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変わらないもの②
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優衣、まずは子供達にかけられとる、拘束系の魔法を解除せんといかん。
さっきの父のこしょこしょが頭の中で甦る。
警備の人達も来とる、中には耳のよか人達がおるから、まずは子供達が馬車におるって証明ばせんといかん。ビアンカやルージュ達がよくわからんようになるまで分厚くかけられた、阻害系の魔法を全部解除や。
私はもう一度、頭の中で確認。
ルージュの闇の魔法なら、なんとでもなる。
よし。
かみかみのメタボな男性は、護衛の人達にどなりつける。
「さっさとこいつらをどうにかしろっ。いくら払っていると思っているんだっ」
まさに、えー、みたいな顔の護衛の皆さん。目の前には、ドドドドン、と立ち塞がる鼻息の荒い厄災クラスのアレス。その後方からビアンカとルージュが、静かに鎮座している。
護衛の皆さんは、やっぱりお仕事だからね、武器を手に立ちはだかる。真っ青だけど。
「ミズサワ様っ、お待ちくださいっ。今、検閲権利のある警備長が来ますからっ」
ラソノさんが必死に言ってくる。
「それって、手続きにどれくらい時間かかります?」
「そ、それは。書類の確認から………………」
「待っていられません。中にいる男の子の容態が悪いんですよっ」
絶対時間かかるやつやんっ。
多分、ラソノさんには色々な立場があるんやろう。しかも荷は、アスラ王国とユリアレーナ王国が、友好な関係を保つためのもの。それに何かあったら、色々いかんのやろうけど、すでにいかん状況や。
違法奴隷なんて、乗ってる時点で。
私の焦りと怒りの混じった声に、ラソノさんたじたじ。その後ろから、見知った人達がギルドから出てきた。
ケルンさん達、ラスチャーニエだ。
真っ直ぐ、こちらに来る。
いつもはリスのケルンさんだけど、なんだか無表情や。イケメンやから、なんや怖い感じになってる。ヒェリさんとエドワルドさんも無表情だが、ツヴァイクさんはちょっと怒っているのか、鼻腔全開だけど。
「ミズサワ殿、大体の事情は分かっています」
と、ケルンさん。そして、ちら、と豪華な馬車を見る。
「なるほど恐らく阻害系の魔力でしょうね。ミズサワ殿、確認ですが捕らえられている子供達は、確実にいますか?」
「はい、います。全部で14人。拘束系、阻害系魔法で気配感知から逃れていますが、います」
私ははっきり答える。
「はい、分かりました。では、私Sランク冒険者ケルン・クルィーサが、テイマー、ユイ・ミズサワ殿に依頼します。荷を傷付けず、それら全てを破壊し、子供達の存在を証明してください」
これは、確か、見たことある。
スカイランで、フェリクスさんが出したやつや。
あ、これ、免罪符にならんね? よし、そうとろう。
ならばっ。
「ルージュッ」
『待っていたわ』
にまあ、と笑うルージュ。
「あの馬車にかけられた、阻害系魔法、子供達にかけられた拘束系魔法、全部破壊っ。荷物は傷付けんでねっ」
『任せて』
ルージュがアレスに代わり、一歩前に。
ひーっ、と下がる護衛の皆さん。
『ハンターモード 黒狩人(ネロ・ハバス)』
ルージュの身体に黒いラインが浮かぶ。
野次馬から、おー、と歓声。そして、
「「「「「わーっ」」」」」
真っ暗な霞がルージュから噴き出して、3台の馬車を包み、悲鳴が上がる。確かにホラーな感じだからね。かみかみのメタボな男性は腰を抜かしている。多分仲間だろう、その人達も悲鳴を上げてる。
黒い霞は蠢きながら、馬車を覆い尽くす。
『ふんっ、ダンジョンの罠よりめんどくさいわね、でも』
ルージュが気合いを入れ、ルビーの様な赤い目が全開。
『だったら、魔力の出力を上げるだけよっ』
黒い霞が一気に増えて。
バキバキッ、バキバキッ、メキメキッ
なんや、いかん音が響き、黒い霞が波のように引いていく。
『私に解除出来ない物はないわ。ユイ、終わったわ』
どやあ、とやりきったいつものルージュが振り返る。
今まで騒がしかったギャラリーが、黒い霞が引いた事で、妙な静かさが包む。
