いや、あんたらアホでしょ

青太郎

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始まりは

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元々、この結婚は夫からの提案だった。

貴族学院の卒業を控えたある日、いつものように図書館にて時間を潰している私へと彼が声を掛けてきたのだ。

最初は申し訳なさそうな声で話しかけられた。

彼らの事は知っていたし一応クラスメートではあったけれど、話をした事は一度もないので声を掛けられた時はとても驚いた。

「…まだ結婚相手が決まっていないと聞いたのですが…」

いきなり不躾にそう言われ、なんとなく曖昧に返事をした。


「…よろしければ、条件付きで私と結婚するのはどうですか…?
…ただ、3年間だけになりますが…」


人が少なくなった図書館で、急にそんな話をされて驚く私を気にする事なく彼はそのまま自分の事情を話し始めた。

彼には愛する女性がいる事。

しかし、彼女の身分が平民の為、今のままでは彼女を正妻として迎え入れるのは難しい事。

一度家格の合う正妻さえ迎えれば、子供が出来ないという理由で彼女を迎え入れる事が出来るようになる事。

結婚後は後継者としての成果を上げて彼女も何処かの貴族と養子縁組させる事。

後継者としての実績と彼女の身分さえどうにかすれば正妻に出来る事。


それらの内容を滔々と話す。
正直、彼とそのお相手の話はこの学院でも割と有名だったので噂を聞いたことはあった。

…ただ、聞いてはいたけれどまさか私に声を掛けてくるとは思ってもいなかった。

彼は自分の事情を、少し控えめながらもどこか得意気にペラペラ話すので思わず呆気に取られた。

「…ですので、3年程すれば正式に彼女を迎え入れる事が出来るのです。そして、それまでの間は貴方を私の妻としてそれなりの待遇で迎え入れるつもりです」

「…いや…」

「両親も貴方なら見た目も家格も妻として問題ないと言っているし、彼女も愛する私のためには我慢をすると納得してくれて…」

「…えっと…」

「売れ残…まだ結婚相手が決まっていないのならば、私の妻になるのはお互いに悪い話ではないと思うのです」

…彼からは…うっかりと本音(売れ残り)が溢れていた…

「…ただ、正妻とは言ってもあくまで表面上のことです…私が愛してるのは彼女だけですので…そこだけは理解しておいて頂きたいです」


正直、最初は彼の正気を疑った。

確かに見た目は良いが愛に狂ったお花畑だと噂では聞いてはいた…

しかし…いくら私が売れ残りだと思っていたとしても、本気でこの提案を通したいのならばせめて言い方ぐらいは気をつけるべきだろう…

…それに、こんな説明で説得出来ると思うなんて頭がおかしいとしか思えない。


彼の話を要約すると、地位も金も顔もそれなりに合格だから表向きは妻として迎えてやるが、実質的には愛のない結婚をして3年後には自分の彼女に正妻の座を譲れ。更に子供を産めない女としての汚名を被って出て行け…と、言っているも同然だ…

…そんな話を受ける者は普通に考えればいないだろう…


別に正論で論破してお断りをするのは簡単だったけれど、よくよく考えるとこの話…


…私にはメリットしかない事に気がついた。



「…そちらの旨を文書にして正式に契約して頂けるのならお話をお受けしても良いですよ」

気が付けばそう口から言葉が出ていた。


後々、仲の良い友人達からは大層怒られ、時間の経過と共に…他人の意見はちゃんと聞くべきだったと深く反省する事になった。





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