやるとか 言っときながらっ …俺、全然駄目だな」
テスクローネが苦笑し近くへ行って言う
「フォーリエル 初めて体感した 本物の大剣使いの剣術は どうだった?」
フォーリエルが一瞬呆気に取られてから 思い出しながら言う
「あ?…ああ、えっと… 剣術そのものは 長剣使いと変わらなかったぜ 多分 リジューネ陛下は長剣使いとの練習を 多くやって来たんだと思う 接近戦であっても 距離のある相手からの攻撃に備えるような回避で… ああ、そうなんだよ 回避であって 防御じゃねぇんだ 普通の長剣使いは 防御が主になって 隙を見ての反撃が攻撃なんだけど リジューネ陛下は違ぇんだ 常に攻撃で、防御は二の次三の次 いや、防御は考えねぇで ひたすら突っ込むみてぇな勢い任せの攻撃なんだ …まさか 女帝様があんな剣術だとは思わなくってよ …油断した」
テスクローネが微笑して言う
「うん、私も驚いたよ でも、フォーリエルは十分対応していた」
フォーリエルが溜息を吐いて言う
「対応してるだけじゃ勝てねぇんだ どんどん追い込まれて…」
フォーリエルの脳裏に 追い込まれたフォーリエルの首に剣を向けるリジューネの姿が思い出される テスクローネが苦笑して言う
「それでも、やっと本物の大剣使いの剣術を見る事が出来たんだ フォーリエルが真似出来るようになるのも 時間の問題かな?」
フォーリエルがテスクローネの言葉に苦笑して言う
「一度きりじゃ ちょっと厳しいかもな あんな突っ込み重視の戦いは 分かってても簡単に真似出来るもんじゃねぇし…」
テスクローネが言う
「そう… しかし、私は フォーリエルなら出来ると思うよ」
フォーリエルが顔を上げ微笑して言う
「おうっ …お前が言うなら きっと出来る 頑張るぜ!」
テスクローネが軽く微笑んで言う
「うん!」
フォーリエルが表情を和らげ軽く笑って歩き出す テスクローネの横へ来て視線を逸らして言う
「…あの門の外に出るのは 気が重いな」
テスクローネが門の方を見て言う
「分かっている事は 結界として見慣れている バリアプログラムが 以前よりずっと近くに見える事 …そして」
フォーリエルがきつく目を閉じる テスクローネが門を見据えて言う
「私に声を掛けてくれた シリウスBの言葉を確認出来る筈だ」
フォーリエルが疑問して言う
「シリウスB?」
テスクローネが門を開く テスクローネとフォーリエルが城から出て来る ガイたちとザッツロード6世たち 大勢の人々が城へ向いて立っている
ローレシア城 機械室
リジューネがモニターを前に目を丸くしている
城門前
城から出て来た テスクローネとフォーリエルが人々の中に人物を見つけ向かう ザッツロード6世とガイたちが同じくテスクローネたちへ向かい 双方が立ち止り テスクローネが言う
「結界の縮小を止められず 申し訳ありませんでした」
ガイが言う
「貴殿のせいではない シリウス様より 話は聞き及んでいる」
フォーリエルがテスクローネとガイを見てから言う
「シリウス様… テス、お前はさっき シリウスBって」
ヴァッガスが言う
「この世界のガルバディアに居る この世界のシリウス様の事だぜ」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「この世界の… シリウス様 シリウスB…」
ザッツロード6世が来て言う
「まさかリジューネ陛下が 人々を切り捨てようとするだなんて」
ベハイムが言う
「リジューネ陛下は 以前より 転送装置の容量を超える このローレシア帝国に住む人々の数に 頭を悩ませて居られました 今回の事は それもあっての事かと」
テスクローネが言う
「結界を縮小する以上 例え今回人々を助けようとも ローレシア帝国に残されている食料は少ない 転送の容量を超え 残される彼らを飢え死にさせるくらいなら …と そう考えたのかもしれませんね」
ザッツロード6世が言う
「クラウザー殿 転送装置の性能は 上げる事が出来ると!」
ベハイムが言う
「はい しかし それでも 全ての人数を転送させる事が可能かどうかは… そして、ガルバディアの装置である その機械を改良する事が 果たして、私の力で可能かどうかは 正直定かではありません」
メテーリが言う
「シリウス様は 何て言って来たのよ!?助けるだけ助けて それ以上は 何もしてくれないって言うの!?」
ガイが言う
「全てをシリウス様に委ねる訳には行くまい?我々は 我々の力で生き抜かねばならない」
メテーリが言う
「けどっ!私たちで生きられない世界で どうやって生き抜けって言うのよ!?」
ロドウが苦笑して言う
「この世界に悪魔力をばら撒いてしまったのは 僕たち人だからね 責任はあるんだと思う」
メテーリが言う
「でもっ!」
ヴァッガスが逆方向へ向かおうとする メテーリが気付いて言う
「ヴァッガス!?何処行くのよ!?リジューネ陛下に申し立てに行くんじゃなかったの!?」
ヴァッガスが言う
「俺らの敵は リジューネ陛下じゃねぇ… リジューネ陛下を倒したって この世界は救われねぇんだ だったら 俺は俺の敵を一体でも多く倒す… あの土地を 踏み荒らされたくねぇからな」
メテーリが驚き ヴァッガスの向かおうとする先を見る 結界の外になってしまった農地に機械兵が踏み入っている 多国籍部隊の隊員らがヴァッガスを見送り悔しがって言う
「俺たちは 何も出来ねぇのか…っ!?」
「同じ多国籍部隊だってぇのにっ 守られてばっかで… 何もっ」
「俺だって戦いたい!けどっ …俺たちには 隊長方の様な 機械兵と戦える力は」
隊員らがはっと気付き 残ったガイたちへ向き 駆け寄って来て言う
「ガイ隊長!教えて下さい!」
「俺たちも ガイ隊長やヴァッガス副隊長…ロドウ副隊長のような 力がっ あの機械兵をぶっ倒す力が欲しいです!」
「お願いします!隊長!俺たちにも 隊長方と同じ様に 俺たちの生きる場所を守る その力を与えて下さい!」
ガイたちが驚き困って顔を見合わせる 隊員らが何度も呼びかける メテーリがガイを見て言う
「ど、どうするの…!?」
ガイが困って言う
「ど、どうと言われても」
隊員たちが言う
「も、もしや ローンルーズに!?」
「ローンルーズに行けば 隊長方の様な力を得られるのですか!?」
「いや、もしかしたら 機械兵ファクトリーかもしれん!」
ガイが焦って言う
「ま、待て!諸卿!落ち着くのだ!」
隊員たちが言う
「落ち着いてなど居られません!」
「俺たちの生きる土地は!もうここしか無いのです!こんな狭い場所では 人々は生きて行けません!」
「力を持つ隊長方には 今の俺たちの気持ちなんて 分からないんだ!俺達だって命を掛けて戦う 多国籍部隊の隊員です!」
ガイが困って言う
「し、しかし…」
隊員たちが言う
「ガイ隊長がなんと言おうと 俺は力を探しに行きます」
「俺もだ!もうこれ以上 待たされるだけなんて 耐えられねぇ!」
「よし、では皆で手分けをしよう ローンルーズへ向かう隊と 機械兵ファクトリーへ向かう隊だ」
「俺は機械兵ファクトリーへ行く!ガイ隊長たちが力を手に入れたのは 機械兵ファクトリーを潰しに行った時だ それ以前のローンルーズへの偵察の時には 何も無かった!」
「なら 俺もだ!のんびりしている時間なんてねぇ!」
ロドウがガイへ向いて言う
「ま、まずいよガイ!今この結界から出たら 周囲は機械兵で埋め尽くされているんだから!」
ガイが言う
「わ、分かっているが 彼らが私の言葉を…っ」
隊員らが振り返って言う
「ガイ隊長 行って参ります」
隊員らが歩き始める ガイが焦って言う
「ま、待て諸卿!力は!…力は ガルバディアにある!」
ロドウとメテーリが焦って叫ぶ
「「ガイっ!?」」
ガイが言う
「諸卿の決意が それほどまでと言うのであれば …このメテーリ副隊長が 諸卿をガルバディアへ送り届けよう!」
メテーリが衝撃を受けて叫ぶ
「私ぃいーっ!?」
【 ガルバディア城 城門前 】
メテーリが両手両膝を着き 息を切らして言う
「も… もう駄目っ 苦手だって言うのに 回数分けして 多国籍部隊を全員だなんて… もう立っても居られないわ…」
ロドウが苦笑して言う
「メテーリは良く頑張ったと思うよ でも、相変わらず」
ガルバディア城城門前の壁に激突痕が大量にある
玉座の間
シリウスBが真っ直ぐに見据えて言う
「勝手な事を してくれたものだ」
ガイがシリウスBの前で言う
「申し訳ありません シリウス様 …しかし、こうするしか 彼らがあのまま 結界の外に一歩でも出れば」
ヴィクトール11世が首を傾げて言う
「あれはしょうがないよ 僕がガイの立場でも 同じ様にしてたと思う …まぁ 僕はシリウスの猫だから 人々を先導するなんて事は 無いだろうけどね?」
ヴィクトール11世が笑顔になる シリウスBが横目にそれを見てから ガイへ向く ガイが言う
「彼らへは 既に私から 力を得るためには 魔物の遺伝子情報を その身に受けるという事を説明し 了承させてあります」
シリウスBが言う
「その者らの中には 周囲の状況に流され 己の意思が固まらぬままに ここへ来た者も多い 人とは 弱き者であるからな」
ガイが言う
「それでも 時には自分や家族 仲間たちの為 決意せねばならぬ時があります 彼らは 1人の人であると共に それらを守る戦士なのです シリウス様 どうか 力なき彼らへ 我らの神 シリウス様のお力添えを!」
シリウスBが一瞬目を細め言う
「…私は お前たちの神ではない」
ガイが言う
「この世界に生きる 我らの神は 貴方を置いて他にありません」
シリウスBがガイを見る ガイがシリウスBを見つめる ヴィクトール11世が微笑する シリウスBが目を伏せて言う
「決意…か」
ガイがシリウスBを見る シリウスBが伏せていた視線を上げて言う
「力を得れば 彼らはお前たち同様に 人とは一線を引く者となる そして 彼らが守ろうとする人々にすら 忌み嫌われる可能性もある」
ガイが言う
「それが この世界に生きる 我らに残された道であるのなら 彼らも それを受け入れるでしょう そして、少なくとも ローレシア帝国に在する者たちは 世界の為に戦う彼らを 受け入れてくれる筈です」
シリウスBが言う
「…どうだろうな?」
ガイが微笑して言う
「ローレシアに留まる人々は 新世界ではなく この世界の故郷へ戻る事を 強く望んだ者たちの子孫です 私は そう信じております」
【 ローレシア城 玉座の間 】
リジューネが振り返って言う
「暴動は起きていないだと!?」
大臣らが言う
「はい、現在 結界の縮小に対しての 人々の暴動は起きておりません」
「結界の縮小を行ったその時は 多くの民が ローレシア城の城門前に募ったとの報告は入っておりますが 後に 皆退散して行ったとの事です」
リジューネが考えて言う
「どう言う事だ…?何の警告も無しに 住む場所や土地を奪われ等したら 暴動が起きる事など当然の事 だと言うのに… はっ!」
リジューネが顔を上げて言う
「奴らはどうした!?多国籍部隊の者たちは!?奴らは あの機械兵とすら 戦える力を持つ 結界の縮小程度で その命を落とす事などあらぬ筈だ!」
大臣らが慌てて手元の資料を確認して言う
「多国籍部隊は 結界縮小の折 ローレシア城の門前に募った人々の先頭に居った事が 報告書にございます …が その後 皆姿を消したと」
「唯一残っております ヴァッガス副隊長は ザッツロード6世王子らの支援を受けつつ 現在も結界端にて 機械兵との戦闘を行っておるとの報告です」
リジューネが言う
「多国籍部隊の者が 姿を消したと言うのはどう言う事だ?ヴァッガス副隊長以外の隊長らの姿は!?」
大臣Aが言う
「確認出来ておりません」
リジューネが言う
「直ぐに確認しろ!奴らの動きは逐一報告せよ!」
大臣らが返事をする
【 ガルバディア城 玉座の間 】
多国籍部隊隊員らがシリウスBの前に居る シリウスBを真っ直ぐ見据える者 困惑する者 怯える者 シリウスBが彼らの様子に目を細める ガイが言う
「皆、こちらに居られるのが この世界に生きる 我らの神 シリウスB様だ」
多国籍部隊の隊員らが様々な面持ちでシリウスBを見て言う
「この世界の…我らの神?」
「シリウス B?」
「我らの神は 新世界に行ってしまったのでは無かったのか?」
ガイが言う
「そして、力なき我らに 力を与えて下さる ガルバディアの王である」
多国籍部隊の皆が息を飲んでシリウスBを見る シリウスBが一度目を閉じてから 改めて多国籍部隊隊員らを鋭く見て言う
「人の力を超えると共に 人ではあらぬ者へと その身を変えられる… 決意が持てている者は たかが38%か… とは言え その38%の決意に 変わりはあらぬ様子 私は そのお前たちへのみ 力を与えよう」
ガイがシリウスBへ振り返り言う
「38%!?シリウス様っ たった38%… 65名余りの勇士では ローレシア帝国は守りきれません」
シリウスBがフォーリエルへ視線を向けて言う
「その中においても お前は別だ フォーリエル」
フォーリエルが驚いて言う
「え!?な、何で俺の名前をっ」
シリウスBが言う
「お前がその身に 既に備えている力 記憶に深く刻まれた者の力を 再現するプログラム… 中々面白い」
フォーリエルがハッとして言う
「プログラム…?もしかしてっ テスが…っ!?」
シリウスBが微笑して言う
「私が新たな力を上書きしてしまっては その能力が失われてしまう お前は今のままでも十分だ よって38%の勇士からは 除名する …残るは 64名 他の者は わざわざ名を呼ぶ必要もあるまい?己の判断で この場所を立ち去れ」
多国籍部隊隊員らが顔を見合わせる 後方に居た隊員が怯えつつも遂に逃げ出す様に走り去って行く それを切欠に怯えていた隊員らが顔を見合わせた後逃げ去る それを追い駆ける様に隊員が去る 強く目を閉じ悔やみながらも立ち去る隊員 苦しみ悩んでいる者の肩を叩き苦笑して共に立ち去る隊員 半数近くの隊員が立ち去る
ガイが疑問してシリウスBへ向く シリウスBが閉じていた目を開いて言う
「残ったのは 79名 決意を改め その足を止めたか ロイズ、ケイ、メレイサ、レイデッド、ビリーズ… トレイス、ファリオル、スレイン、シュロッズ」
呼ばれた隊員らが驚きながらシリウスBを見る シリウスBが微笑して言う
「お前たちに相応しく これからの多国籍部隊に役立つ能力がある 歓迎しよう だが、カリン、リックス、ソシエーダ」
カリン、リックス、ソシエーダと彼らの仲間が驚く シリウスBが向いて言う
「お前たちをリーダーとする その他7名 この戦いは お前たちの求める 人々からの賞賛が得られるものにはならない お前たちは今のままのお前たちに出来る事で それらを求めるが良い」
カリン、リックス、ソシエーダが驚きに呆気に取られ リックスが言う
「俺たちの… 頭の中まで分かっちまうのか…!?」
ソシエーダが言う
「なるほど… これが神の力か」
カリンが俯く リックスがカリンの頭をクシャリと撫でて言う
「行こうぜ?俺らは駄目だってよ」
ソシエーダが苦笑して言う
「決意が足りなかったみたいだな お互いに」
3人が立ち去ると3人の仲間たちも共に立ち去る シリウスBが見つめているとガイが苦笑して言う
「流石はシリウス様」
シリウスBが苦笑して言う
「彼らは多国籍部隊において 己の欲望に流され 何度もお前たちの邪魔を企てる所であった… 決意の有無ではなく 奴らの欲が 私には計り知れなかったのだ …これで、残るは69名 お前の言う通り 少々心許無いか?」
ガイが呆気に取られた状態から苦笑し言う
「それでも、我らには 我らの神が付いておられます」
シリウスBが悪戯っぽく微笑して言う
「余り 私の力を過信するな 我らは所詮 神と呼ばれただけの 人に過ぎん」
ガイが微笑する シリウスBが多国籍部隊隊員らへ向いて言う
「ローレシア帝国にて お前たちの仲間 ヴァッガスが無茶をしている 力を与えたお前たちを 急ぎ向かわせてやらねばならん」
シリウスBが周囲にプログラムを発生させる 多国籍部隊隊員らが一瞬驚き 強く見つめる
【 ローレシア帝国 結界外 】
ヴァッガスが必死に機械兵と戦っている 機械兵を倒しても倒しても次々と現れる ラーニャが叫ぶ
「ヴァッガス!無茶しないで!1人で全部なんて倒せないんだから!」
ミラが叫ぶ
「体力も限界でしょ!一度戻りなさい!」
ヴァッガスが振り返って言う
「レーミヤ!何やってんだ!?早く加速の魔法を!」
レーミヤが言う
「これ以上は駄目よ!ヴァッガス副隊長!お爺さんの畑を守りたいのは分かるけど 一人では守りきれないわ!」
ヴァッガスが機械兵の攻撃を受け止めて言う
「う、うるせえ!俺は守ってやるって約束したんだっ!ガイたちが 多国籍部隊の皆と帰って来るまでは… 何が何でも守り通してやらぁあ!」
ヴァッガスが機械兵の攻撃を流し 攻撃するが避けられる ヴァッガスが地に叩き付けられ言う
「グッ!」
ラーニャたちが焦って ラーニャが叫ぶ
「ヴァッガス!」
ミラが叫ぶ
「危ないっ!避けて!」
ヴァッガスが振り返った先 機械兵が武器を振り下ろす ヴァッガスが表情を焦らせ 強く目を瞑る 激しい打撃音 ヴァッガスが目を開くと目の前にソードバリアが張られている ハッとして振り向くと メテーリがヴァッガスの前でソードバリアを放っている ヴァッガスが驚き叫ぶ
「メテーリ!?ば、馬鹿野郎!何で結界の外に!?」
メテーリが怒って叫ぶ
「馬鹿野郎はアンタでしょ!?馬鹿ヴァッガス!アンタがやられちゃったりなんかしたら!私… 私は ガイや皆に何て言ったら良いのよ!?」
ソードバリアに亀裂が入る メテーリが悲鳴を上げる
「キャァッ!」
ヴァッガスが焦って言う
「ば、馬鹿はお前だ!お前の魔法なんかじゃ!」
声が届く
「そうだ、機械兵との戦いにおける魔法は 私に任せてもらおう!」
メテーリとヴァッガスが驚き見上げると同時に メテーリのソードバリアが壊され機械兵の武器が近づく メテーリが目を瞑って顔を逸らすとその直前に 強力なソードバリアが張られ機械兵の武器が弾かれる メテーリが驚いて見る メテーリの前にソシエーダが軽やかな移動魔法で現れる ヴァッガスが驚いて言う
「ソシエーダ!?お前!?」
ソシエーダが振り返り微笑して言う
「驚いたか?剣を携えていた私が 魔法を扱うとは… それも シリウス様のお力添えを得て」
メテーリとヴァッガスが驚きの表情で ソシエーダを見つめる
回想
多国籍部隊隊員らがプログラムを受けている ソシエーダが出入り口付近でその様子を伺い視線を下げて悩んでいる シリウスBが目を開き言う
『戻ったか』
ソシエーダがハッとして出入り口から玉座の間に現れる シリウスBが顔を向けて言う
『お前に関しては 別のものが お前を再びこの場所へ 戻らせるのではないか… と思っていた』
ソシエーダが一度視線を下げてから 再びシリウスBへ向き直って言う
『私は… 私は剣士の真似事をしているが 本当は…』
シリウスBが微笑して言う
『多国籍部隊にて お前の事に気付いているのは 唯1人 同じ魔法使いの彼女だ』
ソシエーダが言う
『…メテーリ 副隊長』
シリウスBが笑んで言う
『彼女は回復魔法に秀でている お前だけが 多国籍部隊にて 前線で戦える魔法使いだ その力 忍ばせておくのは惜しい』
ソシエーダが顔を上げる シリウスBが言う
『決意は 固まったか?』
ソシエーダが表情を強め腰にある剣を鞘ごと取り 床へ落とす シリウスBが微笑してプログラムを発生させる
回想終了
ソシエーダが微笑して言う
「これからは 多国籍部隊唯一の前線魔法使いとして 私は戦う どうだ私の力は?ヴァッガス副隊長?」
ヴァッガスが呆気に取られてから笑んで言う
「おう!助かるぜ!」
ソシエーダが笑む 多国籍部隊隊員らが移動プログラムで現れ ガイがヴァッガスを振り返って言う
「遅くなったヴァッガス」
ロドウが笑顔で言う
「ここからは僕たちに任せて 馬鹿ヴァッガスは少し休んでて?」
ヴァッガスが衝撃を受け焦って言う
「お前!?大体なんでお前らがそんなに遅ぇんだよ!?さっさと帰って来て助けろよ!」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「まぁまぁ、お陰で 仲間の危機に誰よりも早く戻った メテーリの決意も確認出来た訳だし」
ロドウがメテーリへ向いて言う
「メテーリ、シリウス様が怒ってたよ?多国籍部隊の皆の移動を押し付けたって」
メテーリが衝撃を受ける ガイが言う
「さて、話はそこまでだ 奴らを退治せねば 折角ヴァッガスが守り通した民の土地が 奴らに荒らされてしまう」
ロドウとヴィクトール11世が頷き ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!それじゃ 皆の力を確認しよう!これから僕らと共に世界を取り戻す 仲間たちの力だ!」
多国籍部隊の隊員らが武器を構える
ローレシア城 玉座の間
大臣らが言う
「先ほど 多国籍部隊の隊員及びガイ隊長その他副隊長方を含めた 彼らの確認が取られたとの報告が入りました」
「しかも、その内 約半数の隊員が 隊長方と同等の力を持ち合わせ 結界の外で機械兵との戦いを繰り広げておるとの事です」
リジューネが言う
「多国籍部隊の隊員まで 機械兵と戦う力を得たというのか!?」
大臣Aが言う
「更に彼らは 移動魔法陣でもなく 何処からか突然現れたとの事 魔法使いの者たちが言いますに あれは対人移動魔法の様なものではないかと」
大臣Bが驚いて言う
「では彼らはっ 何処かへ向かい 機械兵と戦える力を携えて 戻って来たと!?」
リジューネが険しい表情で言う
「今更言うまでもなかろう!?奴らはガルバディアへ行き あの化け物から力を得て戻ったのだ!」
大臣らが驚き顔を見合わせてから言う
「ガルバディアの化け物… 以前リジューネ陛下やローレシア第一部隊の者たちが対面したと言う 我らの神シリウス様の 敵ではないかと見受けられる者ですな?」
「しかし、陛下 その者が多国籍部隊の者たちに力を与え ローレシアを守るために戦わせていると言うのはどう言う事でしょうか?よもや この世界の人々の為に 力を貸してくれているのでは…」
リジューネが怒って言う
「黙れっ!」
大臣らが驚いて怯える リジューネが言う
「我らの神シリウス様は 唯一無二!ガルバディアの王もまたしかりだ!シリウスBなどと言うものが 居ろう筈が無い!例え居ったとしても… あの様な者であるなどっ!」
大臣らが顔を見合わせる リジューネが言う
「奴の姿は言い伝えの破壊神ソルの姿 あれほどまでに言い伝えの通りである以上 紛う筈が無いっ …だと言うのにっ!」
リジューネが悔しそうに俯いている 大臣らが心配そうに顔を見合わせる
城下町
フォーリエルが言う
「まさか 金が無くて移動式の店にしたのが こんな形で役に立つとはなぁ?」
テスクローネが団子を焼きながら言う
「エド国の民が住んでいた土地は すっかり結界の外になってしまった あの場所に店舗を持っていたら 開店からたった数日で手放す事になってしまっていたな」
テスクローネがフォーリエルへ向き苦笑して言う
「とは言え、仕入れていた材料が切れれば 屋台は無事でも 店じまいだ 団子作りの材料として もち米が配給してもらえる筈が無いからな」
フォーリエルが残念そうに言う
「この味ともしばらくお別れになっちまうのか… 味わって食っとかないとなぁ…」
フォーリエルが団子を食べる テスクローネが苦笑して言う
「それ所か 食料にだってあり付けなくなってしまうかも知れない …多国籍部隊の彼らが ローレシア帝国周囲の機械兵を退治する事が出来れば 少なくとも 人々が飢え死にする事は無くなるだろうけど それでも エネルギーによる養分強化が出来ない以上 作られる作物は限られてしまう 限られた結界内の土地で 長年作物を育てていた土地は すっかり痩せてしまっている 養分が少なければ いずれはそれで生きる人々も…」
フォーリエルが目を瞑りたまらないと言った表情で言う
「あぁあ~っ 唯でさえ不味いローレシアの料理を 不味い材料で作るだけでなく 栄養もねぇんじゃ もう 食えたもんじゃねぇなあ!」
フォーリエルの横にリジューネが立っていて 目を閉じて咳払いをする
「ううんっ!」
フォーリエルが衝撃を受け 恐る恐る目を開く テスクローネが呆気に取られて言う
「リジューネ陛下…!?」
フォーリエルが固まっている リジューネが目を閉じたまま言う
「不味かろうが何であろうが 得られるだけ有難いと思え 我らローレシアの民とて この国の料理を 美味いと思って食べては居らぬのだ 全ては、限られた食材で 調味料すらを節約して 作らねばならぬが故 …もっとも それゆえに美味く作る方法さえ 考えはしないそうだが」
フォーリエルが呆気に取られたまま呆れの汗を掻く リジューネが目を開いて言う
「それはそうと テスクローネ殿 貴殿に頼みがあって来た」
フォーリエルが視線を強めてリジューネを見る リジューネが横目にフォーリエルを見て微笑して言う