コツン、コツン……………
小さな音が馬車から響く。
「私の気配感知にもひっかかりましたよ」
底冷えのするケルンさんの声が響く。警備の人達の中でも数人が、いるぞ、と騒ぎ出す。
「どうやら、本当でしたね」
そして、ラソノさんの声まで低くなる。
「Sランク冒険者ケルン・クルィーサが荷の開示を命じます」
「冒険者ギルド事務長、ラソノ・リスダ、同意します」
「商人ギルド買い取り主任、ガトール、同意します」
いつの間にか、ガトールさんまで来ていた。
『ユイ、来るのです』
『あのノワールの相手の主人よ』
あ、パーヴェルさんやっ。騒ぎを聞き付けて来てくれたんやっ。
そこでメタボな男性復活。
「ふざけるなっ、そんなのさせてたまるかーっ」
ビアンカやルージュ達から、ヤっちゃダメ? みたいな視線だけど、ダメよ。
そこに人垣が割れて、パーヴェルさんがやってきた。部下らしき警備の人が、こしょこしょ、と耳打ち。
聞いたパーヴェルさんの形相が鬼のように。
「ならば強制執行だっ。我がパーヴェル・イコスティが許可するーっ」
はい、行きましょうっ。
「ルージュッ、拘束っ」
『任せてっ』
ルージュがお馴染みの真っ黒な触手を伸ばし、はい、ぐるぐるごちんっ。
「どれに何人おるねっ」
『これに3匹、こっちは7匹、あっちに4匹なのだっ。この木を破壊してっ』
「それはダメよっ。一番悪い子はっ」
『これなのだっ』
「チュアンさん、お願いします」
「はい、ユイさんっ」
私はチュアンさんと、これ、と呼ばれた馬車に乗り込む。
…………………に、荷物、ぎっちりなんやけどっ。
ええぃっ、めんどくさかっ、片っ端から開けるしかないっ。
手近の木箱に手をかける。
「ミズサワ殿、それでは時間がかかりますっ」
馬車の入り口でラソノさんが告げる。
「まずは全ての荷を出した方が早いですよっ」
「あ、はい」
私はラソノさんの指示を聞く。その横から、ケルンさんがするり、と乗り込んできた。
「私なら、どれに入れられているか分かります。さあ、運びだしますよっ」
それからバケツリレーだ。
どれも重たい木箱で、屈強な警備の人達や、騒ぎを聞き付けた冒険者の方、そしてギルド職員さんで運び出す。
「いたぞーっ」
「治療班、急げーっ」
外からそんな声が響く。
だけど、私が乗り込んだ馬車からなかなか拘束された子供が見つからない。
木箱はケルンさんがチェックして、すぐにいないと判断されて運び出されていく。ラスチャーニエの残りのメンバーも運び出すのに協力してくれている。
「いましたっ」
奥の方に置いてあった木箱から、やっと発見。
ケルンさんがなにやら魔法を使うと、簡単に丈夫そうな木箱が割れる。中には、痩せて汚れて、性別も分からないような小さな子供が2人。手足に壊れた金属の枷。
いたっ、いたっ、良かった、ちゃんと私をみてるっ。だけど、ひどく怯えている。
「さあ、もう大丈夫やからね」
そう声をかけると、きょとんとして、わんわん泣き出す。良かった、泣くだけの体力があるんや。
チュアンさんが抱っこしようとしたが、嫌がる子供達。もしかしたら、大人の男性だめかも。だって、この子供達をこんな目に合わせたのは、あのメタボな男性達だろうからね。
「さあ、おいで、大丈夫よ、おいで」
私が手を差し出すと、立とうともがいている。あ、足が立たんほどなんやな。
「ごめんね、抱っこするよ」
そういって、片割れを抱っこ。強烈な臭いが鼻をつく。多分、まともに排泄もさせてもらえてなかったのか、下がぐしゃぐしゃに汚れていた。こんな小さな子供に、なんてことを。頭に来るが、今は手当てが先や。すぐに女性騎士が乗り込み、もう片割れを抱っこ。
無事に外の救護班に渡す。
騎士の人達、警備の人達、冒険者の人達、ギルドの人達が必死に治療している。
回りをアレスがおろおろとしている。
『童よっ、我が付いているのだっ、もう心配ないのだっ』
って言ってるが、何せサイズがデカイものだから、子供達が怯えてる。しかもお邪魔よ。サイズがデカイから。ちら、とビアンカに目配せしておく。
私は再び馬車に乗り込む。
「ミズサワ殿、いましたよっ」
きっと重症の男の子やっ。
