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リュセ
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しおりを挟むそれでもまだ話そうとするジェイコブさんは、相手を蔑んで喜ぶタイプの人間だ。
僕が判断することではないと思うけど、そんな人が、由緒正しきライトニング公爵家には相応しくないと思う。
深い溜息を溢したシュヴァリエ様に体を向けた僕は、そっと胸を押さえた。
「三年前から、ずっとお慕いしておりました」
真剣に想いを伝えると、どうしてか背後にいるジェイコブさんが息を呑んだ。
そして、僕の告白を聞いたシュヴァリエ様は、激しく瞳を揺らしている。
はくはくと動いた口からは、「あ、ありえない……」と小さな声。
その返事に、僕は苦笑いを浮かべていた。
それでも、すぐに拒否されなかったことに、少しだけ安堵もしていた。
「……そう、思いますよね? まだ少ししかお話ししたことがないのに……」
「っ、いや、そうではなくて」
「でも、僕を助けてくれたあの日から……僕は、シュヴァリエ様のことしか考えられなくて……」
「っ…………」
もう一度だけでいいから映りたいと願っていた碧眼に、これでもかと凝視されて、じわじわと顔が熱くなる。
それでも目を逸らさずに見つめ続ける。
僕の想いが届くように……。
そう思って頑張ってみたものの、あまりに長くて僕の方が限界を迎えてしまった。
「……ぅぅっ、やっぱりムリっ。……かっこよすぎるっ」
たまらず心の声が漏れる。
ハッとして、おかしなことを告げてしまう口を両手で押さえたけど、時すでに遅し。
恥ずかしくなってぱちぱちと瞬きをすれば、目の前にある端正なお顔が真っ赤に染まった。
勢いよく顔を背けたシュヴァリエ様が、頭を抱えるようにして項垂れる。
ちらりと視線だけを動かしたシュヴァリエ様は、まるで信じられないと言わんばかりの表情を浮かべていた。
一目惚れしたようなものだし、すぐには伝わらないことはわかっていた。
シュヴァリエ様からしてみれば、突然空から降って来た人間を抱きとめただけなのに、三年も想われていたと知れば、きっと気持ち悪いだけだと思う。
でも、フラれたとしても、今後もお話ししたい。
出来ればこれを機に、僕の友人第一号になってほしいと思い、僕は慌てて口を開いた。
「す、好きになってほしいだなんて、思っていませんっ。ただ、これからも、シュヴァリエ様を想うことを、お許しください……」
「っ…………リュセ」
シュヴァリエ様が、甘い声で僕の名を呼ぶ。
「本心、なのか……?」
問いかけられて、こくりと頷く。
それでも信じてもらえていないようだったから、僕はこくこくと何度も頷いた。
僕の熱烈なアプローチにドン引きしたのか、シュヴァリエ様はついに動かなくなってしまった。
「ふ、ふざけるなっ!!」
一部始終を見ていたらしいジェイコブさんが怒号を放つ。
……まだいたのかと、正直驚いた。
「公爵夫人になりたいだけだろッ?! 今までもそういう魂胆の奴もいたが、結局全員逃げ出してるんだ! そんな演技までして醜いぞっ!」
捲し立てるように僕を貶し始めたジェイコブさんは、肩で息をしている。
初対面なのに、僕のなにを知っているっていうんだ。
僕のシュヴァリエ様を想う気持ちを蔑ろにされた気がして、怒りがふつふつと湧いてくる。
言い返してやろうと立ち上がったけど、既のところで堪えた。
「もう一つ、聞きたいことがありました」
「っ……な、なんだよ」
「シュヴァリエ様が当主になったら……。ジェイコブさんはどうなるんですか?」
そう言って、こてりと首を傾げて見せれば、今度こそジェイコブさんは黙ってくれた。
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第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
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