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事例 壱 『コウシュ村』
弍拾漆
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『いケニ、二エ工エ、逃、タタタタタ……』
壊れた機械のような不気味さを持つ放送を耳にして、僕はゾワリゾワリと背筋を凍らせた。自分には関係ないコトのはずなのに、どうしてこうも寒気がするのだろうか。分からない。
そしてどうしても、ここにいてはいけない気がする。それだけは直感的に察知した。
「っ……、」
己の直感には従え。その言葉を信じて僕は走り出した。
とにかくこの村から出なくては。そんな脅迫めいたモノに駆られて村の外に繋がる道をどんどん進む。
・─・・ ─・─ ─ ─
─ ─ ─ ・─・ ・─
村に入ってきたところにある透明の壁が消えた確証はない。ということは、確実性を持たせるのならば別の道を探さなければならないだろうか。
無理ゲー、の文字が頭に浮かんだが、そうも言っていられない。己の命が掛かっているのだから。
この村の地理もろくに知らない僕にできることと言えば、さっき放送室(仮)から見た景色を頼りに進むことくらいだろうか。
パッと一瞬しか見ていなかったが、村に入ってきた道を仮に北としたところの、北東方向にも道が続いていたっけ。
放送室の建物から見て今は左側にいるから、逆の方向に行けば或いは。
今走っている道から右側に伸びる道がちょうどあったので、そちらの方に曲がってみることにした。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、」
大して走っていないのに上がる息、運動しているからこそジワリと滲む汗、己の体が重いとすら感じられる走り。それらを気にする余裕もなく、とにかく前へと足を運ぶ。
歩くよりかは幾分か早く流れる景色の中、目視できる範囲にこれまた不気味な場所が見えてきた。
そう、墓地である。
この人里離れた村に暮らす人たちが死んだら、皆が皆ここに埋葬されるんだろうな。パッと見でも二、三十基は確認できた。いや、確認している場合ではないな。
「……」
ああ、それにしても暗い時間に横切る墓地ほど怖いものはないだろう。嫌だなあ、通りたくはないなあ、もう怖い体験はコリゴリなんだけどなあ。
なんとかあの横道を通るのを避けたいという自分の感情に対して、道は残酷にも分かれてくれてはいなかった。あの墓地をなんとしてでも避けるには、相当来た道を逆戻りしなければならない。
そんな時間も、体力も、精神的余裕も勿論あるはずもなく、目鼻の先にまで迫っている墓地の横を通り抜けるしか選択肢は残されていなかった。
なるべく墓地の方から目を背けて全速力で通り抜ける。雪を踏み締める音になんて気を向けていられない。ただ一瞬でも早く通り過ぎたい。それだけが頭を埋め尽くす。
あと少しで墓地も通り過ぎる。何も起こらなくて良かった、と内心安堵しながらも足は緩めないでいた。
そう、この村では安堵した時が一番恐ろしいというのに、つくづく僕は学習しない。
チィーーィィーーーン……
お鈴、とかいうやつだったろうか。あれが一度だけ、墓地の中央くらいから物悲しそうに鳴ったのだった。
壊れた機械のような不気味さを持つ放送を耳にして、僕はゾワリゾワリと背筋を凍らせた。自分には関係ないコトのはずなのに、どうしてこうも寒気がするのだろうか。分からない。
そしてどうしても、ここにいてはいけない気がする。それだけは直感的に察知した。
「っ……、」
己の直感には従え。その言葉を信じて僕は走り出した。
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・─・・ ─・─ ─ ─
─ ─ ─ ・─・ ・─
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