上 下
333 / 831
連載

スカイランへ⑩

しおりを挟む
 ノータから出発し、ノワールの馬車はブヒヒンと特急のように進む。
 そして無事にスカイランに到着する。並んでいると、どうぞどうぞとコントのように促され、先に並んでいる人達にペコペコしながら進む。
 1年ぶりのスカイランだ。うう、風が寒さが厳しくなってきた。
 まずは到着報告、晃太は搬送物を納めにいく。
 受付の女性は、赤髪の若い上品な人だ。
「はい、確認しました」
「ありがとうございます」
『ユイ、ダンジョンなのです』
『明日、行くの?』
「今、到着報告したばっかり」
 ふごー、と鼻息荒かね、もう。
「わんわんっ」
「がうがうっ」
『ねぇね~、るりも~』
『くりちゅも~』
『ねえね~、ひすいもいきたい~』
「準備しようね~」
 大型になってもかわいか仔達のおねだり。はいはい、聞きますよ~。
『私達と対応が違うのですっ』
『ひどいわっ』
「いやいや、あんた達がすると色々大変なんやけど」
 確かに生活は支えて貰っているけどさ。ダンジョンに行くと、朝御飯して、片付け最中にちゅどんドカン。ドロップ品回収して、掃除して、2回目。ドロップ品回収して、ご飯準備して、3回目、もしくは移動。御昼御飯して、ちゅどんドカン。この間も御飯の準備や、仔達の世話。結構忙しいのよ。
『『ぶーぶー』』
「はいはい。せめて何日間か準備させて」
 何日間ダンジョンに滞在するかで、両親達の食料品の準備もあるしね。宿を三日間取り、チェックインする。
 さて、行動計画立てよう。
 一軒家タイプの宿。ノワールも誘導して、私達もルームで寛ぐ。久しぶりにさくら庵のケーキセットにした。私とエマちゃん、マデリーンさんはホット柚子蜜ティーと和三盆のロールケーキと季節の果物添え。晃太はほうじ茶と抹茶のロールケーキ。ホークさんとテオ君はホットジンジャーと抹茶のティラミス。チュアンさんはホット柚子蜜ティーとブルーベリーソースのレアチーズケーキ。ミゲル君は柘榴酢のサイダーとチーズケーキと季節の果物添えだ。
 ビアンカとルージュや仔達にもね、ロールケーキだ。
『足りないのですう』
『もう1つ欲しいわあ』
 きゅるん。
「ダメよ、そんな顔しても」
 ふーふーしてホット柚子蜜ティーを1口。
 お茶しながら、今回の軍隊ダンジョンをどうするかだ。
 30階への転移石があるし、ワイバーンの革さえ手に入ったらいいかな。はい、ビアンカとルージュからブーイングが飛ぶ。
 晃太のスキルアップもあったねえ。でも、出来れば年末年始は家族揃いたい。ビアンカとルージュから仔達の訓練もしたいとあり、まずは中堅層に1週間挑み、一旦脱出。休息して転移石で30階から再開してワイバーンの革ゲットや、あ、お肉もね。年末には終了して、年越しはゆっくりしよう。いつマーファに帰るかだけど、雪に降られたら嫌だしね。うーん。それに年末年始に宿が空いているかだ。よし、明日確認して、もし空いてなければ、年越し前にスカイランを出よう。マーファに帰る途中で年越しだ。ダンジョン内では、サブ・ドアが開かないしね。そうしよう。