「そう警戒をするな フォーリエル殿 少なくとも貴殿に剣を向けられる様な依頼ではない」
テスクローネがリジューネの前に来て言う
「そして、ローレシアの兵を使って 私を呼び付ける事も無い …そのご依頼は 私的なもの という事でしょうか?」
リジューネがテスクローネへ向き微笑して言う
「そうだ、この期に及んでは もはや ローレシアの王として 私に出来る事は何も無い 後は 新世界からの助けを待つばかりだ」
テスクローネが苦笑して言う
「そうでしょうか?少なくとも 今結界の外で戦っている 多国籍部隊の彼らは そうは思っていないと思いますが?」
リジューネが言う
「その答えが ここにあれば… と思って来たのだが」
リジューネが本を差し出す テスクローネが見て言う
「それは… あのローレシアの記録が記されていた 外部記録装置と同じ …しかし」
テスクローネが周囲にプログラムを発生させてから言う
「あの外部記録装置とは違い これはとても私的なものの様ですね 記す者も読む者も 一人に限られている」
リジューネが言う
「これは ローレシア帝国に唯一… 私の前に置いて唯一の女王であった エレンソルシュラ女王の日記だ」
テスクローネが意外そうにリジューネを見る リジューネが言う
「長きに渡り 不吉な女王の私物として ローレシア城にありながらも 遠ざけられていた しかし、彼女こそ 破壊神ソルの姿を確認したと言う その人物なのだ この日記を読解すれば その詳しい経緯も確認出来る筈 テスクローネ殿 この記録装置の鍵を 私に与えてはくれぬか?」
テスクローネが差し出されている日記を見つめた後 リジューネへ向き苦笑して言う
「人の日記の鍵を 開けてしまうのは気が引けますが」
リジューネが苦笑して言う
「もし、不吉な女王の呪いでも掛けられていたのなら 私へ降りかかる様にしてくれて構わぬ」
テスクローネが軽く笑った後言う
「ちなみに、そちらの報酬は?直ぐにお支払い頂けるのでしょうか?」
リジューネが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「今更、金などで得られる物も無かろうに… 無論構わぬ 一応相手が貴殿であるからにして 多少なら持ち合わせて来た」
テスクローネが微笑して言う
「お金なら足りています 最近は 小額をこつこつと貯める事にも 興味を持ち始めた所ですので」
リジューネが疑問して言う
「うん?…では 何が望みか?」
大剣と大剣がぶつかり合う 続いてフォーリエルとリジューネが顔を突合せる テスクローネが本を前に周囲にプログラムを発生させて居る 建物の裏地 テスクローネの前で フォーリエルとリジューネが演習試合を行っている 激しい金属音 フォーリエルが地面に叩き付けられ リジューネが言う
「そんな弱腰の大剣が!こんにゃくすら切れぬぞ!?」
フォーリエルが起き上がり嬉しそうに悪っぽく笑んで言う
「よく言うぜ!女帝様は こんにゃくなんか 切った事ねぇだろ!?」
リジューネがそっぽを向いて考えて言う
「…うむ そうだな 確かに無い」
フォーリエルが斬り掛かって言う
「こんにゃくは 切るもんじゃねぇえ!手でちぎるもんなんだよ!」
大剣同士がぶつかり合う リジューネがニヤリと笑んで言う
「笑止っ!国王クラスの食卓に出される時には しっかり刃物で切られておる!」
フォーリエルが舌打ちをする テスクローネが顔を上げて言う
「しかし、実際には 不恰好にはなりますが 手でちぎる方が表面積が広がり 味のまろやかさは高まりますよ リジューネ陛下は わざわざ美味しくない方法で作られたものを 召し上がっておられる訳です」
リジューネがムッとする フォーリエルが笑んで言う
「隙有り!」
リジューネが空かさず言う
「甘いっ!」
フォーリエルが弾き飛ばされる リジューネが笑んで言う
「まだまだだな?偽者大剣使い?」
フォーリエルが起き上がって言う
「ちっくしょぉ~っ」
リジューネが面白そうに笑む テスクローネが遠巻きにそれを見て微笑する
リジューネがテスクローネから本を手渡される リジューネが言う
「これにもやはり 私の生態情報が足されているのか?」
テスクローネが言う
「いいえ、生態識別による錠を解除しました 700年も経てば 彼女へのプライバシー侵害も 許されるのではないかと思いまして」
リジューネが納得した様子で生返事を返しながら改めて本を見る
「ふむ…」
フォーリエルが近くに来る リジューネがフォーリエルに気付かぬままテスクローネへ顔を向けて言う
「…所で」
テスクローネが疑問する リジューネが言う
「その… エレンソルシュラ女王の 呪い などは…?」
テスクローネが呆気に取られて言う
「は?…呪い?」
リジューネがハッとして頬を染めつつ誤魔化すように慌てて言う
「あっ ああっ いや、その… う、うんっ 代々その様な噂が立てられていたものであった為 誰も手にするものが居らなかったとか… む、無論!私はそんなものを 信じてなど居らぬが…っ」
フォーリエルがニヤリと笑んで リジューネの背後から声を怪しませて言う
「リジュ~ネェ~~ッ!」
リジューネが悲鳴を上げて飛び上がる
「キャァアアーッ!」
フォーリエルとテスクローネが呆気に取られる リジューネがハッとして慌てて誤魔化す
「ばっばばばっ 馬鹿者っ!フォーリエル!貴殿は な、何をやっているのかぁ!?」
フォーリエルとテスクローネが顔を見合わせ笑い出す リジューネが顔を赤くしながら怒る
「わ、笑うなっ!わ、私は 呪いなんてっ!そんな も、ももももの信じては居らぬのだっ!だ、大体 もしその様なものがあろうとも この剣で!」
リジューネが腰に携えている大剣に手を掛ける テスクローネがリジューネの落とした本を拾いながら言う
「これには そう言った黒魔術の類や プロテクトプログラムも施されては居ませんでした ついでに 呪いと言うものが実在するのでしたら 剣で対抗するのは 少々 難しいかもしれませんね?」
テスクローネがリジューネへ本を差し出す リジューネがムッとしながらも本を奪い返すように受け取って言う
「それこそ貴殿の思い上がりだ テスクローネ 我らアバロンの力は 魔術にもプログラムにも真似出来ぬ 強き意思の力を纏わせる事が出来るのだぞ その剣に切れぬものなどありはせん!」
テスクローネが呆気に取られた後微笑して言う
「嬉しいです リジューネ陛下」
リジューネが疑問してテスクローネを見る テスクローネが微笑んで言う
「この世界の最後の生き残りであられる アバロンの大剣使い リジューネ陛下が その力を信じてくれている事が …アバロンの力は不可能を可能にする いわば奇跡の力です」
リジューネが一瞬呆気に取られた後 視線を落とし苦笑して言う
「しかし、そのアバロンの力であっても あの機械兵には 敵わなかったそうだがな」
テスクローネが表情を悲しめて言う
「…そうですね」
フォーリエルが一つ溜息を吐いてから言う
「けど今は!多国籍部隊の皆が 機械兵と戦えるようになったんだ!俺も 早く皆に追いつかねぇと!」
テスクローネがフォーリエルへ向いて言う
「その話だがフォーリエル 本当にシリウスB様は 私のサポートプログラムで お前を機械兵と戦える程に 出来ると言ったのか?」
フォーリエルが言う
「機械兵と戦える… とは言わなかったけど 十分だって言ってたぜ?」
テスクローネが首を傾げて悩む リジューネが言う
「今っ!なんと言った!?」
フォーリエルがリジューネへ向いて言う
「え?なんと言ったって…?」
リジューネがフォーリエルへ詰め寄って言う
「多国籍部隊の者は!ガルバディアへ!?やはり あのシリウスBを名乗る者に 会って来たと言うのか!?」
フォーリエルが疑問して言う
「あ?…ああ、そうだぜ?何だ ローレシアの連中は まだ知らなかったのか?」
リジューネが悔しそうに言う
「そうではないかとは 思っていたがっ… クッ!…何故皆は あの様な者を シリウス様の片割れと信じるのだっ!」
テスクローネとフォーリエルが顔を見合わせ テスクローネが苦笑して言う
「フォーリエルから聞いた話では とても人離れをした お姿の方だそうですね シリウスB様は」
フォーリエルが言う
「人離れっつーか~ 何か 作り物みてぇな… 肌とか透き通ってるしよ?目の色は赤かったり 光ったりよ?でもって 何でか知らねぇけど 靴を履いてねぇんだよ それが妙に異様で 人離れして見えるんだよなぁ?…あぁ やっぱ人離れか?けど、」
リジューネがフォーリエルへ向く フォーリエルが笑んで言う
「見た目なんてどーでも良いだろ?あの人は俺たちを守ってくれてるんだ でもって、俺たちの為に力を使ってくれる そー言うのが 俺たちの神様って事でよ」
テスクローネが苦笑して言う
「ご本人は ガルバディアの王とだけ 名乗っておられたけれどね?」
リジューネが一瞬呆気に取られてから視線を下げて言う
「この世界の人々に信じられ 崇められるものが この世界の神か… だがっ!」
リジューネが顔を上げ踵を返す テスクローネとフォーリエルが疑問する リジューネが言う
「私は 歴代のローレシア王が言い伝えて来た その言葉を信じているのだ 奴は…」
リジューネが強く目を閉じてから 気を取り直して振り返らずに言う
「この日記に きっと答えが書かれている… 私の直感がそう囁くのだ …テスクローネ! 大儀であった」
リジューネが立ち去る フォーリエルが首を傾げて言う
「直感ねぇ…?」
テスクローネが軽く笑って言う
「朗報を待とう フォーリエル」
フォーリエルがテスクローネへ向く テスクローネがリジューネの去った後を見つめている フォーリエルが苦笑する
ローレシア城 城門前
リジューネが城門を通る 門兵が敬礼する
ローレシア城 王の間
リジューネが部屋へ入り 手にしている日記を見る リジューネが椅子へ向かう
リジューネが席に着いて本をめくる
ローレシア暦1278年、春の月、9の日
本日 私は、我が父セレインツボルレ・ローレシア王より ローレシア国王の王位を受託する 私、エレンソルシュラは ローレシア史上初の女王となる 王位継承式の後 民たちへの挨拶 多少の緊張はあったものの 難なく済ませる事が出来た アバロン、ローゼント、ツヴァイザー、スプローニ、シュレイザーから 祝電を頂く ローンルーズから祝電らしきものが来ているが 解読方法が分からない ソルベキアからの連絡は無い ガルバディア、シリウス様は残念ながら 今日と言う日に限って 珍しくも外出中との事 明日にでも 私から挨拶の通信を送ろうと思う
ローレシア暦1278年、春の月、10の日
本日、最初の業務として 早い時間にガルバディアへ通信を送る ご本人とのお話は 叶わぬものと思っていたが シリウス様直々に 昨日の不在に対する謝罪と戴冠祝いのお言葉を受ける 明後日にでも私の戴冠を祝い、ローレシアへいらして下さるとの事 戴冠を終えた昨夜 先代国王であった父から伝え聞いた 口頭での一度きりの言い伝え 長きに渡り ローレシア王の胸にのみ 携えるべしとの事ではあるが 私はシリウス様へ直接伺いたいと思っている 明日は女王となった私の初外交となる シリウス様とは先代ローレシア王である父との謁見の際 私も幾度とお会いしている 問題は無いと思うが ローレシア王としての緊張はある 定例通り ローレシア城内の床の消毒 シリウス様への献上酒 ボジョレーを用意する様 家臣らへ命じた。
リジューネが言う
「戴冠の夜に先代国王から伝え聞く 口頭での言い伝え… 間違いない これこそ 破壊神ソルのっ …エレンソルシェラ女王はシリウス様に直接伺ったのか!?」
リジューネが真剣な面持ちで本をめくる
ローレシア暦1278年、春の月、12の日
昨日の消毒と献上酒の用意を再確認し 予定の時間に備える 移動魔法陣の作動連絡を受け 城門前でシリウス様のご到着を待つ 予定時間丁度 シリウス様が白く大きなライオンの背に乗りご到着された 定例通り ローレシア城入り口にて ライオンのおみ足を拭かせる 私が過去に見知っていたシリウス様の猫 ヴィクトール様とは異なる毛色 問い掛けた所 私の見知っていた猫は 丁度私の戴冠式の日にこの世を去ってしまったとの事 余計な事を口にしてしまったと 慌てて謝罪すると シリウス様は優しく微笑みお許し下された
同日夜
一通りの業務を終えた頃 城下への御散歩へ向かわれていたシリウス様が 城へお戻りになる 民たちとの会合にご満悦のご様子 定例通りお食事は召されないとの事 シリウス様お気に入りのお部屋にて 晩酌へ同席させて頂く 2人きりの席 機を見て ローレシア王の言い伝えを確認しようと思い 軽い話から入る しかし、シリウス様の前での緊張からか 話を運べず 執拗な問い詰めとなって居る事に気付き 慌てて言葉を慎む しばしの沈黙の後 シリウス様よりお褒めのお言葉を頂く だが、そのお言葉とは裏腹に 御表情は浮かれぬご様子 『お前は美しい』と仰って下された あのお言葉は シリウス様が私の沈黙を気遣って下された お言葉であったのだろうか?
リジューネが言う
「美しい… 確かにエレンソルシュラ女王は とても美しいお方であったが… 同時に とてもシリウス様に似ていた様な…」
リジューネが本のページをめくる
ローレシア暦1278年、秋の月、30の日
秋の月、最後の本日も ガルバディア、シリウス様からの ローレシア来国の連絡は無い 通例なら先の来国から半月もすれば 再来国の連絡が入る筈 シリウス様お気に入りのミズアオイの花も時期を過ぎてしまった 先の来国時 ローレシアの王としての私の対応が 不十分であったのだろうか?恐れ多くはあるが 明日にでも ご様子を伺う連絡を入れてみようと思う
ローレシア暦1278年、冬の月、1の日
早朝の時間が過ぎるのももどかしく ガルバディアへ連絡を入れる シリウス様とのお話は叶わなかったが 近々ローレシアを訪れる予定であられるとの話を聞く 思わずほっと胸を撫で下ろした声に 通信を行っていたガルバディアの民が 微笑した様に見えた 表情が無いとの噂であったガルバディアの民だが 彼らにも表情があったのだろうか?それとも、私の心を映してそう見えてしまったのか…?シリウス様の来国を心待ちにしているとの言伝を頼み 幾分軽くなった心持で 一日の業務をこなせた
ローレシア暦1279年、先春の月、10の日
ガルバディア、シリウス様より連絡を受ける お声のみの通信であったが シリウス様のお声を聞けた事に思わず涙を溢れさせ 恐れ多くも我らの神であられるシリウス様に ご心配をお掛けしてしまった とても優しいお声で 早い内にローレシアへ向かえる様 取り計らってくださるとの事 心より感謝の意を伝えた
ローレシア暦1279年、先春の月、13の日
ガルバディアよりシリウス様が来国された 前日の準備を再確認した上で 早い内から城門前で待つ ベネテクトに続き現れた白く大きなシリウス様の猫ヴィクトール様 しかし、その背に居られる筈のシリウス様のお姿は確認できず 一見女性と見間違う程のお美しいお方が座られていた 私は思わず目を奪われ そのお方が私の横を過ぎるまで シリウス様のお姿を探す事を忘れてしまう 正気に戻った私が慌ててシリウス様のお姿を探すと その私の後ろから 聞き間違う筈の無いシリウス様のお声が掛かる 不意を突かれたままに顔を向けた私に 先ほどのお美しいお方が微笑まれていた 良く確認すれば 黄金の長き髪に 美しき肌 愁いを帯びた碧き瞳 そのお方こそ紛う事無き お姿を変えられた シリウス様ご本人であられたのだ
リジューネが本から顔を上げ 椅子から立ち上がり 本を持って部屋を出て行く
同日
私がその日の業務を終えるよりも早く 城下の御散歩へ向かわれていたシリウス様が 城へお戻りになる 何か不都合があられたのかと尋ねた所 心配ないとのお返事 しかし、定例通りお食事は召されないとの事だけではなく 晩酌も取りやめるとの事 心配する私に お体が安定なさる前に 少々無理をしてしまったのだ とのお返事 大丈夫だ とのお言葉を残し シリウス様お気に入りのお部屋へ入られる
絵画の間
リジューネが壁の絵を見上げて言う
「シリウス様のお体の安定… シリウス様は数十年に一度 その身のお姿を変えられたと言う もしや… エレンソルシュラ女王がシリウス様に似ておられたのではなく その 逆であった…のか…?」
リジューネが2つの絵を見比べる エレンソルシュラ女王とシリウスが描かれた絵の横 セレインツボルレ王とシリウスの描かれた絵 2つの絵のシリウスは激しく異なる
同日夜
一通りの業務を終えはしたが シリウス様の事が気になり身が入らない 幾度目かシリウス様のお部屋の前へと向かおうとした時 交代を終えたお部屋前の衛兵とすれ違う 念の為何か通例と異なる事は無かったかと確認した所 通例よりシリウス様のお部屋へ持ち込まれた物品が多かったとの事 その内一つは 人一人分の大きさほどもあったと言う シリウス様からのお話にも お体が安定されないとの事であった為 激しく心配に思い 足早にシリウス様のお部屋へと向かう お部屋の前に立ち 何度か声をお掛けするが お返事は得られない 衛兵の話から シリウス様がお部屋に居られる事は確認出来る それでもお返事が無いのでは 何か問題があられたのではと思い 私は耐え切れず扉を開けてしまった そこで 私は
リジューネが本に食い入る
私は この世の者とは思えぬほどの 恐ろしい者を目にする事になった 余りの恐ろしさに声も出せずに立ち尽くしていると その者は私に気付き 赤い瞳を光らせた 私はそのまま意識を失ってしまった
ローレシア暦1279年、先春の月、14の日
自室で目を覚ました私は 付き添いの者より昨夜の事を聞き及ぶ 私はシリウス様に助けられ 身に受けた衝撃の緩和を行われた上で 衛兵に運ばれこの部屋で治療を受けていたとの事 身支度もそこそこに 私はシリウス様のお部屋へ向かった お部屋の前 私が声を掛けるまでも無く扉が開かれ シリウス様が変わらず美しくも憂いを帯びた優しい微笑で私を迎えて下された
私はシリウス様へ昨夜の記憶を必死に手繰り かの者の姿をご説明した 恐れ多くもかの者は シリウス様の居られぬ時に そのお部屋へと踏み入っていたのだ 私に出来る事はその者に関して唯一分かる その姿を 余すことなくシリウス様へお伝えするべきであると かの者の姿は”人の肌色を持たぬ 青白い体に光りを纏い 色を持たぬ髪が 緋色の瞳を隠す” 私がおぞましい かの者の姿を口にしその恐ろしさに怯えていると シリウス様は取り乱す私へ何度も優しいお言葉を掛けて下された 「お前がその者に再び会う事は決して無い」シリウス様の力強いお言葉を受け 私は安堵に胸を撫で下ろすと同時に ある事に気付いた もしや、あのおぞましい者こそ この世界を襲わんとしている シリウス様の宿敵ではないのかと 私は今こそ確認するべきと思い シリウス様へ ローレシア王の伝言を確認した
リジューネが本に食い入る
かの者がこの世界の敵、シリウス様の宿敵ではないのか?私の問いに シリウス様は心から驚かれていた 普段のシリウス様からは見られない とても驚かれたご様子に 私は事の大きさを感じ取り 執拗にシリウス様へと問い詰めた 今思えば 許されぬほどの私の無礼な程の問い詰めに シリウス様は重い口を開かれ ついに その名を教えて下された この世界の敵 シリウス様の宿敵であるその者の名は 破壊神ソル しかし、シリウス様は 以後誰にもその名を伝えるなかれとご忠告下された ローレシア王の言伝も 私の代からは取り止める様にと しかし、かの者は シリウス様の御身がお力を弱めた あの時に 確かに私の前にまで現れたのだ そうとなれば またいつ シリウス様がお体を変えられた際に現れるとも限らない 私はシリウス様とのお約束に背く事と分かりながらも ローレシア王の言伝へかの者の名と姿を足し 後の世へと残そうと思う
リジューネが本を閉じて言う
「ローレシア王の言い伝えに 破壊神ソルの名と姿が足されたのは エレンソルシェラ女王の時だったのか… それまでは この世界の敵であり シリウス様の宿敵であるものが 存在すると言う事だけが…」
リジューネが本を横に置き考えて言う
「…とは言え、エレンソルシェラ女王は 直接シリウス様へ確認を取っている やはり 破壊神ソルの姿は 言い伝えの通りなのだ …ならば やはりっ!」
リジューネが顔を上げる 部屋の扉がノックされ衛兵が言う
「リジューネ陛下っ 大臣より 多国籍部隊が ローレシア帝国を襲っていた機械兵の殲滅に 成功したとの連絡です!」
リジューネが驚いて思わず立ち上がって言う
「何だとっ!?」
衛兵が続けて言う
「現在、大臣方が 詳しい経緯を確認中です どうか リジューネ陛下も玉座の間へ お越し頂きたいとの」
衛兵が言っている最中に部屋の扉が開かれ リジューネが飛び出して行く 衛兵が一瞬驚いた後リジューネに続こうとしてふと部屋の中を見る エレンソルシェラの日記が忘れられている 衛兵が気付きつつも 急いでリジューネを追う
ザッツロード6世たちが移動魔法で現れる ラーニャがメテーリへ向いて言う
「どう?これが普通の移動魔法よ?」
メテーリが気分の悪そうな表情からラーニャへ向いて言う
「なんだか… 嫌な感じだったわ 例えるなら… そう、あの シリウスB様の移動プログラムみたいな」
【 ガルバディア城 玉座の間 】
シリウスBが目を瞑った状態で一瞬表情が引きつる
【 ローレシア帝国 移動魔法陣 】
ヴァッガスが言う
「メテーリ、例えが悪いと思うぜ もし今シリウス様が俺たちを見てたら どーすんだよ?」
メテーリがヴァッガスへ向いて言う
「うるさいわね しょうがないじゃない?他に例えられるものが無いんだから」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「移動魔法陣は一見魔術の類に見えるけど その実 地面の下には ガルバディアの機械が埋められているからね?機械的に感じるのは当然だよ」
ミラが呆気に取られて言う
「え…?知らなかったわ」
ザッツロード6世が感心して言う
「ヴィクトール様は 本当に色々な事をご存知なのですね 尊敬します」
ヴィクトール11世が笑顔で頬を染めつつ言う
「いやぁ~ 大袈裟だなぁ だってこれは シリウスBに猫化された時に 偶然知った事なんだ あの時僕は なんとなく何処か掘りたい衝動に駆られちゃってね?それで ガルバディアの移動魔法陣を掘ったら怒られちゃって その時にシリウスBから聞いたんだよ …てへっ」
ザッツロード6世が言う
「シリウスBに… 猫化?」
ヴィクトール11世が笑顔で頷いて言う
「うん!それにしても、あの時は痛かったなぁ~ シリウスBってば わざわざ僕を殴る自分の手を プログラム強化してたんだよ?酷いよね?」
ヴィクトール11世がフード越しに自分の頭をさする ザッツロード6世が呆れつつ疑問して言う
「は… はぁ そうだったんですか… 猫化ってなんだろう?」
ロドウが現れて言う
「ヴァッガス!メテーリ!ザッツロード王子たちも!」
皆がロドウへ向き メテーリが言う
「ロドウ!?」
ロドウがやって来て言う
「移動魔法の光が見えたから もしかしてと思って」
ガイが空から降り立って言う
「全員無事であったか ローレシアへ向かい 連絡も無いままに戻らず 心配していたのだぞ?一体何処へ行っていたのか?」
ヴァッガスが頭を掻きながら言う
「あぁ 悪ぃ!ガルバディアから連絡しようと思ったんだけど 通信が繋がらなくってよ?」
ガイが驚いて言う
「ガルバディア!?シリウス様の元へ行っていたのか!?」
ザッツロード6世たちが肯定する様に苦笑する ガイが驚いてから苦笑して言う
「そうか…何にしても 無事であって良かった …それで、こちらの方は?」
ガイがヴィクトール11世を見る ザッツロード6世が言う
「あ、ガイ隊長 こちらの方が以前 僕の話した」
ヴィクトール11世が微笑して言う
「新世界 ガルバディア国王シリウスAの猫 ヴィクトール11世です もしや貴方が ローレシア帝国最強の長剣使い 元ローゼント国国王の子孫である 多国籍部隊隊長ガイ殿では?」
ガイが衝撃を受ける 皆が驚き メテーリが言う
「そ、それじゃ 前にリジューネ陛下が言ってた ガイがローゼントの王じゃないかって…」
ガイが表情を困らせて言う
「そ…それは 言わないで置いて欲しかったのですが…」
ヴィクトール11世が疑問して言う
「え?そうだったの?それはごめん 僕だったら言いたいと思うんだけどなぁ~?」
ヴィクトール11世が首を傾げる
多国籍部隊宿舎 会議室
ザッツロード6世たちとガイたち ヴィクトール11世が椅子に座り話し合っている ザッツロード6世が驚いて言う
「ガイ隊長たちも ヴィクトール11世様も…」
ヴィクトール11世が言う
「そうなんだ?通りで 君たちと初めて会った時から なんとなく そんな感じはしてたんだよね」
ガイが言う
