偏食王子は食用奴隷を師匠にしました

白い靴下の猫

文字の大きさ
上 下
44 / 93

44☆ちょっと困っています

しおりを挟む
サフラは、小刻みに空間を跳躍して、急いで買い物をした。ほんの数分。
その間を離れることさえ耐えきれずに、ユオを呼んでみる。

『ユオ?』
返事が一瞬ないだけで、冷や汗が出そう。
3拍ほど時間が空いて、応答。

『あ、ちょうどいいところへ~。ごめん、ちょっと困っています』

・・・っ!

『すぐ行く!』

僕は強引に小屋へ跳んだ。

「うわぁ!」

突然現れた敵に悲鳴を上げる数人の男。
彼らの目に恐怖が広がる。
ソファから引きずり落とされたのだろうか?ユオが不自然な姿勢で、肩を踏みつけられている。

踏み込まれて数分は経っているように見えた。こいつらは、僕が消えるのを、張っていたのだ。

呼ばれてから僕が戻るまではほんの数秒なのに。ユオは僕を呼ばなかったのか。

頭に血が上って、男たちをなぎ払った。

殺してやる。

「ストップ!」

ユオの声が、部屋を貫く。

「やめなさい。サフラが本気でひねったら死んじゃうでしょうが!」

だからなんだ。歩み寄って、ユオを抱きおこしはしたけれど、その目を見ることはなかった。

「こんな奴らが、ユオに触れたなら、死ぬべきです」

ユオは袖をひっつかんで、近距離とは思えない大声でしゃべっている。

「いやいやいや?理性が死んでおられる!私はただの手紙で、こいつらはそれすらわからない雑魚!何逆上してんのよ」

「・・・許せるはずがない」

ユオをソファにおろして、今すぐに潰してやるとばかりに向きなおる。

「私は、師匠からの手紙なんだからね。弟子の不良化は、力ずくでも止めるわよ!」

焦ったユオの声が追いかけてきた。

「動けもしないくせに?」

「何とでも!あんたらもぼやっとしないで逃げなさい!」

ユオの口調の激しさに男たちから目を離すと、信じられない光景があった。
ユオが、気弾をためるように神経を集中させている。
こんな薄い気しかないユオが気弾など放ったら、一発で消耗してしまう。

「やめろ!消える気か!」

男たちへの攻撃体制を解除する。精神的なホールドアップ。

僕が動かなくなると、男たちはすぐに消えた。

ほ。
ユオの気がゆるんだのがわかる。

「・・・殴りますよ」

「冗談!」

ユオの軽い返しが、神経をひっかく。

「すぐに呼ばなかったんですね」

「あー、ごめん。ちょっと、疲れて、判断が、ぼろかったみたいで」

僕を呼べないほどの疲れとは、何だ?
疲れたからと、何をされる気だった?

明らかなごまかし笑いに振り切れる。

「ふざけるな!」

彼女は、わざわざ逃亡などしなくとも、生きる気をなくすだけで、僕の前から消えることが出来る。こんなにもユオの気配をさせながら、平気で消えようとする。

させるものか、させるものか、させるものか!

「なぜ、呼ばなかった!」

あの時も、今も!

「へ?ちょ・・んぅ」

彼女を、ベッドにめり込ませるように押し潰して、すがりついた。
めちゃくちゃに暴いて、彼女の意志を砕いてしまいたかった。

こんなに、弱々しくて、儚いとしか言いようのない生命力なのに、気弾を放とうとした彼女は、ユオそのものだった。姿勢も呼吸も勢いも。

彼女は、僕にとって、最悪な部分でできたユオだ。
消えかけのユオ。逃げようとするユオ。他人に害されるユオ。
僕の恐怖のすべて。後悔と慟哭のすべて。

彼女の制止が、聞けない。

僕に疲れたから、あんなものに踏みつけられて?
僕に疲れたから、なにもいわずに消えたのか?

彼女の抵抗が、悲鳴が、正気をはぎ取っていく。

消える前に、食いつくしてやる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...