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第120話 魔王因子
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「貴方様はどうして魔王になりたくないのですか…?」
「それは…」
魔王になったら大切に思う人々と距離ができてしまうかもしれない。
それがとても嫌なのだ。
『いや…意外とそうでもないのか…?』
仮に魔王になって魔力の質が変化しても、”偽装”スキルで誤魔化すことができるだろう。
さらに、もし俺が魔王になったら過激派の問題も解決するのでは…?
「ピロンッ!!」
『な、なんだ!?』
何も習得していないのに、突然ステータス音声が流れた。
「あぁ…魔王様…」
すると、突然グレイが跪いて涙を流し始めた。
「は…?何してるんだ?」
「貴方様がついに魔王の才能に目覚めたからでございます。」
「…は?」
すると、突然背筋が凍るような感覚に襲われた。
『な、なんだ!?』
嫌な予感がして自分を”鑑定”してみると、”魔王因子を持つ者”の称号が追加されていた。
「は…?さっきはなかったのにどうして…?」
「それは貴方様が魔王になってもいいと認めたからでしょう。」
「っ!?謀ったな!!」
「申し訳ございませんでした…!」
もう一度自分を”鑑定”し、以前と変化している部分が無いか確認した。
それはもう毛穴を一つ一つ数えるほど細かい確認だった。
すると、身体やスキルに変化はなかったものの、魔力の質が若干邪悪な属性に変化していた。
試しに魔力を可視化してみると、無色だった魔力に黒い靄が混じっていた。
「…なっ!?」
「おぉ…これは…」
「グレイ、何か知っているのか?」
「はい。それは魔王特有の”死の魔力”というものです。」
「”死の魔力”…?」
「はい。精神力やステータスが低い者はそれに触れただけで死に至らしめるというものでございます。」
「…まじか。その死なせられる対象は俺の所有魔力に依存しているのか?」
「その通りでございます。対象は貴方様のHP、MP、TP合計の1/10以下の者でございます。」
俺の合計は210万を優に超えているので、Bランク冒険者以外が俺の魔力に触れたら確実に死ぬだろう。
「しかし、”死の魔力”はまだ覚醒しておりません。魔王因子が発芽し、魔王になったときに真価を発揮するのです。」
「だろうな。…その場合はどうなんだ?」
「はい。対象が貴方様の合計の1/3以下の者に変化します。」
「…まじか。」
そうなったらもはやSランク冒険者でさえ死ぬ人がいるかもしれない。
「一度死の魔力の効果を体感してみれば、自ずとその多大なるお力がわかるかと愚考いたします。」
「…そうだな。一回試してみるか。」
俺は近くの森林に”転移”した。
死の魔力は依然として半径約10mほどに渡って広がっている。
少し歩き始めると目の前にオークがいたので、”気配遮断”を行使してこっそり近づいた。
「グ、グォォ…」
オークとの距離はちょうど10mほどになったころ、かすかに死の魔力に触れて苦しみ始めた。
『少しだけでそんなに効果があるのか…』
そのまま一歩、また一歩と近づいていった。
そして7mくらいまで距離を詰めると、オークは死の魔力に覆われて死んだ。
「お見事です。」
「あ、ああ。」
どうやら死の魔力はかすかに触れるだけで対象を苦しませ、そして身体が完全に覆われたときに死に至る性質を持っているようだ。
「魔王様、今度は少し離れた場所から一気に魔力を放出してみてください。」
「分かった。」
再びオークを見つけたので今度は20m離れた場所で止まった。
『…よし、やってみるか。』
”威圧”スキルで魔力を相手にぶつけるような感じで死の魔力を放出してみた。
すると、死の魔力は放出した方向に進んでいき、ついには20m先にいたオークを殺すことに成功した。
「一回で成功するとは…流石でございます。」
「あ、ああ。」
俺は今まで何百回もオークを倒したことがあるというのに、なぜか気分が舞い上がっていた。
「もっと大量に放出したらもっと早く殺せるのか!?”魔力念操作”で操れるのか!?もし操れたらどんなに離れていても殺せるじゃないか…!!」
「おおおおお!!ついに魔王としての自覚を持ち始めたのですね!!!」
『はっ!!だめだ!!』
ふと、リヴェリアやエイミ、師匠たちが脳裏によぎって落ち着いた。
『今の思考は魔王因子の影響か…?』
確かに死の魔力を得れば俺はもっと強くなれる。
しかし、この力だけは絶対に使ってはいけないと本能が言っている。
「…グレイ、悪いがこれはできるだけ封印させてもらう。」
「承知いたしました。」
グレイは先程から俺を魔王にしようとしてきたが、俺が言うことにはちゃんと従うらしい。
「魔王因子は一人にしか発現しないのか?」
「いえ。魔王因子は魔王の器がある者全員に発現いたします。」
「じゃあ魔王は一人じゃないのか?」
「その通りでございます。」
『なん…だと!?』
そんな情報を俺は、いや人族は知らない。
「じゃあどうして今まで魔王はただ一人しかいなかったんだ?」
「それは魔王い…!?」
「あーーー!!!君が新たな魔王候補ちゃん??」
「それは…」
魔王になったら大切に思う人々と距離ができてしまうかもしれない。
それがとても嫌なのだ。
『いや…意外とそうでもないのか…?』
仮に魔王になって魔力の質が変化しても、”偽装”スキルで誤魔化すことができるだろう。
さらに、もし俺が魔王になったら過激派の問題も解決するのでは…?