「私が思うに ヴィクトール11世様は我らほど 魔物の力を与えられてはいない… 確かシリウス様は 我らに与える魔物の遺伝子情報は30%とおっしゃられていたが ヴィクトール11世様は恐らく…20%かそれ以下ではないかと」
ヴァッガスがヴィクトール11世の匂いをかいで言う
「ああ… んなもんかもな?」
ヴィクトール11世がヴァッガスの行動に嫌そうな顔をしてから言う
「僕は余りそういうのは分からないのだけれど 取り合えず 僕は君の事が何となく嫌いなんだよね?きっと君が取り込んだ情報は 僕とは相性の悪い魔物のものなんじゃないかな?」
ヴィクトール11世がヴァッガスを見る ヴァッガスが衝撃を受けて言う
「んなぁ!?…お、俺だって!今だから言うが 最初っからあんたの事は好かなかったんだ」
ヴィクトール11世が呆気に取られて言う
「そうなんだ?ふーん… まぁ、魔物と一言で言っても 種類は豊富だし 何なのかは分からないけど ま、良いよね?僕は君が嫌いって事だけだよ!あははははっ!」
ヴァッガスが衝撃を受け言う
「んなぁ!?お、俺はヴォーガウルフの遺伝子情報だけっど それを抜きにしたって 俺はアンタみたいな奴は嫌いだぜ!」
ヴィクトール11世が疑問して言う
「ヴォーガウルフ?ふーんそうなんだ?僕は秘密だよ けど、ヴォーガウルフって元は狼だから イヌ科って事だね?なら最初から僕の敵かも?あっち行ってくれないかな?フーッ!」
ヴィクトール11世が猫の様に威嚇する ヴァッガスが怒って言う
「ああ!行ってやるよ!俺だってアンタの横は気に入らねぇえ!ヴゥーッ!」
ヴァッガスが席を立ってうなり声を向けてから別の席へ移動する 2人以外の者たちが一部始終を呆れて見ていて ラーニャが言う
「ヴァッガスがイヌ科のヴォーガウルフなら ヴィクトール様はネコ科の魔物って事?」
ミラが言う
「それ以前に ヴィクトール様は最初から 自分はネコだって言ってなかった?」
ラーニャが首を傾げつつ言う
「そう言えば…」
ガイが気を取り直して言う
「それで、先ほどヴィクトール様が仰られていた 宝玉を使っての この世界を救う方法なのだが」
皆が気を取り直してガイを見る ガイが言う
「私は 例え機械兵の殲滅が出来ずとも その作戦を実行に移すべきであると思う」
ヴァッガスが言う
「そうだよな!俺らにも出来る事があるってんなら 全力でやるまでだぜ!」
ヴィクトール11世が言う
「実は私も そのつもりでローレシア帝国へ向かおうとしていたんだ シリウスBから 私で実験をした事を施したと言う 君たちの話を聞いていたからね」
ヴィクトール11世がガイたちを見る 後に首を傾げて言う
「…けど、君たちは一見しても 普通の人と変わらない 何の魔物の情報を入れられているか 外見からは分からないんだね?」
ガイたちが疑問する ヴィクトール11世の尻尾が不満そうに揺れるが 誰の目にも入っていない ザッツロード6世が視線を落として言う
「私では… 機械兵と戦う事は出来ない 宝玉の結界が無ければ 悪魔力の中を移動する事すら出来ないんだ…」
ガイが苦笑して言う
「我々が作戦実行のために他国へ向かえば このローレシア帝国の防衛力が低下する ザッツロード王子ほどの力を持った方が残って下されているとすれば とても心強く思います」
ザッツロード6世がガイの慰めにすまなそうに苦笑する ロドウがメテーリへ向いて言う
「メテーリ…」
メテーリが目を強くとじて言う
「分かってるわよ!」
皆の視線がメテーリへ向く メテーリが誰とも視線を合わせず悔しそうに言う
「私も… 私もシリウスB様に魔物の力を貰ってれば良かったのよっ あんたたちと 同じにしてもらってればっ!」
レーミヤが苦笑して言う
「回復魔法を行えるのは聖魔力よ 例え悪魔力の中であっても その中に含まれる微量の聖魔力を使っているのだから メテーリさんが魔物の力を得る事は きっと出来なかったと思うわ」
メテーリが言う
「けど…っ」
ガイが言う
「メテーリ、貴女には…」
メテーリが聞きたくないと両手で耳を塞ぐ ガイが言う
「なんとか我々と共に 付いて来て欲しい」
皆が驚く メテーリが驚きに眼を見開き ガイへ向く ガイが微笑して言う
「もちろん、無理強いはしない しかし、出来る事なら 移動魔法同様にミラ殿から あの宝玉の結界を張る方法を伝授してもらい 我らと共に可能な限りを行き 無理がある時には一時的にローレシア帝国へ 移動魔法で避難する… この様な事を頼むのは心苦しいが 貴女が共に来てくれる事は 我々にとって大きな力だ」
メテーリが呆気に取られて言葉を失う ロドウが笑顔で言う
「メテーリの警護は もちろん僕の担当だよね?」
ヴァッガスが笑んで言う
「当然だぜ!お前がメテーリを守っててくれりゃ 俺とガイは 気兼ねなく張り合えるっからな?おまけに 無茶しちまった時には すぐ回復してもらえるんだぁ …まぁ その度に やれ、馬鹿だの 何だのって 小言ばかり言われっちまうが あれも慣れりゃ 按摩みてぇなモンだぜ」
ガイたちが笑みを合わせメテーリへ向く メテーリが呆気に取られた状態から泣き出して言う
「ば… ばかぁ…っ」
ヴァッガスが焦って言う
「なぁ!?ば、馬鹿はどっちだ!?折角連れて行こうってぇのにっ な、泣くんじゃねぇって!」
メテーリが涙を拭いながら言う
「な、泣いてなんてないわよっ ば、馬鹿ヴァッガスっ!」
ヴィクトール11世が笑んで言う
「良かった!正直 一緒に作戦を実行する人が居なかったら どうしようかって 思ってたんだ!」
ガイたちが微笑してヴィクトール11世へ向く ヴィクトール11世が笑顔を向ける ザッツロード6世が視線を外し悔しそうに唇を噛む ラーニャたちが心配する
多国籍部隊の兵舎を出たザッツロード6世たち ザッツロード6世が無言のままローレシア城へ向かう ラーニャ、ミラ、レーミヤが心配そうに顔を見合わせ ラーニャが言う
「ね、ねぇ ザッツ?」
ザッツロード6世が振り返る ラーニャが慌てる レーミヤが苦笑して言う
「この世界を救う為の方法が… す、少なからずあって 良かったわね?」
ラーニャが慌てて言う
「そ、そうそう!それにあれって ちょっとあの… 夢の世界と似てるわよね!?宝玉の力で 世界を救っちゃおうーって!」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「そうだね… けど、折角夢の世界で経験したのに 現実世界では僕らは参加出来ないね」
ラーニャとレーミヤが衝撃を受ける ミラが溜息をついて言う
「それで?ザッツは何処へ向かってるのかしら?」
ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「え…?何処って…」
ミラが言う
「リジューネ陛下に 何て報告するつもりなの?」
ザッツロード6世が困って言う
「あ… そうだね えっと…」
ザッツロード6世がローレシア城の方を向き 一瞬の後 驚いて言う
「ん?…あれはっ!?」
ラーニャたちが疑問し ザッツロード6世の視線の先を見て 驚き ラーニャが言う
「え!?何で!?リジューネ陛下!?」
リジューネが城から出て 門兵らの敬礼を確認した後 遠くから自分を見ているザッツロード6世らに気付き苦笑する ザッツロード6世たちが駆け寄って来て ザッツロード6世が言う
「リジューネ陛下!?一体 どうなされたのです!?」
リジューネが言う
「ザッツロード王子 私はこれから この世界を救う為 過去に滅亡した それら各国を巡って参る」
ザッツロード6世が驚いて言う
「滅亡した国を!?それはどう言う事です!?」
リジューネが言う
「すまないが 時間が惜しい 詳しくを知りたくば ソルベキアの研究者Tへ訪ねるが良いだろう」
リジューネが歩き出す ローレシア第一部隊が整列し 第一部隊長と副隊長がリジューネを迎える ザッツロード6世たちがリジューネの後姿を見る ラーニャがザッツロード6世へ向いて言う
「ザッツ!」
ザッツロード6世が頷いて言う
「うん すぐに確認へ向かおう!」
ザッツロード6世たちが頷き合い 走ってローレシア城へ入って行く
機械室
研究者Tが嫌そうに言う
「はぁ… また説明ですか?申し訳ないのですが 機械の事に詳しくない方へ CITCの説明をするのは とても面倒でしてね?明日にして頂けませんか?」
ザッツロード6世が研究者Tを押し留めて言う
「急いでいるんです!リジューネ陛下が何をしに向かったのか!それが知りたいんです!」
研究者Tが作業を行いながら言う
「ああ、それでしたら 一言で言えば 電源を入れに行ったのですよ」
ザッツロード6世が言う
「電源!?それは… どう言う事です!?」
研究者Tが溜息を吐いて言う
「はぁ… だから、それを説明するのが 面倒だと言っているんです 王子はリジューネ陛下が何をしに向かったのかを 知りたかっただけではないのですか?」
ラーニャが怒って言う
「あんったねぇ!ザッツは 新世界ローレシアの王子様よ!?」
研究者Tが言う
「存じておりますよ?デネシア王家の名を持たぬ 仮の王の息子殿 しかも 第二王子では… 新世界へ戻られても この世界に留まられても どちらにせよ ローレシアの王にはなれませんなぁ?」
ラーニャが呆気に取られてから怒って言う
「なんですってぇえ~!?」
レーミヤが言う
「機械にはそれ程詳しくありませんが CITCの事でしたら多少なりとも知っています …各国にある 魔力穴に取り付けられ そこに噴出する魔力から 聖魔力や悪魔力を引き抜く事が出来ると」
ザッツロード6世たちが驚く レーミヤが真剣に研究者Tを見る 研究者Tが感心して言う
「ご名答 実に素人らしくも 的を得られた回答です 感心いたしました やはり容姿の良い方は 頭脳の方も宜しいのでしょうかね?」
ラーニャが驚き怒りを増して言う
「な!?…なぁっ!?」
ミラが言う
「一応 あの人にとっては褒め言葉なんでしょうから 黙ってなさいよ?」
ザッツロード6世が研究者Tへ向いて言う
「それで、その事を踏まえた上でなら 説明してもらえますか?」
研究者Tがしょうがないと言った様子で言う
「まぁ 基本の基本が分かってらっしゃるのでしたら リジューネ陛下よりは楽ですからね」
ラーニャが怒って言う
「無駄な事ばっか 言ってないでっ!」
ミラがラーニャの口を押さえる レーミヤが苦笑する 研究者Tが言う
「CITCは各国の魔力穴に 既に取り付けてあるのです しかし、現在はそれら全ての国のCITCの制御に封印がなされている… 唯一 このローレシアの封印は解けましたが 折角全世界に9箇所存在するのですから それら全てを使えば 得られるエネルギーはローレシア1箇所の9倍 世界を救う為に用意するエネルギーも5日で集まります …と、そんな所ですかな?」
ザッツロード6世が驚いて言う
「世界を救うために用意するエネルギーとは!?CITCで聖魔力を引き抜いて 何をするつもりです!?」
研究者Tが一瞬驚いて言う
「おやおや、良く引き抜くのが聖魔力であると分かりましたね?リジューネ陛下は 悪魔力を引き抜いて世界から悪魔力を無くすのか?とおっしゃられ 私は頭を抱えたものですが その通り、引き抜くのは聖魔力です その聖魔力をこの世界中に振り撒き 現存する悪魔力を中和させるのです」
ザッツロード6世が言う
「この世界の悪魔力を中和するなんて そんな大規模な事 本当に…?」
研究者Tが言う
「ご存知ありませんか?そもそも、この世界中に溢れている悪魔力は 元はあの魔力穴から悪魔力を引き抜いて 振り撒いたものなのですよ それなら それと同様に 逆の事をすれば 世界は平和であった頃に戻るのです 簡単な事ですよ」
ザッツロード6世たちが驚き ラーニャが言う
「悪魔力を引き抜いて… 振り撒いた…!?」
皆が顔を見合わせる 研究者Tが言う
「さて、私は作業に戻らせて頂きます あ~忙しい忙しい…」
研究者Tが立ち去る ラーニャ、ミラ、レーミヤがザッツロード6世を見る ザッツロード6世が考えている
通路を歩くザッツロード6世と仲間たち ラーニャが言う
「ねぇ?あの研究者Tが言ってた事 本当かなぁ?」
ミラが言う
「本当かって… どう言う意味よ?」
ラーニャが言う
「その… 悪魔力を引き抜いて 振り撒いた… とか その逆をやれば 平和な頃に戻る~…とか そんな簡単な事なの?」
レーミヤが言う
「悪魔力を振り撒いたというのは 初めて聞いた話だけれど 悪魔力を中和させると言うのは 新世界での夢の話にもあったわよね?…と言う事は もしかしたら 新世界でも考えられていた方法なんじゃないかしら?」
ラーニャが不満そうに視線を逸らして言う
「そ… そっかぁ… そうよね…?けど…」
ラーニャが顔を横に振って言う
「あぁーんっ!もうっ!きっと あの研究者Tが ソルベキアの研究者だからいけないのよ!何だか 信用置けないって感じで!」
ベハイムが苦笑して現れて言う
「それはそれは 耳の痛いお言葉で」
ラーニャが衝撃を受けて叫ぶ
「きゃぁあーっ!」
ベハイムが苦笑する ミラが怒って言う
「ちょっとっ!ラーニャ!」
ザッツロード6世が表情を困らせて言う
「すみません 仲間が失礼な事を… えっと確か以前 リジューネ陛下が新世界へ 通信を行おうとした時に」
ベハイムが微笑して言う
「はい、私はベハイム・フロッツ・クラウザーと申します 研究者Tが… 皆さんに何か失礼を働いたのでしたら 彼に代わり 私が謝罪いたします」
ベハイムが頭を下げる ザッツロード6世が慌てて言う
「ああっ いえっ!クラウザーさんが謝るような事はっ …うん?クラウザー?」
ベハイムが疑問し微笑し軽く首を傾げて言う
「はい?」
レーミヤが言う
「確か… 以前にもそのお名前を聞いた事があったわね えっと…」
ラーニャとミラがハッと気付いてラーニャがベハイムを指差して叫ぶ
「あーっ!」
ラーニャとミラが声を合わせて言う
「「スファルツ卿ーっ!」」
ベハイムが呆気に取られる ザッツロード6世が慌てて言う
「ふ、二人ともっ!」
レーミヤが苦笑して言う
「そ、そうね スファルツ卿にとても良く似てらっしゃるわ しかし、あの方は 新世界の先住民族なのだから」
ラーニャが気付いて言う
「あ、そっかぁ」
ミラが視線を逸らして言う
「そうね、うかつだったわ」
ベハイムが苦笑して言う
「はっはっは… これは驚きました スファルツ… 私の曾祖父の名が それでした スファルツ・レイロルト・クラウザー… ソルベキアの歴代でも もっとも優秀とされたハッカーでしたが その自信からか あろう事か ガルバディアのセントラルコンピュータへのハッキングを行い ベネテクトの強固なプロテクトプログラムを受け そのまま 意識が戻らなくなってしまったそうです」
ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「まさか…」
ラーニャたちが顔を見合わせる ベハイムが言う
「所で、お話中の所 申し訳ないのですが」
ザッツロード6世が慌てて気を取り直して言う
「は、はいっ!?」
ベハイムが言う
「リジューネ陛下がどちらに居られるか… ザッツロード王子はご存知であられますでしょうか?」
ザッツロード6世が疑問して言う
「え?リジューネ陛下は ソルベキアの… 研究者Tの指示で ローレシアを離れていらっしゃるそうですが?」
ベハイムが呆気に取られて言う
「そうでしたか… 研究者Tの指示で?」
ミラが言う
「貴方は知らなかったの?」
ベハイムが苦笑して言う
「はい、お恥ずかしながら 私はリジューネ陛下の信頼を失ってしまい しばらくローレシア専属のプロジェクトチームから離れていたのです しかし、気になる事を見つけ 汚名挽回とまではならずとも お役に立てないかと参じたのですが」
ラーニャが興味津々に言う
「その気になる事って!?」
ベハイムが呆気に取られる レーミヤが苦笑して言う
「駄目よ ラーニャ クラウザーさんは リジューネ陛下へご報告にいらしたのだから」
ラーニャが言う
「そっかぁ 先に私たちに言っちゃったんじゃ 汚名挽回にならないものね?」
ザッツロード6世が焦る ベハイムが軽く笑って言う
「あっはっは… いや、失礼 しかしこの事は もしかすれば このローレシアに住む 全ての人々に関わる事となるかも知れません リジューネ陛下が居られないのでしたら ザッツロード王子にお伝えするのも 正しいのかもしれませんね?」
ザッツロード6世が反応して言う
「全ての人々に関わる!?…それは つまり」
ベハイムが言う
「ザッツロード王子 実は この世界のソイッド村に 転送装置らしきものがある との情報を入手しました その装置は 新世界との転送を 数人とは言え 可能とする」
ザッツロード6世がハッとして言う
「ソイッド村の!?」
ザッツロード6世の脳裏にソイッド村での出来事が蘇る ベハイムが言う
「資料を基に計算を行った所 その転送に使用したエネルギーは とても少なかったのです 単純に考えても このローレシア帝国にある転送装置より 格段に精度の良い転送装置があると思われます もし、それを確認する事が出来れば 仮にそれを使用出来ずとも ローレシア帝国の転送装置の性能を 飛躍的に向上させる事が出来る筈です」
ラーニャとミラがザッツロード6世を見る ザッツロード6世が考えながら言う
「この世界を救う作戦は行われているけど どれも確実に成功するとは言い切れない… それならっ」
ザッツロード6世がベハイムへ向いて言う
「クラウザー殿 我々は一度 ソイッド村へ行っています 今なら移動魔法を使用して その装置を確認しに向かうことも可能です」
ベハイムが一瞬呆気に取られて言う
「え?…そう なのですか ああ… 以前ローレシアから脱走された あの時に… しかし、宝玉が無いのでは ただ行く事が出来ても 悪魔力の中であっては 捜索は出来ませんが?」
ザッツロード6世が言う
「ソイッド村は 結界に守られています 移動魔法で直接その中へ入れば 捜索も可能です」
ラーニャたちが驚いて言う
「ザッツ!?」
「結界の事は…っ!」
ザッツロード6世が言う
「それと、クラウザー殿 出来れば 我々と一緒に ソイッド村へ行き その装置を確認してもらえませんか?我々では 機械の事は分かりません」
ベハイムが驚く ザッツロード6世がベハイムを見つめる ベハイムが硬直から解かれて言う
「ザッツロード王子… 私は 皆さんの信用を受けられない ソルベキアの民ですよ?ソイッド村の結界の事を言ってしまったり まして 行動を共にしようなどと」
ザッツロード6世が微笑して言う
「私は 貴方を信じます」
ベハイムが驚きに言葉を失う ラーニャたちが呆気に取られ顔を見合わせた後苦笑してザッツロード6世とベハイムを見る
【 旧ローゼント国 移動魔法陣 】
リジューネとローレシア第一部隊が現れる リジューネが宝玉を手に掲げようとして気付き 動作を止めて言う
「…ここもか」
第一部隊長が一歩踏み出して言う
「アバロンだけではなく ローゼントにも結界が…」
副隊長がリジューネへ向いて言う
「陛下、やはりまた…?」
リジューネが間を置いてから言う
「恐らくそうだろう …構わぬ 行くぞ」
リジューネが歩き出す 第一部隊長と副隊長が返事をして 第一部隊長が言う
「はっ!進軍!リジューネ陛下に続け!」
リジューネを先頭に全員がローゼント城へ向かう
ローゼント城 宝玉の間
ローレシア第一部隊が入り口付近を警戒している リジューネと第一部隊長、副隊長が入室して リジューネが部屋の中心で輝く宝玉を見て光に目を細める 第一部隊長と副隊長がリジューネの動向を見つめる リジューネが歩き出し 第一部隊長が続き 副隊長が続こうとして何かに気付き横を向く
リジューネが宝玉の前に立ち 一度目を閉じてから宝玉を外し 台座の内部を見る 第一部隊長がリジューネの動向を見つめる中 副隊長が身を屈め 床にある骸を見て悲しそうに目を細める
リジューネが宝玉を台座に戻して言う
「よし、ここのCITCも封を解除した 次へ向かう」
リジューネが振り返る 第一部隊長が敬礼して言う
「はっ!承知しました!」
リジューネが副隊長の様子に気付いて近くへ着て言う
「どうした?」
副隊長がハッとしてリジューネへ向き直り 慌てて敬礼して言う
「あっ!し、失礼しました!」
リジューネが副隊長の見ていたものへ視線を向けて言う
「…骸か ここの者も 同じだな」
副隊長が一瞬驚いて言う
「え!?あ… はい、リジューネ陛下も 気付かれていたのですね?」
リジューネが言う
「ああ… 最初の出発地点であったデネシアからアバロン、ツヴァイザー、スプローニ… あのローンルーズでさえ同じだ この宝玉の間に続くまでの道には 皆 2人一組となった骸が 残されている」
第一部隊長がやって来て疑問して言う
「2人一組になった骸…ですか?そちらが何か…?」
リジューネが骸を指差して言う
「これだ …通常のものとは違い 必ず剣を持った骸が もう一つの骸を庇うように重なり 息絶えている そして、この剣の大きさから考え… 彼はアバロンの大剣使い それに、庇われているのは その相棒 ガルバディアのベネテクトだ」
第一部隊長がハッとして言う
「ガルバディアのベネテクト!?…そういわれてみれば 下に庇われている骸は 戦士にしては武器も持たず 随分とガタイの細い」
リジューネが言う
「ああ それだけではない ベネテクトはプログラムと言う力を使用するのに 極小の機械を体内に取り入れていると言う その機械は余りに小さすぎるため 肉眼で確認する事は出来ないが 風化すると周囲のそれ同士が固まり 銀色に輝くと言う」
第一部隊長と副隊長が骸を見る 下に庇われている骸には 銀色の砂が点在して輝いている 副隊長が悲しそうに微笑して言う
「アバロンでもガルバディアでもない国であっても 彼らはその地を守ろうとしたのでしょうか?」
リジューネが苦笑して言う
「そうだな 自分たちの命を犠牲に 彼らが守ろうとしたものは 恐らく あの宝玉であったのだろう 宝玉は 結界を張り その国を守っていた」
第一部隊長と副隊長が頷く 束の間を置き 第一部隊長が言う
「…しかし陛下?宝玉が健在であり 結界を張っていたのだとしたら 機械兵は近づけなかった筈 彼らは一体何と戦っていたのでしょうか?」
リジューネが第一部隊長の言葉に一瞬呆気に取られた後考えながら言う
「うん?…そうだな 機械兵でなければ 魔物… いや、悪魔力の影響を受けたそれらが 結界の中に入る事は無い… では、そうとなったら?う~ん…」
リジューネが腕組みをして深く考える 第一部隊長と副隊長が呆気に取られ顔を見合わせる 部屋の外から兵が現れて言う
「隊長、お時間が掛かっているようですが 何か?」
リジューネが兵の声にハッと我に返り 慌てて振り返って言う
「い、今はっ その事を考える時では無い!次の国へ!…シュレイザーへ向かうぞ!」
第一部隊長と副隊長が慌てて敬礼して返事をする
「「は… はっ!」」
リジューネが退室して行く 兵が疑問して第一部隊長へ向いて言う
「何か…あられたのですか?」
第一部隊長が言う
「あ、いや…」
副隊長が苦笑して言う
「リジューネ陛下は 元々はアバロンの… アバロンのお方は 実は考え事に弱いとか…」
リジューネの声が部屋の外から響く
「第一部隊長!副隊長!部隊を先導する貴殿らが 何をもたもたしているのかっ!?」
第一部隊長と副隊長が衝撃を受け慌てて言う
「「はっ!直ちにっ!!」」
兵が呆気に取られる 第一部隊長と副隊長が走って行く 台座では宝玉が輝いている
【 旧スプローニ国 玉座の間 】
メテーリが台座の宝玉に祈りを捧げている
スプローニ城 城下町
ヴァッガスが4本足で駆けて狼の様に魔物に襲い掛かり 両腕に縛り付けた刃で魔物を切り裂く 着地したヴァッガスが睨み付ける その先 機械兵に上空から長剣が降り注ぎ ガイが機械兵を鋭く見上げた瞬間 機械兵の切り裂かれた箇所に火花が散り ヴァッガスとガイが退避したところへ機械兵が倒れて爆発する ヴァッガスとガイが周囲を確認する
ヴィクトール11世が素早く旋回し 敵を見失って周囲を探す機械兵の後ろから 大剣を振り上げ叫びながら叩き切る
「やぁああーーっ!」
ヴィクトール11世の大剣が地面ぎりぎりまで勢い良く振り下ろされ 機械兵が振り返ろうとした状態で止まり ヴィクトール11世が退避した場所へ倒れる ヴィクトール11世が機械兵を振り返り 勝利を確認して笑顔を見せるとフードが後退し猫耳が現れる ヴィクトール11世があっと気付き 慌ててフードを直す ガイとヴァッガスがやって来てヴァッガスが言う
「ヴィクトール!こっちは片付いたぜ!そっちは?」
ヴィクトール11世が振り返り微笑して言う
「うん!こっちも終わった所だよ!」
ガイが苦笑して言う
「ヴァッガス やはり… ヴィクトール様を 呼び捨てにするのは どうかと思うのだが?」
ヴァッガスがガイへ振り返って言う
「あぁ?」
ヴィクトール11世がガイへ向いて言う
