もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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閑話 特別な子供達②

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 しばらくして、フリンダの治療魔法のかいがあり、アルストリアが目を覚ます。
 ふわっ、と開いた目は、綺麗な青色。
「アルスッ、アルスッ」
 リィマが震えながらアルストリアを抱き締める。
「坊や、痛いところはもうないかしら?」
 フリンダも震えている。己の子が生きていたら、まさに、そんな年頃の男児だ。ファングもガリストも気になっている男児は、ぼんやりと、フリンダを見るが、黙ったままリィマにしがみつく。泣きもせずに。
 それに、ファングは何か引っ掛かりを覚えた。見知らぬ大人にいきなり囲まれたら、驚いて声くらい出さないのだろうか。
「ああ、ごめんなさいっ、怖いわよね」
 フリンダが狼狽しながら謝っている。
 そうだ、怖かったはずだ。頭のキズ、リィマの様子から見て、こんな幼い子供だ、声がでないくらい怖かったはずだ。ファングはそう納得させる。
「あ、あ、この子、ひどい人見知りでっ」
 リィマも狼狽している。
「とりあえず、疲れているだろう? 今からの移動は厳しいからな」
 ファングはどうしても引っ掛かりを覚えてしまう。だが、先にしなければならない事がある。フリンダが荷物から、ドライフルーツを取り出し、ポーションを飲み終えたリィマに渡している。
「口は大丈夫? 噛める? ちょっと待ってね、タオル冷やすから」
 フリンダが普段から想像できない程てきぱき動く。
「ファング、俺が先に番をする」
「頼むな。さて」
 ファングは座り直す。
「まずは、明日からどうしたい?」
「明日から?」
 リィマはドライフルーツを飲み込み聞き返す。
「そうだ。逃げたいのなら手を貸すし、帰りたいなら送ろう」
「逃げたい」
 リィマは間髪入れずに答える。
「俺達はユリアレーナを目指しているが、お前達は?」
「つ、連れてって、アスラ王国じゃなきゃっ、何処でもいいっ」
 必死に言うリィマに、ファングは何やら引っ掛かりの理由が分かった気がした。リィマの腕に抱かれたアルストリアが、全くの無反応だからだ。少しくらい、分からないでも、話に不安そうな顔もしない。ぼんやりと、リィマにしがみついたままだ。
 逃げたい理由。社章を持てるほどの商会の男達が追いかけ回していたこの2人。可能性はあるが、ファングは口に出さない。
 ファングの中で、責任感が沸いていたからだ。この2人が安心して暮らせる場所まで連れていく。新しい目標とも言えるものが出来た。ファングの中だけだが。
「分かった。明日から移動だ。フリンダ、服を貸してやれ」
「分かったわ」
「それから、これはお前達のだ」
 ファングはさっきの獣人達が渡した硬貨。ちらっ、と見たら10数万程入っていた。多分、あの獣人達は商会の使用人だろう。商会の使用人は、商会の地位によってある程度の額を渡されている。ファングは分からなかったが、詳しいフリンダに言わせたら、恐らく上級クラスに近い、中級クラスの商会ではないかと。ただ、あのピンバッチはどこの商会かは分からないと。
「でも、これ…………」
 リィマが戸惑う。
「必要なものがあるはずだ。ルーティでこれで揃えろ」
 受け取ったリィマは、少し考えて、ポケットを探る。取り出したのは、小さな巾着だ。ファングに差し出す。
「なんだ?」
「お金、持ってないから、受け取って」
 首を傾げたファングは何だろうと受け取った。掌に出すと、小粒の宝石がいくつも入っていた。
「こ、これは?」
「小さな石だけど、売ればそこそこになるはずだよ。私みたいのが持ち込んでも買い取ってくれないだろうし」
「ま、まあ、そうだな」
 まだ幼いリィマが持ち込んだら、ギルドは盗難を疑うだろう。根掘り葉掘り聞き出すはず。
 それよりも、こんな見た目まだ子供のリィマが、宝石を持っている?
 疑問が口に出そうだ。だが、リィマの腕の中のアルストリアがグリグリと頭を動かす。
「アルス、眠いのかい?」
「そうみたいね。ファング、話は明日でいいでしょう」
 フリンダが庇うように言うので、ファングは口をつぐんだ。

 次の日の朝。
 軽く食事を取り、移動を開始した。
 問題発生。
「ほら。姉ちゃん疲れるから、このおじさんに肩車してもらいな」
 アルストリアがリィマから離れない。幼心で警戒しているんだろうが。
 キズはフリンダの魔法と、ポーションで塞がってはいるが痛みが残っている可能性があるから、ファングかガリストがアルストリアを運ぼうとしたが、これだ。
 結局、リィマが抱えて移動。その速度に合わせての移動で、ルーティに到着したのは門が閉まる直前だった。
「あの2人は?」
 門で警備が聞いてくる。
「俺の親戚の子だ」
 と、ファングが答えた。同じ虎系の獣人の為に疑われる事なくルーティに入れた。ただ、身分証がないため、金は払ったが。
 疲労困憊のリィマの為に、まずは宿を探し、ファングが代表して到着報告を済ませた。
 宿に急いで向かいながら、ファングはこれからの事に頭を悩ます。
 ルーティの先はユリアレーナ王国だ。ファング達は国境を超えられる。それは身分証である冒険者ギルドカードがあるから。身分証がなければ、ルーティからユリアレーナに向かえない。
 問題はあの2人だ。
 昼間に話を聞いた。事情を詳しく聞き出してはないが、名前と歳だけは聞いた。
 リィマは15歳、アルストリアは5歳。アルストリアはまだ幼いため、身分証がないが、親戚だからとファングが保証人になると手続きすれば通せるが、問題は成人しているリィマだ。もしリィマが、あの商会に関連し、所属なりしているなら、商会が申請した身分証があるはず。魔力をチェックでもされたら、居場所がばれる可能性がある。ただ、あの獣人達の様子からリィマ達の事を内密に事を運びたいようだったから、失踪届けは出していない、はず。ただ、ギルドが疑問に思うはずだ。商会に所属しているのに、幼い子供を連れて他国に行こうとしている。何かをやらかして、逃げていると判断されて、商会に引き渡される恐れが高い。
 なんとかして、ルーティを抜けなくては。
 ファングは急ぎ足で宿に向かった。
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