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7)北の都『バリ・リバー』の乱。①
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「さあ、ここが空イキ砂漠。ここを越えたら、最後のチー・ママがいる、北の都『バリリ・バー』よ」
「ふーん、砂漠って割にはそんなに暑くないんだな? なんなら、ハッテンバーの方がよっぽど暑かった気がする」
丘の下に広がる空イキ砂漠を見下ろした俺は、強風に飛ばされてきた砂から顔面を守るように、額に手を翳した。
そんな俺に自分が使っていた砂避けのマントを渡してくれたカヴァは、微笑みを浮かべながら言った。
「砂漠って名前はついてるけど、ここは砂丘なの。この砂丘にはここにしか出ない『エスジ結蝶』と呼ばれる幻の美しい蝶が居るんだけど、漢方薬の材料として高く売れるから、まぁお小遣い稼ぎにはピッタリね」
「S字結腸…………」
唐突に随分コアなとこぶっこんできましたね? それリアルでヤッたら駄目なやつね? そもそも、ゲイセックスは中出し厳禁だ。
俺が心の中でそう呟いていると、カヴァはふと頭上を見上げるやいなやひらりと跳躍し、3メートルほど頭上を飛んでいた蝶を捕えた。
「うーん、残念。これはチョク蝶だったわ! こいつはエスジ結蝶によく似ているけど、価値がないの。チョク蝶は羽が光に透けないのよ」
「直腸…………」
カヴァが捕まえた蝶を逃してやる様子を見ながら、俺は頭上をヒラヒラと飛ぶ数匹の蝶を指差して言った。
「因みに、エスジ結蝶は何の漢方薬になるんだ? どうせまた、精力剤とかそういう……」
「んー、感度を跳ね上げる薬にもなるし、催淫剤としても使われるわね。魔力の無いこちらの世界の人達は、この蝶の鱗粉を使って、オスの快楽や性欲を引き出したりするのよ」
「ゲッ……まるで媚薬かなにかみたいだな」
いくら美しい蝶でも、蝶の羽や鱗粉を加工して飲むのだと思うとちょっと気持ち悪い。
「うわぁ! 鷹夜様、凄いですぅ!」
不意にルナがそんな歓声をあげたので、俺は我に返る。
見上げると、俺の周りには水晶を思わせるような美しく透き通った羽の蝶が、次から次へと寄って来ていた。
「ちょっと! コレ、全部幻のエスジ結蝶よ! 鷹夜っ、そのままじっとしててね! ルナっ!」
「はいぃぃ!! ガッテン承知の助デス!!」
「ガッテン承知の助……ルナって何歳なんだ?」
「良いから、鷹夜はそのまま動かないでね!」
カヴァがそう言って、大慌てで俺の周りを飛ぶ蝶を捕まえ始める。布袋を持ってその後を追いかけるルナは、キラキラと目を輝かせていた。
よく考えたら旅の経費は全て2人が負担してくれている訳だから、この蝶を捕まえる事で少しでもそれが返せるのなら、俺も嬉しい。極力ジッとしていよう。
結局俺達がこの空イキ砂漠を通り抜けるまでの3時間ほどの間に、ルナが持っていた布袋は、沢山のエスジ結蝶で溢れかえった。
「こんな大漁は生まれて初めてデスよー!」
ホクホクとした表情で頬を緩めるルナに、カヴァも笑顔を見せながら言った。
「ホントね! これで3ヶ月は路銀に困らないわ。そう言えば、現魔王様が候補者としてこの空イキ砂漠に落とされたときも、全身に幻の蝶を侍らせていたって聞いたことがあるわ。この蝶は、ゲイ族の強い魔力に惹かれて寄ってくるのかもしれないわね」
「え、そうなのか?」
あの蝶達にとって、俺は花かなにかなのか? そんなメルヘンな男になった覚えはないんだが。
……まぁ2人が喜んでくれたならそれでいっか。
◇◆◇◆◇◆
「ようこそ鷹夜様! お待ちしておりました」
街の門の前で明るくそう言って出迎えてくれたのは、スラリと背の高い細身の男だった。
猫を思わせる長いしっぽに、膝から下は虎とも猫とも付かない茶トラ模様の毛。細い糸目は、笑うとほんのり人懐っこさがある。
「ラング! 久しぶりね!」