「良いんだよ ガイ 僕は君たちと目的を同じくして 共に戦う仲間だ ガイも、僕の事は呼び捨てで良いんだよ?僕もそうする!ね?」
ヴィクトール11世が笑顔を向ける ガイが表情を困らせて言う
「私の事は 呼び捨てにして頂いて まったく問題ありませんが 貴方様は…」
ロドウがやって来て言う
「あ、居た居た 皆 揃ってるよ?メテーリ」
ロドウが後ろを振り返る ガイたちがロドウを見た後 ロドウの視線の先メテーリを見る メテーリが言う
「ああ、なら皆も一緒で …ねぇ!ヴィクトール!ちょっと アンタに見てもらいたいんだけど!」
ガイが衝撃を受ける ヴィクトール11世が笑顔でメテーリへ答えて言う
「うん?僕に?分かった 今行くよ!」
ヴィクトール11世がガイへ向いて言う
「ほら?彼女も僕を呼び捨てにしてくれているし!おまけに 『アンタ』だって!僕、初めて言われたよ!あははははっ!」
ヴィクトール11世が上機嫌でメテーリの下へ向かう ガイが呆気に取られる ヴァッガスが呆れて言う
「流石メテーリだぜ」
ガイが変わらぬ表情で言う
「…ああ あそこまで言えるとは もはや 賞賛に値する」
ヴァッガスが衝撃を受けガイへ言う
「賞賛ってっ!?そら ちょっと違うだろっ!?」
メテーリがガイたちへ向いて叫ぶ
「ちょっと!?貴方たちも急いで!ガイ!アンタ ローゼントの王様なら もっと率先しなさいよ!?」
ガイが衝撃を受け困惑した表情のまま言う
「あ、ああ… すまん…」
ヴァッガスが呆れて言う
「…こらぁ 賞賛にも 値しちまうかもな?」
メテーリが叫ぶ
「ヴァッガス!」
ヴァッガスが衝撃を受け慌てて言う
「のわぁあっ!はいはいはいーっ!我らのメテーリ女王様ーっ!」
メテーリがCITCを指差して言う
「この機械、他の国でも 宝玉の台座にあったのよ 何だと思う?」
ヴィクトール11世がハッとして言う
「これは…っ!」
ガイとヴァッガスが覗き込み ガイが言う
「こんな所に機械が?」
ヴァッガスが言う
「宝玉の台座の下にあるって事は 宝玉に関係してんのか?」
メテーリが言う
「それに、これもそうなんだけど 前のツヴァイザーの方も… 何って言ったら良いのかな?なんかこう… 生きてる感じ?」
ガイとヴァッガスが衝撃を受け ヴァッガスが言う
「い、生きてるって お前…」
ガイが言う
「これは機械であるからして 生命は無いと思われるのだが?」
メテーリが衝撃を受け怒って言う
「そ、それくらいは私だって分かってるわよ!そうじゃなくって!だから、何って言うか~っ」
ヴィクトール11世が真剣な表情で言う
「どう言う事だっ?何故CITCの封印が解かれているんだ!?」
ガイたちが驚き ヴァッガスが言う
「し…しーあいてぃーしー?」
メテーリが言う
「何それ?もしかして、この機械の名前?」
ロドウがハッとして言う
「思い出した!シュレイザーの歴史書に書かれていたよ!?ガルバディアのベネテクトたちが 相棒の大剣使いと共に 命を駆けて 封印に向かったって言う!」
ガイが驚いて言う
「その封印が解かれていると…っ!?」
ヴィクトール11世が言う
「僕が以前 力を失った宝玉を回収に来た時には 全てのCITCのプログラムが停止されていた… それなのにっ!?」
ヴァッガスが真剣な表情で言う
「ガルバディアのベネテクトや大剣使いたちが 命懸けで封印したものが 解かれちまってるって…?それも、以前ヴィクトールが来た時には封印されてたってんなら 封印が解かれたのは最近だって事か!?」
ヴィクトール11世が考える ガイがヴィクトール11世へ向いて言う
「ヴィクトール様、貴方様が以前この地を訪れたというのは どれほど前の話になるのでありましょうか?」
ヴィクトール11世が振り向いて言う
「僕が1人で回っていた時は 移動魔法なんて使えなかったから 今よりずっと時間が掛かったんだ でも… メテーリ、さっき言ってたよね?このスプローニの物とツヴァイザーの物も 生きている感じがしたって?それは CITCのプログラムが実行されている状態という事だと思う それなら こことツヴァイザー以外の物は そうは感じなかったの?」
メテーリが言う
「うん、アバロンのもローゼントのも 生きてる感じはしなかった だから、何かのお呪い程度にしか思ってなかったのよ」
ヴァッガスが言う
「アバロンやローゼントの台座にも ひっついてやがったって事か」
ガイがハッとして言う
「そういえば…」
皆がガイに注目する ガイが皆へ向いて言う
「皆は気付かなかったか?アバロンとローゼント それに対し ツヴァイザーとスプローニは」
ヴァッガスがハッとして言う
「そうか!ツヴァイザーとスプローニは 魔物や機械兵の新しい残骸が多くありやがった!」
ヴィクトール11世が驚いて言う
「確かにっ!…僕はただ 機械兵や魔物同士の争いによって出来たものだと思ってしまったけど 同じ場所に共存していたそれらが その2国に限って 急に争いを始めるのは不自然だ」
ロドウが驚き視線を下げた先 ハッと気付いて言う
「あっ ここのもだ…!」
皆がロドウへ向く ロドウが床にある骸を見て言う
「あの骸」
ヴィクトール11世がロドウの視線の先を見て言う
「ああ、あれはね?さっき君が言った CITCを命懸けで封印するために向かった ベネテクトとその相棒の…」
ロドウが言う
「うん、同じ様な骸が 各国にある事には気付いていたんだけど ツヴァイザーとこのスプローニだけ」
ロドウが良いながら骸へ近づき しゃがんで言う
「ほら、ここに」
皆がやって来てロドウの示すものを見る メテーリが言う
「あ!これっ!」
ロドウが言う
「確か ローレシアで死者を弔う印だよね?戦場で亡くなった者たちが 家族や仲間の元へ戻れる様にって …この印がね?ツヴァイザーとここにだけあったんだ 他の国にも同様の骸があったのに 印があったのはその2国だけなんだよ」
ガイが言う
「描かれてから 間もないな?」
ヴァッガスが近づき 匂いをかいで言う
「…ん?この匂い どっかで嗅いだ事があるぜ?えっと…」
ヴァッガスが悩む ガイが言う
「では、我々がシリウス様から力を頂いた後 少なくともヴァッガスが 出会った事のある人物という事か」
メテーリが言う
「ちょっと!ヴァッガス!誰よ!?早く思い出しなさいよ!」
ヴァッガスが衝撃を受け慌てて言う
「だぁあー そう急かすなよっ!?俺だって一人一人の人の匂いが分かるようになっても それが誰だって分かるまでには時間が掛かったんだ 記憶にはあったって それが誰だったか思い出すのは大変なんだぜ!?」
ガイが真剣に印を見て言う
「これは… 恐らく指先で描かれている この細さから見て とても痩身な男… もしくは、女性ではなかろうか?」
メテーリが衝撃を受け怒って言う
「ヴァッガス!早く思い出しなさいっ!!」
メテーリがヴァッガスをつねる ヴァッガスが痛がって叫ぶ
「いででででっ!何でつねるんだよ!?俺が力を得てから会った女なんて… リジューネ陛下かそれか 兵舎の食堂のおばちゃん位だぜ?」
メテーリが驚いて言う
「リジューネ陛下が!?」
ヴァッガスが困り焦って言う
「いや、待てっ 落ち着けって?リジューネ陛下の匂いならすぐ分かる これは… そんな匂いじゃねぇ けど…」
ヴァッガスが匂いをかいで考える ヴィクトール11世が首を傾げて言う
「食堂のおばちゃん …ではないよね?」
ガイが表情を困らせて言う
「いや …確かに とてもパワフルなお方なのですが 流石にここまでは来られないかと」
ロドウが苦笑して言う
「ガイ… そんなに真剣に答えなくても 良いと思うよ?」
ヴァッガスが考えながら言う
「なんっつーか… 例えるならメテーリみてぇな感じなんだよな?魔法を使う…」
メテーリが首を傾げて言う
「魔法使い?リジューネ陛下は 魔法は使えないって噂だし… …あ!もしかして!」
【 シュレイザー城 玉座の間 】
リジューネがCITCの封印を解いている 第一部隊長がそれを見つめていた視線を変える 第一部隊長の視線の先 副隊長が骸の前に印を描き 骸を見て祈りを捧げる
シュレイザー城 城門前
リジューネを先頭に城から出て来た所で リジューネが何かに気付き空を見上げて言う
「うん?」
ガイたちがメテーリの対人移動魔法で凄い勢いで飛んで来る ヴァッガスが叫ぶ
「メテーリ!やべぇえぞ!ぶつかっちまうーっ!」
メテーリが涙ながらに叫ぶ
「きゃぁあーっ!リジューネ陛下!避けてぇええーーっ!」
リジューネが驚き呆気に取られて言う
「なっ!?」
第一部隊長が叫びながらリジューネを突き飛ばす
「リジューネ陛下っ!」
リジューネが突き飛ばされると同時にガイたちが先ほどまでリジューネの居た場所に突っ込む 激しい轟音にリジューネと第一部隊員たちが驚き呆気に取られ 副隊長が慌てて言う
「隊長!」
リジューネがハッとして言う
「ライハス隊長!無事かっ!?」
爆煙が収まった所に 頭を抱えるヴァッガスとガイ 苦笑するロドウ そしてメテーリが第一部隊長を下敷きに座り込んで居て メテーリが言う
「はぁ~ あっぶなかったぁ~」
ヴィクトール11世が軽やかに着地して言う
「もう少しで対人移動魔法の相手であった リジューネ女帝に突っ込む所だったね!けど この感じ 僕はとっても懐かしかったよ!あははははっ!」
第一部隊長が苦しそうに言う
「リ…リジューネ陛下…」
第一部隊長が気絶する リジューネが慌てて言う
「ライハス隊長っ!?メ、メテーリ副隊長!即座にその場を降りよ!命令だっ!」
メテーリが疑問する
副隊長が第一部隊長へ回復魔法を施している リジューネが言う
「断る 私はこの世界を救うため CITCの封印を解除しているのだ」
ヴィクトール11世が踏み出して言う
「CITCは人の手に負える物ではないんだ!このままでは 過去の過ちを繰り返してしまう!」
リジューネが言う
「私とて この世界が悪魔力に覆われた原因が そもそもあのCITCであった事位は知っている」
ヴィクトール11世が驚いて言う
「なっ!?…では何故!?」
リジューネが言う
「そうであっても シリウス様は この世界のCITCを “破壊する” ではなく “封印する” 事でお止めになられた それは即ち この世界の悪魔力を中和させるために この機械が再び必要であった為であると …私は そう考えた」
ヴィクトール11世が呆気に取られた後視線を落として言う
「シリウスが… シリウスがどうやってこの世界を救おうとしていたのか それは 僕にも分からない… けどっ!」
リジューネが気付いて言う
「『シリウス』だと?貴様っ!シリウス様を呼び捨てにするなど 恐れ多いっ 大体 貴様は何者だ!?」
ヴィクトール11世がハッとして言う
「それはっ …貴方はきっと信じてくれないだろうけど 僕はっ!」
皆がハッとする 周囲に機械兵や魔物が集まる リジューネが表情をしかめて言う
「しまった…っ 囲まれたかっ」
皆が戦闘体制に入る リジューネが剣に手を掛けて言う
「移動魔法陣までは遠い… くそっ 私1人では 皆を向かわせる事が…っ」
ガイがリジューネの前に立って言う
「リジューネ陛下 奴らは我々が片付けます どうか 第一部隊の者へも 戦闘行動は止めさせ 皆で我らの後方へ固まって下さい」
リジューネが驚いて言う
「何を言うっ!?ここはもはや 一か八か 一点集中で 移動魔法陣までの道を 切り抜けるしかっ!」
ガイが振り返り微笑して言う
「我らへ お任せを」
リジューネが驚き呆気に取られて言う
「っ…?う、うむ… 分かった…」
リジューネが気を取り直して 第一部隊へ指示を送る
「第一部隊!総員!防御体制へ移行!多国籍部隊の彼らの後方へ固まれ!」
【 ソイッド村 】
ザッツロード6世が言う
「クラウザー殿、如何ですか?」
ベハイムが微笑んで言う
「はい、これなら十分 解析が行えます」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「良かった~ 後、何回ローレシアとソイッド村を行き来したら良いかと 流石に心配してしまいました」
ベハイムの周囲を埋め尽くさんとする機械が置かれている ベハイムが苦笑して言う
「ザッツロード王子に 荷物運びをさせてしまい 本当に申し訳ありませんでした …あ、女性方にも 重い物を運ばせてしまい」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「彼女たちは最初から荷物運びはしていませんでしたけど… でも、移動魔法に関しては 礼を伝えておきます 彼女たちの移動魔法の丁寧さは 僕など足元にも及びませんから」
ベハイムが微笑して頷いて言う
「はい、よろしくお願いします …では ここからは 私の頑張りを お見せする番ですね?」
ザッツロード6世が微笑して言う
「朗報を期待してます!」
ベハイムが頷く
ザッツロード6世が造船所の出入り口から出て来る ラーニャがだらけて言う
「あぁ~もうっ!絶対に嫌!今度こそ私 移動魔法やらないから!」
レーミヤが苦笑して言う
「そうは言っても あの転送装置を解析するには 多くの機械が必要だというのだから」
ミラが言う
「ローレシアの人たちに 気付かれないように持ち出す…って言うのが 結構大変なのよね…」
ザッツロード6世がやって来て微笑して言う
「解析に必要な機械は 全て揃ったって 皆に御礼を伝えて欲しいって言われたよ それから、後は任せてくれって」
ラーニャが大きく息を吐いて言う
「や~っと 終わったぁあ~っ!」
ミラが苦笑する レーミヤが微笑んで言う
「これからは クラウザーさんのお食事を運ぶ位で 良さそうね?ソルベキアの方は どの様なお料理がお好みなのかしら…?」
ラーニャが石化してから言う
「それも私たちの仕事~っ!?」
ミラが視線を逸らして言う
「ソルベキアのプログラマーって… きっと作業に時間が掛かるんでしょうね?そんな気がするわ…」
ザッツロード6世が一瞬驚いてから軽く笑って言う
「あはは… そんな気がする だなんて ミラにもヴィクトール様やヘクターみたいに アバロンの力が備わって来たのかな?」
ミラが衝撃を受け慌てて言う
「わっ!?私はソイッド族よ!?アバロンの力なんて備わるはずないじゃない!?ザッツじゃあるまいしっ!」
ザッツロード6世が疑問し苦笑して言う
「え?僕はローレシアの民だよ アバロンの力は 欲しくても備わらないさ」
ミラが言う
「そぉ?ザッツはアバロンかぶれだから 備わってしまいそうよ?」
ラーニャが笑って言う
「あ!それ分かる分かる!」
ザッツロード6世が呆気に取られて言う
「え?そうかい?…ちょっと嬉しいかな?」
ラーニャが怒って言う
「喜んでどうするのよっ!?馬鹿ザッツ!」
ザッツロード6世が呆気に取られた後 照れて言う
「え?…えへへ」
ラーニャが衝撃を受ける ミラが溜息を吐く レーミヤが苦笑する
【 スプローニ城 城門前 】
第一部隊員らが呆気に取られ 第一部隊長が言う
「…信じられん 人が… 機械兵と同等 …いや、それ以上の力で」
リジューネが険しい表情で見つめる 副隊長が怯えて言う
「あれは… 人の力なんかじゃないっ まるで…っ」
ガイの剣先の前 機械兵が地面に倒れる ガイが周囲を確認する ヴァッガスが立ち上がり ガイへ振り返って笑みを見せる ガイがヴァッガスの笑みを受け微笑する ヴァッガスがハッとして叫ぶ
「ガイっ!後ろだ!」
ガイがハッとして振り返る 機械兵が武器を振り下ろす ガイが気を取り直し空へ回避しようとする 先ほど倒した機械兵がガイの足を掴む ガイがハッとして言う
「なっ!?しまったっ!」
ヴァッガスが叫ぶ
「ガイーっ!」
ガイが焦って機械兵へ向く 機械兵が武器を振り下ろしている途中で衝撃を受け反り返る ガイが一瞬驚いた後 長剣で足を押さえる機械兵へ攻撃を与え 飛び退くと同時に機械兵が倒れ その後ろに プログラム魔法剣を構えたリジューネが居る ガイが驚いて言う
「リジューネ陛下…!?」
リジューネが剣に付けられている機械の電源を切り 剣を収めて言う
「詰めが甘いぞ 多国籍部隊隊長」
ガイが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「申し訳ありません 助かりました」
リジューネが背を向けて言う
「…礼は不要だ 今の事を後の教訓として覚えておけ …と、貴殿の御尊父に教わった言葉だ 剣術と共にな」
ガイが驚く リジューネが振り返り微笑して言う
「それと 助けられたのは こちらの方だ …私は 危うく彼らの命を落とさせる所であった」
ガイが言う
「リジューネ陛下…」
リジューネが第一部隊へ向かって行く ガイが見つめているとヴァッガスが来て言う
「ハッ…兵士たちの命を心配してたとは 意外だったぜ」
ガイが微笑して言う
「…恐らく 以前ガルバディアへ彼らを連れて行ったのも 断腸の思いであったのだろう」
リジューネが第一部隊員らのもとへ辿り着くと 第一部隊長が言う
「リジューネ陛下」
リジューネが言う
「…移動魔法陣への道は切り開かれた 行くぞ」
副隊長が言う
「陛下 お次はどちらへ?残るは ガルバディアですが…」
リジューネが立ち止まって言う
「…奴には敵わぬ ガルバディアは諦め ローレシアへ帰還する」
副隊長が返事をする
「はっ!」
第一部隊長がガイたちを見てから リジューネへ近づき小声で言う
「陛下っ 奴らは!?…あの力 ただ事ではございませんっ」
リジューネがガイたちを見る リジューネの視線の先 ガイたちが集まり話をしている リジューネが視線を逸らして言う
「彼らは 我らローレシア帝国の多国籍部隊 その彼らには… 彼らの作戦を遂行させておけ」
第一部隊長が驚いて言う
「し、しかしっ」
リジューネが歩き出す 第一部隊長が慌てて言う
「陛下っ!?そ、総員!リジューネ陛下に続け!」
リジューネと第一部隊が移動魔法陣へ向かって行く ガイがその様子を見て微笑する
宝玉の間
メテーリが宝玉を置いて祈りを捧げる 仲間たちが後方で見守る中 ヴァッガスがガイへ向いて言う
「あのリジューネ女帝は 俺たちが置いて行った宝玉を取っちまったりは… してねぇだろうなぁ?」
ガイが微笑して言う
「断言は出来かねるが… 恐らく それは無いだろう」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!僕もそう思う!まぁ…何となくだけどね?えへへっ」
メテーリが祈りを捧げ終え 宝玉を見て微笑する ロドウが笑顔で言う
「それにしても 宝玉を安定させるのに メテーリの力が必要だったなんて ガイは… それでメテーリを連れて行こうとしたの?」
ガイが苦笑して言う
「いや、そんな事はまったくもって無い 私も宝玉の安定にメテーリの力が有効であるとは 思いもしなかったのだ」
ヴィクトール11世が言う
「彼女の力が有効と言うよりも 僕らの力がちょっと問題なんだよ ほら、魔物の遺伝子情報が入っちゃってるでしょ?宝玉は 元々人を守る為に 作ったものだったらしいから」
ガイたちがヴィクトール11世を見てガイが言う
「なるほど…」
ヴィクトール11世が微笑して言う
「けど、一応 そんな僕らでも 出来なくはないってシリウスBが言ってたよ だから… 安心して!」
ヴィクトール11世が笑顔になる ガイたちが衝撃を受けヴァッガスが言う
「安心してって… 何に安心しろってんだ!?」
メテーリが来て言う
「何騒いでるのよ?何の話?」
ヴァッガスが困って言う
「あ、あぁ… いや、何でも」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!例え ローレシア第一部隊の隊員たちに 化け物扱いされても 僕らはちゃんと人だから安心して!って話!」
ガイたちが衝撃を受け ヴァッガスが焦って言う
「そういう意味だったのかよ!?」
ロドウが苦笑して言う
「化け物かぁ… それはちょっとショックかなぁ…」
ガイが苦笑して言う
「そういえば その言葉には あのシリウス様ですら 平静を乱されていたな… 今なら その気持ちも 少しは分かる気がする」
メテーリが衝撃を受け焦って言う
「ち、違うわよ!ガイたちは化け物なんかじゃない!何処からどう見たって 昔と変わらない!普通の人じゃない!?」
ロドウが苦笑して言う
「ぼ… 僕はだいぶ昔と変わったけどね?特にサイズ的に…」
メテーリが衝撃を受け慌てて叫ぶ
「貴方のは夢が叶ったんでしょ!?」
ロドウが照れる
「え?えへへ…っ」
ヴィクトール11世が表情をゆがめて言う
「何処からどう見ても 普通の人かぁ~…」
ヴィクトール11世の尻尾が人知れず動く ヴァッガスが悪戯っぽく笑んで言う
「化け物上等!」
皆が驚く ヴァッガスが胸を張って言う
「化け物みてぇに強くって 頼りになる仲間だろ!?俺らは皆の為に戦うんだ!化け物だろうと何だろうと関係ねぇえ!要はその力で 何をやるかって事だぜ!」
ガイが苦笑し頷いて言う
「うむ、そうだな なんと言われようと 我らは我らの正義のために戦う 人々には… その結果を見て 判断して頂こう」
メテーリが呆気に取られてから噴出し 笑って言う
「なーんだ ガイってやっぱり ローゼントの王様丸出しだったのね!?自分たちの行動で 人々に判断を仰ごうだなんてさ!?」
ガイが衝撃を受け焦って言う
「そ、それは…っ い、いや、これは 多国籍部隊隊長としてっ!いや、そもそもの 私の性格がっ」
皆がガイの矛盾に笑う ヴァッガスが笑いながら言う
「だから、元々王様だから 性格が王様なんじゃねーか!」
ガイが分からず疑問して焦って言う
「そ、それはっ …否!ヴァッガスも同様の事を 言ったではないか!?」
ヴァッガスが笑んで言う
「俺はみんなの為に戦うって言ったんだぁ どっちかっつったら 家族や仲間 自分に関係のある奴らの為だな!」
ガイが衝撃を受け怒って言う
「なぁーっ!何を言うっ!?自分に関係のある者だけを守ろうなどとっ!ヴァッガス!貴殿はそれでもっ!」
ロドウが笑顔で落ち着かせようと言う
「まぁまぁ…」
ガイ以外が笑う ガイが怒っている
【 ローレシア帝国 移動魔法陣 】
リジューネと第一部隊が 移動魔法で現れる
ローレシア城 玉座の間
リジューネが入って来ると 大臣らが表情を困らせて居り 研究者Tが振り返って言う
「これはこれは リジューネ陛下 各国の移動魔法陣が使用出来たとは言え とてもお仕事のお早い事で…?お勤めご苦労様でした」
リジューネが研究者Tへ鋭い視線を送った後 目を伏せて言う
「各国のCITCは封印を解除した これで」
研究者Tが首を傾げて言う
「ガルバディアのCITCは 未だ封じられておる様ですが?」
リジューネが目を開き言う
「ガルバディアは神の国だ その国の封印に手を付ける等 出来よう筈もあるまい」
研究者Tが言う
「お言葉ですが… それでは 私の計算が」
リジューネが言う
「計算が狂うのなら やり直せ チャージの日数が 5日から10日になろうが構わぬ」
研究者Tがムッとしてから言う
「…分かりました でしたら その様に致します」
リジューネが不満そうな息を一つ吐いてから玉座へ向かう 研究者Tが近くへ言って言う
「それはそうと リジューネ陛下」
リジューネが研究者Tへ鋭い視線を向けて言う
「今度は何だ」
研究者Tが苦笑しながら言う
「はっはっは いや、お厳しいですな?私はリジューネ陛下のお力になれる様にと 提言を致しておりますのに」
リジューネが視線を向けないで言う
「用があるのではないのか?無いのなら 直ぐに計算のやり直しでもするが良い」
研究者Tが笑んで言う
「その前に、リジューネ陛下へ 私の言葉が正しい事を 証明して見せようと思うのです」
リジューネが研究者Tへ向いて言う
「証明だと?」
研究者Tが微笑して言う
「はい、リジューネ陛下が私に厳しいお言葉を掛けるのも ひいてはガルバディアのCITCの封印をそのままに逃す事も 全ては私の言葉に 信用が置かれないからではないかと…」
リジューネが一瞬反応し視線を逸らして言う
「…そんな事は無い」
研究者Tが首を傾げて言う
「そうでしょうか…?」
リジューネが顔を向けて言う
「くどいぞっ そもそも 貴様の言葉を疑っているのであれば わざわざ第一部隊の隊員らの命を危ぶませてまで 各国の封印を解きに回ったりはせん!」
研究者Tが微笑して言う
「それもそうですね …もっとも 他に手が無かったのでしたら 話は別ですが」
リジューネが不満を抑えている様子で言う
「何を証明して見せるのか?と 私は聞いている」
研究者Tが笑って言う
「あっはっは はい、そうでしたね では 御帰国されたばかりで お疲れかと思われますが どうか機械室まで ご足労頂けませんでしょうか?」
リジューネが疑問して研究者Tを見る 大臣らが表情を困らせ顔を見合わせる
機械室
リジューネたちが現れる 研究者Tが笑んで言う
「現在までにチャージされた 中和作業を行うためのエネルギーは25%です」
リジューネが疑問して言う
「25%?封印を解いたばかりにしては 随分多い様に思うが?」
