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カルーラで年明け~春まで②

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「今年こそは寝正月なんやっ」
「そうやっ、今年こそはゴロゴロするんやっ」
 食っちゃ寝を繰り返したい、たまには、きっといいはずっ。
 毎年毎年、ダンジョンダンジョン言って、きゅるんきゅるんしてからにっ。
『何なのだ? ダンジョンなのだ? なら、我も行きたいのだー』
 アレスがきゅるるるん、と加わってきた。くっ、でっかいワンコがきゅるるん、くっ、かわいかっ。以前はぐいぐい迫っていたたけがだったが。最近、アレスのおねだりは、ちょい、と首をかしげておめめをきゅるんにうるっとさせる。以前はぐいぐい来ていただけなのに、技がちょいちょい加わる。
『ウム、軽ク運動スルカ』
 イシスは相変わらずだ。
 あんたたちの軽い運動は、軽くやないやろうに。
 寝正月をしたい私と晃太、バトルジャンキー達との攻防の真っ最中にパーティーハウスに来客が。いっそのこと、サブ・ドアを開けっ放しにするか、何て思っていたところにだ。
 ホークさんが対応してくれる。
「ユイさん、ケルンさん達が新年の挨拶にといらしています」
「あ、そうなんですね、出ますね。ちょっとまっとってよ」
 きっと皆さん勢揃いのはず。わざわざ挨拶に来てくれたんやから、お茶でも出さんとね。あ、お年玉も渡さんと。
 私達の身支度はすでに整っているので、お出迎え。
 やはり、皆さん勢揃いしている。本日は冒険者の格好ではない。花が新年から忙しく歓迎のローリングを披露している。
「ミズサワ殿明けましておめでとうございます」
 と、代表してケルンさんがご挨拶。私もご挨拶。
「皆さん、明けましておめでとうございます、どうぞお茶でも」
 母も出てきて、ご案内する。
 パーティーハウスにご案内すると、仔達がわらわらとお出迎えモードに。
「ズ、ズボンが下がるっす」
 ハジェル君が元気にポケットはみはみされて、引き倒されそう。こらこら。元気は次にガリストさんにご挨拶している。慣れた手付きで撫でてくれている。
「リュウタ殿、ケイコ殿、明けましておめでとうございます」
 と、改めて両親とご挨拶する皆さん。
「明けましておめでとうございます、昨年度は娘達が大変お世話になりました」
 いえいえそんな、とご挨拶。
 和やかにルームに移動する。勝って知ったるなんとかで、晃太がテーブルを出し、定位置に着く。私はエマちゃん、マデリーンさんとお茶の準備。各パーティーからお手伝いが来てくれる。こんなこともあろうかと、予めお茶請けは準備してますよ。セレクトショップダリアから、全国チェーンのお菓子さんの焼き菓子詰め合わせだ。そこそこ大きなサイズの箱であるが、あまれば持ち帰ってもらえばいいしね。お茶はいいかな? 
 さ、お正月の儀式や。
「未成年の皆さん、ささやかですがお年玉ですよ」
「はいはいっ、私、見た目っ、ぎふふふふっ」
 ヒェリさんがケルンさんに関節技決めてる。
「最年長が何をほざいているんですか」
 あきれ顔のフェリクスさん。
 未成年は七人。エマちゃん、テオ君、マアデン君、ハジェル君、ヘルト君、ドロテアちゃん、アルスさんだ。
「わあっ、ありがとうユイさんっ」
「ユイさんありがとう」
 エマちゃんとテオ君が嬉しそうに袋を抱き締める。ばれないようにこそこそ準備してよかった。
「はい、マアデン君、ハジェル君」
「「ありがとうございますっ」」
 やったー、と嬉しそうな二人。初めて会った頃は幼さのある少年だったのに比べて、ずいぶん青年感が溢れてマアデン君。ハジェル君は後発成長の為に、あまり変わりないように見えるのは仕方ない。来年で見習い期間が過ぎても、二人はそのまま山風に在籍するって。
「はい。ヘルト君、ドロテアちゃん」
「「ありがとうございますっ」」
 こちらは初めてのお年玉だが、マアデン君とハジェル君から話を聞いていたのか、嬉しそうだ。この二人ももうじき見習い期間が終わる。フェリクスさんは基本的には見習い期間のみしか受けないので、卒業になる。だが、アンドレアスさんをリーダーとしてヘルト君、ドロテアちゃんの三人でパーティー組ませる予定なんだって。それで本来なら卒業予定のはずの、元見習いのアンドレアスさんが在籍していたんやね。すぐって訳ではないみたい。
「はい、アルスさん」
「んっ、ユイちゃん、ありがとっ」
 ニコニコのアルスさん。アルスさんは当然、金の虎に在籍する。
「姉ちゃん、貰った」
「良かったねアルス」
 アルスさんはお姉さんのリィマさんに袋を見せている。それを優しく見守るファングさん達。微笑ましい。
「あのー、ユイさん」
「なんねハジェル君」
「ビアンカさんと、ルージュさん、どうしたんすか? なんか、凄い顔してるっす。あ、してます」
「気にせんで」
 私はたまにはゆっくりしたい。結局サブ・ドア開けっ放しにしても、何だかんだとドロップ品の回収やなんやかんだでどこかで晃太がアイテムボックスを使用している。勿体ないからね。中には貴重な薬の材料になるからと言われると、無駄に出来ないからね。その晃太が、すん、て顔でマドレーヌを食べてる。
 だが、私と晃太がいい顔しないので、矛先が母に向かう。
 血走った目できゅるんきゅるん。仔達まで見味方に着けてきゅるんきゅるん。
「優衣、晃太、一回くらいよかやない」
 こうして、寝正月は明日に繰り越される。
 結局、挨拶に来ただけの皆さんも手分けして手伝ってくれた。
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