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婚姻後
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しおりを挟む今日はいつもより気合の入っているエルヴィス母様が、新作の衣装を手にして遊びに来ていた。
近々、五歳を迎えるセナのお披露目会を開くことになっているため、その打ち合わせだ。
「ド派手に登場してやろうぜ、セナ」
「はい。兄様に言い寄る赤毛の猪は、俺が蹴散らします」
「ククッ。いいぞ、やれやれ。俺もバックアップするからな?」
「いえ。お祖母様の手を煩わせるようなことはないかと」
ふっと大人びた顔で笑ったセナ。
薄紫色の瞳を見開き、これでもかと煌めかせる母様は、セナにメロメロだ。
「っ、頼もしすぎるぜ! セナッ!!」
愛してるぞと連呼する母様が、セナを抱っこして頬にチュッチュしまくっている。
セナが産まれるまでは、母様は僕にチュッチュしていたけど、今は全くされなくなっていた……。
セナを殊更可愛がっている母様は、既にセナのことをサルース商会の跡取りとして認めているんだ。
大商会の重役に、『セナ以外は考えられない!』とまで言わしめた僕の愛息は、同年代の子たちよりも、格段に聡い子だと思う。
……もはや、僕を超えている気がする。
そんな仲の良い二人を見守る黒目黒髪の平凡顔の男ふたりは、それぞれ白銀の髪のイケメンの膝の上に乗っていた。
「今日こそ、おやすみのキスをしてほしいのだっ!」
「シオン様……。さすがにそれは……」
「クッ。なんて貞操観念が固い男なんだっ!」
「……どこでそんな言葉を覚えたんです?」
困ったように微笑むルドルフくんに、むっとするシオンがほっぺにチューをした。
僕に似て一途なシオンは、好きな人へのアプローチがとっても大胆だ。
なにせ純粋なシオンも、鬼教官(エスヴィス母様)から恋愛面での指導を受けているんだ。
……シオンもまた、既に僕を超えている。
「うぐっ。か、可愛すぎるっ!! 顔が真っ赤なのだ……。脈アリということでいいのだな?」
「………」
「ち、違うなら、も、もう一回するぞ?! どちらの返答でも、私は嬉しい結果になるのだからなっ!!」
「ククッ……今はノーコメントでお願いします。シオン様が成人した時に、お答えしますよ?」
「~~っ! み、耳元で喋るのは、反則なのだ……」
プシューと顔から湯気を出すシオンの勢いがなくなり、ルドルフくんにメロメロになっている。
シオンは気付いていないけど、今日のルドルフくんの返事は、間違いなく脈アリだと僕は思った。
そのことに気付いているはずのシュヴァリエ様はというと、いつもなら「まだ早い!」とすぐにつっこむのに、今は二人のことを放置していた。
そして僕にひたすら頬ずりをしている。
四十手前でも、シミ一つない綺麗なお肌だ。
元々かっこよかったのに、さらに色気が増し増しで、とんでもないことになっている。
「シュヴァリエ様……。は、恥ずかしいですっ」
「すまない。だが、リュセが愛おしすぎて、自分を止めることができないんだ……。本当なら職場にも連れて行きたい、離れたくないんだ」
「っ、」
熱烈な愛の言葉を告げる声は、本気だ。
僕と過ごす時間を確保するために、騎士団を辞めてしまいそうな勢いなんだ。
半年前から二人で寝るようになり、ラブラブ度が限界突破している僕たち。
僕は寝不足になることもしばしばで、セバスさんたちにも微笑ましい顔をされてしまうのだけど、嬉しい悩みだったりする。
だって僕も、シュヴァリエ様が大好きなんだ!
「っ……と、止めなくてもいいです。本当は嬉しいのでっ」
「うぐっ。可愛すぎるっ!!」
長年一緒にいるのに、まるで付き合いたての恋人のように僕に愛を囁き続けるシュヴァリエ様は、シオン化していた。
「イチャイチャするなら、寝室に行けよ~」
「はい。では、二人をお願いします」
「ああ、任せとけ」
グッと親指を立てる母様は、今でも僕にアシストしてくるんだ。
子供たちの前では恥ずかしいからやめてほしいのに、僕もシュヴァリエ様にメロメロなんだ……。
昼間から寝室に向かおうとするシュヴァリエ様を、誰も止められない。
でも、今日はセバスさんが立ち塞がった。
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