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8)チー・ママ救出大作戦!?①
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あれから4人で協議を重ねた結果、俺達は翌朝二手に分かれて行動することになった。
ルナとラングは、街に下った三ツ矢を保護し、その足でいまだチー・ママの座にいると思われる幸田と羽鳥へ、手分けをして事情を説明しに向かう。
俺とカヴァは、2日後に控えた北の新たなチー・ママとの対決に備えつつ、街に留まって先日撃破され街に下ったはずの元チー・ママ、トオルを探し出し、新たなチー・ママの情報収集をする。
それぞれの役割を確認し、ルナとラングは朝早くに宿を出た。俺達は昨日の市場まで戻って、屋台のお兄さん達に話を聞く。
「トオル様が負けたぁ!? あっはっは! 兄ちゃん達、冗談は休み休み言ってもらわなきゃ困るよ。なんせトオル様は四天王最強の男なんだ。そう簡単に負けるような男じゃないよ」
2日間に渡って市場で働く何人かに話を聞くも、トオルの居場所は愚か、トオルが既に挑戦者に敗北した事を知る者さえ全く居なかった。
「なんだかおかしいわ……。どーもきな臭い。こうも民衆に情報が漏れていないとなると、考えられるのは……」
「誰かが情報を隠し、トオルを匿っている……?」
「匿っているのならまだいいわ。最悪、現チー・ママもしくは何者かに、早々に捕らえられているかもしれないわよ」
カヴァが苛立った様子で、手に持った緑色の雁首キャンディに無造作に歯を立てる。ガリリと音を立てて噛み砕かれた雁首キャンディの雁首部分が、ごろりともげ落ちてカヴァの口の中で粉々に噛み砕かれ消えた。
「……ヒッ!」
屋台のお兄さんは、その様子を見て何かを想像してしまったのであろう。股間を押さえながら、小さく悲鳴を上げていた。
何を想像したのかは、まぁ何となく分かる。合掌。
「体液の流通方面からルートを辿るのは厳しいのか?」
「うーん。出荷元を辿る事は出来ても、それが誰のモノかを調べるには恐らく時間がかかるわ。それをするなら世界中の珍しいものが集まる王都の闇市場の方が情報が集まるかもしれないけれど、さすがに今は対決前の鷹夜をここに一人置いては行けないから無理ね」
キャンディを噛み砕いてすっかり食べ切ったカヴァは、両腕を組んでそう言った。
「今回ばかりは相手が悪いわ。貴方だって負けたらトオル様の二の舞になるかもしれない。本当は、鷹夜に限って負ける訳ないって信じたいけど……」
カヴァは悔しそうにそう言いながら、己の太ももを握り締めた。それから俺を真っ直ぐ見つめたカヴァは、俺の肩に手を置いて言った。
「ねえ鷹夜。アタシ、魔力はからっきしだけれど、運動神経と健脚には自信があるの。いざとなったら、鷹夜を背負って半日走るくらいの脚力はあるわ。"絶対に負けるな"って言いたい所だけど、今回ばかりは相手が悪い。駄目だと思ったら、逃げられる力が残っているうちにアタシのところに逃げてくるのよ。いい? 足腰立たなくなる前に、絶対よ?」
子供に言い聞かせるような口調でそう言ったカヴァに、俺は素直に頷いた。『命あっての物種だ』そう言った三ツ矢の言葉が俺の脳裏に浮かぶ。
その名の通り、足腰立たなくされる前に逃げる。
それが可能なのか、不可能なのか。俺には分からなかったけれど……。
◇◆◇◆◇◆
対決の日。
その日、俺がこちらの世界に来て初めて、朝から雨が降っていた。いつものチー・ママ対決用のひらひら衣装は、僅かに雨に濡れて俺の両手足にまとわりつき、少し気持ち悪い。
「鷹夜、頑張ってね……!」
いつも満面の笑顔で送り出してくれていたカヴァの笑顔が、今日は心無しか力無い。不安な気持ちを隠そうとしてくれているのだろうが、僅かに隠しきれていないようだ。
「おー、任せろ!」
俺は不安を吹き飛ばすようにできる限り明るく答えて、カヴァに背を向けて室内へと入った。
いくつものドアを隔て、ようやく対決場所である寝所にたどり着く。
相手はまだ現れていないようだ。
俺はふかふかの天蓋付きベッドに腰を掛けて、相手が現れると思しきドアに視線を送った。
そのまま、5分ほど待っただろうか。
「はー、やっべ! もう相手来てんじゃん!」
その男は、軽いノリで寝所へのドアを開けた。前評判とイメージが違う、少しチャラい声。
色素の薄いホスト風の髪、スラリと高い長身。美しく整った、見慣れた顔……。そう。見慣れ、た……?