ケルンさんが鋭く言って、魔法を炸裂。
分厚そうな木箱が割れ、中から倒れるように現れた子供に、私は思わず絶句した。
さっきの父のこしょこしょが頭の中で甦る。
警備の人達も来とる、中には耳のよか人達がおるから、まずは子供達が馬車におるって証明ばせんといかん。ビアンカやルージュ達がよくわからんようになるまで分厚くかけられた、阻害系の魔法を全部解除や。
私はもう一度、頭の中で確認。
ルージュの闇の魔法なら、なんとでもなる。
よし。
かみかみのメタボな男性は、護衛の人達にどなりつける。
「さっさとこいつらをどうにかしろっ。いくら払っていると思っているんだっ」
まさに、えー、みたいな顔の護衛の皆さん。目の前には、ドドドドン、と立ち塞がる鼻息の荒い厄災クラスのアレス。その後方からビアンカとルージュが、静かに鎮座している。
護衛の皆さんは、やっぱりお仕事だからね、武器を手に立ちはだかる。真っ青だけど。
「ミズサワ様っ、お待ちくださいっ。今、検閲権利のある警備長が来ますからっ」
ラソノさんが必死に言ってくる。
「それって、手続きにどれくらい時間かかります?」
「そ、それは。書類の確認から………………」
「待っていられません。中にいる男の子の容態が悪いんですよっ」
絶対時間かかるやつやんっ。
多分、ラソノさんには色々な立場があるんやろう。しかも荷は、アスラ王国とユリアレーナ王国が、友好な関係を保つためのもの。それに何かあったら、色々いかんのやろうけど、すでにいかん状況や。
違法奴隷なんて、乗ってる時点で。
私の焦りと怒りの混じった声に、ラソノさんたじたじ。その後ろから、見知った人達がギルドから出てきた。
ケルンさん達、ラスチャーニエだ。
真っ直ぐ、こちらに来る。
いつもはリスのケルンさんだけど、なんだか無表情や。イケメンやから、なんや怖い感じになってる。ヒェリさんとエドワルドさんも無表情だが、ツヴァイクさんはちょっと怒っているのか、鼻腔全開だけど。
「ミズサワ殿、大体の事情は分かっています」
と、ケルンさん。そして、ちら、と豪華な馬車を見る。
「なるほど恐らく阻害系の魔力でしょうね。ミズサワ殿、確認ですが捕らえられている子供達は、確実にいますか?」
「はい、います。全部で14人。拘束系、阻害系魔法で気配感知から逃れていますが、います」
私ははっきり答える。
「はい、分かりました。では、私Sランク冒険者ケルン・クルィーサが、テイマー、ユイ・ミズサワ殿に依頼します。荷を傷付けず、それら全てを破壊し、子供達の存在を証明してください」
これは、確か、見たことある。
スカイランで、フェリクスさんが出したやつや。
あ、これ、免罪符にならんね? よし、そうとろう。
ならばっ。
「ルージュッ」
『待っていたわ』
にまあ、と笑うルージュ。
「あの馬車にかけられた、阻害系魔法、子供達にかけられた拘束系魔法、全部破壊っ。荷物は傷付けんでねっ」
『任せて』
ルージュがアレスに代わり、一歩前に。
ひーっ、と下がる護衛の皆さん。
『ハンターモード 黒狩人(ネロ・ハバス)』
ルージュの身体に黒いラインが浮かぶ。
野次馬から、おー、と歓声。そして、
「「「「「わーっ」」」」」
真っ暗な霞がルージュから噴き出して、3台の馬車を包み、悲鳴が上がる。確かにホラーな感じだからね。かみかみのメタボな男性は腰を抜かしている。多分仲間だろう、その人達も悲鳴を上げてる。
黒い霞は蠢きながら、馬車を覆い尽くす。
『ふんっ、ダンジョンの罠よりめんどくさいわね、でも』
ルージュが気合いを入れ、ルビーの様な赤い目が全開。
『だったら、魔力の出力を上げるだけよっ』
黒い霞が一気に増えて。
バキバキッ、バキバキッ、メキメキッ
なんや、いかん音が響き、黒い霞が波のように引いていく。
『私に解除出来ない物はないわ。ユイ、終わったわ』
どやあ、とやりきったいつものルージュが振り返る。
今まで騒がしかったギャラリーが、黒い霞が引いた事で、妙な静かさが包む。
コツン、コツン……………
小さな音が馬車から響く。
「私の気配感知にもひっかかりましたよ」
底冷えのするケルンさんの声が響く。警備の人達の中でも数人が、いるぞ、と騒ぎ出す。
