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「そう言えば、鷹夜さん。四天王のうち3人を一発で倒したって本当なんですか?」
俺がルナが購入した揚げマンを頬張っていると、隣に寄ってきたラングがそう聞いてきた。
「ああ。まぁ、1人はルナのおかげで不戦勝だったけどな。残りの2人は、割と圧勝」
揚げマンは、名前こそ酷いが中身は至って普通のあんまんを2つ串に刺して、油で揚げたモノだった。
俺はその饅頭を大きなひと口で頬張りながら、過去に倒した四天王の3人を思い出す。
俺の台詞を聞いたラングは、憧れとも尊敬とも取れるような表情で目を輝かせた。
「素晴らしいです、鷹夜さん。良かったら今宵は是非、私を寝所へ招いていただけませんか?」
「ぶふっ! は、はぁっ!?」
ラングの突然の夜のお誘いに、俺は頬張っていた揚げマンを吹いた。
「おや、駄目ですか? 私はリバですから、鷹夜さんのお望みの側でご奉仕させていただきますよ? それとももう、カヴァやルナ、もしくは他の従者にお心を決めてしまわれたのでしょうか?」
ラングは残念そうにそう言ったが、俺はぶんぶんと首を左右に降って言った。
「カヴァともルナとも、ましてや他のやつとも、四天王以外のやつと無闇にベッドインしたことなんてねーよッッ」
「え…………?」
驚きを隠せない様子のラングに、カヴァが蜜飴を片手にしれっと言った。
「ラング、駄目よ。鷹夜には、あちらの世界に恋人がいるのだそうよ。だから、残念ながらアタシ達が夜のお相手に呼ばれることは無いわ」
「ええ、とっても残念ですけドネー」
いつの間にか背後にいたルナとカヴァが、そんなことを言ったことに、俺は驚いた。
「……は? いや、ちょっと待って!? ゲイ・ジョークとかじゃなく、お前ら全員、本気で俺と寝たかったの!!??」
俺の台詞を聞いた3人は、キョトンとした表情で互いに顔を見合わせた後、あろうことか、3人揃ってコクリと首を縦に振った。
ラングとルナはまだしも、まさかの、カヴァ。お前もかよ……。
「鷹夜さん。魔王候補で強い魔力を持つ貴方に、抱かれたくないゲイなどおりません」
「魔王様に寝所に呼ばれるのは光栄な事ですけど、私達下々の者にはまずありえ無い事ですカラ。せめて今の内にッテ」
「まっ、アタシは最初から鷹夜のこと、良いなーって思ってたわよ?」
「お、お前ら…………マジか……っ!」
そう聞いてしまうと、途端になんだか表情がギクシャクしてしまう。
「……馬鹿ねぇ。だからって、魔王候補を襲ったりしないわよ」
俺のそんな空気を読んだのか、カヴァがケラケラと笑いながらパシンと俺の背中を軽く叩いた。
「痛っ……! あれ……?」
振り返ったカヴァ、なんか今ちょっと寂しそうな顔してなかったか?
そしてその顔を見て、俺の胸も少し痛んだような気が……?
いやいやいや、ナイだろそれは!!
同じように残念そうな顔のルナとラングを尻目に、俺は口の中にありったけの揚げマンを詰め込んで、僅かに胸のうちに湧いた感情を誤魔化した。
……そして、見事に喉に詰まらせた。
「ん、んぐぅぅ!」
「ちょっ、ルナっ! お水!! 鷹夜が揚げマンを喉に詰まらせたわ!」
「うわぁぁ、鷹夜様! おっ、お水でスゥ!」
俺は受け取った水筒の水を喉に流し込みながら、とりあえずこの変な空気を誤魔化せたことに安堵していた。
「駄目よー、鷹夜。ケツマンの実は、ただでさえ口の中の水分持っていっちゃうんだから……」
「んごっ!? ゲホッ、ゲホッ。い、今なんて……!?」
「鷹夜様、先程油で揚げたケツマンの実を召し上がっていましたヨネ?」
「…………そ、そういうことか」
『ゲイネタばかりの食べ物が並ぶこの屋台で、アゲマンなんてワードが出ること自体が、なんかおかしいぞ!?』ってことに、気が付けなかった俺が悪いんですよね。ワカリマス……。
俺は暫くゲホゲホとむせながら、背中をさすってくれるカヴァの優しい手の温もりを少しだけ意識していた。
やっぱりカヴァは、クールにみえて面倒見が良い。けれど、その面倒見の良さは、果たして誰に対してもそうなんだろうか……? もしかして、本当はクールだけど、好きな奴にだけめっちゃ親切な奴ってパターンだったりして……。
ま、まさかだよなー。ははは。
その日の夜。
「はあー。癒やされる!」
徒歩で旅をしていると、本当に風呂が気持ちいい。ましてや、宿屋の大きな風呂は両足を伸ばして入れるので最高だ。
『襲ったりしないわよ』
不意に先程のカヴァの言葉が脳裏に蘇って、俺はドキッとした。
なんであの時、カヴァはちょっと寂しそうだったんだろう?
ルナやラングはともかく、最初の頃散々2人きりだったカヴァから、そう言ったアプローチを受けた覚えはない。
カヴァは俺と出会ってからずっと一緒にいて、親切にしてくれていたけれど、いわゆる男友達といった感覚だった。
カヴァには最初に自分はゲイ族だの、夜伽だのって言われていたのだから、気持ちに気付かない俺が鈍いだけか?
それとも、カヴァは魔王候補への返事として形式的にああは答えたものの、そういうノリな性格なだけ……? うーん……。
「………………ふぇっ、ふぇっ、ヘックシッ!」
うーん、良く分っかんねぇ!