「ラング、元気そうデスー!」
カヴァとルナが嬉々として男の側に駆け寄ったので、俺はよく分からないままその人物にペコリと頭を下げた。
「えーっと、この間言ってたもう一人の仲間ってやつか?」
「ええ、紹介するわ。私達のギルドの、最後の一人。ラングローブよ。ラング、こちらが今回の魔王候補、鷹夜」
カヴァが俺をそう紹介すると、ラングと呼ばれた男は紳士的に腰を直角に曲げて俺に挨拶をした。
「鷹夜様、私はラングローブと申します。どうぞ、ラングとお呼び下さい」
「俺は鷹夜だ。様とかつけなくていーよ。よろしくな」
「はい。では鷹夜さん、と」
俺はラングと笑顔で握手を交わして、彼が手配してくれた宿へと向かった。
バリリ・バーの街は、街の中心に大きな運河が通っていた。
街には運河に乗って様々な物資が街に運び込まれるらしく、見たところ今まで見た街の中では一番栄えている。
宿に向かう道中で、先程捕まえたエスジ結蝶を売り払い、路銀を得た。
その路銀で旅の消耗品や食材を買い揃えて、宿までの道中に市場を冷やかす。
カラフルな飴菓子に、油で揚げた饅頭。ちょっとグロテスクなチョコバナナ風の何かと、色とりどりの水飴。
街はさながら、お祭りのようだ。
「おっ、兄さんたち。買ってかない? 雁首キャンディ、揚げマン、蜜がけバナナに、愛蜜飴があるよっ」
うーん、ネーミングが相変わらずお下品!
屋台のお兄さんに心の中でそう突っ込みつつ、俺はやんわりとお断りした。
その横でルナは、ニコニコした表情で、ピンク色の雁首キャンディを購入していた。
何故あの形をキャンディで再現しようとしたのかは本当に謎だ。
子供が知らずに舐めたらどうすんだ!
「うワァー! 見てくだサイ。美味しそうですよ、鷹夜様ァ」
棒に刺さった雁首キャンディを片手に持ったルナが、眩しいほどに純粋な笑顔で俺を振り返る。
「あ、えーっと、それはどっちの意味で……?」
「……ふぇ???」
「あ、いや。俺が悪かった」
……ルナがそのキャンディを舐めるときは、俺……脳内でモザイク処理をしとこうかな。
「ふーん、砂漠って割にはそんなに暑くないんだな? なんなら、ハッテンバーの方がよっぽど暑かった気がする」
丘の下に広がる空イキ砂漠を見下ろした俺は、強風に飛ばされてきた砂から顔面を守るように、額に手を翳した。
そんな俺に自分が使っていた砂避けのマントを渡してくれたカヴァは、微笑みを浮かべながら言った。
「砂漠って名前はついてるけど、ここは砂丘なの。この砂丘にはここにしか出ない『エスジ結蝶』と呼ばれる幻の美しい蝶が居るんだけど、漢方薬の材料として高く売れるから、まぁお小遣い稼ぎにはピッタリね」
「S字結腸…………」
唐突に随分コアなとこぶっこんできましたね? それリアルでヤッたら駄目なやつね? そもそも、ゲイセックスは中出し厳禁だ。
俺が心の中でそう呟いていると、カヴァはふと頭上を見上げるやいなやひらりと跳躍し、3メートルほど頭上を飛んでいた蝶を捕えた。
「うーん、残念。これはチョク蝶だったわ! こいつはエスジ結蝶によく似ているけど、価値がないの。チョク蝶は羽が光に透けないのよ」
「直腸…………」
カヴァが捕まえた蝶を逃してやる様子を見ながら、俺は頭上をヒラヒラと飛ぶ数匹の蝶を指差して言った。
「因みに、エスジ結蝶は何の漢方薬になるんだ? どうせまた、精力剤とかそういう……」
「んー、感度を跳ね上げる薬にもなるし、催淫剤としても使われるわね。魔力の無いこちらの世界の人達は、この蝶の鱗粉を使って、オスの快楽や性欲を引き出したりするのよ」
「ゲッ……まるで媚薬かなにかみたいだな」
いくら美しい蝶でも、蝶の羽や鱗粉を加工して飲むのだと思うとちょっと気持ち悪い。
「うわぁ! 鷹夜様、凄いですぅ!」
不意にルナがそんな歓声をあげたので、俺は我に返る。
見上げると、俺の周りには水晶を思わせるような美しく透き通った羽の蝶が、次から次へと寄って来ていた。