研究者Tが笑んで言う
「とは言いましても この25%は 試験的にチャージしておりましたものです」
リジューネが言う
「試験的に?」
研究者Tが笑んで言う
「はい、リジューネ陛下 我々ソルベキアの研究者らとて 世界を救うほどの大事ともなれば 心配にもなります 世界中の悪魔力を中和する前に まずは一つ 実験をしたいと思い その為に 先だってこのローレシアのCITCにて チャージを行っておりました」
リジューネが一瞬呆気に取られて言う
「実験だと?…そうか 確かにそうだな 相手は人や動物 更には機械兵までもを 悪しきものへと変える力 それらを全て中和させる程の大事では …それで、その実験というのは?」
研究者Tが笑んで言う
「実験とは言え 多くのエネルギーを使うのですから それを無駄には出来ません 相応の中和作業を行い 悪魔力の脅威を無くそうと言うものです …そう このローレシア大陸のね!」
リジューネが驚く 研究者Tが自信を持って言う
「他の大陸に先立ち このローレシア大陸にある全ての悪魔力を 中和させて ご覧に入れましょう!」
リジューネが呆気に取られる
城下町
フォーリエルが嬉しそうに団子を食べ言う
「あーん うんうん… いやぁ~ やっぱテスの団子は 美味いよなぁ!?」
テスクローネが微笑んで言う
「先日フォーリエルが良いと言ってくれた 甘いタレの団子はとても好評だったよ これからは定番商品にしようと思う 名前は みたらし団子でね?」
フォーリエルがテスクローネの言葉に考えながら言う
「みたらし団子…?へぇ 面白い名前だな!俺はてっきり 甘タレ団子とか 甘々団子かと思ったぜ!…それにしても まさかあんな甘いタレを付けた団子が 美味いとはな~」
テスクローネが言う
「うん、それに みたらし団子は意外な事に 女性だけでなく 男性客も喜んでくれているんだ」
フォーリエルが笑顔で言う
「だろぉ!?俺が美味いってんだから そらぁ他の男だって 美味いって言うさ!」
フォーリエルがニコニコする テスクローネが軽く笑んだ後言う
「ふふっ …しかし、草団子を変化させた あん団子は やはり女性の方が喜んでくれるよ 男性からの注文は… フォーリエルぐらいだ」
フォーリエルが驚き首を傾げて言う
「あぁ!?そ…そうかぁ?俺は美味いと 思うんだけどなぁ?」
テスクローネが苦笑して言う
「フォーリエル …もしかして 団子の味見まで 私に気を使って 美味いと言ってくれているんじゃないのか?褒めてくれるのは嬉しくはあるが 味見役としては 公平な意見を欲しい時もあるのだが?」
フォーリエルが衝撃を受け 慌てて言う
「おっ 俺は!団子の味見は本気で!美味いもんは 美味いって言ってるぜ!気なんて使ってねぇって!」
テスクローネが呆気に取られてから苦笑して言う
「そうか… ふふっ 分かったよ 疑って悪かった」
フォーリエルがそっぽを向いて言う
「おうっ そうだぜ!相棒の言葉を疑うなんて いけねぇ事だ!そんなに信じられねぇんなら 一度まずい団子を俺に出してみろよ?」
テスクローネが呆気に取られ首を傾げて言う
「まずい団子か… 考えた事も無かったが ある意味、それを考える事も 美味い団子を作るのには 必要な事かもしれない… それじゃ フォーリエル!」
フォーリエルが疑問する テスクローネが笑顔で言う
「これからは まずい団子を研究するから その味見役に」
フォーリエルが衝撃を受け慌てて言う
「だあぁあ ま、待てっ!俺が悪かったーっ!」
テスクローネが呆気に取られた後軽く笑い 笑い出す フォーリエルがテスクローネの笑顔を見て表情を綻ばせ 一緒に笑う 団子屋の客が言う
「うん?な、なんだ!?あれ!」
テスクローネとフォーリエルが疑問し 声の方を見る 店の客や道行く人が 団子屋の客の指差すものを見る 皆の視線がローレシア城へ向く フォーリエルが驚いて言う
「ローレシア城が!」
皆の視線の先 ローレシア城に強い光が集まっている
ローレシア城 機械室
ソルベキア研究者が言う
「出力最大!中和システム 異常なし!」
ソルベキア研究者が言う
「照射範囲!ローレシア大陸」
機械室の機械が高鳴る リジューネが視線を強めて見つめる
城下町
多くの人々がローレシア城を見上げる フォーリエルがテスクローネへ向いて言う
「テス!?一体 何が起こってんだ!?」
テスクローネが視線を強めると周囲にプログラムが現れ ローレシア城を覆う光りを解析して言う
「っ!あれはっ 聖魔力!エネルギーの塊だ!それにっ …この数値は尋常じゃない!結界を張るエネルギーを遥かに越えている 一体何をっ!?」
フォーリエルが一度ローレシア城を見た後テスクローネへ問う様に見つめる テスクローネがハッとして言う
「…まさかっ!」
ローレシア城 機械室
ソルベキア研究者が言う
「エネルギー装填完了!」
ソルベキア研究者が言う
「システム!オールクリア!」
研究者Tが頷き 指差して叫ぶ
「聖魔力を照射しろ!」
ソルベキア研究者がスイッチを押す
城下町
皆の視線の先 ローレシア城に集まっていた光が 一瞬消えたかと思うと激しく光り上空へ放たれ その光が落ちてくる 皆が驚き 悲鳴を上げながら光から身を守る体制を取る テスクローネが目を見開き呆気に取られる フォーリエルがテスクローネを庇う様に光りから防御する
光りが止み 皆が恐る恐る目を開いて周囲を見る 皆が疑問して自分の手や近くのものや人を見る フォーリエルが目を瞬かせて言う
「な… 何だったんだ?何か… まだ目が眩んでるみてぇに…」
テスクローネが呆気に取られて言う
「…違う 皆がそう感じるのは この光に慣れていないから …悪魔力の霧が消えた 本当の世界の色を 知らないからだ」
フォーリエルが疑問して言う
「本当の… 世界の色?」
誰かが空を指差して言う
「み、見ろ!空が!」
フォーリエルが空を見上げて言う
「あ… 青い!?空が!…まるで 昔の絵に描かれている空みてぇだ!」
誰かが言う
「ローレシアが… リジューネ陛下が 悪魔力を追い払ったのか!?」
皆が驚き 間を置いて喜びの歓声が上がる
「すごいっ!あの悪魔力を!」
「悪魔力を… リジューネ陛下が!我らのローレシアが 悪魔力に勝ったんだ!」
皆が喜ぶ フォーリエルが驚いた表情から喜び 笑顔になってテスクローネへ向いて言う
「テス!?そうなのか!?ローレシアが!あのリジューネ女帝様が 悪魔力を追い払ったのか!?」
テスクローネが呆気に取られて居る
ローレシア城 機械室
リジューネが研究者Tへ向いて言う
「…どうなったのだ?」
研究者Tが笑い出す
「は…はは…ははは… あははははっ!」
リジューネが心配して他の研究者を見る ソルベキアの研究者らが機械を操作して言う
「ローレシア大陸の悪魔力濃度4.98… 基準値を下回りました!悪魔力は 中和されました!」
リジューネが驚く ソルベキアの研究者が言う
「結界装置冷却 システム イエローからグリーンへ移行中 異常なし」
ソルベキアの研究者が言う
「悪魔力中和作戦 79%の成功を確認!」
研究者Tが大笑いして言う
「あーはっはっはっはっは!やったぞ!ガルバディアの機械を!?一度も失敗させずに成功させた!ソルベキア史上初の快挙だぁあ!あーはっはっはっはっは!!」
リジューネが静かに言う
「作戦は 成功か…」
リジューネが握り締めていた拳の力をそっと抜く
城下町
人々が喜び合っている フォーリエルが笑んで言う
「すっげぇえじゃねーか!新世界の力を借りずに!この世界の力だけで 悪魔力をぶっ倒したんだろ!?なぁあ!テス!お前も喜べって!」
テスクローネが呆気に取られたまま言う
「…駄目だ …ただ この大陸の悪魔力を中和させるだけではっ」
フォーリエルが不意を突かれて言う
「…あ?」
機械兵からの砲撃が結界のプログラムをすり抜けローレシア城へ被弾する 皆が驚き 続く砲撃に悲鳴を上げ逃げ惑い始める
ローレシア城 機械室
リジューネが慌てて言う
「何事だっ!?」
ソルベキアの研究者らが慌しく作業を行い言う
「結界外部からの砲撃を確認!結界プログラムが… 効力を持ちません!」
リジューネが驚いて言う
「馬鹿なっ!?結界が効力を持たないとはっ!?機械兵からの攻撃ではないのか!?一体何からの攻撃だ!?直ぐに敵を確認しろ!」
ソルベキアの研究者らが操作を行い モニターに移動魔法陣から現れる機械兵の映像が出る リジューネが驚いて言う
「あ…あれはっ!中部大陸 カイッズ国周囲で製造された機械兵!」
研究者Tが驚いて言う
「何故だっ!?機械兵は 悪魔力の薄い場所では 起動エネルギーを得られない!奴らは 動く事が出来ない筈っ!一体どうして!?奴らはどうやって動いている!?」
機械兵からの砲撃でローレシア城が揺れる 皆が怯み リジューネが言う
「それよりも防衛だ!結界はどうなっている!?何故 結界プログラムの効力が弱まっているのだ!?」
ソルベキアの研究者らが確認して言う
「結界プログラムに変化はありません!既存のプログラムを間違いなく実行しています!」
リジューネが言う
「ならば プログラムを強化しろ!もっと強力な結界を張り ローレシア帝国を守るんだ!」
ソルベキアの研究者が振り返って言う
「出来ません!結界プログラムを強化するなどっ ガルバディアのプログラムを上回る結界は 我々には作れません!」
リジューネが目を見開いて言う
「何だと… ではっ どうしろとっ!」
機械室の扉が開く 皆が振り返る フォーリエルが荒い息を整える中 フォーリエルの背からテスクローネが降りながら言う
「結界プログラムを 対物バリアプログラムへ移行するのです 悪魔力へ対する防御が無くなる分 同じエネルギーでも対物防御力は倍増します そして これは緊急事態 …残念ながら 転送装置使用の為 別途保護していたエネルギーを使うしかないでしょう リジューネ陛下!」
リジューネがハッとして言う
「分かった!すぐに分配プログラムの変更を!」
研究者Tが言葉を失う テスクローネに続きリジューネが操作盤へ近づき 生態識別パネルに手を付いて言う
「エネルギーの分配を変更する!」
モニターにプログラムが流れた後 エラー表示が出る テスクローネとリジューネが疑問し テスクローネが確認作業をする リジューネが再び言う
「どうした!?私の音声を認識しろ!私の名はリジューネ・デネシア このローレシアの王だ!」
プログラムが流れた後再びエラー表示が出る リジューネが疑問して言う
「何故だ!?前回は…っ」
テスクローネがハッとして言う
「リジューネ陛下の認識履歴にバグがっ これは…」
テスクローネが作業を続ける リジューネがテスクローネへ向いて言う
「どうした!?何があった!?」
テスクローネが結論に驚いて言葉を失う リジューネが慌てて言う
「テスクローネ!」
テスクローネが何とか言葉を口にする
「エ、エネルギーが…っ 転送の為に保管していたエネルギーが 全て使われてしまっている!359秒前!?先ほどのっ!あの中和作業に!」
テスクローネが研究者Tへ向いて言う
「貴方ですか!?リジューネ陛下の生態識別システムを偽造して!あの中和に ローレシアのエネルギーを 全て 利用してしまったのですね!?」
リジューネが驚いて言う
「何だと…っ!?転送の為に残しておいたエネルギーを使ってしまったのか!?何故そんな勝手を!?私はそんな事を許した覚えは無いぞ!」
研究者Tがリジューネを見ながら困り果てて言う
「わ…私はっ 悪魔力の中和をっ 中和作戦を成功させようとっ …こ、この世界の悪魔力を無くしさえすればっ て、転送装置などっ 使用する必要もっ!」
テスクローネが言う
「機械兵は 悪魔力を体内に蓄積させる事が出来るんです そもそも ただ大陸の悪魔力を消したって 魔力の存在する限り 悪魔力だけを全て消す事は出来ない 中途半端な中和作業などは持っての外!奴らは 悪魔力の存在する大陸でエネルギーを蓄え このローレシアを攻撃しに来ますよ!何度でもね!そして、奴らの狙いは CITCを制御する力!ローレシアは奴らに わざわざ制御装置の在り処を 知らしめてしまったのですよ!」
リジューネが驚いて研究者Tへ向く 研究者Tが悔しそうに目を強く瞑り俯いている リジューネが言う
「CITCの制御装置… 研究者T!」
リジューネが研究者Tへ向く 研究者Tがリジューネを見る リジューネが言う
「その制御装置と言うのは ローレシアに存在するのか?」
研究者Tが視線を下げて言う
「は…はい…」
リジューネがテスクローネへ向いて言う
「ならばテスクローネ CITCで得られるエネルギーを使い バリアプログラムを放つ事は出来ないのか?」
テスクローネが呆気に取られる 研究者Tが言う
「勿論可能です CITCは魔力穴から聖魔力、もしくは悪魔力を取り出す道具 そして、聖魔力は全てのエネルギーの源」
リジューネが言う
「直ちにCITCを利用し!ローレシア帝国へバリアプログラムを放て!」
テスクローネがリジューネへ向いて言う
「リジューネ陛下!CITCはこの世界を闇に落とした元凶です!それを利用しようなどと!」
リジューネがテスクローネへ向いて言う
「例え何であろうと 今このローレシアを …そこに住む全ての人々を守るには 他に方法が無い!違うか!?」
テスクローネが驚きリジューネを見つめる リジューネがテスクローネを見つめる テスクローネが視線を落とし目を閉じて考えた後 横目にフォーリエルを見てから言う
「…分かりました」
ソルベキアの研究者らが頷き合い操作をしながら言う
「CITC制御信号を確認」
「システム正常!聖魔力の抽出を開始します!」
テスクローネが一度目を閉じた後 ゆっくり目を開き周囲にプログラムを発生させて言う
「エネルギーの充填を確認 ハイスペック・バリアプログラムを実行する」
テスクローネの周囲にプログラムが放たれると同時に モニターにプログラムが転送され バリアプログラムが起動する
城下町
人々が逃げ惑う中 誰かがハッと気付いて空を見上げる 機械兵からの攻撃がバリアに衝撃を吸収され無効化する 人々が徐々に気付き始め 皆が空を見て心配そうに微笑して 仲間たちと顔を見合わせる
ローレシア城 機械室
リジューネがほっと息を吐いて言う
「…何とか持ち応えたか」
テスクローネが言う
「これは 単なる時間稼ぎでしか ありません」
リジューネがテスクローネへ向く テスクローネが言う
「このバリアを張り続ける事は とても多くのエネルギーを使用します 魔力穴から聖魔力を引き抜けば 残るのは悪魔力です 使用される事の無い悪魔力は どんどん世界に溢れ それから身を守るため ローレシアは更に聖魔力を引き抜く …その結果が この世界です」
テスクローネがリジューネへ向く リジューネが表情を険しくして言う
「…やはり我らは 新世界へ逃げる事でしか 生き延びる事は出来ぬのか」
テスクローネが間を置いてから席を離れて言う
「後は… ソルベキアの彼らが操作出来ます 私は これで」
テスクローネが去って行く リジューネがあっとテスクローネを振り返る フォーリエルがリジューネを見た後 テスクローネに続く
ローレシア城 城門前
テスクローネとフォーリエルが城から出て来る ガイたちが走ってローレシアへ向かって来ている ヴァッガスが言う
「あ!おいっ!あいつ!」
ガイがハッとしてから頷いて言う
「うむ!」
ガイたちがテスクローネとフォーリエルの前に走って来る 皆が立ち止まり ヴァッガスが言う
「おいっ!お前!この前の!」
ガイがフォーリエルへ向いて言う
「フォーリエル、貴殿らは何か知らないだろうか!?このローレシア大陸の異変 この大陸のみ 悪魔力が」
ヴァッガスが言う
「それだけじゃねぇ!悪魔力が無くなった代わりに 倍以上の機械兵が押し寄せてやがるぜ!?このままじゃ 結界が持たねぇんじゃねぇかって位よ!?」
テスクローネが視線をそらして俯く ガイたちが疑問する フォーリエルが言う
「ガイ隊長、ヴァッガス副隊長方も… 折角 隊長たちが 命懸けで集めて来た エネルギーだったってーのにっ!」
フォーリエルが悔やむ ガイたちが顔を見合わせ ガイが言う
「どうした?何があった!?」
【 ソイッド村 】
ベハイムが微笑んで現れて言う
「大変お待たせいたしました ザッツロード王子 お仲間の皆様」
ラーニャがだらけて言う
「もぉ~ 待ちくたびれたぁ~」
ベハイムが苦笑して言う
「申し訳ありません これでも 精一杯急ぎ 我ながら優秀な解析作業を行えたと 自負している所なのですが…」
ミラが振り向いて言う
「それはつまり、自慢出来るほどの物を 手に入れたって事よね?」
ベハイムが微笑して言う
「はい これで皆様の手料理が 食べられなくなるのは とても残念ですが 最高の結果をローレシアへ持ち帰る事が出来ます」
レーミヤが微笑んで言う
「気に入って頂けたのでしたら ローレシアへ戻っても またご用意させて頂きますよ?ね?ラーニャ」
ラーニャがまんざらでもない様子で言う
「まぁ どうしてもって言うなら…」
ベハイムが衝撃を受け慌てて言う
「あ、いえ…っ キャリトールの珍味に関しては ソルベキアの私には 少々理解が難しく…」
ラーニャが疑問して言う
「え?私、キャリトールの里料理なんて 出してないわよ?レーミヤと同じ ただの玉子焼きよぉ?」
ベハイムが衝撃を受けて言う
「あっ!…あれが …玉子焼き…」
ミラがそっぽを向いて言う
「イカ墨でも混ざってるのかと思ったわ」
ラーニャが疑問して言う
「わざわざ そんな手間なんて掛けなかったけど?」
ミラが溜息を吐き レーミヤが苦笑する ベハイムが周囲を見渡して言う
「…と、ザッツロード王子は どちらへ?」
ラーニャが立ち上がって言う
「ザッツなら 何かさっき 急に…」
ミラが言う
「ちょっと見て来る とか言って走って行ったわ 見るって言ったって ソイッド村は周囲を森に囲まれているのだから 何も見えないのに」
ベハイムが不思議そうに言う
「…そうでしたか」
レーミヤが言う
「ザッツが向かったのは 丁度、移動魔法陣のある 村の出入り口の方だったから 皆で行きましょう?」
皆がやって来ると ザッツロード6世が村の出口 結界の外に立っている 皆が驚き 顔を見合わせた後走って向かい ラーニャが叫ぶ
「ちょっと!ザッツっ!」
レーミヤが言う
「結界の外へ出ては 危険だわ!悪魔力に晒されてしまっては!」
ザッツロード6世が皆へ振り返る 皆が結界の端で立ち止まると ザッツロード6世が苦笑する 皆が驚き顔を見合わせると ラーニャが言いながら結界を出る
「ザッツ!聞いてるの!?」
ミラが慌てて言いながら追う
「ラーニャ!」
結界の外に出た ラーニャとミラが呆気に取られる 結界の内側に居るレーミヤとベハイムが顔を見合わせ疑問してから結界の外へ向かう ベハイムが驚いて言う
「こ…これはっ!?」
ザッツロード6世が言う
「悪魔力が… 中和されているんだ」
ベハイムが呆気に取られて言う
「これが… 中和… 悪魔力と聖魔力が 同量であると言う 最も自然の姿…」
ベハイムが空を見上げて驚く ラーニャが空を見て微笑して言う
「わ~… 青い空なんて久しぶりっ!」
ミラが微笑して言う
「ええ…」
レーミヤが微笑んで言う
「新世界では当たり前の空が こんなにも綺麗だなんて…」
ラーニャがザッツロード6世を見る ザッツロード6世が俯いて真剣な表情をしている ラーニャが疑問して言う
「ザッツ?何よ… 折角の青い空が 嬉しくないの?皆 こんなに喜んでるのに」
皆がザッツロード6世へ向く ザッツロード6世がラーニャの言葉に顔を上げてから慌てて言う
「あ、ああっ その… 最初は 僕も驚いて とても嬉しい気分になったんだけど その後になって 何だか… 急に心配になってしまって」
ミラが言う
「心配に?何が心配だって言うの?」
ベハイムが真剣に言う
「もしこれが… 彼らの… ソルベキアの研究者たちの行いだとしたら…っ ザッツロード王子 私も 一つ気掛かりな事があります ソイッド村の転送装置の解析も終わりました 直ぐにローレシアへ戻りましょう!」
ザッツロード6世がベハイムへ向いて頷く ラーニャたちが呆気に取られつつ顔を見合わせる
【 ローレシア帝国 上空 】
ザッツロード6世たちが移動魔法で空を移動している中 皆が驚いてミラが言う
「な、何なの!?あの機械兵の数!」
ラーニャが指差して言う
「見て!あれ!」
ザッツロード6世が驚いて言う
「ガイ隊長!?ヴァッガスにロドウ副隊長… ヴィクトール様も!」
ベハイムが言う
「恐れていた事が…っ」
皆がベハイムを見る
ザッツロード6世たちがローレシア帝国の移動魔法陣に到着する レーミヤがザッツロード6世へ言う
「それで、何処へ向かうの?」
ザッツロード6世が言い掛ける
「うん、まずは」
ラーニャとミラが同時に言う
「ガイ隊長たちの!」「ローレシア城へ!」
ラーニャとミラが顔を見合わせ ラーニャが言う
「すぐに皆の応援に行かなきゃ!」
ミラが言う
「ローレシア城へ行って 何が起きているのかを 確認するのが先でしょ!?私たちじゃ 機械兵には敵わないのよ!?」
ラーニャとミラが視線で喧嘩してからザッツロード6世へ向く ザッツロード6世が強い視線で言う
「ガイ隊長もヴィクトール様も 少し動きが鈍っている様に見えた きっと各国を回った作戦からの連戦で 疲れが出ているんだと思う ラーニャたちはガイ隊長の所へ行って 戦いのサポートをして欲しい 僕はリジューネ陛下の下へ行って このローレシア帝国に 何が起きているのかを確認して来る」
ラーニャとミラが呆気に取られ顔を見合わせる レーミヤが微笑して言う
「ええ!ザッツの指示に従いましょう?2人共?」
ベハイムが言う
「私はザッツロード王子と共に参ります」
ザッツロード6世がベハイムへ向いて頷いて言う
「はい、ソイッド村の転送装置の事もあるし クラウザー殿が居てくれれば 僕も機械の話に対し心強いです」
ベハイムが微笑して頷く ラーニャとミラが呆気に取られたまま顔を見合わせ ハッとしてラーニャが言う
「あっ えっとっ そ、そうね!そんな感じに!」
ミラが言う
「ええ、良い判断だわ さ、行きましょ!」
皆が頷き合い それぞれの方向へ分かれ走って行く
ローレシア帝国 結界端
ヴァッガスが給水を片手に言う
「そうなんだよ!まったく 後先考えねぇで ソルベキアの馬鹿研究者の言いなりになっちまって!あの女帝様が!」
メテーリが言う
「リジューネ陛下も まさか転送の為のエネルギーを 研究者Tって奴に使われちゃうとは 思わなかったんでしょ?リジューネ陛下も… 騙されたのよ」
ヴァッガスがメテーリへ向いて言う
「何だよメテーリ!お前 あの女帝様に 味方するつもりか!?」
メテーリが慌てて言う
「そ、そういうつもりじゃないけど!一応っ!…リジューネ陛下も 危険を犯してでも この世界を救おうと思って やったんじゃ ないかなぁ…って」
ヴァッガスが少し認めつつもフンッと顔を背けて言う
「ハッ!なんにしたって お陰でこの有様だぜ!」
ラーニャが言う
「それでっ 何であんたたちが無理して戦ってるのよ!?あんな数の機械兵に 勝てるわけないじゃない!?」
ヴァッガスが給水を飲み干して言う
「勝てるだなんて 俺たちだって思っちゃいねぇ!けど、バリアを張るのに聖魔力を使ったら その分 どんどん悪魔力を増やしちまうんだぜ!?だったら 少しでもエネルギーの消費を抑えるために 一体でも多くの機械兵をぶっ倒してやろうってよ」
ミラが驚いて言う
「そんなっ!無茶よ!」
ヴァッガスが言う
「無茶でもしょうがねぇさ!他に方法がねぇんだ!」
ヴァッガスが立ち上がって言う
「俺らに出来る事は これだけなんだ ここなら 限界ギリギリまで戦っても 直ぐにバリアの中に逃げ込める けど、機械兵ファクトリーじゃ そうは行かねぇ 力尽きた瞬間にやられっちまう …俺たちでも ローンルーズ以外の機械兵ファクトリーは ぶっ壊しにいけねぇんだ」
ヴァッガスが走り去る メテーリが俯いて言う
「ヴァッガスの馬鹿はさ 最初他の機械兵ファクトリーへ行こうとしたのよ 無理だと分かってても… けど、皆で何とか止めたの 無駄死にする位なら ここで戦うべきだって」
ラーニャたちが表情を悲しめてヴァッガスの姿を見る ヴァッガスが機械兵と全力で戦っている レーミヤが言う
「ガイ隊長やヴィクトール様も?」
メテーリが言う
「あぁ、あの二人は 考え事をするのは戦場が良いとかって?」
ラーニャたちが衝撃を受ける メテーリが言う
「神経が研ぎ澄まされて 良い案が浮かぶんだとか言ってたわ …本当かどうか分からないけど」
ラーニャたちがガイたちを見る
ローレシア城 玉座の間
リジューネが言う
「安心しろ、ザッツロード王子 多国籍部隊の彼らが 各国へ置いた宝玉を回収し その力を使用する様な事はしない」
ザッツロード6世が言う
「え…?そう ですか …しかし、このままでは 悪魔力が増え続け いずれは この旧世界が!」
リジューネが間を置いて言う
