もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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スカイランへ⑨

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 ノータに到着。問題なくギルドで到着報告する。初回ではないので、騒ぎにならなかった。ただ、同行しているホークさん達には、奇異な視線を投げていた。受付後、晃太は搬送物の為に倉庫に行き、私は応接室だ。ホークさんとエマちゃんが付いてくれる。
 冷蔵庫ダンジョンのドロップ品のリストを出すと、対応してくれたのはビルさん。
「時間を頂けますか? 明後日まで」
「はい、大丈夫ですよ」
 晃太と合流し、宿を探す。一軒家タイプだ。昼を過ぎたばかりの時間なため、お出掛けする。仔達はお昼寝タイムな為、ルージュとチュアンさん、マデリーンさん、ミゲル君が残ってくれた。
 まずは、マルシェでお買い物。じゃがいもやニンジン、ほうれん草に似た葉野菜がある。
「これは?」
「ノータ名産の野菜で、エピナルと言う野菜です。冬場は甘味が増して、スープや煮込み料理などによく使われていますよ。熱が入るとすぐに柔らかくなるため、炒め物にして、お肉などに添えたりしますが、隠れた名脇役ですね」
「へー」
 よし、少し買おう。
 大量購入すると、店主はニコニコだ。ついでに生姜も購入する。生姜を1つおまけしてくれた。
「ユイさん。私、持つ」
「ありがとうエマちゃん」
 エマちゃんが買い物用のマジックバッグにエピナルや生姜を入れる。
「おや、かわいい娘さんですね」
 はい、久しぶりの勘違い。アノでも勘違いされたんだよね。私、高校生くらいの子供がいるって見えてるんやね。初婚が、二十歳前後の世界だから、私の年齢でいてもおかしくはないか。否定するのも、面倒や。エマちゃんかわいかし、よかか。私は生笑いで挨拶する。ちら、とエマちゃんを見ると、何故か嬉しそうや。
 それからもパンやら野菜やら買い込む。
 パンを入れた袋を抱えたテオ君は、優しい息子さんだねえ、って言われるし。テオ君は俯いているけど、照れ笑い。かわいか。繰り返し言うが、私、こんなに大きな、あ、もうよかか。エマちゃんもテオ君もかわいかし。よか。本人達が気にしてないから。
 向こうの屋台で、ひーっと、悲鳴。ビアンカが覗いている。晃太が平謝り、私も加わる。お肉の煮込み料理みたいで、すごくいい匂い。デミグラスみたいな感じ。店主の女性に聞くともつ煮だそうだ。こちらはお椀や小鍋を持ってきて購入するタイプ。
『ユイ、いい匂いなのです』
 ふごー、ふごー、と鼻息荒いビアンカ。
「はいはい。すみません、これに」
 晃太がアイテムボックスから、空の大鍋を出す。
「ありがとうございますっ」
 店主の女性はニコニコで鍋に煮込みを移し入れてくれる。
「あ、そうや、晃太。鍋ばもう1つ出して、お供え用に」
「ん」
 もう1つ鍋を出して煮込みを入れて貰う。お支払して、それからぞろぞろ移動する。
 教会併設の孤児院に寄り、寄付する。それからこちらの無料教室について聞いてみた。ノータは現在治めている領主の奥さんが熱心に関わっているそうで、自身も講師を務めている。無料教室に通えない子供の家庭訪問をして、通えるように交渉している。また、何故通えないか、その問題をどうにか出来ないかと、一緒に考えて解決策を模索している。それから不定期だけど、通っている子供達にパンを提供しているそうだ。収穫祭には、ノータの子供達全員にお菓子を配布していると。よし、その奥さんなら安心して任せられるかな。
 私はギルドを通して、無料教室に寄付をした。対応してくれたウィークスさんはお変わりなさそうだ。バザーで買った小銭入れに白金貨1枚を入れて渡す。
「必ず、お渡しします」
「宜しくお願いします」
 挨拶して、宿に引き上げた。

「これで、ハンバーグば煮込んだら美味しいかもね」
 母が、煮込みの鍋を味見しながら思案している。
 私はすぐにディレックスに買い物に走る。すぐさまハンバーグが作られて、焼いて、煮込まれる。ああ、いい匂いやあ。
 ハンバーグが入ってかさ増しになったので、大鍋を2つに分ける。神様のお供え用は、大鍋に移し替える。ちょっと味が薄くなると、母がケチャップやらなんやら追加して調整している。先に神様用が出来上がる。マルシェで買ったパンも添えて、と。いらっしゃらないなら、ビアンカとルージュが食べるだろうしね。
 慎重にチュアンさんがお地蔵様の前に並べる。
「神様、よかったらどうぞ」
 お祈り。私の後ろでチュアンさんが熱心にお祈りしている。
 よし、確認すると、鍋は空っぽだった。

 いつも、ありがとう

 あ、時空神様だ。いえいえ、そんな。
 気にいってもらえるかな?
 空っぽの鍋はチュアンさんが回収してくれる。
 それから、私達も煮込みハンバーグの夕御飯となった。
「「「「「頂きます」」」」」
 ぱくり。
 うん。やっぱりデミグラスだ。もつもあるが、柔らかい。そして味が深い。
「優衣、これ美味しかね。また、買ってこれるね?」
「明日、マルシェに行ってみるよ」
『ユイッ、なくなったのですっ』
『足りないわっ』
「うちら、食べだしたばっかりなんやけど」
 皿を咥えてビアンカとルージュが大合唱していた。
「わんわんっ」
「がうがうっ」
「くうーん」
「くうーん」
『ねえね~、おかわり~』
 仔達までっ。大合唱がしばらく続いたのは、言うまでもない。
 それからものんびり過ごした。マルシェでもつ煮を大量購入したり、孤児院にも寄って、寄付もした。話をしたシスターさんより、今年もベリーがよく採れると聞いたけどね。大金貨5枚を入れた小銭入れと、もへじ生活の文房具、服、肌着、靴を渡した。
「サイズは分からないので、お任せしても?」
「まあっ、ありがとうございますっ」
 シスターは何度もお礼を言ってくれた。
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