上 下
332 / 824
連載

スカイランへ⑨

しおりを挟む
 ノータに到着。問題なくギルドで到着報告する。初回ではないので、騒ぎにならなかった。ただ、同行しているホークさん達には、奇異な視線を投げていた。受付後、晃太は搬送物の為に倉庫に行き、私は応接室だ。ホークさんとエマちゃんが付いてくれる。
 冷蔵庫ダンジョンのドロップ品のリストを出すと、対応してくれたのはビルさん。
「時間を頂けますか? 明後日まで」
「はい、大丈夫ですよ」
 晃太と合流し、宿を探す。一軒家タイプだ。昼を過ぎたばかりの時間なため、お出掛けする。仔達はお昼寝タイムな為、ルージュとチュアンさん、マデリーンさん、ミゲル君が残ってくれた。
 まずは、マルシェでお買い物。じゃがいもやニンジン、ほうれん草に似た葉野菜がある。
「これは?」
「ノータ名産の野菜で、エピナルと言う野菜です。冬場は甘味が増して、スープや煮込み料理などによく使われていますよ。熱が入るとすぐに柔らかくなるため、炒め物にして、お肉などに添えたりしますが、隠れた名脇役ですね」
「へー」
 よし、少し買おう。
 大量購入すると、店主はニコニコだ。ついでに生姜も購入する。生姜を1つおまけしてくれた。
「ユイさん。私、持つ」
「ありがとうエマちゃん」
 エマちゃんが買い物用のマジックバッグにエピナルや生姜を入れる。
「おや、かわいい娘さんですね」
 はい、久しぶりの勘違い。アノでも勘違いされたんだよね。私、高校生くらいの子供がいるって見えてるんやね。初婚が、二十歳前後の世界だから、私の年齢でいてもおかしくはないか。否定するのも、面倒や。エマちゃんかわいかし、よかか。私は生笑いで挨拶する。ちら、とエマちゃんを見ると、何故か嬉しそうや。
 それからもパンやら野菜やら買い込む。
 パンを入れた袋を抱えたテオ君は、優しい息子さんだねえ、って言われるし。テオ君は俯いているけど、照れ笑い。かわいか。繰り返し言うが、私、こんなに大きな、あ、もうよかか。エマちゃんもテオ君もかわいかし。よか。本人達が気にしてないから。
 向こうの屋台で、ひーっと、悲鳴。ビアンカが覗いている。晃太が平謝り、私も加わる。お肉の煮込み料理みたいで、すごくいい匂い。デミグラスみたいな感じ。店主の女性に聞くともつ煮だそうだ。こちらはお椀や小鍋を持ってきて購入するタイプ。
『ユイ、いい匂いなのです』
 ふごー、ふごー、と鼻息荒いビアンカ。
「はいはい。すみません、これに」
 晃太がアイテムボックスから、空の大鍋を出す。
「ありがとうございますっ」
 店主の女性はニコニコで鍋に煮込みを移し入れてくれる。
「あ、そうや、晃太。鍋ばもう1つ出して、お供え用に」
「ん」
 もう1つ鍋を出して煮込みを入れて貰う。お支払して、それからぞろぞろ移動する。
 教会併設の孤児院に寄り、寄付する。それからこちらの無料教室について聞いてみた。ノータは現在治めている領主の奥さんが熱心に関わっているそうで、自身も講師を務めている。無料教室に通えない子供の家庭訪問をして、通えるように交渉している。また、何故通えないか、その問題をどうにか出来ないかと、一緒に考えて解決策を模索している。それから不定期だけど、通っている子供達にパンを提供しているそうだ。収穫祭には、ノータの子供達全員にお菓子を配布していると。よし、その奥さんなら安心して任せられるかな。
 私はギルドを通して、無料教室に寄付をした。対応してくれたウィークスさんはお変わりなさそうだ。バザーで買った小銭入れに白金貨1枚を入れて渡す。
「必ず、お渡しします」
「宜しくお願いします」
 挨拶して、宿に引き上げた。

「これで、ハンバーグば煮込んだら美味しいかもね」
 母が、煮込みの鍋を味見しながら思案している。
 私はすぐにディレックスに買い物に走る。すぐさまハンバーグが作られて、焼いて、煮込まれる。ああ、いい匂いやあ。
 ハンバーグが入ってかさ増しになったので、大鍋を2つに分ける。神様のお供え用は、大鍋に移し替える。ちょっと味が薄くなると、母がケチャップやらなんやら追加して調整している。先に神様用が出来上がる。マルシェで買ったパンも添えて、と。いらっしゃらないなら、ビアンカとルージュが食べるだろうしね。
 慎重にチュアンさんがお地蔵様の前に並べる。
「神様、よかったらどうぞ」
 お祈り。私の後ろでチュアンさんが熱心にお祈りしている。
 よし、確認すると、鍋は空っぽだった。

 いつも、ありがとう

 あ、時空神様だ。いえいえ、そんな。
 気にいってもらえるかな?
 空っぽの鍋はチュアンさんが回収してくれる。
 それから、私達も煮込みハンバーグの夕御飯となった。
「「「「「頂きます」」」」」
 ぱくり。
 うん。やっぱりデミグラスだ。もつもあるが、柔らかい。そして味が深い。
「優衣、これ美味しかね。また、買ってこれるね?」
「明日、マルシェに行ってみるよ」
『ユイッ、なくなったのですっ』
『足りないわっ』
「うちら、食べだしたばっかりなんやけど」
 皿を咥えてビアンカとルージュが大合唱していた。
「わんわんっ」
「がうがうっ」
「くうーん」
「くうーん」
『ねえね~、おかわり~』
 仔達までっ。大合唱がしばらく続いたのは、言うまでもない。
 それからものんびり過ごした。マルシェでもつ煮を大量購入したり、孤児院にも寄って、寄付もした。話をしたシスターさんより、今年もベリーがよく採れると聞いたけどね。大金貨5枚を入れた小銭入れと、もへじ生活の文房具、服、肌着、靴を渡した。
「サイズは分からないので、お任せしても?」
「まあっ、ありがとうございますっ」
 シスターは何度もお礼を言ってくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

婚約破棄を告げた瞬間に主神を祀る大聖堂が倒壊しました〜神様はお怒りのようです〜

和歌
ファンタジー
「アリシア・フィルハーリス、君の犯した罪はあまりに醜い。今日この場をもって私レオン・ウル・ゴルドとアリシア・フィルハーリスの婚約破棄を宣言する──」  王宮の夜会で王太子が声高に告げた直後に、凄まじい地響きと揺れが広間を襲った。 ※恋愛要素が薄すぎる気がするので、恋愛→ファンタジーにカテゴリを変更しました(11/27) ※感想コメントありがとうございます。ネタバレせずに返信するのが難しい為、返信しておりませんが、色々予想しながら読んでいただけるのを励みにしております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。