異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

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第119話 グレイ=ブラッド

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正直、罪のない真祖の眷属たちを誤解して殲滅したときから罪悪感を感じ続けている。

そして、後ろめたく感じているため協力を仰ぎに行くのが怖い。



『…ええい、ままよ!!』



俺は覚悟を決め、真祖の住む城の前に”転移”した。

すると、転移した目の前には何とも言えない光景が広がっていた。



「…真祖、何をしてるんだ?」



「見ての通り、農作業でございます。」



真祖も眷属も皆、農作業の服を着て畑を耕していたのだ。

もしかして俺がヴァンパイアたちを倒してしまったせいだろうか。



「…すまないことをした。」



俺は深々と頭を下げて謝罪した。

謝罪程度で許されるとは思っていないので、これからできるだけ手伝いをして償っていきたい。



「ど、どうか頭を上げてください!!!貴方様が頭を下げるなどあってはならないことです…!!」



真祖はまだ俺のことを魔王の器だと認識しているようで、ずっと畏まっている。

ただ”鑑定&略奪”スキルで魔王と同じ領域に達しただけだというのに。



「何か償いをさせてくれないか…?」



「そんな…貴方様に償わせるなど…」



「どうか償わせてくれ。そうしたいんだ。」



「貴方様がそうお望みなら…では、私めのことを名前で呼んでいただけないでしょうか…?」



「分かった。えっと…」



「はっ失礼しました…グレイ=ブラッドでございます。」



「じゃあグレイ、すまなかった。」



俺はもう一度深く頭を下げて謝罪した。



「い、いえ!!それより、何か大事な用があってこちらにいらしたのでは?」



「そうだった。グレイは魔王の噂を知っているか?」



「はい。眷属の蝙蝠たちから聞いております。」



「単刀直入に聞く。グレイは過激派か?穏健派か?」



「私めはどちらかというと穏健派でございます。」



俺はその事実を知り、少しほっとした。

もし過激派だったならば、こんなに話した仲なのに敵対する羽目になっていた。



「して、穏健派の理由は?」



「はい。私めはこれと言って争いを求めておりません。ヴァンパイア特有の吸血衝動には駆られますが、魔物や動物の血でも十分に我慢できますので…」



「そうか…それで、魔王の目星はついているのか?」



「…?私めの目の前にいらっしゃるのが次期魔王候補者ですが…?」



「それは…俺を指して言っているのか?」



「し、失礼しました!!何か癇に障ったでしょうか…?」



「いや、そうじゃない。俺が魔王候補者だということか?」



「はい。」



一体どういうことだ。



先程述べた通り、俺は”鑑定&略奪”で魔物スキルを習得した結果魔人化が進んでいるだけだ。

ただ俺の戦闘スタイルが魔王の特性である魔物スキルの行使とたまたま被っただけで、魔王因子は持たないはずだ。



『…っ!?まさか…』



嫌な予感がしたので恐る恐る自分自身を”鑑定”してみた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



名前 ダグラス=アイザック 種族 人族 性別 男 Lv.341



称号

異世界転生者 …………… アンデッドの天敵



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



俺のステータスの称号欄に”魔王”の文字はなかった。

一旦胸をなでおろすことができた。



「なぁグレイ、今自分を”鑑定”してみたが魔王の文字は見当たらなかったぞ。」



「えっ!?そうですか…いやしかし、魔王様と同じ能力を持っていることには変わりありません!!」



「それは…そうだが。」



「私めは既に貴方様にお仕えすると心に決めております!!万が一本当の魔王と対立することになっても、私は貴方様にお仕え申し上げます!!」



「そうか…それはありがとう。」



「もったいないお言葉でございます…」



グレイのことを以前は敵視していたが、今となっては忠実な配下だ。



「そうだ、せっかくだからグレイのことを教えてくれ。」



「仰せの通りに。」



グレイに一瞬、辛そうな表情が浮かんだ気がする。



「物心ついたのは古の時代の戦争が終結した後でした。両親は戦争で命を落としたようで、気が付けば私めの周りには母が雇った世話係しかおりませんでした。」



グレイの目に悲しみが見え隠れしている。



「そして私めはすくすくと成長していき、成人したころ世話係と死別しました。私めが眷属を作ったのはこの時が初めてでした。…ただ単純に話し相手が欲しかったのです。」



少し笑った気がした。

どうやらその日々は楽しいものだったようだ。



「それから何度か他種族に襲われることがありましたが、眷属を作って一緒に暮らして…そして今に至ります。」



「そうか…色々苦労してきたんだな。」



「ありがとう…ございます…私めはその言葉を聞けただけで満足です…!!」



グレイはただヴァンパイアの真祖に生まれただけで中身は人族と何ら変わらないと、改めて実感した。
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