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第二章 夏目と雪平編

10)甘い蜜。*(雪平視点)

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「んん、夏目っ……そこは……」


 僕は夏目の手に自らの手を重ねてやんわりと静止しかけるが、思い直して手を離す。
 先に我慢できないと言ったのは自分なのだ。
 僕は羞恥心に耐えながら、夏目が下着を脱がせやすいように、軽く腰を浮かせる。夏目がするりと僕の下着を脱がせれば、既に固く反り返ったものが、狭い布の中から開放され、軽く腹を打った。


「あ、あんまり見ないで……」


 僕は両手を足の間に置いて、その部分を隠そうと試みる。
 ほんの少し触れられただけなのに、なんで……。
 だが、僕の両手は夏目に捕まり、あっさりと体の脇に避けられてしまった。


「雪平さんはここも綺麗っス。だから、どうか隠さないで」


 そう言って夏目はそこに顔を近づける。先端の敏感な部分に夏目の熱い吐息がかかり、まさかと思った時には既にその部分を口に含まれていた。


「あっ……、あっ、駄目っ、そんな……っ!」


 夏目の口腔内は、じんわりと熱かった。先端を口に含まれて、そのまま強く吸われる。チロチロと舌の先で雁首を刺激されると、ゾクゾクと甘く痺れるような快感が走った。
 快楽にビクビクと跳ねる腰を優しく支える夏目は、そのまま奥深く僕の性器を咥え込んだ。鈴口が喉奥に当たるほど深く口腔内に迎え入れられた性器は、ぬるぬると粘膜に擦られてみるみる限界まで腫れ上がる。


「あっ……、そ、それ以上は……っ」


 我ながら、早すぎると思う。
 けれど、それに一番戸惑っているのは僕自身だった。
 自分は性的に淡白な方だと思っていた。けれど、夏目から受ける愛撫はどれも過剰なほどに僕の興奮と快楽を引き出して、僕を困惑させた。
 夏目はゆっくりと口腔から僕のものを抜き、竿を緩く掴んだまま僕の方を見る。


「それ以上は……?」
「そ、それは……」


 夏目が僕に何を言わせたいのかを悟った僕は、紅潮する頬を自覚しつつ、ふいっと視線を反らす。すると夏目はそれを見越していたかのように、ゆるゆると僕のペニスを手でしごき始めた。


「! ちょっ、それは卑怯……っ!」


 僕は夏目を軽く睨みつつ、眉をひそめて快楽に耐えた。夏目は微笑みを浮かべながら、手を動かし続ける。


「雪平さん、俺も雪平さんのこと、下の名前で呼んでもいいっスか?」
「んん、好きにしたらいい……ッ」


 僕が迫りくる限界をやり過ごしながらそう答えると、夏目は嬉しそうに笑った。


「俺、怜さんが俺の手でイクところが見たいっス……。そうやって俺の手でイク事を恥ずかしがってる怜さんも、凄く可愛いですけど」


 そう言いながら、夏目は先走りの零れる鈴口にチュッとキスを落とした。


「んんッ! も……ほんとに、限界なんだ……ッ……イッ……く……っ」


 僕は限界を訴えながら、夏目の肩にしがみつくようにして爪をたてる。夏目は嬉しそうな顔でその先端を再び口に含んだ。舌の先で先走りの湧く小さな穴を刺激され、数回抜き差しを繰り返されれば、僕の我慢はあっさりと限界を迎えた。



「だっ……だ、めっ…………ああッッ!!」


 ドクン、と下半身に脈打つような衝撃が走った。
 性を解き放つそれは何度もビクビクと痙攣し、夏目の口腔内を欲望で汚す。
 夏目は僕が放ったそれを全て口腔で受け止めて、あろうことかゴクリと飲み下してしまった。


「なっ!?」


 達したばかりの倦怠感を押し退けて、僕は慌てて起き上がる。けれども夏目は『さも当然』と言わんばかりに涼しい顔だ。


「怜さんの、甘いんスね」


 邪気のない笑顔でそう言う夏目に、僕は再び下半身が火照り始めるのを感じる。
 

「き、気のせいでしょ……。そんなの」


 僕は精一杯そう強がって、枕の下を探る。そこには夏目がシャワーを浴びている間に仕込んであった、とあるものがある。それは透明の粘質な液体が入ったチューブだった。


「久しぶりだから、ちょっと待ってて」


 僕はそう言いながらチューブの中身を取り出して、自身の指に絡める。両ももの間にその指を忍ばせると、奥に潜んだ窄まりにそっとその指を差し入れた。
 そこには一瞬のひんやりとしたローションの感触があったのち、僅かな異物感が走った。異物感に耐えながら、僕は中指をくにくにと動かして奥の方へとその指を侵入させる。
 何年かぶりに行うその行為は、思いの外固く閉ざされた秘孔に阻まれて、なかなか上手く進まない。
 僕は根気よく括約筋を解すように指を動かしながら、待たせてしまっている夏目をチラリと見た。
 夏目は僕の痴態に頬を紅潮させたまま魅入っていたが、僕と目が合うとハッと我に返ったように言った。


「すんません。怜さんがあまりにエッチだったんで、完全に見惚れちゃってたっス。……そのローション、ちょっと借りますね」


 そう言って夏目は、側に落ちていたローションを拾い上げて自分の手の中に出した。秘孔に埋めていた僕の指をそっと押しのけると、代わりに自分の指をそこにそっとあてがった。


「痛くないように気を付けるっスけど、辛かったら言って下さい」
「えっ……!? あっ……」


 僕が言葉を発するより早く、ぬるりと夏目の指が中に侵入してきた。僕の指よりも僅かに太い夏目の指が、ゆっくりと僕の中を押し拡げる。
 中を探るようにぐるりと指を動かされると、夏目の指の感触が生々しく僕に伝わって、その僅かな異物感にすらゾクリとした興奮を覚えた。
 僕は今、夏目の指に犯されている。そう思うだけで、何故だがたまらなかった。


「苦しいっスか……?」
 

 目を閉じて僕の耐えるような表情に、夏目が心配そうに聞いた。けれども僕は首を横に振って、薄く目を開ける。


「ううん。むしろ気持ち良すぎて、困ってる……」


 僕の答えに安堵した表情を見せた夏目は、ゆっくりと二本目の指を中に侵入させてきた。二本を揃えて何度か抜き差しを行うと、深く差し込んだまま中で少しだけ関節を曲げる。
 内側の肉壁を指の腹で撫でるように、二本の指をバラバラに動かされると、ゾクゾクとした甘い痺れが僕を襲った。


「あっ……あっ……それ、駄目っ……!」
「痛いですか?」


 夏目は優しくそう問うが、僕は首を振った。


「よ、よすぎて……」


 小声でそう答える僕に、夏目は嬉しそうに笑った。


「良かった。……なら、もっと良くしてあげますね」
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