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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅨ ④
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――俺が言うのもなんだけど、そもそもとして全寮制の学校になんて来ないほうがいいとは思うんだけどな、オメガは。
とは言っても、中等部に入ってくる子どもは、親の言いなりに進路を決めた者がほとんどだろう。自分がそうであったように、結局は、親のエゴなのだ。
自分が通っていた名門校に息子も通わせる、というステータスができあがっているだけ。自分たちは、そのレールに乗せられただけだ。
「皓太、気づくかな」
半ばひとりごとのようだったそれに、「どうだろうな」と向原が相槌を打つ。おざなりなものに戻っていたのに、適当に頷かれているといった苛立ちはいっさい起こらなくて、代わりに、肩から少し力が抜けた。
向原にとっては、オメガだろうが、アルファだろうが、興味さえなければどうでもいいことなのだと、改めて感じられたからだ。
自分が絶対的なアルファだから、という自信からくるものだとわかっていても、成瀬は、向原のその「ある意味での公平さ」が好きだった。
自分のことを気にかけてくれていることも、癪だと感じることはあるけれど、ありがたいとも思っていた。
二年に進級したときの部屋替えで、向原と同室になった。もちろん、気は遣っている。けれど、第二の性が露見する可能性を考慮しなくていい環境は、予想していた以上に精神的に楽だった。
考慮しなくていいもなにも、すでにバレているから、というだけではあるのだけれど。
「それよりも、あいつらに気をつけたほうがいい」
かわいい一年が入ってきたって、はしゃいでた。そう言って、向原が出したのは、同じ学年の複数名の寮生の名前だった。
興味もなにもないくせに、こういった情報だけはしっかり掴んでるんだよなぁ。苦笑まじりに呟く。
「あいつら、まだそんなことしてんのか」
アルファであればなにをしてもいいと考えている、不良ぶった同級生。この学園は少しずつ変わってきているはずなのに、変わらないままの人間も残っている。
「いまさら、あのスタンスを変えるつもりはないってことだろ」
「……馬鹿なやつ」
「向こうからしたら、おまえが馬鹿だろうけどな」
向原が声を立てないで笑う。
「余計なことしなけりゃ、アルファ至上主義のこの世界の頂点に立てただろうに。アルファもベータもオメガも、みんな平等ですって馬鹿な旗を振り始めたやつ、としか思ってないだろ」
それは、散々に言われてきたことだった。そのたびに、それが間違っているのだと正論を繰り返してきた。でも。
「向原も」
「ん、なに?」
「そう思うか」
馬鹿なことを聞いてしまったかもしれない、と思ったのは、本当に一瞬だったけれど、驚いたような視線を向けられたからだった。
自分だから気がついた、というレベルの変化ではあったのだけれど。
いつまで経っても母親の面影が抜けきらない自分とは違う、同性が見ても素直にかっこいいと思ってしまうような顔。その顔に小さな笑みが浮かぶ。
とは言っても、中等部に入ってくる子どもは、親の言いなりに進路を決めた者がほとんどだろう。自分がそうであったように、結局は、親のエゴなのだ。
自分が通っていた名門校に息子も通わせる、というステータスができあがっているだけ。自分たちは、そのレールに乗せられただけだ。
「皓太、気づくかな」
半ばひとりごとのようだったそれに、「どうだろうな」と向原が相槌を打つ。おざなりなものに戻っていたのに、適当に頷かれているといった苛立ちはいっさい起こらなくて、代わりに、肩から少し力が抜けた。
向原にとっては、オメガだろうが、アルファだろうが、興味さえなければどうでもいいことなのだと、改めて感じられたからだ。
自分が絶対的なアルファだから、という自信からくるものだとわかっていても、成瀬は、向原のその「ある意味での公平さ」が好きだった。
自分のことを気にかけてくれていることも、癪だと感じることはあるけれど、ありがたいとも思っていた。
二年に進級したときの部屋替えで、向原と同室になった。もちろん、気は遣っている。けれど、第二の性が露見する可能性を考慮しなくていい環境は、予想していた以上に精神的に楽だった。
考慮しなくていいもなにも、すでにバレているから、というだけではあるのだけれど。
「それよりも、あいつらに気をつけたほうがいい」
かわいい一年が入ってきたって、はしゃいでた。そう言って、向原が出したのは、同じ学年の複数名の寮生の名前だった。
興味もなにもないくせに、こういった情報だけはしっかり掴んでるんだよなぁ。苦笑まじりに呟く。
「あいつら、まだそんなことしてんのか」
アルファであればなにをしてもいいと考えている、不良ぶった同級生。この学園は少しずつ変わってきているはずなのに、変わらないままの人間も残っている。
「いまさら、あのスタンスを変えるつもりはないってことだろ」
「……馬鹿なやつ」
「向こうからしたら、おまえが馬鹿だろうけどな」
向原が声を立てないで笑う。
「余計なことしなけりゃ、アルファ至上主義のこの世界の頂点に立てただろうに。アルファもベータもオメガも、みんな平等ですって馬鹿な旗を振り始めたやつ、としか思ってないだろ」
それは、散々に言われてきたことだった。そのたびに、それが間違っているのだと正論を繰り返してきた。でも。
「向原も」
「ん、なに?」
「そう思うか」
馬鹿なことを聞いてしまったかもしれない、と思ったのは、本当に一瞬だったけれど、驚いたような視線を向けられたからだった。
自分だから気がついた、というレベルの変化ではあったのだけれど。
いつまで経っても母親の面影が抜けきらない自分とは違う、同性が見ても素直にかっこいいと思ってしまうような顔。その顔に小さな笑みが浮かぶ。
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