「CITCを使用せず 時間を得る方法が 一つだけ残されている …無論 機械兵ファクトリーの破壊等では無くな」
ザッツロード6世が驚いて言う
「その方法とは!?私に出来る事でしたら 直ぐにでも!」
リジューネが言う
「貴殿の力は 必要ない 必要なのは… そうだ もはや 方法を選んでなどはおれぬ 理想などは追わず 現実を見なければ」
リジューネが立ち上がり大臣へ向いて言う
「大臣、研究者Tを呼べ!」
大臣らが驚いて言う
「え!?」
「研究者Tをですか!?」
ベハイムが乗り出して言う
「陛下!彼は確かに優秀な研究者ではありますが 後に生じるリスクに対し鈍感である所があります 彼へ何かを命じるのでしたら 私も共に!」
リジューネが歩き振り返って言う
「リスクなど… これは最終手段だ 時間を掛けている暇はない 大臣!何をしている!?直ぐに奴を機械室へ呼び付けろ!私も向かう」
大臣らが慌てて返事をする リジューネが立ち去る ザッツロード6世がベハイムへ向いて言う
「リジューネ陛下が何をなさろうとしているのか 分かりますか?」
ベハイムが考えて言う
「この状態で CITCを使わず ローレシア帝国や人々を守る方法… 考えられる事は!」
機械室
リジューネが研究者らの作業を見つめる ベハイムが言う
『リジューネ陛下はっ ガルバディアのエネルギーを 奪うつもりかもしれません!』
玉座の間
ザッツロード6世が驚いて言う
「あのリジューネ陛下が!?」
ベハイムが視線を下げて言う
「リジューネ陛下は ガルバディアを… 神の国である シリウス様の居城を守るために 過去 何度も自ら研究者を連れガルバディアへ赴き ガルバディアの保存プログラムに異常が無いかを確認させていました ガルバディアはローレシアの王が その保全を任された国… それでも 危険の生じるその作業へ向かう王は 歴代のローレシア王を見ても リジューネ陛下ただお1人 誰よりもシリウス様を愛し お慕いしていたリジューネ陛下が そのガルバディアから…」
ザッツロード6世が視線を逸らして言う
「…確かに、今は どんなに慕っていた方との約束であっても 民の居ないガルバディアを守るより このローレシア帝国を守る事の方が…」
ザッツロード6世がはっとして言う
「しかしっ ガルバディアには!シリウスBが!彼が!それを認めるとはっ!」
ベハイムが驚いて振り向いて言う
「シリウス B!?」
機械室
研究者Tが操作盤を操作しているがモニターを見上げ表情を落とし 振り返ってリジューネを見て顔を横に振る リジューネが一瞬間を置いた後機械室を出て行く
玉座の間
ザッツロード6世がベハイムへ向いて言う
「あのシリウスBに もし ローレシアの人々を守る気があるのなら きっと とっくにエネルギーを送ってくれていると思うんです …しかし、彼は それをしていない きっと 機械兵ではなく この世界の敵と言う者と戦うため エネルギーを渡す訳には行かないのだと思うんです だとしたら!?もし我々が それを奪おうとしたら!?リジューネ陛下や 我々の事を!?」
ベハイムが呆気に取られた状態から 慌てて機械室へ走って行く ザッツロード6世が追う
機械室 前
警備兵が言う
「リジューネ陛下は 先ほどこの部屋を後にされた 陛下からのご命令で 例えザッツロード王子であろうと お通しする事は出来ません」
ベハイムが言う
「リジューネ陛下はどちらへ!?急ぎ伝えねばならない事なのですっ!」
警備兵が言う
「どちらへ向かったかは分かりかねる…が すぐに戻ると仰られていた 急用であるのなら ここで待つ方が 無駄にすれ違ってしまう事も 無いと思うが?」
ベハイムが心配そうな表情を見せる ザッツロード6世が言う
「彼の言う事が正しいと思います ローレシアで機械操作が出来るのは このローレシア城の機械室だけ… すぐに戻られると言うのなら ここで待ちましょう?」
ベハイムが一度ザッツロード6世を見た後心配そうに言う
「シリウス様は 人々の言動を まるで天から見ておられるかの様に ご存知であったと言われています… ガルバディアへ危害を加えようと言う リジューネ陛下の事に そのシリウスBが気付いたら…っ!?」
ザッツロード6世が一瞬呆気に取られてから落ち着いて言う
「落ち着いて下さい クラウザー殿 もし、本当にそうであるなら リジューネ陛下はとっくにシリウスBの手に掛かっています もしかしたら 我々の予想は外れているのかもしれませんよ?それか、その言い伝えの方が 間違っているのかもしれません 私はシリウス様やシリウスB様の事を詳しくは知りませんが ガルバディアの力を使いこなしていた ベネテクトの事は知っています 彼も目の前にある事以外の事を 多く知る事が出来た様ですが 少なくとも その情報だけで 天罰を与えるような事はしませんでした きっと リジューネ陛下の前に姿を現し それを行わない様に助言を与えてくれるはずです」
ベハイムがザッツロード6世を見つめ一つ息を吐いて言う
「はい… 取り乱してしまい 申し訳ありませんでした …そうですね 少なくとも 今はリジューネ陛下の帰りを待ち 我々からも シリウスBの怒りに触れぬ様 進言致さなければなりません」
ザッツロード6世が微笑して言う
「はい、…もしかしたら そんな我々の事を知っているから シリウスBも黙って見ているのかもしれませんね?」
ベハイムが苦笑して言う
「はは…っ 我々の事まで… そうですね、神と呼ばれる程のお方では 全てを見越しているのかもしれませんね?」
多国籍部隊 宿舎裏口
テスクローネが言う
「そんな事を!私がやると思っておられるのですか!?」
リジューネが言う
「…私とて 出来る事なら行いたくは無かった しかし、このままでは…っ 新世界からの助けが来る前に この世界に住む我々は滅亡してしまうっ 貴殿にも分かるはずだ テスクローネ殿」
フォーリエルが言う
「やれやれ このローレシア帝国に住む 全ての民を守る!…とか言ってたくせに 結局 自分の国の民が可愛いんじゃねぇか?結界の縮小を行えば 生きる場所を奪われるのは ローレシア以外の民だもんなぁ!?」
リジューネがフォーリエルへ向いて言う
「皇帝の私と言え 助かる者とそうでない者の人選などは出来ぬ 増してや 何の罪も無い人々の中からそれを選ぶ事など… 従って 結界の縮小は人々には伝えず その時に 結界の外になる場所に居たものは… 助からない 偶然にも結界の内側になる場所に居た者だけが 生き残る事となる …とは言え、ローレシア城が結界の中心である以上 ローレシアの民が多く助かるだろうという事は 否めぬな…」
テスクローネが言う
「例え今 結界の縮小を行い 消費エネルギーを減らした所で 新世界からの助けは いつ来るとも分からない …それなら 最後の瞬間まで この世界で戦い抜いてきた人々と共に その時を迎えるべき出は無いのですか?」
リジューネが言う
「新世界の作戦は 今までより速い速度で進行している 先の作戦再開の時から数え 現行の作戦が結果を出すのが 恐らく今後3日から10日の間だ 現状の結界を維持して持てるのが3日!縮小を行って持てるのが10日!そうとなれば 後者に賭けるのが正しい選択ではないか?」
フォーリエルが言う
「その現行の作戦って奴だって もしかしたら また失敗かもしれないんだろ?」
テスクローネが言う
「残念だが、その可能性が極めて高い 今までの進行率から言って 例え期間が早まろうと 一度の作戦で前のそれを上回る結果を出せるのは 5%~13% 最高の13%であっても 現状では100%の結果には27%も届かない …これは 新世界ガルバディアからのデータを ハックしたものです」
リジューネとフォーリエルが驚く フォーリエルが言う
「テス… お前っ 新世界の情報なんて どうやって!?お前の力は そんな事まで出来ちまうのか!?」
テスクローネが言う
「このデータは 前回の新世界との通信の時 その通信データに紛れ込まされていたもの 送信者の名前は スファルツ・レイロルト・クラウザー あのベハイム殿の曾祖父の名を騙っている事からして 恐らく この世界のソルベキアの民へ向けたものだと思われますが 当の彼らは気付いておられない様でしたね」
リジューネとフォーリエルが呆気に取られる テスクローネが目を伏せて言う
「これでお分かりでしょう?リジューネ陛下 結界の縮小は行わず …最後まで 皆で 今まで通りに過ごし その時を迎えましょう」
フォーリエルが表情を悲しませ俯いて言う
「…それしかねぇのかよ」
リジューネが間を置いて言う
「断る」
フォーリエルとテスクローネが驚いてリジューネを見る リジューネが言う
「私は このローレシア帝国の王だ 彼らの命を預かるものとして 最後の瞬間まで 1人でも多くの者を生かし 新世界へ!シリウス様のもとへ向かわせる!」
フォーリエルが怒って言う
「おいっ!矛盾してるだろ!?1人でも多くの者を生かしたいって言ってるくせに!あんたは結界を縮小して 現状の半分近くの人々を殺しちまおうって言ってるんじゃねーか!」
リジューネが言う
「私は王であっても人だ 絶対ではない 生かす事の出来る少数の為に 大勢の犠牲が出ようとも 遂行しなければならない」
フォーリエルが怒って言い及ぼうとする リジューネがフォーリエルへ剣を向けて言う
「そして、その為には もはや手段を選ばぬと決めたのだ …テスクローネ 貴殿が行わないと言うのであれば 今この場で 私が彼の命を奪おう」
テスクローネが驚いて目を見開く フォーリエルがゆっくり微笑して言う
「リジューネ女帝さんよ…?人質にする相手を間違えてるぜ?俺があんたに敵わないとでも思ってんのか?」
リジューネが横目にフォーリエルを見て言う
「お前こそ 私が最強の剣士の国 アバロンの大剣使いであると 知っているのだろうな?」
フォーリエルがニヤリと笑んで言う
「ああ!知ってるぜ?本人は否定してるけど このローレシア帝国に住む 全員が知ってる有名な話だもんな?」
リジューネが微笑して言う
「否定はしていない ただ、申し訳無いと思っているだけだ ローレシアの王座に着く私が 剣を使う事に」
フォーリエルが言う
「ローレシアは魔法使いの国 剣士とは仲が悪いってのが基本だ …ま、今は その剣士が王様になってるから?ローレシアの連中も仕方なく受け入れてる …あんたを倒しちまったら どの道ローレシアに住む俺ら他国の奴らは 居場所を失っちまうのかな?」
リジューネが剣を構えて言う
「その心配は無用だ 私は お前に倒されたりはしない」
フォーリエルが剣を抜いて言う
「俺は偽者の大剣使いだけど… それでも部隊では ガイ隊長や副隊長方に継ぐって言われたほどの男だぜ?おまけに近くにテスも居るんじゃ 女相手でも容赦はしてやれねぇ 油断してテスの首に剣でも向けられたら それこそこっちの負けだからな?」
リジューネが言う
「私がこの剣を構える時は その様な 姑息な真似はしない 全力で来るが良い 偽者大剣使いフォーリエル お前に 本物の大剣使いの力を見せてやろう」
フォーリエルがムッとする テスクローネがプログラムを見てはっとして言う
「フォーリエル 油断するなっ!」
フォーリエルが驚いて僅かにテスクローネを振り返る リジューネが言う
「…時間が無い 行くぞっ!」
リジューネが向かう フォーリエルがハッとして剣を構え直す
ローレシア帝国 結界端
ガイが一息吐く ラーニャが回復魔法を施しながら言う
「それでー?何か名案が浮かんだりした訳?考えながら戦ってるんでしょう?戦ってると神経が研ぎ澄まされて 考えが纏まるだなんて 信じられないけどー?」
ガイが言う
「うむ… 実は」
ラーニャが注目する ガイが言う
「神経が研ぎ澄まされ 考えが纏まった結果 分かったのだ …この戦いの中において 難しい事を考えている余裕など まったく無いという事が!」
ラーニャが衝撃を受け焦って言う
「なぁっ!?」
ラーニャの回復魔法が失敗し破裂する ガイが痛がって言う
「痛いっ!ラーニャ殿!?」
ラーニャが焦って言う
「きゃぁっ ご、ごめ… だ、だってぇ!」
ローレシア城 機械室前
ザッツロード6世がハッとして向く ベハイムが言う
「リジューネ陛下!」
リジューネがベハイムを見て言う
「クラウザー?ザッツロード王子も そこで何をしている?」
ザッツロード6世が言う
「リジューネ陛下、我々は申し伝えたい事があり リジューネ陛下を お待ちしていました!どうか!」
ベハイムがテスクローネを見て言う
「テスクローネ殿…」
ザッツロード6世が疑問して テスクローネと後ろのフォーリエル その後ろのリジューネの違和感に気付く ベハイムが同様に気付きつつ リジューネへ向いて言う
「リジューネ陛下 テスクローネ殿に 何をご依頼なされたのですか?」
リジューネが言う
「気になるか?クラウザー そう言えば、お前は しばらく頭を冷やすと言っていた割りに どこかへ出向いていた様だったが?また私の期待を裏切るつもりか?」
ベハイムがハッとして言う
「そ… それは」
ザッツロード6世が言う
「リジューネ陛下!クラウザー殿は リジューネ陛下へ忠誠を誓っておられるのです!それなのに!」
ベハイムが焦って言う
「ザッツロード王子っ その事は!…それより リジューネ陛下 教えて下さい テスクローネ殿の大切なお友達に剣を向け 彼にどの様なプログラムを行わせるおつもりです?」
ザッツロード6世がベハイムの言葉に驚き リジューネの手元を見る リジューネが短剣をフォーリエルの背に当てている ザッツロード6世がハッとしてリジューネを見る リジューネが微笑して言う
「目敏いなクラウザー 気付いたのならそこを退くが良い 私は急いでいるのだ」
ザッツロード6世とベハイムが動揺して道を空ける リジューネがテスクローネへ視線を向ける テスクローネが一度目を伏せてから歩き出し 扉の前で顔を向けずに言う
「リジューネ陛下は ローレシア帝国の」
リジューネが短剣を押し付ける フォーリエルが思わず呻く
「うっ!」
テスクローネがハッとして黙り 機械室の扉を開く ザッツロード6世とベハイムが顔を見合わせる リジューネが機械室の扉の前に立って言う
「王子… お仲間の者たちが 結界の端に居るそうだな?余り 離れて居らぬ方が 良いのではないか?仲間として…」
リジューネが機械室へ入り扉を閉める ザッツロード6世が扉を見たまま疑問し ベハイムが考える
ローレシア帝国 結界端
ヴィクトール11世が笑顔で居る ミラが不満そうな顔でヴィクトール11世の頭をフード越しに撫でながら言う
「これで… 本当に回復魔術より効くって言うの?」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!僕はいつも こうやってシリウスに疲れを癒してもらってたんだ!ついでに 『良くやったな』 って言って貰えると嬉しいんだけど!?」
ミラが衝撃受け 嫌がりながらも言う
「え!?えっと… よ… 良く…頑張りましたっ …これで良い?」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!それでも良いよ!後 えらいえらいって付けてね!?」
ミラが更に嫌がりながら言う
「うぅう~っ …え、…えらい えらい…」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!それでも良いや!それじゃ 全部繋げて もっと優しく!愛情も込めてね?それからー」
ミラが怒って言う
「ああーっ!もう!これなら普通に回復魔術使った方が楽よ!」
ヴィクトール11世が首を傾げて言う
「え?そうなの?僕はこっちの方が効くし 嬉しいし 魔力も使わないんだから 効率的で良いと思うんだけど?」
ミラが怒って言う
「魔力は使わなくても 他のいろんな負担がかかるわよ!馬鹿っ!」
ヴィクトール11世が衝撃を受け慌てて言う
「あーっ!駄目だよ!馬鹿じゃなくて 馬鹿猫って言ってくれなきゃ~!」
ミラが怒って言う
「いい加減 人になりなさいよ!」
ヴィクトール11世が言う
「えー!?だって 猫だもんー」
ミラが怒って言う
「何処がよ!?ザッツより大男だって言うのに!少しはヴィクトール13世様を見習ったらどうなの!?」
ヴィクトール11世が思い出すように考えてから気付き 笑顔で言う
「13世か!懐かしいなぁ~ 彼も可愛い猫だったよね!かれこれ何十年になるのかな?元気にしてるかなぁ?立派な猫になってると良いんだけど…」
ミラが怒って言う
「だから!何処が猫だって言うのよ!?」
【 ローレシア城 機械室 】
研究者Tが振り返って言う
「リジューネ陛下 …どうやら 説得の方は成功されたようですね?」
リジューネがテスクローネへ視線を送る テスクローネが視線を受け一度逸らしてから仕方なく操作盤へ向かう リジューネが言う
「テスクローネ殿は 予定通り 説得に応じてくれた」
研究者Tが微笑して言う
「流石は アバロンの…」
リジューネが研究者Tへ睨みを効かせる 研究者Tが微笑して言う
「おっと… 口が勝手に 気を付けませんといけませんね」
リジューネがふんと視線を逸らしフォーリエルへ向き意識を集中させる フォーリエルが舌打ちをする テスクローネが視線を向けないままに顔を顰めモニターを見上げてから 周囲にプログラムを発生させる テスクローネのプログラムがモニターに転送され流れる フォーリエルが表情を悩ませ 背に突きつけられた短剣を気にする リジューネが小声で言う
「この部屋にある機材は ローレシア帝国に張られている結界は勿論 人々の生活に無くてはならぬ 全てを司っている 無駄な足掻きを行い それらを傷付ける様な馬鹿な真似はするな」
フォーリエルが表情を顰めて言う
「ならいい加減 背中のモンをどかしてくれねぇか?そんな場所じゃ 暴れて逃げ出したりも出来ねー …それが分かって 無茶するほど俺は馬鹿じゃねーんだぜ?」
リジューネが言う
「それでも外す事は出来ない… 研究者T!テスクローネ殿のプログラムを 確認しているだろうな?」
研究者Tが笑んで言う
「はい、勿論です」
リジューネがテスクローネを見て言う
「聞こえていたか?テスクローネ殿?」
テスクローネがムッとして言う
「下品なハッキングには とっくに気付いています!ハッキングとも呼べぬ 堂々とした接続に 苛立たされているのですからっ ミスを起こさない為にも これ以上… その手を強めたら許しませんよ!?」
リジューネが軽く笑んで言う
「ふっ… 研究者Tは 貴殿のプログラムにミスが無いかを確認しているのだ 重要なプログラムでは仕方もあるまい?そう 気を荒立てるな」
テスクローネが 間を置いて言う
「…範囲を狭めるだけでも 消費エネルギーを減らす事は可能です 人々に避難を行わせるべきでは ないのですか?」
リジューネが言う
「例え 全ての民を助けた所で 新世界へ転送させる事が出来る人数は限られている …この結界縮小における人選は …転送人数への対応とも取れるのだ」
テスクローネが言う
「転送装置の能力を上げる事は きっと可能です 方法はこれから調べるにしても 今その人選を行うべきでは 無いのでは?今は 可能な限りの人々をっ!」
リジューネが言う
「後の混乱を最小限に収める為にも 今こそ切り捨てる… 転送装置の能力を上げるなど その研究をする時間も エネルギーも無いのだ」
テスクローネが振り返って言う
「しかし!」
テスクローネの周囲のプログラムが消える リジューネが素早く短剣をフォーリエルの背から首へ移動させテスクローネへ見せ付けて言う
「話は終わりだ 作業を続行させろ テスクローネ」
フォーリエルが歯を食いしばって言う
「…っ ちくしょぉ…っ」
リジューネが短剣を押し付ける フォーリエルの首に僅かに傷が出来血が滲む テスクローネがはっとして悔やみつつ向き直り プログラムを再開させる リジューネが僅かに力を抜く フォーリエルが俯く テスクローネがモニターを見上げ困惑した後 強く目を瞑ってプログラムを流す 研究者Tが微笑して言う
「結界縮小プログラムが開始されました リジューネ陛下」
リジューネが言う
「うむ、引き続き 確認作業を頼むぞ 研究者T」
研究者Tが微笑して言う
「心得ております」
テスクローネが悩み苦しんでいる フォーリエルが見えないながらも感じ取り悔しがっている
ローレシア帝国 城下町
道行く人が違和感を感じ周囲を見渡す
ローレシア帝国 結界端
機械兵と戦っている ガイ、ヴァッガス、ヴィクトール11世が違和感を感じ周囲を見て 仲間同士で顔を見合わせる 支援魔法を送ろうとしていた ラーニャ、ミラが同じく顔を見合わせる ロドウに回復魔法を掛けていたレーミヤが空を見上げ ロドウが言う
「何だろう?何だか… 結界の内側なのに…」
【 ガルバディア城 玉座の間 】
シリウスBが目を開く
【 ローレシア城 機械室 】
ソルベキアの研究者が言う
「バリアプログラムへの供給エネルギーを50%カットします」
ソルベキアの研究者が言う
「バリアプログラムの縮小開始を確認 縮小率3%…5,6…」
テスクローネが唇をかみ締めて俯き悔しそうに思う
『何の罪も無い人々を… 私は… この手で…っ』
テスクローネが操作盤に置いている自分の手を見つめる その手の近くに小さなプログラムが発生する テスクローネが気付き疑問する 小さなプログラムが動きテスクローネが読解する
『お前のプログラムを 気付かれぬ様に鈍化する 彼らを信じ 作業を続けろ』
テスクローネが一瞬呆気に取られた後 同じ様に小さなプログラムを発生させる
『彼らとは?貴方は 誰です?』
ローレシア帝国 結界端
機械兵と戦っている ガイ、ロドウ、ヴァッガス、ヴィクトール11世 彼らの脳裏にシリウスBの声が響く
『ガイ、ヴァッガス、ロドウ… ついでに ヴィクトール11世』
ヴィクトール11世が衝撃を受けて言う
「ついでっ!?」
メテーリが疑問してガイたちを見る
ローレシア城 機械室
ソルベキアの研究者がカウントアップを続けている
「縮小率10%を確認 12,13,14…」
リジューネが短剣の感触を確認しつつテスクローネを見る テスクローネが緊張の面持ちで視線だけをリジューネへ向ける 研究者Tが疑問して言う
「ふむ… 意外でしたな エネルギーのカットを一度に行っても 縮小率は急激には 起きないとは…」
リジューネがテスクローネへ視線を強める テスクローネがハッとして視線を正面へ戻す 研究者Tが操作を行って言う
「ああ…なるほど 結界維持システムは エネルギーを一定量蓄積させ 結界を放っているのか… これなら確かに…」
リジューネが納得して強めていた視線を和らげる テスクローネが緊張を少し緩和して考える
『研究者Tが もし、この作業に 結界維持システムを経由していないと言う事へ 気付いてしまったら…っ』
テスクローネの脳裏にシリウスBの声が響く
『その心配は不要だ 奴の確認しているプログラムは 既に私の擬似システムプログラムへと すり替えてある』
テスクローネが驚く テスクローネの脳裏にシリウスBの声が響く
『奴よりも 後ろの女帝に気を付けろ 彼女もまた 我らガルバディアの力を凌ぐ 自然の力を併せ持つ者 アバロンの民…』
リジューネが何かに反応し視線を強める テスクローネがハッとして言う
「リジューネ陛下っ」
リジューネが答える
「何だ」
テスクローネが言う
「私は… 命令通りプログラムを行っています 今からではプログラムの取り消しも出来ない …いい加減 フォーリエルの首から その物騒なものを退かして下さい」
リジューネが僅かにフォーリエルの首から短剣を離す フォーリエルが少し緊張を解く リジューネが手を止めて言う
「…いや、まだだ」
テスクローネが疑問する リジューネが言う
「私の直感が そう囁いている」
テスクローネが驚く リジューネが言う
「テスクローネ 何かを企てようと言うのなら この者の命が無い 肝に銘じておけ」
テスクローネが目元を緊張させつつ モニターへ向き直り目の前を強く見つめる
城下町
ガイたちが人々を誘導して叫ぶ
「急げっ!町の中央 古き教会よりローレシア城側へと 避難するのだ!」
ロドウが子供たちを大勢抱えて言う
「時間が無いよ!荷物なんて持たないで!早く避難するんだよ!」
ヴァッガスが道に座り込んでいる老人に言う
「生きてさえいれば!もう一度戻って来れる!俺が機械兵どもをぶっ倒して 必ず取り返してやるぜ!だから 俺を信じて 今は避難するんだ!」
メテーリが子供たちの手を引いて言う
「信っじられないっ!リジューネ陛下は この子達まで見捨てようというの!?」
ヴィクトール11世が物陰を覗き込み 笑顔で言う
「ほらっ み~つけた!」
ヴィクトール11世の視線の先 猫が子猫を守ろうと威嚇している ヴィクトール11世が手を伸ばすと 猫が引っ掻く ヴィクトール11世が悲鳴を上げて言う
「ニャーッ!ニャにするの!?僕は君の仲間だよっ!?」
猫が威嚇する
ローレシア城 機械室
ソルベキアの研究者がカウントアップを続けている
