81 / 100
婚姻後
8
しおりを挟む「そろそろ行きましょうか」
「うむ」
いつものように手を繋ぐが、今日は自分の足でしっかりと歩く。
本当は抱っこされたい。
だが、私の成長した姿を見ると、ルドルフが喜んでくれるから歩くのだ。
少しの変化も見逃さない男は、大袈裟なくらいに私を褒めてくれる。
そして母上とも手を繋いだ私は、背筋を伸ばして歩き出す。
父上がなにやら文句を言っていたが、ルドルフの手は離さないのだ!
ライトニング公爵邸にあるエレベーターという、珍しい品を作った天才発明家の結婚式に参列するため、近くの商会まで馬車で移動する。
本日の主役であるガスパールさんの奥様は、私の母上のファンらしい。
そこで母上がサプライズ登場だ!
ロングベールを身につけたキラキラの花嫁は、喜びすぎて卒倒していた。
私の母上は、人気者なのだ。
三十名ほどの従業員が集まる小さな結婚式だったが、女神が降臨したと大盛り上がりだ。
そして私もルドルフに連れられて登場する。
先程までは賑やかだったのに、会場はシーンと静まり返ってしまった。
「…………」
うむ。
泣きそうだ。
「シ……シシシシ、シオン様ああああ~~ッッ!!!!」
母上の時よりも大歓声が湧き、その声の大きさに驚いてしまった。
私が醜態を晒す前に、さっとルドルフが抱っこしてくれる。
「シオン様にお目にかかれる者は限られております。王族ですら、まだシオン様と対面していないのです。彼らが興奮するのも無理はありません」
少し得意げに話したルドルフが微笑む。
よくわからないが、皆は私と会えて嬉しくて泣いているようだ。
私は森の主並みの激レアな人物だったらしい。
「…………ふむ。でも、こわいのだ」
「大丈夫ですよ、俺がシオン様をお守りします」
背をトントンとされる私は、ここぞとばかりにルドルフに甘える。
(もう落ち着いているのだが、二歳児にまんまと騙されているルドルフは、優しすぎるのだっ!!)
それでも最後は、みんなに挨拶をして、結婚式を挙げた二人におめでとうと伝えることができた。
もちろん、ルドルフも褒めてくれた。
比較的小さなパーティーだったが、私の噂は瞬く間に広まっていた。
◇
そして三歳になった時に、お披露目会を開いた。
私は将来はライトニング公爵になるため、生まれた瞬間から注目されていたらしい。
挨拶に来てくれた母上のご友人は、皆お腹が大きかった。
なにやら、結婚式で派手に登場した母上に憧れた人たちが、こぞって結婚式を挙げたそうだ。
そしてバンバン子供を産みまくっている。
私の同級生や、一つ下の子供はかなり多くなるため、友人がたくさん出来るようだ。
「シオン様とお呼びしてもいいですか?」
「……う、うむ」
「「「きゃあ♡♡ 可愛い~ッ♡♡」」」
プニッとした体型の集団に囲まれる。
衣装がパツパツで似合っていないのだ。
「ひ、一目惚れしましたッ! お、おれと、恋人にっ」
「シオン様っ! 僕と結婚してくださいッ!」
「僕は何番目でもいいです! シオン様が振り向いてくださるまで、待ち続けます……っ♡♡」
「…………」
無言で微笑む私だが、グイグイ来られてドン引きしている。
初対面で告白するとは、なかなか積極的な人たちばかりだ。
とにかく圧が凄いのだ。
そして驚くことに、十歳以上年上の人たちからもアプローチされてしまった。
「年の差は気にしなくていいよ、シオン。貴族では普通のことだから」
「そうだ。私たちも九つ違うしな?」
父上に腰をガッチリ握られている母上が、私の頭をなでなでしてくれる。
ルドルフとは二十歳差だが、両親からの許可が下りた。
(ルドルフ、やったぞ! 私が成人するまで、待っていてくれっ!)
120
お気に入りに追加
3,778
あなたにおすすめの小説
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです
魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。
ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。
そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。
このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。
前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。
※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる