偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

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44☆ちょっと困っています

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サフラは、小刻みに空間を跳躍して、急いで買い物をした。ほんの数分。
その間を離れることさえ耐えきれずに、ユオを呼んでみる。

『ユオ?』
返事が一瞬ないだけで、冷や汗が出そう。
3拍ほど時間が空いて、応答。

『あ、ちょうどいいところへ~。ごめん、ちょっと困っています』

・・・っ!

『すぐ行く!』

僕は強引に小屋へ跳んだ。

「うわぁ!」

突然現れた敵に悲鳴を上げる数人の男。
彼らの目に恐怖が広がる。
ソファから引きずり落とされたのだろうか?ユオが不自然な姿勢で、肩を踏みつけられている。

踏み込まれて数分は経っているように見えた。こいつらは、僕が消えるのを、張っていたのだ。

呼ばれてから僕が戻るまではほんの数秒なのに。ユオは僕を呼ばなかったのか。

頭に血が上って、男たちをなぎ払った。

殺してやる。

「ストップ!」

ユオの声が、部屋を貫く。

「やめなさい。サフラが本気でひねったら死んじゃうでしょうが!」

だからなんだ。歩み寄って、ユオを抱きおこしはしたけれど、その目を見ることはなかった。

「こんな奴らが、ユオに触れたなら、死ぬべきです」

ユオは袖をひっつかんで、近距離とは思えない大声でしゃべっている。

「いやいやいや?理性が死んでおられる!私はただの手紙で、こいつらはそれすらわからない雑魚!何逆上してんのよ」

「・・・許せるはずがない」

ユオをソファにおろして、今すぐに潰してやるとばかりに向きなおる。

「私は、師匠からの手紙なんだからね。弟子の不良化は、力ずくでも止めるわよ!」

焦ったユオの声が追いかけてきた。

「動けもしないくせに?」

「何とでも!あんたらもぼやっとしないで逃げなさい!」

ユオの口調の激しさに男たちから目を離すと、信じられない光景があった。
ユオが、気弾をためるように神経を集中させている。
こんな薄い気しかないユオが気弾など放ったら、一発で消耗してしまう。

「やめろ!消える気か!」

男たちへの攻撃体制を解除する。精神的なホールドアップ。

僕が動かなくなると、男たちはすぐに消えた。

ほ。
ユオの気がゆるんだのがわかる。

「・・・殴りますよ」

「冗談!」

ユオの軽い返しが、神経をひっかく。

「すぐに呼ばなかったんですね」

「あー、ごめん。ちょっと、疲れて、判断が、ぼろかったみたいで」

僕を呼べないほどの疲れとは、何だ?
疲れたからと、何をされる気だった?

明らかなごまかし笑いに振り切れる。

「ふざけるな!」

彼女は、わざわざ逃亡などしなくとも、生きる気をなくすだけで、僕の前から消えることが出来る。こんなにもユオの気配をさせながら、平気で消えようとする。

させるものか、させるものか、させるものか!

「なぜ、呼ばなかった!」

あの時も、今も!

「へ?ちょ・・んぅ」

彼女を、ベッドにめり込ませるように押し潰して、すがりついた。
めちゃくちゃに暴いて、彼女の意志を砕いてしまいたかった。

こんなに、弱々しくて、儚いとしか言いようのない生命力なのに、気弾を放とうとした彼女は、ユオそのものだった。姿勢も呼吸も勢いも。

彼女は、僕にとって、最悪な部分でできたユオだ。
消えかけのユオ。逃げようとするユオ。他人に害されるユオ。
僕の恐怖のすべて。後悔と慟哭のすべて。

彼女の制止が、聞けない。

僕に疲れたから、あんなものに踏みつけられて?
僕に疲れたから、なにもいわずに消えたのか?

彼女の抵抗が、悲鳴が、正気をはぎ取っていく。

消える前に、食いつくしてやる。
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