「…57、58 縮小率 60%を確認」
研究者Tが言う
「ふむ、結界維持システムのエネルギーが もうじき無くなります 縮小率のカウントは もう必要無いでしょう」
リジューネが言う
「城下の様子をモニターに出せ」
テスクローネがはっと焦る リジューネが言う
「…どうした?城下の中央 ローマリック教会に設置してある 監視モニターの映像を出せ …テスクローネ」
テスクローネが一瞬間を置いて言う
「…ローレシア帝国の監視モニターは ソルベキアの管轄です 私は… 縮小プログラムの調整で手が離せません」
リジューネが言う
「研究者T… いや、誰か ソルベキアの管轄であるのなら 映像を繋ぐ事くらい出来よう?」
ソルベキアの研究者が操作を行って言う
「ローマリック教会の監視モニターの映像を メインモニターへ繋ぎます」
テスクローネが焦る リジューネがモニターを見つめる モニターに黒い羽がドアップで映る リジューネが視線を強める 黒い羽が動き カラスがモニターを覗き込む
城下町 ローマリック教会
カラスが監視カメラのレンズに向かって何度も鳴く 監視カメラが位置を動かすと それを追い駆けてレンズを突っ突いて何度も鳴く
ローレシア城 機械室
リジューネが怒って言う
「ええいっ!もう良い!映像を消せ!」
モニターの映像が消される フォーリエルが軽く笑って言う
「ぷっ はは…っ カラスの巣の中にでも カメラを置いちまったのかぁ?」
リジューネがムッとして フォーリエルを脅している短剣を近づける フォーリエルが一瞬表情を怯ませた後苦笑する
城下町 ローマリック教会
カラスが監視カメラを覗き込んだ後 城下を見渡し ローレシア城を見上げる メテーリが子供たちの手を引いたまま何かに気付き 空を見上げ ローマリック協会のカラスが居た場所を見上げるが 何も見えない メテーリが首を傾げる
ローレシア城 機械室
ソルベキアの研究者が言う
「縮小率100%を確認」
テスクローネが言う
「バリアプログラム… 結界の範囲は 以前の半分 ローレシア城を中心とした 半径50キロ圏内になりました」
リジューネが言う
「ご苦労」
フォーリエルが責任を感じて目を伏せる テスクローネが振り返り リジューネを見て言う
「リジューネ陛下… いつまで私の相棒に 剣を向けているつもりですか」
リジューネが反応すると同時に テスクローネがリジューネの手に雷撃を与える リジューネが一瞬悲鳴を上げると短剣が落ち テスクローネが加速してリジューネの手から落ちた短剣をキャッチし そのままリジューネへ怒りの視線と共に向けて言う
「次の時は 容赦しません」
リジューネが呆気に取られる フォーリエルが驚きつつも微笑しリジューネから離れ テスクローネの手から短剣を取り リジューネへ柄を向けて言う
「その時には テスじゃなくって 俺がアンタに剣を突きつける筈さ」
リジューネが一瞬間を置いてから鼻で笑い言う
「ふっ… どうかな?今の所は 負け犬の遠吠えにしか聞こえぬが?まぁ、楽しみにしておいてやろう」
リジューネが短剣を受け取る フォーリエルが軽く笑う テスクローネがフォーリエルへ向いて言う
「行こう フォーリエル」
フォーリエルがテスクローネを見るとテスクローネが歩き出す フォーリエルがリジューネを見てから テスクローネに続く リジューネが2人を見た後 振り返って言う
「被害状況を確認しろ」
城内 通路
テスクローネとフォーリエルが通路を歩く フォーリエルがテスクローネを見て 表情を落とし周囲へ視線を泳がせてから意を決して言う
「テス 悪ぃ…」
テスクローネが疑問して振り返る フォーリエルが立ち止っていて言う
「俺のせいで… お前に あんなプログラムやらせちまって…」
テスクローネが言う
「フォーリエル…」
フォーリエルが悔しそうに俯いて言う
「俺が守ってやるとか 言っときながらっ …俺、全然駄目だな」
テスクローネが苦笑し近くへ行って言う
「フォーリエル 初めて体感した 本物の大剣使いの剣術は どうだった?」
フォーリエルが一瞬呆気に取られてから 思い出しながら言う
「あ?…ああ、えっと… 剣術そのものは 長剣使いと変わらなかったぜ 多分 リジューネ陛下は長剣使いとの練習を 多くやって来たんだと思う 接近戦であっても 距離のある相手からの攻撃に備えるような回避で… ああ、そうなんだよ 回避であって 防御じゃねぇんだ 普通の長剣使いは 防御が主になって 隙を見ての反撃が攻撃なんだけど リジューネ陛下は違ぇんだ 常に攻撃で、防御は二の次三の次 いや、防御は考えねぇで ひたすら突っ込むみてぇな勢い任せの攻撃なんだ …まさか 女帝様があんな剣術だとは思わなくってよ …油断した」
テスクローネが微笑して言う
「うん、私も驚いたよ でも、フォーリエルは十分対応していた」
フォーリエルが溜息を吐いて言う
「対応してるだけじゃ勝てねぇんだ どんどん追い込まれて…」
フォーリエルの脳裏に 追い込まれたフォーリエルの首に剣を向けるリジューネの姿が思い出される テスクローネが苦笑して言う
「それでも、やっと本物の大剣使いの剣術を見る事が出来たんだ フォーリエルが真似出来るようになるのも 時間の問題かな?」
フォーリエルがテスクローネの言葉に苦笑して言う
「一度きりじゃ ちょっと厳しいかもな あんな突っ込み重視の戦いは 分かってても簡単に真似出来るもんじゃねぇし…」
テスクローネが言う
「そう… しかし、私は フォーリエルなら出来ると思うよ」
フォーリエルが顔を上げ微笑して言う
「おうっ …お前が言うなら きっと出来る 頑張るぜ!」
テスクローネが軽く微笑んで言う
「うん!」
フォーリエルが表情を和らげ軽く笑って歩き出す テスクローネの横へ来て視線を逸らして言う
「…あの門の外に出るのは 気が重いな」
テスクローネが門の方を見て言う
「分かっている事は 結界として見慣れている バリアプログラムが 以前よりずっと近くに見える事 …そして」
フォーリエルがきつく目を閉じる テスクローネが門を見据えて言う
「私に声を掛けてくれた シリウスBの言葉を確認出来る筈だ」
フォーリエルが疑問して言う
「シリウスB?」
テスクローネが門を開く テスクローネとフォーリエルが城から出て来る ガイたちとザッツロード6世たち 大勢の人々が城へ向いて立っている
ローレシア城 機械室
リジューネがモニターを前に目を丸くしている
城門前
城から出て来た テスクローネとフォーリエルが人々の中に人物を見つけ向かう ザッツロード6世とガイたちが同じくテスクローネたちへ向かい 双方が立ち止り テスクローネが言う
「結界の縮小を止められず 申し訳ありませんでした」
ガイが言う
「貴殿のせいではない シリウス様より 話は聞き及んでいる」
フォーリエルがテスクローネとガイを見てから言う
「シリウス様… テス、お前はさっき シリウスBって」
ヴァッガスが言う
「この世界のガルバディアに居る この世界のシリウス様の事だぜ」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「この世界の… シリウス様 シリウスB…」
ザッツロード6世が来て言う
「まさかリジューネ陛下が 人々を切り捨てようとするだなんて」
ベハイムが言う
「リジューネ陛下は 以前より 転送装置の容量を超える このローレシア帝国に住む人々の数に 頭を悩ませて居られました 今回の事は それもあっての事かと」
テスクローネが言う
「結界を縮小する以上 例え今回人々を助けようとも ローレシア帝国に残されている食料は少ない 転送の容量を超え 残される彼らを飢え死にさせるくらいなら …と そう考えたのかもしれませんね」
ザッツロード6世が言う
「クラウザー殿 転送装置の性能は 上げる事が出来ると!」
ベハイムが言う
「はい しかし それでも 全ての人数を転送させる事が可能かどうかは… そして、ガルバディアの装置である その機械を改良する事が 果たして、私の力で可能かどうかは 正直定かではありません」
メテーリが言う
「シリウス様は 何て言って来たのよ!?助けるだけ助けて それ以上は 何もしてくれないって言うの!?」
ガイが言う
「全てをシリウス様に委ねる訳には行くまい?我々は 我々の力で生き抜かねばならない」
メテーリが言う
「けどっ!私たちで生きられない世界で どうやって生き抜けって言うのよ!?」
ロドウが苦笑して言う
「この世界に悪魔力をばら撒いてしまったのは 僕たち人だからね 責任はあるんだと思う」
メテーリが言う
「でもっ!」
ヴァッガスが逆方向へ向かおうとする メテーリが気付いて言う
「ヴァッガス!?何処行くのよ!?リジューネ陛下に申し立てに行くんじゃなかったの!?」
ヴァッガスが言う
「俺らの敵は リジューネ陛下じゃねぇ… リジューネ陛下を倒したって この世界は救われねぇんだ だったら 俺は俺の敵を一体でも多く倒す… あの土地を 踏み荒らされたくねぇからな」
メテーリが驚き ヴァッガスの向かおうとする先を見る 結界の外になってしまった農地に機械兵が踏み入っている 多国籍部隊の隊員らがヴァッガスを見送り悔しがって言う
「俺たちは 何も出来ねぇのか…っ!?」
「同じ多国籍部隊だってぇのにっ 守られてばっかで… 何もっ」
「俺だって戦いたい!けどっ …俺たちには 隊長方の様な 機械兵と戦える力は」
隊員らがはっと気付き 残ったガイたちへ向き 駆け寄って来て言う
「ガイ隊長!教えて下さい!」
「俺たちも ガイ隊長やヴァッガス副隊長…ロドウ副隊長のような 力がっ あの機械兵をぶっ倒す力が欲しいです!」
「お願いします!隊長!俺たちにも 隊長方と同じ様に 俺たちの生きる場所を守る その力を与えて下さい!」
ガイたちが驚き困って顔を見合わせる 隊員らが何度も呼びかける メテーリがガイを見て言う
「ど、どうするの…!?」
ガイが困って言う
「ど、どうと言われても」
隊員たちが言う
「も、もしや ローンルーズに!?」
「ローンルーズに行けば 隊長方の様な力を得られるのですか!?」
「いや、もしかしたら 機械兵ファクトリーかもしれん!」
ガイが焦って言う
「ま、待て!諸卿!落ち着くのだ!」
隊員たちが言う
「落ち着いてなど居られません!」
「俺たちの生きる土地は!もうここしか無いのです!こんな狭い場所では 人々は生きて行けません!」
「力を持つ隊長方には 今の俺たちの気持ちなんて 分からないんだ!俺達だって命を掛けて戦う 多国籍部隊の隊員です!」
ガイが困って言う
「し、しかし…」
隊員たちが言う
「ガイ隊長がなんと言おうと 俺は力を探しに行きます」
「俺もだ!もうこれ以上 待たされるだけなんて 耐えられねぇ!」
「よし、では皆で手分けをしよう ローンルーズへ向かう隊と 機械兵ファクトリーへ向かう隊だ」
「俺は機械兵ファクトリーへ行く!ガイ隊長たちが力を手に入れたのは 機械兵ファクトリーを潰しに行った時だ それ以前のローンルーズへの偵察の時には 何も無かった!」
「なら 俺もだ!のんびりしている時間なんてねぇ!」
ロドウがガイへ向いて言う
「ま、まずいよガイ!今この結界から出たら 周囲は機械兵で埋め尽くされているんだから!」
ガイが言う
「わ、分かっているが 彼らが私の言葉を…っ」
隊員らが振り返って言う
「ガイ隊長 行って参ります」
隊員らが歩き始める ガイが焦って言う
「ま、待て諸卿!力は!…力は ガルバディアにある!」
ロドウとメテーリが焦って叫ぶ
「「ガイっ!?」」
ガイが言う
「諸卿の決意が それほどまでと言うのであれば …このメテーリ副隊長が 諸卿をガルバディアへ送り届けよう!」
メテーリが衝撃を受けて叫ぶ
「私ぃいーっ!?」
【 ガルバディア城 城門前 】
メテーリが両手両膝を着き 息を切らして言う
「も… もう駄目っ 苦手だって言うのに 回数分けして 多国籍部隊を全員だなんて… もう立っても居られないわ…」
ロドウが苦笑して言う
「メテーリは良く頑張ったと思うよ でも、相変わらず」
ガルバディア城城門前の壁に激突痕が大量にある
玉座の間
シリウスBが真っ直ぐに見据えて言う
「勝手な事を してくれたものだ」
ガイがシリウスBの前で言う
「申し訳ありません シリウス様 …しかし、こうするしか 彼らがあのまま 結界の外に一歩でも出れば」
ヴィクトール11世が首を傾げて言う
「あれはしょうがないよ 僕がガイの立場でも 同じ様にしてたと思う …まぁ 僕はシリウスの猫だから 人々を先導するなんて事は 無いだろうけどね?」
ヴィクトール11世が笑顔になる シリウスBが横目にそれを見てから ガイへ向く ガイが言う
「彼らへは 既に私から 力を得るためには 魔物の遺伝子情報を その身に受けるという事を説明し 了承させてあります」
シリウスBが言う
「その者らの中には 周囲の状況に流され 己の意思が固まらぬままに ここへ来た者も多い 人とは 弱き者であるからな」
ガイが言う
「それでも 時には自分や家族 仲間たちの為 決意せねばならぬ時があります 彼らは 1人の人であると共に それらを守る戦士なのです シリウス様 どうか 力なき彼らへ 我らの神 シリウス様のお力添えを!」
シリウスBが一瞬目を細め言う
「…私は お前たちの神ではない」
ガイが言う
「この世界に生きる 我らの神は 貴方を置いて他にありません」
シリウスBがガイを見る ガイがシリウスBを見つめる ヴィクトール11世が微笑する シリウスBが目を伏せて言う
「決意…か」
ガイがシリウスBを見る シリウスBが伏せていた視線を上げて言う
「力を得れば 彼らはお前たち同様に 人とは一線を引く者となる そして 彼らが守ろうとする人々にすら 忌み嫌われる可能性もある」
ガイが言う
「それが この世界に生きる 我らに残された道であるのなら 彼らも それを受け入れるでしょう そして、少なくとも ローレシア帝国に在する者たちは 世界の為に戦う彼らを 受け入れてくれる筈です」
シリウスBが言う
「…どうだろうな?」
ガイが微笑して言う
「ローレシアに留まる人々は 新世界ではなく この世界の故郷へ戻る事を 強く望んだ者たちの子孫です 私は そう信じております」
【 ローレシア城 玉座の間 】
リジューネが振り返って言う
「暴動は起きていないだと!?」
大臣らが言う
「はい、現在 結界の縮小に対しての 人々の暴動は起きておりません」
「結界の縮小を行ったその時は 多くの民が ローレシア城の城門前に募ったとの報告は入っておりますが 後に 皆退散して行ったとの事です」
リジューネが考えて言う
「どう言う事だ…?何の警告も無しに 住む場所や土地を奪われ等したら 暴動が起きる事など当然の事 だと言うのに… はっ!」
リジューネが顔を上げて言う
「奴らはどうした!?多国籍部隊の者たちは!?奴らは あの機械兵とすら 戦える力を持つ 結界の縮小程度で その命を落とす事などあらぬ筈だ!」
大臣らが慌てて手元の資料を確認して言う
「多国籍部隊は 結界縮小の折 ローレシア城の門前に募った人々の先頭に居った事が 報告書にございます …が その後 皆姿を消したと」
「唯一残っております ヴァッガス副隊長は ザッツロード6世王子らの支援を受けつつ 現在も結界端にて 機械兵との戦闘を行っておるとの報告です」
リジューネが言う
「多国籍部隊の者が 姿を消したと言うのはどう言う事だ?ヴァッガス副隊長以外の隊長らの姿は!?」
大臣Aが言う
「確認出来ておりません」
リジューネが言う
「直ぐに確認しろ!奴らの動きは逐一報告せよ!」
大臣らが返事をする
【 ガルバディア城 玉座の間 】
多国籍部隊隊員らがシリウスBの前に居る シリウスBを真っ直ぐ見据える者 困惑する者 怯える者 シリウスBが彼らの様子に目を細める ガイが言う
「皆、こちらに居られるのが この世界に生きる 我らの神 シリウスB様だ」
多国籍部隊の隊員らが様々な面持ちでシリウスBを見て言う
「この世界の…我らの神?」
「シリウス B?」
「我らの神は 新世界に行ってしまったのでは無かったのか?」
ガイが言う
「そして、力なき我らに 力を与えて下さる ガルバディアの王である」
多国籍部隊の皆が息を飲んでシリウスBを見る シリウスBが一度目を閉じてから 改めて多国籍部隊隊員らを鋭く見て言う
「人の力を超えると共に 人ではあらぬ者へと その身を変えられる… 決意が持てている者は たかが38%か… とは言え その38%の決意に 変わりはあらぬ様子 私は そのお前たちへのみ 力を与えよう」
ガイがシリウスBへ振り返り言う
「38%!?シリウス様っ たった38%… 65名余りの勇士では ローレシア帝国は守りきれません」
シリウスBがフォーリエルへ視線を向けて言う
「その中においても お前は別だ フォーリエル」
フォーリエルが驚いて言う
「え!?な、何で俺の名前をっ」
シリウスBが言う
「お前がその身に 既に備えている力 記憶に深く刻まれた者の力を 再現するプログラム… 中々面白い」
フォーリエルがハッとして言う
「プログラム…?もしかしてっ テスが…っ!?」
シリウスBが微笑して言う
「私が新たな力を上書きしてしまっては その能力が失われてしまう お前は今のままでも十分だ よって38%の勇士からは 除名する …残るは 64名 他の者は わざわざ名を呼ぶ必要もあるまい?己の判断で この場所を立ち去れ」
多国籍部隊隊員らが顔を見合わせる 後方に居た隊員が怯えつつも遂に逃げ出す様に走り去って行く それを切欠に怯えていた隊員らが顔を見合わせた後逃げ去る それを追い駆ける様に隊員が去る 強く目を閉じ悔やみながらも立ち去る隊員 苦しみ悩んでいる者の肩を叩き苦笑して共に立ち去る隊員 半数近くの隊員が立ち去る
ガイが疑問してシリウスBへ向く シリウスBが閉じていた目を開いて言う
「残ったのは 79名 決意を改め その足を止めたか ロイズ、ケイ、メレイサ、レイデッド、ビリーズ… トレイス、ファリオル、スレイン、シュロッズ」
呼ばれた隊員らが驚きながらシリウスBを見る シリウスBが微笑して言う
「お前たちに相応しく これからの多国籍部隊に役立つ能力がある 歓迎しよう だが、カリン、リックス、ソシエーダ」
カリン、リックス、ソシエーダと彼らの仲間が驚く シリウスBが向いて言う
「お前たちをリーダーとする その他7名 この戦いは お前たちの求める 人々からの賞賛が得られるものにはならない お前たちは今のままのお前たちに出来る事で それらを求めるが良い」
カリン、リックス、ソシエーダが驚きに呆気に取られ リックスが言う
「俺たちの… 頭の中まで分かっちまうのか…!?」
ソシエーダが言う
「なるほど… これが神の力か」
カリンが俯く リックスがカリンの頭をクシャリと撫でて言う
「行こうぜ?俺らは駄目だってよ」
ソシエーダが苦笑して言う
「決意が足りなかったみたいだな お互いに」
3人が立ち去ると3人の仲間たちも共に立ち去る シリウスBが見つめているとガイが苦笑して言う
「流石はシリウス様」
シリウスBが苦笑して言う
「彼らは多国籍部隊において 己の欲望に流され 何度もお前たちの邪魔を企てる所であった… 決意の有無ではなく 奴らの欲が 私には計り知れなかったのだ …これで、残るは69名 お前の言う通り 少々心許無いか?」
ガイが呆気に取られた状態から苦笑し言う
「それでも、我らには 我らの神が付いておられます」
シリウスBが悪戯っぽく微笑して言う
「余り 私の力を過信するな 我らは所詮 神と呼ばれただけの 人に過ぎん」
ガイが微笑する シリウスBが多国籍部隊隊員らへ向いて言う
「ローレシア帝国にて お前たちの仲間 ヴァッガスが無茶をしている 力を与えたお前たちを 急ぎ向かわせてやらねばならん」
シリウスBが周囲にプログラムを発生させる 多国籍部隊隊員らが一瞬驚き 強く見つめる
【 ローレシア帝国 結界外 】
ヴァッガスが必死に機械兵と戦っている 機械兵を倒しても倒しても次々と現れる ラーニャが叫ぶ
「ヴァッガス!無茶しないで!1人で全部なんて倒せないんだから!」
ミラが叫ぶ
「体力も限界でしょ!一度戻りなさい!」
ヴァッガスが振り返って言う
「レーミヤ!何やってんだ!?早く加速の魔法を!」
レーミヤが言う
「これ以上は駄目よ!ヴァッガス副隊長!お爺さんの畑を守りたいのは分かるけど 一人では守りきれないわ!」
ヴァッガスが機械兵の攻撃を受け止めて言う
「う、うるせえ!俺は守ってやるって約束したんだっ!ガイたちが 多国籍部隊の皆と帰って来るまでは… 何が何でも守り通してやらぁあ!」
ヴァッガスが機械兵の攻撃を流し 攻撃するが避けられる ヴァッガスが地に叩き付けられ言う
「グッ!」
ラーニャたちが焦って ラーニャが叫ぶ
「ヴァッガス!」
ミラが叫ぶ
「危ないっ!避けて!」
ヴァッガスが振り返った先 機械兵が武器を振り下ろす ヴァッガスが表情を焦らせ 強く目を瞑る 激しい打撃音 ヴァッガスが目を開くと目の前にソードバリアが張られている ハッとして振り向くと メテーリがヴァッガスの前でソードバリアを放っている ヴァッガスが驚き叫ぶ
「メテーリ!?ば、馬鹿野郎!何で結界の外に!?」
メテーリが怒って叫ぶ
「馬鹿野郎はアンタでしょ!?馬鹿ヴァッガス!アンタがやられちゃったりなんかしたら!私… 私は ガイや皆に何て言ったら良いのよ!?」
ソードバリアに亀裂が入る メテーリが悲鳴を上げる
「キャァッ!」
ヴァッガスが焦って言う
「ば、馬鹿はお前だ!お前の魔法なんかじゃ!」
声が届く
「そうだ、機械兵との戦いにおける魔法は 私に任せてもらおう!」
メテーリとヴァッガスが驚き見上げると同時に メテーリのソードバリアが壊され機械兵の武器が近づく メテーリが目を瞑って顔を逸らすとその直前に 強力なソードバリアが張られ機械兵の武器が弾かれる メテーリが驚いて見る メテーリの前にソシエーダが軽やかな移動魔法で現れる ヴァッガスが驚いて言う
「ソシエーダ!?お前!?」
ソシエーダが振り返り微笑して言う
「驚いたか?剣を携えていた私が 魔法を扱うとは… それも シリウス様のお力添えを得て」
メテーリとヴァッガスが驚きの表情で ソシエーダを見つめる
回想
多国籍部隊隊員らがプログラムを受けている ソシエーダが出入り口付近でその様子を伺い視線を下げて悩んでいる シリウスBが目を開き言う
『戻ったか』
ソシエーダがハッとして出入り口から玉座の間に現れる シリウスBが顔を向けて言う
『お前に関しては 別のものが お前を再びこの場所へ 戻らせるのではないか… と思っていた』
ソシエーダが一度視線を下げてから 再びシリウスBへ向き直って言う
『私は… 私は剣士の真似事をしているが 本当は…』
シリウスBが微笑して言う
『多国籍部隊にて お前の事に気付いているのは 唯1人 同じ魔法使いの彼女だ』
ソシエーダが言う
『…メテーリ 副隊長』
シリウスBが笑んで言う
『彼女は回復魔法に秀でている お前だけが 多国籍部隊にて 前線で戦える魔法使いだ その力 忍ばせておくのは惜しい』
ソシエーダが顔を上げる シリウスBが言う
『決意は 固まったか?』
ソシエーダが表情を強め腰にある剣を鞘ごと取り 床へ落とす シリウスBが微笑してプログラムを発生させる
回想終了
ソシエーダが微笑して言う
「これからは 多国籍部隊唯一の前線魔法使いとして 私は戦う どうだ私の力は?ヴァッガス副隊長?」
ヴァッガスが呆気に取られてから笑んで言う
「おう!助かるぜ!」
ソシエーダが笑む 多国籍部隊隊員らが移動プログラムで現れ ガイがヴァッガスを振り返って言う
「遅くなったヴァッガス」
ロドウが笑顔で言う
「ここからは僕たちに任せて 馬鹿ヴァッガスは少し休んでて?」
ヴァッガスが衝撃を受け焦って言う
「お前!?大体なんでお前らがそんなに遅ぇんだよ!?さっさと帰って来て助けろよ!」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「まぁまぁ、お陰で 仲間の危機に誰よりも早く戻った メテーリの決意も確認出来た訳だし」
ロドウがメテーリへ向いて言う
「メテーリ、シリウス様が怒ってたよ?多国籍部隊の皆の移動を押し付けたって」
メテーリが衝撃を受ける ガイが言う
「さて、話はそこまでだ 奴らを退治せねば 折角ヴァッガスが守り通した民の土地が 奴らに荒らされてしまう」
ロドウとヴィクトール11世が頷き ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!それじゃ 皆の力を確認しよう!これから僕らと共に世界を取り戻す 仲間たちの力だ!」
多国籍部隊の隊員らが武器を構える
ローレシア城 玉座の間
大臣らが言う
「先ほど 多国籍部隊の隊員及びガイ隊長その他副隊長方を含めた 彼らの確認が取られたとの報告が入りました」
「しかも、その内 約半数の隊員が 隊長方と同等の力を持ち合わせ 結界の外で機械兵との戦いを繰り広げておるとの事です」
