43 / 93
43☆疑惑
しおりを挟む
まずい、なぁ。
ユオの記憶との融合が進みすぎたせいだ。
意識がユオに持っていかれて、不用意に過去を口走ることが増えた。
気を付けようと思わないわけじゃないけれど、異常な疲れがたびたび襲って、判断力が鈍っていく。ユオの記憶を見れば見る程、空洞から気力が吸い出されて行く気がする。
で。サフラに、完全に疑われた、とおもう。
ユオの居場所、生死、意図。ユオが消えた理由、中央にされたこと。サフラの正気を奪うそれらを、私が知っているはずだと。
執拗に触られる回数が指数関数的にふえていくのも多分そのせい。
いれてないだけで、あれは9割がた性行為です!
むしろいれた方が絶対に健全です!
出すものださないから際限なく沼るんです!
って、内心ではいくらでも説教できるのですけどもね。
も、夜になるたび、朝になるたび、真っ昼間でも。ひっつく、くっつく、しがみつく。
触れていないと呼吸できないとでもいうように。
はふ。
サフラの気を注がれ、サフラの執着を浴びて。
薄っぺらな私の中で、極彩色のユオが瞬く。
サフラが買い物に出るや起き上がって、窓という窓を全開にした。
雪山ほどではないけれど、夜の外気は冷たくて、呼吸を楽にしてくれる。
サフラに優しくしてもらえ、か。
難しい事ではない。元から優しい子だ。
サフラは、ユオに起こった惨劇が呑み込めない。
ユオの意志なら、サフラへの裏切りで、
ユオの意志でないなら、中央に苦痛の限りをねじ込まれた無惨な犠牲者で。
どちらも呑み込めないのだ。
冷たい空気がもっと欲しくてドアまで開けて。
目の前の、大人数に、驚く。
いや、相手も多分、驚いた。
5人?6人?
覆面、凶器。まさに、襲撃2秒前、というところで、踏み込むはずのドアが外側に開いたのだと思われる。
ここまできてやっと、なるほど、と思いあたった。
私は、自分のことを、サフラにしか読めない手紙、と思っていたので、第三者の視線を気にしたことがなかったのだけれど。
サフラは、皇族だろうがなかろうが、事実としてぶっちぎりの能力者だ。
そりゃ、殺したい奴から担ぎたい奴まで山といる。サフラのお気に入りが弱っちい玩具なら、それを使って、サフラを動かそうとする奴らが出てくるのは、道理というもの。
理解はできても、恐怖心は、湧かない。サフラが思うほど、私は生きていないし、むしろ彼らが心配になる。
この人達、私を殺しても、攫って行っても、無事じゃすまなくない?
あの子、常軌を逸して強いよ?って。
サフラは、私という発散先をうばわれたら激すること請け合い。
だからといって、この暴漢どもを私が説得しても、やめるわけないよなぁ、どうせ雇われだろうし。呑気にそんなことを考えているうちに。
踏み込まれ、組み伏せられ、腕をねじ上げられて。
残念ながら、今の私に、ユオだった頃の剣術の腕だの攻撃力だのはない。
イメージはできるのよ?
でも多分、イメージ通りに剣をふるったら腕の健がいかれるし、気弾を撃ったら干からびる。
ちょっとだけ、諦めちゃおうかな、と弱気が頭をよぎって、疲れの質が悪いことに気づいた。
あれだけ運動能力をちやほやされた由生だって、病気にかかったら、疲れて死んだ。人は、疲れると、ボロくて薄くて頼りなくなっていく。あの感覚をどうやら私は覚えているようだ。疲れて、疲れて、どうしてもポテチが、食べたくなった日。
殴られて、踏みつけられたのがわかるのに、私の目は、現実よりもユオの過去をみる。
心臓の裏に孔が開いて、動けないまま殴られていた時も、前世で体中の筋肉が溶け出した時も、とても疲れていた。
しっかり、しないとなぁ。
とりあえず、こいつらが、極悪人かだけでも確かめて、極悪人なら、どうなっても心が痛まないから、サフラを呼ぼう。
でも、サフラに怯えるまじめな軽犯罪者とかだったらなんとか逃がして・・・
あー、まじめなサラリーマンだった場合は?どうしよ。雇い主が極悪人だからって一蓮托生っていうのもなぁ。
疲れているせいで、思考が遅いけれど、つらつらと考えているときに。
『ユオ?』
え、サフラ?!
頭に彼の声が響いて、覚醒。やばい、またサフラを泣かすとこだった。
深呼吸、1回。
しっかり、私。本体じゃないけど、師匠の面目、おもいだせ?