 次の日はまず宿の確認。できればいまだに借りている宿がいいけど、残念、年末年始は予約あり。だけど、中堅層チャレンジ後は空いていたので予約する。別の宿も空いていないか確認すると、少し高額な宿なら空いているそうだ。考えて予約した。ダンジョンでてすぐに街をでるのもきついからね。それからマルシェで買い物してまわる。帰りにティム君のいる、孤児院に向かった。古びた建物だったけど、あちこち修繕されている。屋根とか窓枠、ドアなんて新品みたい。
「あ、テイマーのお姉ちゃんだーっ」
「「「「わーっ」」」」
『だから、なんで私が怖くないのですかーっ』
『好奇心の塊ねえ』
 子供達がビアンカとルージュに群がる。仔達も大歓迎だ。人見知りのルリとクリスだが、以前訪ねたことがあるから、落ち着いてペロペロしている。ただ、元気だけは相変わらずなので、諦めのビアンカにリードを持ってもらう。
 私は晃太、ホークさんに付き添われて牧師さんとお話しする。
「ああ、テイマー様、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
「どうぞこちらに」
「はい」
 私達は応接室に案内される。
「あのティム君は?」
「ええ、あれから元気に走り回っています。あの頃が嘘のようです」
「良かったです」
 良かった良かった。
 以前私がした寄付は、ほぼ建物の改修に使用された。危なかった床も張り替え、ロフトもあったが綺麗に改修されて勉強部屋になってると。3つあったシャワーブースの改修とぼろぼろだったテーブルとベッド、椅子を修繕と買い換えもした。500万程残ったが、すべて子供達の食費や生活品に回し、お風呂がないから、近くの公衆浴場に通う為の資金にしたと。
「すべてテイマー様のおかげ。それに新しい領主もここに予算を回してくれるようになって」
 なんでも前領主が、持病が悪化したとかで引退。息子さん夫婦が引き継いだ。それからお妃レースに参加していた娘さん3人は、全員諦めて、それぞれの道を進みだしたと。長女はミーミル学園の教師、次女はどこかの男爵にトントン拍子で話が進んで、先月結婚。三女は首都の教会の事務の傍ら無料教室の講師を務めている。娘さん達にかかる費用がなくなり、新しい領主も質素倹約していて、あちこち街の壁の改修が進んでいる。
「今年の冬は憂いなく過ごせそうです」
 そうなんや。でも、どうしよう、持って来ちゃったよ、寄付と温かいブランケット。渡してみたら大喜びしてくれた。あ、そうだ、薪。冬に向けて、いや、料理にいまだ釜戸率が高いから、薪を手に入れよう。軍隊ダンジョンでもおそらく、冷蔵庫ダンジョンのように切り株にすれば、一週間で戻るはず。それから林や森で果物植えてみよう。
 よし、手に入れるリスト項目に、薪が追加された。ビアンカにお願いしよう。
 牧師さんに挨拶して、子供達をぶら下げたビアンカとルージュの元に戻る。薪の説明をしたら、リクエストが飛ぶ。
『してもいいのですけど、油淋鶏が食べたいのですう』
『ずるいわ、私も。木くらい、魔法で斬り倒せるわよ』
「分かった。今日は中華にしようかね」
『早く帰るのですっ』
『エビエビエビ』
 ふんがふんがいいながら、私に迫るビアンカとルージュ。もう、かわいかね。
「はいはい」
 アルコールも解禁にするかね。
 それからギルドに向かい、無料教室の寄付を申し出る。対応してくれたのは、綺麗なお姉さんアステリさんだった。新しい領主が色々してくれているそうだけど、給食の件もあるしね。小銭入れに白金貨2枚。
 アステリさんに相談したら、ここでも給食に似た事をしていた。ただ、月に一回パンの支給だ。中にはその支給の日だけ、通わせる親がいるそうで、頭を悩ませていると。真面目に通わせている親や、通っている子供達にしたら、思うところあるよね。それに通っている子供を対象に渡しているんだから、そんな子供には渡すわけない。だが、パンを渡さなければ、質の悪い親は怒鳴り込んで来ると。まあ、そんなことしたら、警備の要注意人物のリストに上がっていて、2度と来れなくなる。ただ、可愛そうなのはその子供だ。中にはそれを理由にいじめをされている。無料教室の教師が間に入ったりして色々対応している。それから出来れば週2回通って欲しいがなかなか上手く行ってないみたい。
 私の寄付は、給食費用に宛てられる。
 調理場や人員の確保、材料の購入をして、出来れば最低月に2~3回行い、持ち帰りではなく、みんなで一緒に食べてから帰るスタイルに変えていくと。前から考えられていたことのようで、案外スムーズに行きそう。給食が出たら、通わせるいいきっかけになるからね。
「お願いします」
「必ず、実現させます」
 アステリさん、綺麗やけど、カッコいい。女の私が惚れ惚れする礼をした。
しおりを挟む
感想 639

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。 しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。 どうせ転生するのであればモブがよかったです。 この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。 精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。 だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・? あれ? そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。 邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

とある断罪劇の一夜

雪菊
恋愛
公爵令嬢エカテリーナは卒業パーティーで婚約者の第二王子から婚約破棄宣言された。 しかしこれは予定通り。 学園入学時に前世の記憶を取り戻した彼女はこの世界がゲームの世界であり自分が悪役令嬢であることに気づいたのだ。 だから対策もばっちり。準備万端で断罪を迎え撃つ。 現実のものとは一切関係のない架空のお話です。 初投稿作品です。短編予定です。 誤字脱字矛盾などありましたらこっそり教えてください。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈 
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。