【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

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第4章 修道院

10 思いがけない真実

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 ルイーズとイリスが医務室内に入ると、エマがエリーの眠るベッドの横の椅子に腰掛けて、うたた寝をしていた。誰かが部屋に入ってきたことに気づいたエマは、音のする方を見やると、入ってきたのが二人だと気づき、ほっと胸を撫でおろした。

「イリス様にルーちゃん、まだエリーはぐっすり眠っています。おそらく、緊張状態が続いていたのかと思います。今日は私たちがこちらを出るまで、エリーを医務室で休ませていただいてもよろしいでしょうか」

「そうね、無理はさせない方が良いわ。こちらでエリーちゃんの付き添いは付けるから、エマちゃんはあちらに戻ってあげて。私とルーちゃんもしばらくしたら戻るから」

 イリスに修道院長室に戻るように言われて医務室を後にするエマ。

「エリー落ちついてる……良かった」

 エリーの顔を覗き込むと、穏やかな寝息を立てて眠る様子にルイーズは安心したようだ。そこにイリスが声を掛けた。

「ルイーズちゃん、今日は初めて聞く話ばかりで疲れたでしょう。私は付添い人を連れてくるから、それまで、ここで少し休むと良いわ」

「ありがとうございます。ご厚意に甘えて、そうさせていただきます」

 イリスの言葉が有難かったのだろう。ルイーズの表情が少し和らいだようだ。エリーの隣で一息ついたら、また集中して話を聞くことができるだろう。

 ♦

 イリスとルイーズが外に出た後、修道院長室に残ったアレックスとキース、リオンとエリザベスにレアの五人が今後について話していた。

 そこに、医務室からエマが戻って来た。エリザベスがエリーの状態をエマに確認している。

「大丈夫よ、今はぐっすりと眠っているわ。私たちが帰るころには起き上がれると思う。多分だけど、今までルーちゃんのことを心配してても、自分ではどうにもできないから不安しかなかったと思うの。それがここにきて、一気に状況が動いたでしょう。だから張りつめていたものが解けて安心したのだと思うわ」

「そう……一人で抱えていたのね。以前、エリーがルーちゃんを私に紹介したがっていたのは、そういうことね。その時は、婚約解消の助っ人のためだと思っていたわ」

「両方だと思うわ。私もエリーの出すサインに気づかなかった。エリーが侍女科に移ると時、ルーちゃんも一緒だと聞いていたのに、一緒で良かったわねとしか言えなかった。多分あの頃から、エリーなりにルーちゃんを守る環境を作っていたのよね」

「そうね。本人たちには自覚がないし、女学院にいるから上手く隠れているけど、二人共すごい美少女でしょ。卒業して社交デビューを迎えたら、釣書が殺到するわよね。……だから、ルーちゃんのお父様も婚約を急いだのかしら……それも、自分の目の届く近くの男爵家との縁組……万が一、力のことが知られても婚約していれば……ということは、お祖父様がルーちゃんを連れてあちこち巡っていたのも……後継者教育だけではなく、相手を見つける目的もあったのかしら……」

「リザ、今日は冴えているわね。その予想、真相に近いかもしれないわ」

「失礼ね、今日もよ」

 

「話の途中ですまない。先ほど婚約解消と聞こえたが、ブラン家の御息女の話だろうか?」

「ええ、もう一年前になるかしら。結局は解消ではなく、白紙になったそうですわ」

「そうか……その後、誰とも婚約はしていないのだろうか」

「……ええ、しばらく婚約はしないと、お父様に話したそうですわ。まあ、その後すぐに淑女科から侍女科に所属が変わりましたから、婚約の話に動きはないと思いますわ」

「そうか」

 リオンの問いかけに対して、疑問に思いながらも律儀に返答するエリザベス。そのエリザベスの答えに何故かほっとしたような表情のリオンに、アレックスが声を掛けた。

「リオン、やけに熱心に聞いているけど、以前からの知り合いなの? 対面したときのルイーズ嬢はそんな風には見えなかったけど」

「…………10年近く前のことだ。覚えていなくても仕方がない」

 リオンの呟きとも取れる声に、その場にいる全員が驚いた様子だ。エリザベスとエマは顔を見合わせたかと思ったら、すぐさまエリザベスがリオンに問いかけた。

「ルーちゃんが、辺境伯家に行ったことがあるということ? 誰と?」

「そうだ。その時はブラン家の前当主と一緒だった」

 リオンの返答を聞いたエリザベスとエマは見つめ合い頷き合っているようだ。

「何故、兄上だけが会っているんだ。私は学院に入るまで、ルーちゃんには会ったことがない」

「その時は……母上の実家に遊びに行っていたレアは屋敷にいなかった。」

「そうか……残念だ」

 そんなクレメント兄妹のやり取りを見ていたエマが、レアに声を掛けた。



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