「ちょっと! コレ、全部幻のエスジ結蝶よ! 鷹夜っ、そのままじっとしててね! ルナっ!」
「はいぃぃ!! ガッテン承知の助デス!!」
「ガッテン承知の助……ルナって何歳なんだ?」
「良いから、鷹夜はそのまま動かないでね!」
カヴァがそう言って、大慌てで俺の周りを飛ぶ蝶を捕まえ始める。布袋を持ってその後を追いかけるルナは、キラキラと目を輝かせていた。
よく考えたら旅の経費は全て2人が負担してくれている訳だから、この蝶を捕まえる事で少しでもそれが返せるのなら、俺も嬉しい。極力ジッとしていよう。
結局俺達がこの空イキ砂漠を通り抜けるまでの3時間ほどの間に、ルナが持っていた布袋は、沢山のエスジ結蝶で溢れかえった。
「こんな大漁は生まれて初めてデスよー!」
ホクホクとした表情で頬を緩めるルナに、カヴァも笑顔を見せながら言った。
「ホントね! これで3ヶ月は路銀に困らないわ。そう言えば、現魔王様が候補者としてこの空イキ砂漠に落とされたときも、全身に幻の蝶を侍らせていたって聞いたことがあるわ。この蝶は、ゲイ族の強い魔力に惹かれて寄ってくるのかもしれないわね」
「え、そうなのか?」
あの蝶達にとって、俺は花かなにかなのか? そんなメルヘンな男になった覚えはないんだが。
……まぁ2人が喜んでくれたならそれでいっか。
◇◆◇◆◇◆
「ようこそ鷹夜様! お待ちしておりました」
街の門の前で明るくそう言って出迎えてくれたのは、スラリと背の高い細身の男だった。
猫を思わせる長いしっぽに、膝から下は虎とも猫とも付かない茶トラ模様の毛。細い糸目は、笑うとほんのり人懐っこさがある。
「ラング! 久しぶりね!」
「ラング、元気そうデスー!」
カヴァとルナが嬉々として男の側に駆け寄ったので、俺はよく分からないままその人物にペコリと頭を下げた。
「えーっと、この間言ってたもう一人の仲間ってやつか?」
「ええ、紹介するわ。私達のギルドの、最後の一人。ラングローブよ。ラング、こちらが今回の魔王候補、鷹夜」
カヴァが俺をそう紹介すると、ラングと呼ばれた男は紳士的に腰を直角に曲げて俺に挨拶をした。
「鷹夜様、私はラングローブと申します。どうぞ、ラングとお呼び下さい」
「俺は鷹夜だ。様とかつけなくていーよ。よろしくな」
「はい。では鷹夜さん、と」
俺はラングと笑顔で握手を交わして、彼が手配してくれた宿へと向かった。
バリリ・バーの街は、街の中心に大きな運河が通っていた。
街には運河に乗って様々な物資が街に運び込まれるらしく、見たところ今まで見た街の中では一番栄えている。
宿に向かう道中で、先程捕まえたエスジ結蝶を売り払い、路銀を得た。
その路銀で旅の消耗品や食材を買い揃えて、宿までの道中に市場を冷やかす。
カラフルな飴菓子に、油で揚げた饅頭。ちょっとグロテスクなチョコバナナ風の何かと、色とりどりの水飴。
街はさながら、お祭りのようだ。
「おっ、兄さんたち。買ってかない? 雁首キャンディ、揚げマン、蜜がけバナナに、愛蜜飴があるよっ」
うーん、ネーミングが相変わらずお下品!
屋台のお兄さんに心の中でそう突っ込みつつ、俺はやんわりとお断りした。
その横でルナは、ニコニコした表情で、ピンク色の雁首キャンディを購入していた。
何故あの形をキャンディで再現しようとしたのかは本当に謎だ。
子供が知らずに舐めたらどうすんだ!
「うワァー! 見てくだサイ。美味しそうですよ、鷹夜様ァ」
棒に刺さった雁首キャンディを片手に持ったルナが、眩しいほどに純粋な笑顔で俺を振り返る。
「あ、えーっと、それはどっちの意味で……?」
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……ルナがそのキャンディを舐めるときは、俺……脳内でモザイク処理をしとこうかな。
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