「どうやら、本当でしたね」
そして、ラソノさんの声まで低くなる。
「Sランク冒険者ケルン・クルィーサが荷の開示を命じます」
「冒険者ギルド事務長、ラソノ・リスダ、同意します」
「商人ギルド買い取り主任、ガトール、同意します」
いつの間にか、ガトールさんまで来ていた。
『ユイ、来るのです』
『あのノワールの相手の主人よ』
あ、パーヴェルさんやっ。騒ぎを聞き付けて来てくれたんやっ。
そこでメタボな男性復活。
「ふざけるなっ、そんなのさせてたまるかーっ」
ビアンカやルージュ達から、ヤっちゃダメ? みたいな視線だけど、ダメよ。
そこに人垣が割れて、パーヴェルさんがやってきた。部下らしき警備の人が、こしょこしょ、と耳打ち。
聞いたパーヴェルさんの形相が鬼のように。
「ならば強制執行だっ。我がパーヴェル・イコスティが許可するーっ」
はい、行きましょうっ。
「ルージュッ、拘束っ」
『任せてっ』
ルージュがお馴染みの真っ黒な触手を伸ばし、はい、ぐるぐるごちんっ。
「どれに何人おるねっ」
『これに3匹、こっちは7匹、あっちに4匹なのだっ。この木を破壊してっ』
「それはダメよっ。一番悪い子はっ」
『これなのだっ』
「チュアンさん、お願いします」
「はい、ユイさんっ」
私はチュアンさんと、これ、と呼ばれた馬車に乗り込む。
…………………に、荷物、ぎっちりなんやけどっ。
ええぃっ、めんどくさかっ、片っ端から開けるしかないっ。
手近の木箱に手をかける。
「ミズサワ殿、それでは時間がかかりますっ」
馬車の入り口でラソノさんが告げる。
「まずは全ての荷を出した方が早いですよっ」
「あ、はい」
私はラソノさんの指示を聞く。その横から、ケルンさんがするり、と乗り込んできた。
「私なら、どれに入れられているか分かります。さあ、運びだしますよっ」
それからバケツリレーだ。
どれも重たい木箱で、屈強な警備の人達や、騒ぎを聞き付けた冒険者の方、そしてギルド職員さんで運び出す。
「いたぞーっ」
「治療班、急げーっ」
外からそんな声が響く。
だけど、私が乗り込んだ馬車からなかなか拘束された子供が見つからない。
木箱はケルンさんがチェックして、すぐにいないと判断されて運び出されていく。ラスチャーニエの残りのメンバーも運び出すのに協力してくれている。
「いましたっ」
奥の方に置いてあった木箱から、やっと発見。
ケルンさんがなにやら魔法を使うと、簡単に丈夫そうな木箱が割れる。中には、痩せて汚れて、性別も分からないような小さな子供が2人。手足に壊れた金属の枷。
いたっ、いたっ、良かった、ちゃんと私をみてるっ。だけど、ひどく怯えている。
「さあ、もう大丈夫やからね」
そう声をかけると、きょとんとして、わんわん泣き出す。良かった、泣くだけの体力があるんや。
チュアンさんが抱っこしようとしたが、嫌がる子供達。もしかしたら、大人の男性だめかも。だって、この子供達をこんな目に合わせたのは、あのメタボな男性達だろうからね。
「さあ、おいで、大丈夫よ、おいで」
私が手を差し出すと、立とうともがいている。あ、足が立たんほどなんやな。
「ごめんね、抱っこするよ」
そういって、片割れを抱っこ。強烈な臭いが鼻をつく。多分、まともに排泄もさせてもらえてなかったのか、下がぐしゃぐしゃに汚れていた。こんな小さな子供に、なんてことを。頭に来るが、今は手当てが先や。すぐに女性騎士が乗り込み、もう片割れを抱っこ。
無事に外の救護班に渡す。
騎士の人達、警備の人達、冒険者の人達、ギルドの人達が必死に治療している。
回りをアレスがおろおろとしている。
『童よっ、我が付いているのだっ、もう心配ないのだっ』
って言ってるが、何せサイズがデカイものだから、子供達が怯えてる。しかもお邪魔よ。サイズがデカイから。ちら、とビアンカに目配せしておく。
私は再び馬車に乗り込む。
「ミズサワ殿、いましたよっ」
きっと重症の男の子やっ。
ケルンさんが鋭く言って、魔法を炸裂。
分厚そうな木箱が割れ、中から倒れるように現れた子供に、私は思わず絶句した。
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