リジューネが言う
「多国籍部隊の隊員まで 機械兵と戦う力を得たというのか!?」
大臣Aが言う
「更に彼らは 移動魔法陣でもなく 何処からか突然現れたとの事 魔法使いの者たちが言いますに あれは対人移動魔法の様なものではないかと」
大臣Bが驚いて言う
「では彼らはっ 何処かへ向かい 機械兵と戦える力を携えて 戻って来たと!?」
リジューネが険しい表情で言う
「今更言うまでもなかろう!?奴らはガルバディアへ行き あの化け物から力を得て戻ったのだ!」
大臣らが驚き顔を見合わせてから言う
「ガルバディアの化け物… 以前リジューネ陛下やローレシア第一部隊の者たちが対面したと言う 我らの神シリウス様の 敵ではないかと見受けられる者ですな?」
「しかし、陛下 その者が多国籍部隊の者たちに力を与え ローレシアを守るために戦わせていると言うのはどう言う事でしょうか?よもや この世界の人々の為に 力を貸してくれているのでは…」
リジューネが怒って言う
「黙れっ!」
大臣らが驚いて怯える リジューネが言う
「我らの神シリウス様は 唯一無二!ガルバディアの王もまたしかりだ!シリウスBなどと言うものが 居ろう筈が無い!例え居ったとしても… あの様な者であるなどっ!」
大臣らが顔を見合わせる リジューネが言う
「奴の姿は言い伝えの破壊神ソルの姿 あれほどまでに言い伝えの通りである以上 紛う筈が無いっ …だと言うのにっ!」
リジューネが悔しそうに俯いている 大臣らが心配そうに顔を見合わせる
城下町
フォーリエルが言う
「まさか 金が無くて移動式の店にしたのが こんな形で役に立つとはなぁ?」
テスクローネが団子を焼きながら言う
「エド国の民が住んでいた土地は すっかり結界の外になってしまった あの場所に店舗を持っていたら 開店からたった数日で手放す事になってしまっていたな」
テスクローネがフォーリエルへ向き苦笑して言う
「とは言え、仕入れていた材料が切れれば 屋台は無事でも 店じまいだ 団子作りの材料として もち米が配給してもらえる筈が無いからな」
フォーリエルが残念そうに言う
「この味ともしばらくお別れになっちまうのか… 味わって食っとかないとなぁ…」
フォーリエルが団子を食べる テスクローネが苦笑して言う
「それ所か 食料にだってあり付けなくなってしまうかも知れない …多国籍部隊の彼らが ローレシア帝国周囲の機械兵を退治する事が出来れば 少なくとも 人々が飢え死にする事は無くなるだろうけど それでも エネルギーによる養分強化が出来ない以上 作られる作物は限られてしまう 限られた結界内の土地で 長年作物を育てていた土地は すっかり痩せてしまっている 養分が少なければ いずれはそれで生きる人々も…」
フォーリエルが目を瞑りたまらないと言った表情で言う
「あぁあ~っ 唯でさえ不味いローレシアの料理を 不味い材料で作るだけでなく 栄養もねぇんじゃ もう 食えたもんじゃねぇなあ!」
フォーリエルの横にリジューネが立っていて 目を閉じて咳払いをする
「ううんっ!」
フォーリエルが衝撃を受け 恐る恐る目を開く テスクローネが呆気に取られて言う
「リジューネ陛下…!?」
フォーリエルが固まっている リジューネが目を閉じたまま言う
「不味かろうが何であろうが 得られるだけ有難いと思え 我らローレシアの民とて この国の料理を 美味いと思って食べては居らぬのだ 全ては、限られた食材で 調味料すらを節約して 作らねばならぬが故 …もっとも それゆえに美味く作る方法さえ 考えはしないそうだが」
フォーリエルが呆気に取られたまま呆れの汗を掻く リジューネが目を開いて言う
「それはそうと テスクローネ殿 貴殿に頼みがあって来た」
フォーリエルが視線を強めてリジューネを見る リジューネが横目にフォーリエルを見て微笑して言う
「そう警戒をするな フォーリエル殿 少なくとも貴殿に剣を向けられる様な依頼ではない」
テスクローネがリジューネの前に来て言う
「そして、ローレシアの兵を使って 私を呼び付ける事も無い …そのご依頼は 私的なもの という事でしょうか?」
リジューネがテスクローネへ向き微笑して言う
「そうだ、この期に及んでは もはや ローレシアの王として 私に出来る事は何も無い 後は 新世界からの助けを待つばかりだ」
テスクローネが苦笑して言う
「そうでしょうか?少なくとも 今結界の外で戦っている 多国籍部隊の彼らは そうは思っていないと思いますが?」
リジューネが言う
「その答えが ここにあれば… と思って来たのだが」
リジューネが本を差し出す テスクローネが見て言う
「それは… あのローレシアの記録が記されていた 外部記録装置と同じ …しかし」
テスクローネが周囲にプログラムを発生させてから言う
「あの外部記録装置とは違い これはとても私的なものの様ですね 記す者も読む者も 一人に限られている」
リジューネが言う
「これは ローレシア帝国に唯一… 私の前に置いて唯一の女王であった エレンソルシュラ女王の日記だ」
テスクローネが意外そうにリジューネを見る リジューネが言う
「長きに渡り 不吉な女王の私物として ローレシア城にありながらも 遠ざけられていた しかし、彼女こそ 破壊神ソルの姿を確認したと言う その人物なのだ この日記を読解すれば その詳しい経緯も確認出来る筈 テスクローネ殿 この記録装置の鍵を 私に与えてはくれぬか?」
テスクローネが差し出されている日記を見つめた後 リジューネへ向き苦笑して言う
「人の日記の鍵を 開けてしまうのは気が引けますが」
リジューネが苦笑して言う
「もし、不吉な女王の呪いでも掛けられていたのなら 私へ降りかかる様にしてくれて構わぬ」
テスクローネが軽く笑った後言う
「ちなみに、そちらの報酬は?直ぐにお支払い頂けるのでしょうか?」
リジューネが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「今更、金などで得られる物も無かろうに… 無論構わぬ 一応相手が貴殿であるからにして 多少なら持ち合わせて来た」
テスクローネが微笑して言う
「お金なら足りています 最近は 小額をこつこつと貯める事にも 興味を持ち始めた所ですので」
リジューネが疑問して言う
「うん?…では 何が望みか?」
大剣と大剣がぶつかり合う 続いてフォーリエルとリジューネが顔を突合せる テスクローネが本を前に周囲にプログラムを発生させて居る 建物の裏地 テスクローネの前で フォーリエルとリジューネが演習試合を行っている 激しい金属音 フォーリエルが地面に叩き付けられ リジューネが言う
「そんな弱腰の大剣が!こんにゃくすら切れぬぞ!?」
フォーリエルが起き上がり嬉しそうに悪っぽく笑んで言う
「よく言うぜ!女帝様は こんにゃくなんか 切った事ねぇだろ!?」
リジューネがそっぽを向いて考えて言う
「…うむ そうだな 確かに無い」
フォーリエルが斬り掛かって言う
「こんにゃくは 切るもんじゃねぇえ!手でちぎるもんなんだよ!」
大剣同士がぶつかり合う リジューネがニヤリと笑んで言う
「笑止っ!国王クラスの食卓に出される時には しっかり刃物で切られておる!」
フォーリエルが舌打ちをする テスクローネが顔を上げて言う
「しかし、実際には 不恰好にはなりますが 手でちぎる方が表面積が広がり 味のまろやかさは高まりますよ リジューネ陛下は わざわざ美味しくない方法で作られたものを 召し上がっておられる訳です」
リジューネがムッとする フォーリエルが笑んで言う
「隙有り!」
リジューネが空かさず言う
「甘いっ!」
フォーリエルが弾き飛ばされる リジューネが笑んで言う
「まだまだだな?偽者大剣使い?」
フォーリエルが起き上がって言う
「ちっくしょぉ~っ」
リジューネが面白そうに笑む テスクローネが遠巻きにそれを見て微笑する
リジューネがテスクローネから本を手渡される リジューネが言う
「これにもやはり 私の生態情報が足されているのか?」
テスクローネが言う
「いいえ、生態識別による錠を解除しました 700年も経てば 彼女へのプライバシー侵害も 許されるのではないかと思いまして」
リジューネが納得した様子で生返事を返しながら改めて本を見る
「ふむ…」
フォーリエルが近くに来る リジューネがフォーリエルに気付かぬままテスクローネへ顔を向けて言う
「…所で」
テスクローネが疑問する リジューネが言う
「その… エレンソルシュラ女王の 呪い などは…?」
テスクローネが呆気に取られて言う
「は?…呪い?」
リジューネがハッとして頬を染めつつ誤魔化すように慌てて言う
「あっ ああっ いや、その… う、うんっ 代々その様な噂が立てられていたものであった為 誰も手にするものが居らなかったとか… む、無論!私はそんなものを 信じてなど居らぬが…っ」
フォーリエルがニヤリと笑んで リジューネの背後から声を怪しませて言う
「リジュ~ネェ~~ッ!」
リジューネが悲鳴を上げて飛び上がる
「キャァアアーッ!」
フォーリエルとテスクローネが呆気に取られる リジューネがハッとして慌てて誤魔化す
「ばっばばばっ 馬鹿者っ!フォーリエル!貴殿は な、何をやっているのかぁ!?」
フォーリエルとテスクローネが顔を見合わせ笑い出す リジューネが顔を赤くしながら怒る
「わ、笑うなっ!わ、私は 呪いなんてっ!そんな も、ももももの信じては居らぬのだっ!だ、大体 もしその様なものがあろうとも この剣で!」
リジューネが腰に携えている大剣に手を掛ける テスクローネがリジューネの落とした本を拾いながら言う
「これには そう言った黒魔術の類や プロテクトプログラムも施されては居ませんでした ついでに 呪いと言うものが実在するのでしたら 剣で対抗するのは 少々 難しいかもしれませんね?」
テスクローネがリジューネへ本を差し出す リジューネがムッとしながらも本を奪い返すように受け取って言う
「それこそ貴殿の思い上がりだ テスクローネ 我らアバロンの力は 魔術にもプログラムにも真似出来ぬ 強き意思の力を纏わせる事が出来るのだぞ その剣に切れぬものなどありはせん!」
テスクローネが呆気に取られた後微笑して言う
「嬉しいです リジューネ陛下」
リジューネが疑問してテスクローネを見る テスクローネが微笑んで言う
「この世界の最後の生き残りであられる アバロンの大剣使い リジューネ陛下が その力を信じてくれている事が …アバロンの力は不可能を可能にする いわば奇跡の力です」
リジューネが一瞬呆気に取られた後 視線を落とし苦笑して言う
「しかし、そのアバロンの力であっても あの機械兵には 敵わなかったそうだがな」
テスクローネが表情を悲しめて言う
「…そうですね」
フォーリエルが一つ溜息を吐いてから言う
「けど今は!多国籍部隊の皆が 機械兵と戦えるようになったんだ!俺も 早く皆に追いつかねぇと!」
テスクローネがフォーリエルへ向いて言う
「その話だがフォーリエル 本当にシリウスB様は 私のサポートプログラムで お前を機械兵と戦える程に 出来ると言ったのか?」
フォーリエルが言う
「機械兵と戦える… とは言わなかったけど 十分だって言ってたぜ?」
テスクローネが首を傾げて悩む リジューネが言う
「今っ!なんと言った!?」
フォーリエルがリジューネへ向いて言う
「え?なんと言ったって…?」
リジューネがフォーリエルへ詰め寄って言う
「多国籍部隊の者は!ガルバディアへ!?やはり あのシリウスBを名乗る者に 会って来たと言うのか!?」
フォーリエルが疑問して言う
「あ?…ああ、そうだぜ?何だ ローレシアの連中は まだ知らなかったのか?」
リジューネが悔しそうに言う
「そうではないかとは 思っていたがっ… クッ!…何故皆は あの様な者を シリウス様の片割れと信じるのだっ!」
テスクローネとフォーリエルが顔を見合わせ テスクローネが苦笑して言う
「フォーリエルから聞いた話では とても人離れをした お姿の方だそうですね シリウスB様は」
フォーリエルが言う
「人離れっつーか~ 何か 作り物みてぇな… 肌とか透き通ってるしよ?目の色は赤かったり 光ったりよ?でもって 何でか知らねぇけど 靴を履いてねぇんだよ それが妙に異様で 人離れして見えるんだよなぁ?…あぁ やっぱ人離れか?けど、」
リジューネがフォーリエルへ向く フォーリエルが笑んで言う
「見た目なんてどーでも良いだろ?あの人は俺たちを守ってくれてるんだ でもって、俺たちの為に力を使ってくれる そー言うのが 俺たちの神様って事でよ」
テスクローネが苦笑して言う
「ご本人は ガルバディアの王とだけ 名乗っておられたけれどね?」
リジューネが一瞬呆気に取られてから視線を下げて言う
「この世界の人々に信じられ 崇められるものが この世界の神か… だがっ!」
リジューネが顔を上げ踵を返す テスクローネとフォーリエルが疑問する リジューネが言う
「私は 歴代のローレシア王が言い伝えて来た その言葉を信じているのだ 奴は…」
リジューネが強く目を閉じてから 気を取り直して振り返らずに言う
「この日記に きっと答えが書かれている… 私の直感がそう囁くのだ …テスクローネ! 大儀であった」
リジューネが立ち去る フォーリエルが首を傾げて言う
「直感ねぇ…?」
テスクローネが軽く笑って言う
「朗報を待とう フォーリエル」
フォーリエルがテスクローネへ向く テスクローネがリジューネの去った後を見つめている フォーリエルが苦笑する
ローレシア城 城門前
リジューネが城門を通る 門兵が敬礼する
ローレシア城 王の間
リジューネが部屋へ入り 手にしている日記を見る リジューネが椅子へ向かう
リジューネが席に着いて本をめくる
ローレシア暦1278年、春の月、9の日
本日 私は、我が父セレインツボルレ・ローレシア王より ローレシア国王の王位を受託する 私、エレンソルシュラは ローレシア史上初の女王となる 王位継承式の後 民たちへの挨拶 多少の緊張はあったものの 難なく済ませる事が出来た アバロン、ローゼント、ツヴァイザー、スプローニ、シュレイザーから 祝電を頂く ローンルーズから祝電らしきものが来ているが 解読方法が分からない ソルベキアからの連絡は無い ガルバディア、シリウス様は残念ながら 今日と言う日に限って 珍しくも外出中との事 明日にでも 私から挨拶の通信を送ろうと思う
ローレシア暦1278年、春の月、10の日
本日、最初の業務として 早い時間にガルバディアへ通信を送る ご本人とのお話は 叶わぬものと思っていたが シリウス様直々に 昨日の不在に対する謝罪と戴冠祝いのお言葉を受ける 明後日にでも私の戴冠を祝い、ローレシアへいらして下さるとの事 戴冠を終えた昨夜 先代国王であった父から伝え聞いた 口頭での一度きりの言い伝え 長きに渡り ローレシア王の胸にのみ 携えるべしとの事ではあるが 私はシリウス様へ直接伺いたいと思っている 明日は女王となった私の初外交となる シリウス様とは先代ローレシア王である父との謁見の際 私も幾度とお会いしている 問題は無いと思うが ローレシア王としての緊張はある 定例通り ローレシア城内の床の消毒 シリウス様への献上酒 ボジョレーを用意する様 家臣らへ命じた。
リジューネが言う
「戴冠の夜に先代国王から伝え聞く 口頭での言い伝え… 間違いない これこそ 破壊神ソルのっ …エレンソルシェラ女王はシリウス様に直接伺ったのか!?」
リジューネが真剣な面持ちで本をめくる
ローレシア暦1278年、春の月、12の日
昨日の消毒と献上酒の用意を再確認し 予定の時間に備える 移動魔法陣の作動連絡を受け 城門前でシリウス様のご到着を待つ 予定時間丁度 シリウス様が白く大きなライオンの背に乗りご到着された 定例通り ローレシア城入り口にて ライオンのおみ足を拭かせる 私が過去に見知っていたシリウス様の猫 ヴィクトール様とは異なる毛色 問い掛けた所 私の見知っていた猫は 丁度私の戴冠式の日にこの世を去ってしまったとの事 余計な事を口にしてしまったと 慌てて謝罪すると シリウス様は優しく微笑みお許し下された
同日夜
一通りの業務を終えた頃 城下への御散歩へ向かわれていたシリウス様が 城へお戻りになる 民たちとの会合にご満悦のご様子 定例通りお食事は召されないとの事 シリウス様お気に入りのお部屋にて 晩酌へ同席させて頂く 2人きりの席 機を見て ローレシア王の言い伝えを確認しようと思い 軽い話から入る しかし、シリウス様の前での緊張からか 話を運べず 執拗な問い詰めとなって居る事に気付き 慌てて言葉を慎む しばしの沈黙の後 シリウス様よりお褒めのお言葉を頂く だが、そのお言葉とは裏腹に 御表情は浮かれぬご様子 『お前は美しい』と仰って下された あのお言葉は シリウス様が私の沈黙を気遣って下された お言葉であったのだろうか?
リジューネが言う
「美しい… 確かにエレンソルシュラ女王は とても美しいお方であったが… 同時に とてもシリウス様に似ていた様な…」
リジューネが本のページをめくる
ローレシア暦1278年、秋の月、30の日
秋の月、最後の本日も ガルバディア、シリウス様からの ローレシア来国の連絡は無い 通例なら先の来国から半月もすれば 再来国の連絡が入る筈 シリウス様お気に入りのミズアオイの花も時期を過ぎてしまった 先の来国時 ローレシアの王としての私の対応が 不十分であったのだろうか?恐れ多くはあるが 明日にでも ご様子を伺う連絡を入れてみようと思う
ローレシア暦1278年、冬の月、1の日
早朝の時間が過ぎるのももどかしく ガルバディアへ連絡を入れる シリウス様とのお話は叶わなかったが 近々ローレシアを訪れる予定であられるとの話を聞く 思わずほっと胸を撫で下ろした声に 通信を行っていたガルバディアの民が 微笑した様に見えた 表情が無いとの噂であったガルバディアの民だが 彼らにも表情があったのだろうか?それとも、私の心を映してそう見えてしまったのか…?シリウス様の来国を心待ちにしているとの言伝を頼み 幾分軽くなった心持で 一日の業務をこなせた
ローレシア暦1279年、先春の月、10の日
ガルバディア、シリウス様より連絡を受ける お声のみの通信であったが シリウス様のお声を聞けた事に思わず涙を溢れさせ 恐れ多くも我らの神であられるシリウス様に ご心配をお掛けしてしまった とても優しいお声で 早い内にローレシアへ向かえる様 取り計らってくださるとの事 心より感謝の意を伝えた
ローレシア暦1279年、先春の月、13の日
ガルバディアよりシリウス様が来国された 前日の準備を再確認した上で 早い内から城門前で待つ ベネテクトに続き現れた白く大きなシリウス様の猫ヴィクトール様 しかし、その背に居られる筈のシリウス様のお姿は確認できず 一見女性と見間違う程のお美しいお方が座られていた 私は思わず目を奪われ そのお方が私の横を過ぎるまで シリウス様のお姿を探す事を忘れてしまう 正気に戻った私が慌ててシリウス様のお姿を探すと その私の後ろから 聞き間違う筈の無いシリウス様のお声が掛かる 不意を突かれたままに顔を向けた私に 先ほどのお美しいお方が微笑まれていた 良く確認すれば 黄金の長き髪に 美しき肌 愁いを帯びた碧き瞳 そのお方こそ紛う事無き お姿を変えられた シリウス様ご本人であられたのだ
リジューネが本から顔を上げ 椅子から立ち上がり 本を持って部屋を出て行く
同日
私がその日の業務を終えるよりも早く 城下の御散歩へ向かわれていたシリウス様が 城へお戻りになる 何か不都合があられたのかと尋ねた所 心配ないとのお返事 しかし、定例通りお食事は召されないとの事だけではなく 晩酌も取りやめるとの事 心配する私に お体が安定なさる前に 少々無理をしてしまったのだ とのお返事 大丈夫だ とのお言葉を残し シリウス様お気に入りのお部屋へ入られる
絵画の間
リジューネが壁の絵を見上げて言う
「シリウス様のお体の安定… シリウス様は数十年に一度 その身のお姿を変えられたと言う もしや… エレンソルシュラ女王がシリウス様に似ておられたのではなく その 逆であった…のか…?」
リジューネが2つの絵を見比べる エレンソルシュラ女王とシリウスが描かれた絵の横 セレインツボルレ王とシリウスの描かれた絵 2つの絵のシリウスは激しく異なる
同日夜
一通りの業務を終えはしたが シリウス様の事が気になり身が入らない 幾度目かシリウス様のお部屋の前へと向かおうとした時 交代を終えたお部屋前の衛兵とすれ違う 念の為何か通例と異なる事は無かったかと確認した所 通例よりシリウス様のお部屋へ持ち込まれた物品が多かったとの事 その内一つは 人一人分の大きさほどもあったと言う シリウス様からのお話にも お体が安定されないとの事であった為 激しく心配に思い 足早にシリウス様のお部屋へと向かう お部屋の前に立ち 何度か声をお掛けするが お返事は得られない 衛兵の話から シリウス様がお部屋に居られる事は確認出来る それでもお返事が無いのでは 何か問題があられたのではと思い 私は耐え切れず扉を開けてしまった そこで 私は
リジューネが本に食い入る
私は この世の者とは思えぬほどの 恐ろしい者を目にする事になった 余りの恐ろしさに声も出せずに立ち尽くしていると その者は私に気付き 赤い瞳を光らせた 私はそのまま意識を失ってしまった
ローレシア暦1279年、先春の月、14の日
自室で目を覚ました私は 付き添いの者より昨夜の事を聞き及ぶ 私はシリウス様に助けられ 身に受けた衝撃の緩和を行われた上で 衛兵に運ばれこの部屋で治療を受けていたとの事 身支度もそこそこに 私はシリウス様のお部屋へ向かった お部屋の前 私が声を掛けるまでも無く扉が開かれ シリウス様が変わらず美しくも憂いを帯びた優しい微笑で私を迎えて下された
私はシリウス様へ昨夜の記憶を必死に手繰り かの者の姿をご説明した 恐れ多くもかの者は シリウス様の居られぬ時に そのお部屋へと踏み入っていたのだ 私に出来る事はその者に関して唯一分かる その姿を 余すことなくシリウス様へお伝えするべきであると かの者の姿は”人の肌色を持たぬ 青白い体に光りを纏い 色を持たぬ髪が 緋色の瞳を隠す” 私がおぞましい かの者の姿を口にしその恐ろしさに怯えていると シリウス様は取り乱す私へ何度も優しいお言葉を掛けて下された 「お前がその者に再び会う事は決して無い」シリウス様の力強いお言葉を受け 私は安堵に胸を撫で下ろすと同時に ある事に気付いた もしや、あのおぞましい者こそ この世界を襲わんとしている シリウス様の宿敵ではないのかと 私は今こそ確認するべきと思い シリウス様へ ローレシア王の伝言を確認した
リジューネが本に食い入る
かの者がこの世界の敵、シリウス様の宿敵ではないのか?私の問いに シリウス様は心から驚かれていた 普段のシリウス様からは見られない とても驚かれたご様子に 私は事の大きさを感じ取り 執拗にシリウス様へと問い詰めた 今思えば 許されぬほどの私の無礼な程の問い詰めに シリウス様は重い口を開かれ ついに その名を教えて下された この世界の敵 シリウス様の宿敵であるその者の名は 破壊神ソル しかし、シリウス様は 以後誰にもその名を伝えるなかれとご忠告下された ローレシア王の言伝も 私の代からは取り止める様にと しかし、かの者は シリウス様の御身がお力を弱めた あの時に 確かに私の前にまで現れたのだ そうとなれば またいつ シリウス様がお体を変えられた際に現れるとも限らない 私はシリウス様とのお約束に背く事と分かりながらも ローレシア王の言伝へかの者の名と姿を足し 後の世へと残そうと思う
リジューネが本を閉じて言う
「ローレシア王の言い伝えに 破壊神ソルの名と姿が足されたのは エレンソルシェラ女王の時だったのか… それまでは この世界の敵であり シリウス様の宿敵であるものが 存在すると言う事だけが…」
リジューネが本を横に置き考えて言う
「…とは言え、エレンソルシェラ女王は 直接シリウス様へ確認を取っている やはり 破壊神ソルの姿は 言い伝えの通りなのだ …ならば やはりっ!」
リジューネが顔を上げる 部屋の扉がノックされ衛兵が言う
「リジューネ陛下っ 大臣より 多国籍部隊が ローレシア帝国を襲っていた機械兵の殲滅に 成功したとの連絡です!」
リジューネが驚いて思わず立ち上がって言う
「何だとっ!?」
衛兵が続けて言う
「現在、大臣方が 詳しい経緯を確認中です どうか リジューネ陛下も玉座の間へ お越し頂きたいとの」
衛兵が言っている最中に部屋の扉が開かれ リジューネが飛び出して行く 衛兵が一瞬驚いた後リジューネに続こうとしてふと部屋の中を見る エレンソルシェラの日記が忘れられている 衛兵が気付きつつも 急いでリジューネを追う
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