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婚姻後

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 「そろそろ行きましょうか」
 「うむ」

 いつものように手を繋ぐが、今日は自分の足でしっかりと歩く。
 本当は抱っこされたい。
 だが、私の成長した姿を見ると、ルドルフが喜んでくれるから歩くのだ。
 少しの変化も見逃さない男は、大袈裟なくらいに私を褒めてくれる。

 そして母上とも手を繋いだ私は、背筋を伸ばして歩き出す。
 父上がなにやら文句を言っていたが、ルドルフの手は離さないのだ!


 ライトニング公爵邸にあるエレベーターという、珍しい品を作った天才発明家の結婚式に参列するため、近くの商会まで馬車で移動する。

 本日の主役であるガスパールさんの奥様は、私の母上のファンらしい。
 そこで母上がサプライズ登場だ!

 ロングベールを身につけたキラキラの花嫁は、喜びすぎて卒倒していた。
 私の母上は、人気者なのだ。

 三十名ほどの従業員が集まる小さな結婚式だったが、女神が降臨したと大盛り上がりだ。

 そして私もルドルフに連れられて登場する。
 先程までは賑やかだったのに、会場はシーンと静まり返ってしまった。

 「…………」

 うむ。
 泣きそうだ。

 「シ……シシシシ、シオン様ああああ~~ッッ!!!!」

 母上の時よりも大歓声が湧き、その声の大きさに驚いてしまった。
 私が醜態を晒す前に、さっとルドルフが抱っこしてくれる。

 「シオン様にお目にかかれる者は限られております。王族ですら、まだシオン様と対面していないのです。彼らが興奮するのも無理はありません」

 少し得意げに話したルドルフが微笑む。
 よくわからないが、皆は私と会えて嬉しくて泣いているようだ。
 私は森の主並みの激レアな人物だったらしい。

 「…………ふむ。でも、こわいのだ」
 「大丈夫ですよ、俺がシオン様をお守りします」

 背をトントンとされる私は、ここぞとばかりにルドルフに甘える。

 (もう落ち着いているのだが、二歳児にまんまと騙されているルドルフは、優しすぎるのだっ!!)


 それでも最後は、みんなに挨拶をして、結婚式を挙げた二人におめでとうと伝えることができた。
 もちろん、ルドルフも褒めてくれた。

 比較的小さなパーティーだったが、私の噂は瞬く間に広まっていた。





 そして三歳になった時に、お披露目会を開いた。

 私は将来はライトニング公爵になるため、生まれた瞬間から注目されていたらしい。
 挨拶に来てくれた母上のご友人は、皆お腹が大きかった。

 なにやら、結婚式で派手に登場した母上に憧れた人たちが、こぞって結婚式を挙げたそうだ。
 そしてバンバン子供を産みまくっている。

 私の同級生や、一つ下の子供はかなり多くなるため、友人がたくさん出来るようだ。

 「シオン様とお呼びしてもいいですか?」
 「……う、うむ」
 「「「きゃあ♡♡ 可愛い~ッ♡♡」」」

 プニッとした体型の集団に囲まれる。
 衣装がパツパツで似合っていないのだ。

 「ひ、一目惚れしましたッ! お、おれと、恋人にっ」
 「シオン様っ! 僕と結婚してくださいッ!」
 「僕は何番目でもいいです! シオン様が振り向いてくださるまで、待ち続けます……っ♡♡」
 「…………」

 無言で微笑む私だが、グイグイ来られてドン引きしている。
 初対面で告白するとは、なかなか積極的な人たちばかりだ。
 とにかく圧が凄いのだ。

 そして驚くことに、十歳以上年上の人たちからもアプローチされてしまった。

 「年の差は気にしなくていいよ、シオン。貴族では普通のことだから」
 「そうだ。私たちも九つ違うしな?」

 父上に腰をガッチリ握られている母上が、私の頭をなでなでしてくれる。
 ルドルフとは二十歳差だが、両親からの許可が下りた。


 (ルドルフ、やったぞ! 私が成人するまで、待っていてくれっ!)

 








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