「ピロンッ!!」
『な、なんだ!?』
何も習得していないのに、突然ステータス音声が流れた。
「あぁ…魔王様…」
すると、突然グレイが跪いて涙を流し始めた。
「は…?何してるんだ?」
「貴方様がついに魔王の才能に目覚めたからでございます。」
「…は?」
すると、突然背筋が凍るような感覚に襲われた。
『な、なんだ!?』
嫌な予感がして自分を”鑑定”してみると、”魔王因子を持つ者”の称号が追加されていた。
「は…?さっきはなかったのにどうして…?」
「それは貴方様が魔王になってもいいと認めたからでしょう。」
「っ!?謀ったな!!」
「申し訳ございませんでした…!」
もう一度自分を”鑑定”し、以前と変化している部分が無いか確認した。
それはもう毛穴を一つ一つ数えるほど細かい確認だった。
すると、身体やスキルに変化はなかったものの、魔力の質が若干邪悪な属性に変化していた。
試しに魔力を可視化してみると、無色だった魔力に黒い靄が混じっていた。
「…なっ!?」
「おぉ…これは…」
「グレイ、何か知っているのか?」
「はい。それは魔王特有の”死の魔力”というものです。」
「”死の魔力”…?」
「はい。精神力やステータスが低い者はそれに触れただけで死に至らしめるというものでございます。」
「…まじか。その死なせられる対象は俺の所有魔力に依存しているのか?」
「その通りでございます。対象は貴方様のHP、MP、TP合計の1/10以下の者でございます。」
俺の合計は210万を優に超えているので、Bランク冒険者以外が俺の魔力に触れたら確実に死ぬだろう。
「しかし、”死の魔力”はまだ覚醒しておりません。魔王因子が発芽し、魔王になったときに真価を発揮するのです。」
「だろうな。…その場合はどうなんだ?」
「はい。対象が貴方様の合計の1/3以下の者に変化します。」
「…まじか。」
そうなったらもはやSランク冒険者でさえ死ぬ人がいるかもしれない。
「一度死の魔力の効果を体感してみれば、自ずとその多大なるお力がわかるかと愚考いたします。」
「…そうだな。一回試してみるか。」
俺は近くの森林に”転移”した。
死の魔力は依然として半径約10mほどに渡って広がっている。
少し歩き始めると目の前にオークがいたので、”気配遮断”を行使してこっそり近づいた。
「グ、グォォ…」
オークとの距離はちょうど10mほどになったころ、かすかに死の魔力に触れて苦しみ始めた。
『少しだけでそんなに効果があるのか…』
そのまま一歩、また一歩と近づいていった。
そして7mくらいまで距離を詰めると、オークは死の魔力に覆われて死んだ。
「お見事です。」
「あ、ああ。」
どうやら死の魔力はかすかに触れるだけで対象を苦しませ、そして身体が完全に覆われたときに死に至る性質を持っているようだ。
「魔王様、今度は少し離れた場所から一気に魔力を放出してみてください。」
「分かった。」
再びオークを見つけたので今度は20m離れた場所で止まった。
『…よし、やってみるか。』
”威圧”スキルで魔力を相手にぶつけるような感じで死の魔力を放出してみた。
すると、死の魔力は放出した方向に進んでいき、ついには20m先にいたオークを殺すことに成功した。
「一回で成功するとは…流石でございます。」
「あ、ああ。」
俺は今まで何百回もオークを倒したことがあるというのに、なぜか気分が舞い上がっていた。
「もっと大量に放出したらもっと早く殺せるのか!?”魔力念操作”で操れるのか!?もし操れたらどんなに離れていても殺せるじゃないか…!!」
「おおおおお!!ついに魔王としての自覚を持ち始めたのですね!!!」
『はっ!!だめだ!!』
ふと、リヴェリアやエイミ、師匠たちが脳裏によぎって落ち着いた。
『今の思考は魔王因子の影響か…?』
確かに死の魔力を得れば俺はもっと強くなれる。
しかし、この力だけは絶対に使ってはいけないと本能が言っている。
「…グレイ、悪いがこれはできるだけ封印させてもらう。」
「承知いたしました。」
グレイは先程から俺を魔王にしようとしてきたが、俺が言うことにはちゃんと従うらしい。
「魔王因子は一人にしか発現しないのか?」
「いえ。魔王因子は魔王の器がある者全員に発現いたします。」
「じゃあ魔王は一人じゃないのか?」
「その通りでございます。」
『なん…だと!?』
そんな情報を俺は、いや人族は知らない。
「じゃあどうして今まで魔王はただ一人しかいなかったんだ?」
「それは魔王い…!?」
「あーーー!!!君が新たな魔王候補ちゃん??」
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