よもやまメモ噺

1日だけ割譲噺

　世界各地で領土問題が燻っているように、領土というのは簡単に割譲できるようなものではないのだが、1日限定で領土が割譲された事例があったのだ。

　しかも割譲された場所というがホテルの一室だったのである。

　そんな珍しい出来事があったのは第二次世界大戦真っただ中の1944年のことで、場所はイギリスはロンドンにある名門のホテルのクラリッジであった。

　このホテルは1812年の創業で、イギリス貴族の社交場であるとともに、世界の王族が長期滞在することでも知られており、この時はナチスの侵略から逃れて亡命していた旧ユーゴスラビア王のペータル2世の王妃が滞在していたのだ。

　滞在中、身ごもっていた王妃は出産することになったのだがユーゴスラビアには「王位継承者は国内で生まれた者に限る」があり、このままでは生まれてくる子が王位継承者になれない。

　そこで時のイギリス首相チャーチルは、出産に合わせてホテルのスイートルームである212号室を、1日だけユーゴスラビアに割譲することにしたのである。

　では、今回はこの辺で失礼をば。