婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?

ぽんちゃん

文字の大きさ
80 / 100
婚姻後

しおりを挟む


 初めてのお出かけをすることになった私は、ジャスティンお祖父様に何度も着替えさせられていた。

 「困ったな、全部似合うぞ」
 「…………ふぐぅ」
 (いちいち頬ずりをするのをやめたまえ)

 まだ上手く話せない私は、孫をこれでもかと溺愛するお祖父様にされるがままになる。
 髪も瞳もブラウンで平凡なのだが、これでも偉い人なのだ。

 母上と屋敷を切り盛りする、有能な家令のセバスですら、逆らえない人だと聞いている。
 そして使用人は、セバスには逆らってはいけないと話していた。
 つまり、お祖父様はこの家のボスだ。

 ただ、そんなボスにも弱みがある。
 なにを隠そう、私の美人すぎる母上だ。

 「リュセ」と、唯一呼び捨てではない。
 敬意を込めているのだ。
 父上がいない時を狙って、母上とお茶をするのがボスの日頃の楽しみだ。


 いつものように母上に助けを求めようとしたが、こちらは父上の着せ替え人形になっていた──。


 本日は、知人の結婚式に参列するため、私たちは主役になってはいけない。

 だがしかし。
 傾国の美人である母上は、ボロ切れを纏っても隠しきれないオーラを放っているのだ。

 「困ったな、全部似合う……」
 「ふふっ。僕は、シュヴァリエ様とお揃いならなんだっていいのにっ」
 「…………いくつになってもリュセが愛らしすぎて、本当に困ってしまう」

 まったく困ってなどいない表情で告げた父上は、ひたすらだらしない顔をしているのだ。
 そんな父上にうっとりと見惚れている母上は、可愛い系の私より色気のある美人だ。

 そして二人が、熱い視線で見つめ合う。
 ……いつものやつが始まるぞ。

 「シュヴァリエ様、大大大好きっ♡」
 「っ、ああ、私もだ。愛してる、リュセ……」

 甘い声で囁いた父上に顎クイをされて、とろんとした顔の母上が頬を赤らめる。
 すぐに二人の世界に入る両親が、我が子の前でもチュッチュし始めた。

 うむ。
 向こうも時間がかかりそうだ。

 助けを求めることを諦めた私──シオン・ライトニング。
 とても聡い、二歳児だ。

 漆黒の髪と黒い瞳が自慢。
 自分で言うのもどうかと思うが、私は美人だ。
 なにせ美人すぎる母上と瓜二つなんだ。
 

 「お迎えにあがりました」


 凛とした声の主が登場し、私の体はぴくりと反応する。

 ラブラブな二人の目を覚ますように声を掛けたのは、母上の護衛を担当している美丈夫。
 さっぱりとした白銀の髪は清潔感があり、室内でもキラキラしている。
 軽い身のこなしができるスマートな体型で、素晴らしい肉体美を保持している。

 そして、色気のある切れ長の目元が印象的だ。
 髪色より濃く、青みがかった銀色の瞳は、この世で一番美しいと思う。
 私の持つ神秘的な黒よりも。
 その瞳に見つめられると、私も父上並みのだらしない顔を晒してしまうのだ。

 私は、貴族としてはまだまだだ。

 ようやくお祖父様からゴーサインが出た私は、そわそわしながらイケメンを見つめる。
 すぐに私に気付いてくれるルドルフは、私の前でしゃがみ込んだ。

 「るぅ……」
 「シオン様。今日も素敵ですよ」

 ……今日も、って言ったぞ。
 ということは、いつも私を素敵だと思ってくれているということだ。

 つい鼻の下が伸びてしまう。
 そんな無様な顔を晒してしまった私を、ルドルフは可愛いと抱きしめてくれるのだ。
 
 (私のダメな面も愛してくれるルドルフは、世界一いい男なのだっ!!)









しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

ヴァレンツィア家だけ、形勢が逆転している

狼蝶
BL
美醜逆転世界で”悪食伯爵”と呼ばれる男の話。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた

BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。 「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」 俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

処理中です...