湯船で考え事をしていたら、すっかり茹だってしまった。俺は熱る体を夜風で冷ましながら、部屋へと戻った。
俺がルナが購入した揚げマンを頬張っていると、隣に寄ってきたラングがそう聞いてきた。
「ああ。まぁ、1人はルナのおかげで不戦勝だったけどな。残りの2人は、割と圧勝」
揚げマンは、名前こそ酷いが中身は至って普通のあんまんを2つ串に刺して、油で揚げたモノだった。
俺はその饅頭を大きなひと口で頬張りながら、過去に倒した四天王の3人を思い出す。
俺の台詞を聞いたラングは、憧れとも尊敬とも取れるような表情で目を輝かせた。
「素晴らしいです、鷹夜さん。良かったら今宵は是非、私を寝所へ招いていただけませんか?」
「ぶふっ! は、はぁっ!?」
ラングの突然の夜のお誘いに、俺は頬張っていた揚げマンを吹いた。
「おや、駄目ですか? 私はリバですから、鷹夜さんのお望みの側でご奉仕させていただきますよ? それとももう、カヴァやルナ、もしくは他の従者にお心を決めてしまわれたのでしょうか?」
ラングは残念そうにそう言ったが、俺はぶんぶんと首を左右に降って言った。
「カヴァともルナとも、ましてや他のやつとも、四天王以外のやつと無闇にベッドインしたことなんてねーよッッ」
「え…………?」
驚きを隠せない様子のラングに、カヴァが蜜飴を片手にしれっと言った。
「ラング、駄目よ。鷹夜には、あちらの世界に恋人がいるのだそうよ。だから、残念ながらアタシ達が夜のお相手に呼ばれることは無いわ」
「ええ、とっても残念ですけドネー」
いつの間にか背後にいたルナとカヴァが、そんなことを言ったことに、俺は驚いた。
「……は? いや、ちょっと待って!? ゲイ・ジョークとかじゃなく、お前ら全員、本気で俺と寝たかったの!!??」
俺の台詞を聞いた3人は、キョトンとした表情で互いに顔を見合わせた後、あろうことか、3人揃ってコクリと首を縦に振った。
ラングとルナはまだしも、まさかの、カヴァ。お前もかよ……。
「鷹夜さん。魔王候補で強い魔力を持つ貴方に、抱かれたくないゲイなどおりません」
「魔王様に寝所に呼ばれるのは光栄な事ですけど、私達下々の者にはまずありえ無い事ですカラ。せめて今の内にッテ」
「まっ、アタシは最初から鷹夜のこと、良いなーって思ってたわよ?」
「お、お前ら…………マジか……っ!」
そう聞いてしまうと、途端になんだか表情がギクシャクしてしまう。
「……馬鹿ねぇ。だからって、魔王候補を襲ったりしないわよ」
俺のそんな空気を読んだのか、カヴァがケラケラと笑いながらパシンと俺の背中を軽く叩いた。
「痛っ……! あれ……?」
振り返ったカヴァ、なんか今ちょっと寂しそうな顔してなかったか?
そしてその顔を見て、俺の胸も少し痛んだような気が……?
いやいやいや、ナイだろそれは!!
同じように残念そうな顔のルナとラングを尻目に、俺は口の中にありったけの揚げマンを詰め込んで、僅かに胸のうちに湧いた感情を誤魔化した。
……そして、見事に喉に詰まらせた。
「ん、んぐぅぅ!」
「ちょっ、ルナっ! お水!! 鷹夜が揚げマンを喉に詰まらせたわ!」
「うわぁぁ、鷹夜様! おっ、お水でスゥ!」
俺は受け取った水筒の水を喉に流し込みながら、とりあえずこの変な空気を誤魔化せたことに安堵していた。
「駄目よー、鷹夜。ケツマンの実は、ただでさえ口の中の水分持っていっちゃうんだから……」
「んごっ!? ゲホッ、ゲホッ。い、今なんて……!?」
「鷹夜様、先程油で揚げたケツマンの実を召し上がっていましたヨネ?」
「…………そ、そういうことか」
『ゲイネタばかりの食べ物が並ぶこの屋台で、アゲマンなんてワードが出ること自体が、なんかおかしいぞ!?』ってことに、気が付けなかった俺が悪いんですよね。ワカリマス……。
俺は暫くゲホゲホとむせながら、背中をさすってくれるカヴァの優しい手の温もりを少しだけ意識していた。
やっぱりカヴァは、クールにみえて面倒見が良い。けれど、その面倒見の良さは、果たして誰に対してもそうなんだろうか……? もしかして、本当はクールだけど、好きな奴にだけめっちゃ親切な奴ってパターンだったりして……。
ま、まさかだよなー。ははは。
その日の夜。
「はあー。癒やされる!」
徒歩で旅をしていると、本当に風呂が気持ちいい。ましてや、宿屋の大きな風呂は両足を伸ばして入れるので最高だ。
『襲ったりしないわよ』
不意に先程のカヴァの言葉が脳裏に蘇って、俺はドキッとした。
なんであの時、カヴァはちょっと寂しそうだったんだろう?
ルナやラングはともかく、最初の頃散々2人きりだったカヴァから、そう言ったアプローチを受けた覚えはない。
カヴァは俺と出会ってからずっと一緒にいて、親切にしてくれていたけれど、いわゆる男友達といった感覚だった。
カヴァには最初に自分はゲイ族だの、夜伽だのって言われていたのだから、気持ちに気付かない俺が鈍いだけか?
それとも、カヴァは魔王候補への返事として形式的にああは答えたものの、そういうノリな性格なだけ……? うーん……。
「………………ふぇっ、ふぇっ、ヘックシッ!」
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