ふよふよしていた現実の五感をたどたどしく呼び寄せる。
ポテチの味、イチゴポッキーの味、夕日の色、大好きな、サフラの金色。
そうして、やっとの思いで、助けを求めるという慣れない行動にでる。
「ちょうどいいところへ~。ごめん、ちょっと困っています」
ユオの記憶との融合が進みすぎたせいだ。
意識がユオに持っていかれて、不用意に過去を口走ることが増えた。
気を付けようと思わないわけじゃないけれど、異常な疲れがたびたび襲って、判断力が鈍っていく。ユオの記憶を見れば見る程、空洞から気力が吸い出されて行く気がする。
で。サフラに、完全に疑われた、とおもう。
ユオの居場所、生死、意図。ユオが消えた理由、中央にされたこと。サフラの正気を奪うそれらを、私が知っているはずだと。
執拗に触られる回数が指数関数的にふえていくのも多分そのせい。
いれてないだけで、あれは9割がた性行為です!
むしろいれた方が絶対に健全です!
出すものださないから際限なく沼るんです!
って、内心ではいくらでも説教できるのですけどもね。
も、夜になるたび、朝になるたび、真っ昼間でも。ひっつく、くっつく、しがみつく。
触れていないと呼吸できないとでもいうように。
はふ。
サフラの気を注がれ、サフラの執着を浴びて。
薄っぺらな私の中で、極彩色のユオが瞬く。
サフラが買い物に出るや起き上がって、窓という窓を全開にした。
雪山ほどではないけれど、夜の外気は冷たくて、呼吸を楽にしてくれる。
サフラに優しくしてもらえ、か。
難しい事ではない。元から優しい子だ。
サフラは、ユオに起こった惨劇が呑み込めない。
ユオの意志なら、サフラへの裏切りで、
ユオの意志でないなら、中央に苦痛の限りをねじ込まれた無惨な犠牲者で。
どちらも呑み込めないのだ。
冷たい空気がもっと欲しくてドアまで開けて。
目の前の、大人数に、驚く。
いや、相手も多分、驚いた。
5人?6人?
覆面、凶器。まさに、襲撃2秒前、というところで、踏み込むはずのドアが外側に開いたのだと思われる。
ここまできてやっと、なるほど、と思いあたった。
私は、自分のことを、サフラにしか読めない手紙、と思っていたので、第三者の視線を気にしたことがなかったのだけれど。
サフラは、皇族だろうがなかろうが、事実としてぶっちぎりの能力者だ。
そりゃ、殺したい奴から担ぎたい奴まで山といる。サフラのお気に入りが弱っちい玩具なら、それを使って、サフラを動かそうとする奴らが出てくるのは、道理というもの。
理解はできても、恐怖心は、湧かない。サフラが思うほど、私は生きていないし、むしろ彼らが心配になる。
この人達、私を殺しても、攫って行っても、無事じゃすまなくない?
あの子、常軌を逸して強いよ?って。
サフラは、私という発散先をうばわれたら激すること請け合い。
だからといって、この暴漢どもを私が説得しても、やめるわけないよなぁ、どうせ雇われだろうし。呑気にそんなことを考えているうちに。
踏み込まれ、組み伏せられ、腕をねじ上げられて。
残念ながら、今の私に、ユオだった頃の剣術の腕だの攻撃力だのはない。
イメージはできるのよ?
でも多分、イメージ通りに剣をふるったら腕の健がいかれるし、気弾を撃ったら干からびる。
ちょっとだけ、諦めちゃおうかな、と弱気が頭をよぎって、疲れの質が悪いことに気づいた。
あれだけ運動能力をちやほやされた由生だって、病気にかかったら、疲れて死んだ。人は、疲れると、ボロくて薄くて頼りなくなっていく。あの感覚をどうやら私は覚えているようだ。疲れて、疲れて、どうしてもポテチが、食べたくなった日。
殴られて、踏みつけられたのがわかるのに、私の目は、現実よりもユオの過去をみる。
心臓の裏に孔が開いて、動けないまま殴られていた時も、前世で体中の筋肉が溶け出した時も、とても疲れていた。
しっかり、しないとなぁ。
とりあえず、こいつらが、極悪人かだけでも確かめて、極悪人なら、どうなっても心が痛まないから、サフラを呼ぼう。
でも、サフラに怯えるまじめな軽犯罪者とかだったらなんとか逃がして・・・
あー、まじめなサラリーマンだった場合は?どうしよ。雇い主が極悪人だからって一蓮托生っていうのもなぁ。
疲れているせいで、思考が遅いけれど、つらつらと考えているときに。
『ユオ?』
え、サフラ?!
頭に彼の声が響いて、覚醒。やばい、またサフラを泣かすとこだった。
深呼吸、1回。
しっかり、私。本体じゃないけど、師匠の面目、おもいだせ?
ふよふよしていた現実の五感をたどたどしく呼び寄せる。
ポテチの味、イチゴポッキーの味、夕日の色、大好きな、サフラの金色。
そうして、やっとの思いで、助けを求めるという慣れない行動にでる。
「ちょうどいいところへ~。ごめん、ちょっと困っています」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる