異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

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第118話 勇者

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前回発生した勇者と魔王の大戦は古の時代のもので、その際多くの血が流れ、種族や文明が滅んだ。

そして数年にわたった戦争は勇者と魔王の相打ちで幕引きとなった。



勇者陣営も魔王陣営もお互い多くを失ったため、残党狩りなどは行われず、静かに戦場を後にしたらしい。



「ダグラス様、私たちは一体どうすれば…」



「…せめて大切な場所や人を失わないように防御を固めるくらいだ。」



「ダグラス様は…?」



「俺は…」



正直勇者と魔王の記録は多くが失われているため、情報が圧倒的に少ない。

例えば”勇者以外であっても魔王は倒せるのか”や”魔王は絶対悪なのか”など、分からないことだらけだ。



「…せめて過激派の魔族を倒して魔王の誕生を遅らせることくらいだろう。」



しかしその魔族たちがどれくらいの強さなのかわからない。

もし全員が真祖と同じくらい強かったら、俺一人では手に負えないだろう。


「そうですね…あとその…穏健派の魔族を探して手伝いを要請するのはどうでしょうか?」



「穏健派か…」



確証はないが、例の真祖は魔王の噂が立つ前後で行動が変わっていない。

ずっと新しい城に籠っているので、もしかしたら穏健派なのかもしれない。



『…そろそろ潮時だな。』



このまま精霊の森に留まっていても外のことが気になるだけだろう。

行動を起こすなら今しかないだろう。



「エイミ、今まで世話になった。」



「いえ…わたしの我儘を聞いてくださってありがとうございました。とても楽しかったです。」



「俺もだ。お礼と言っては何だがこれを受け取ってくれ。」



生態研究に疲れ、休みがてら鍛冶スキルで作った神秘のブレスレットSを渡した。

これにはエンチャントとして”健康S”や”疲労軽減S”、”HP自動回復S"、”MP自動回復S"を付与しておいた。



「…っ!!ありがとう…ございます…!!」



「じゃあ行ってくる。」



「行ってらっしゃい…どうかお元気で…」



「エイミもな。」



エイミと別れた後、俺はまず勇者のステータスを確認するべく聖王国へと”転移”した。

そこは信仰心の厚い国家なので、国の至る所に信仰のエンブレムが掲げられていた。



『勇者は…いるとしたら王城か。』



勇者召喚の話はあくまでも噂でしかないため、まずは本当かどうか確認する必要がある。

俺は一旦武闘国家の屋敷の自室に戻り、聖王国王城内を”レーダー”と”千里眼”で観察した。



『王の玉座は…王と側近だけか。じゃあ他は…』



それから数か所探したが、勇者は見つからなかった。

視るだけでは得られる情報量はたかが知れているので、”魔力探知”と”気配察知”を同時に行使してみた。



すると、王城の地下から常人よりも膨大な魔力で、強い心を感じさせる気配を捉えた。



『なっ!?こいつは…』



”鑑定”してみると、



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



名前 クロガネイザヤ 種族 人族 性別 男 Lv.23 



ユニークスキル

鑑定 アイテムボックス 全魔法適正 全武技適正 成長速度50倍



称号

異世界転移者 勇者



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



と表示された。



『日本人…なのか?』



黒髪黒目をしており、そして名前は黒鉄臨也だろうか。

正直名前がかっこよくて同じ日本人だったとは認めたくない。



『あの名前はずるいだろ…黒鉄家って…』



少し嫉妬してしまった。



それはさておき、見た目から推測するに年齢は16、17くらいだろう。

そして肝心の強さはというと…”成長速度50倍”のおかげで時間があれば十分魔王に対抗できるようになるだろう。



『”成長速度50倍”って…俺のときはそんなスキルなかったぞ。勇者特有のユニークスキルか?』



よく見てみると、俺はユニークスキルを10個持っているのに対し、勇者は5つしか持っていない。

”転生”と”転移”の違いなのか、はたまた他の要因なのか…



『…ってそれより勇者の指導してるのはカルファか!?』



おそらく魔王に対抗しうる聖なる武器の使い手としてパーティを組んだからだろう。

あの勇者は両手剣の聖剣、カルファは神槍、他のパーティメンバーは募集中といったところか。



『誰が選ばれるんだろうか…魔法師はフィオナ先生か?タンクは…師匠か?』



どうにもここ最近研究に没頭していたせいか、すぐに考察を始めてしまう。

一種の職業病に近いのだろうか。



とりあえず勇者は十分に魔王に対抗しうる力を得られそうでよかった。

勇者の人格も、とても善良なようだ。



『次は真祖のところ…か。』
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