「り、りり、涼…………っっ!?!?!?」
そう、そこに現れたのは……。
数週間前、都内高級ホテルのベッドでイキ別れたはずの、恋人……涼だった。
ルナとラングは、街に下った三ツ矢を保護し、その足でいまだチー・ママの座にいると思われる幸田と羽鳥へ、手分けをして事情を説明しに向かう。
俺とカヴァは、2日後に控えた北の新たなチー・ママとの対決に備えつつ、街に留まって先日撃破され街に下ったはずの元チー・ママ、トオルを探し出し、新たなチー・ママの情報収集をする。
それぞれの役割を確認し、ルナとラングは朝早くに宿を出た。俺達は昨日の市場まで戻って、屋台のお兄さん達に話を聞く。
「トオル様が負けたぁ!? あっはっは! 兄ちゃん達、冗談は休み休み言ってもらわなきゃ困るよ。なんせトオル様は四天王最強の男なんだ。そう簡単に負けるような男じゃないよ」
2日間に渡って市場で働く何人かに話を聞くも、トオルの居場所は愚か、トオルが既に挑戦者に敗北した事を知る者さえ全く居なかった。
「なんだかおかしいわ……。どーもきな臭い。こうも民衆に情報が漏れていないとなると、考えられるのは……」
「誰かが情報を隠し、トオルを匿っている……?」
「匿っているのならまだいいわ。最悪、現チー・ママもしくは何者かに、早々に捕らえられているかもしれないわよ」
カヴァが苛立った様子で、手に持った緑色の雁首キャンディに無造作に歯を立てる。ガリリと音を立てて噛み砕かれた雁首キャンディの雁首部分が、ごろりともげ落ちてカヴァの口の中で粉々に噛み砕かれ消えた。
「……ヒッ!」
屋台のお兄さんは、その様子を見て何かを想像してしまったのであろう。股間を押さえながら、小さく悲鳴を上げていた。
何を想像したのかは、まぁ何となく分かる。合掌。
「体液の流通方面からルートを辿るのは厳しいのか?」
「うーん。出荷元を辿る事は出来ても、それが誰のモノかを調べるには恐らく時間がかかるわ。それをするなら世界中の珍しいものが集まる王都の闇市場の方が情報が集まるかもしれないけれど、さすがに今は対決前の鷹夜をここに一人置いては行けないから無理ね」
キャンディを噛み砕いてすっかり食べ切ったカヴァは、両腕を組んでそう言った。
「今回ばかりは相手が悪いわ。貴方だって負けたらトオル様の二の舞になるかもしれない。本当は、鷹夜に限って負ける訳ないって信じたいけど……」
カヴァは悔しそうにそう言いながら、己の太ももを握り締めた。それから俺を真っ直ぐ見つめたカヴァは、俺の肩に手を置いて言った。
「ねえ鷹夜。アタシ、魔力はからっきしだけれど、運動神経と健脚には自信があるの。いざとなったら、鷹夜を背負って半日走るくらいの脚力はあるわ。"絶対に負けるな"って言いたい所だけど、今回ばかりは相手が悪い。駄目だと思ったら、逃げられる力が残っているうちにアタシのところに逃げてくるのよ。いい? 足腰立たなくなる前に、絶対よ?」
子供に言い聞かせるような口調でそう言ったカヴァに、俺は素直に頷いた。『命あっての物種だ』そう言った三ツ矢の言葉が俺の脳裏に浮かぶ。
その名の通り、足腰立たなくされる前に逃げる。
それが可能なのか、不可能なのか。俺には分からなかったけれど……。
◇◆◇◆◇◆
対決の日。
その日、俺がこちらの世界に来て初めて、朝から雨が降っていた。いつものチー・ママ対決用のひらひら衣装は、僅かに雨に濡れて俺の両手足にまとわりつき、少し気持ち悪い。
「鷹夜、頑張ってね……!」
いつも満面の笑顔で送り出してくれていたカヴァの笑顔が、今日は心無しか力無い。不安な気持ちを隠そうとしてくれているのだろうが、僅かに隠しきれていないようだ。
「おー、任せろ!」
俺は不安を吹き飛ばすようにできる限り明るく答えて、カヴァに背を向けて室内へと入った。
いくつものドアを隔て、ようやく対決場所である寝所にたどり着く。
相手はまだ現れていないようだ。
俺はふかふかの天蓋付きベッドに腰を掛けて、相手が現れると思しきドアに視線を送った。
そのまま、5分ほど待っただろうか。
「はー、やっべ! もう相手来てんじゃん!」
その男は、軽いノリで寝所へのドアを開けた。前評判とイメージが違う、少しチャラい声。
色素の薄いホスト風の髪、スラリと高い長身。美しく整った、見慣れた顔……。そう。見慣れ、た……?
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